ホワイトドラゴン
グレーターホースを従魔にして数日が、経ったある日な事。
担任の先生から授業が終わり次第、屋敷に帰る様にと連絡が入ったと言われた。
放課後俺は屋敷へと帰った。
「父上に呼ばれたので帰ってきました。何かあったのですか?」
「アーグクリストフ様お帰りなさいませ。旦那様ならお庭にいると思います」
「庭?」
家令に言われて庭へと向かうが、何やら騒がしい。
「父上、何かあったのですか?」
後姿だったが何か良からぬ事があったと感じ直ぐに側に駆け寄る。
「アークよ帰ったか。これを見てくれ」
「グレーターホースの赤ちゃんですか?」
「そうだ、だが産まれてから暫く息が無くな危険な状態だった。ようやく落ち着いてきたがまだどうなるかわからない」
だからあの時、Cクラスの魔物に襲われていたんだ。
もしかしたらあの時、本当は出産するつもりだったのかも・・・。
なんで気づいてあげられなかったのか。
「ユキごめんな。もっと早く気づいてやれたらこんな事にならなかったのにな」
ユキの顔に抱きついて撫でながら謝る。
だがそんな事はないと言わんばかりに俺を舐めてヨダレ塗れにする。
父は国王にこの事を伝えて3日程休みを貰ったそうだ。
親子3人三日三晩の賢明な処置に双子のグレーターホースは一命を取り留めたのだ。
そしてどうやら父や母を気に入った様でグレーターホースの親子は父と母に甘えたり寄り添ったりするようになった。
数年ぶりに子供に甘えられたりしているうちに両親はグレーターホースに甘くなっている、気づくと一緒に遊んだりブラッシングをしている父と母がいる。
ユキも俺は勿論、両親を信頼していた。
あっという間に数ヶ月が過ぎて馬体も大きくなり乳離をした頃、2頭の仔馬をテイムする。
ユキは真っ白な毛色だが双子は違う毛色だ。
一頭目は暗い白色でフブキと名付けた。
もう一頭は青っぽい白色でアラレと名付ける事にした。
テイムが終わり馴致を始める。
乗馬に馬車を引く為に慣らされるのだ。
ユキは乗馬も馬車も馴致を必要としなかったが、仔馬の頃から慣らしておく。
いずれユキを先頭にした三頭引きの馬車も作ろう。
ここの所、学園と屋敷を行ったり来たりしていてマリーやマインも心配してくれていた。
ようやく学園で過ごす時間も増えた夏の終わり、初のイベントが始まった。
生徒会長選挙、現生徒会長は次男のアーグハヤフス15歳である。
そして次の生徒会長を狙うのは姉のアリステラとマリーの兄第二王子ガルシアル、マインの姉次女ステラアリアだ。
そしてその3人が僕たちの教室に入ってきて僕たちの前へと立つ。
「アークちゃん。お願い、お手伝いしてくれるわよね?一年生の皆が私に票を入れてくれる様にお願いしてー!」
マリーもマインも同じような事を言われてる。
「お断り致します。姉上、俺たちはお手伝いしません。そういう事で話し合いましたのでお願いします」
「なんですって。そんな事はパワード家として許されませんよ」
「申し訳ありません。姉上の事は応援していますが出来ないものは出来ません」
学園生活で王家、元帥、宰相の子供達は仲が良く最悪の場合王家の子供を守るよう命じられている。
だが、その仲を壊す要因が一つあってそれが生徒会選挙だ。
これは両家家族も白熱して口を聞かなくなる程で一種の名物となっている。
だが俺たちは入学してから一度も対立しない事を誓ったのだ。
熱い選挙戦を尻目に、魔法学の教室へと向かう3人。
「今日は待ちに待った召喚の日ですね」
「そうですわね。楽しみね」
「うん、どんな召喚獣が出てきてくれるのか待ちきれないなぁ」
「ウフフ。では召喚魔法神を追加してあげるわ」
召喚はスキルがなくとも行使出来る、だが召喚可能な従魔は1匹だ。
しかし召喚魔法スキルがあると10匹、神スキルであれば50匹登録出来る。
そして、テイムスキルで得た従魔もどこにいても召喚できるのだ。
授業が始まると魔法学の先生から召喚についての注意事項等の説明を受けた。
「この中で召喚魔法のスキルを持つ者は挙手してください」
手を挙げたのは俺だけだった。
「また君かねアーグクリストフ君。君はいったい幾つのスキルを持つのだね」
「沢山持っています」
「それでは君は最後に召喚してもらおう」
「はい」
教室を出て闘技場へと向かう。
稀に大型の魔獣も召喚される事がある為に教室ではなく広い闘技場で行われる。
ウルフや一角ラビット等の低級魔獣が召喚される中、マインの番となった。
「召喚」
眩く光る方陣から現れたのは鎧竜だった。
「「オォー」」
歓声が上がる中、マインの一言で教室は静寂に包まれる。
「まんまり可愛くない・・・」
確かに、トゲトゲした中型の蜥蜴は可愛い物ではないが・・・それでもBランク魔獣で防御力が高く、トゲトゲの尾を振り回す攻撃力は岩をも砕く。
マインの前に立ち、頭を下げるアンキロサウルス。
「名前は・・・アン」
一瞬光った様に見えた。
名前を受け入れたようだ。
次はマリーの番だ。
「召喚」
金色に輝く方陣から現れたのは、聖獣ユニコーンだった。
「「ウォォー」」
聖獣の登場に沸き立つ。
「可愛い」
「マリーの召喚獣は可愛くて良いですわね・・・」
「素晴らしい。聖獣が召喚に応じるとは、流石ですな」
「名前は・・・アルベルタ、私の名のアルベルタをあげるわ」
「ヒヒーン」
「いい子ねアルベルタ」
そしていよいよ俺の番だ。
「召喚魔法」
虹色の方陣が眩しい程に輝く。
そしてそこから姿を現したのは、神獣ホワイトドラゴン。
「し、し、神獣だと・・・」
魔法学の先生が目と口を大きく開けたまま固まってしまった。
ミリアーヌこれは?
「神獣ホワイトドラゴンよ」
神獣に聖獣ってどういう事?
「聖獣はユニコーン、グリフォン等、神聖だとされるAクラス〜Sクラスの魔獣よ。基本的には人の言葉を理解できる知能があって正しき者の前に現れるとされるわ、神獣は私が作りし神の使いね。エンシェントドラゴンはそれぞれ色があって能力もそれぞれ違うわ。白、ホワイトドラゴンは治癒に特化した古代竜よ。他にもペガサスとか他の種もいるけど、それは召喚できた時のお楽しみね」
「面倒臭くなりそうだ・・・。名前はスノーだ。なぁスノー、小さくなれたりするか?」
「スノー、ん、いい名。小さくなる」
スノーはあっという間に小さくなり俺の頭の上に乗った。
「主、これで良いか?」
「うん、かなり小さくなれるんだな」
「ん」
小さくなったドラゴンはとても可愛く、全色揃えようよ心の中で誓ったアークだった。
召喚ってガチャだな・・・
うん、レアが眩しく光って、スーパーレアが金色、虹色はアルティメットみたいな、これ完璧ガチャだ。
エンシェントドラゴンを召喚した事はその日のうちに学園中に広まった。
教室にいてもトイレにいてもキャーキャーワーワーと騒がれて鬱陶しい。
上級生に囲まれてスノーを見せてくれと頼まれたり、教室に入ってくる者もいて周りにも迷惑だった。
次の日から数日、両親に頼んで学園を休んだ。
学園も落ち着くまでは休んでくれとの事だったので、少し遠出をしてダンジョンに潜る事にする。
現在C級冒険者の俺は中級迄のダンジョンに入れる。
王都の冒険者ギルドへ寄り、ダンジョンの許可証を貰う。
次の日、ゴリゴリのフル装備のユキに乗り普段は3日掛かる道のりを1日で走破した。
途中、数匹の魔物が出たがユキに踏みつけられ即死させられていた。
着いたのはサンタル伯爵領、叔父の経営する領地だ。
挨拶の為、叔父の屋敷へ向かう。
門の前にユキを止めると、伯爵家の家令が出てきた。
「これはこれはお久しぶりで御座います。パワード公爵様の御子息でございますね?」
「はい。だいぶ昔に来たきりですが覚えていて下さったのですね」
「勿論で御座います。中へ入って少々お待ち下さい。直ぐに旦那様を呼んで参ります」
「ありがとうございます」
しばらく待っていると。
「しばらくぶりだな、アークよ。」
「叔父上、お久しぶりに御座います」
「今日はどうしたのだ?」
「はい。この街のダンジョンへ潜る為に来たのでご挨拶に伺いました」
「そうか。今はC級だったか?アーグスト兄上が嬉しそうに話してくれたわ。ワハハハ。ダンジョンか・・・パワード家の者なら最下層まで踏破して見せろ」
「はい。それではそろそろ宿屋を探さないといけないので失礼致します」
「なにを言う、バトルホース共々この屋敷に滞在しなさい。娘達も喜ぶからな」
「それではお言葉に甘えてさせて頂きます」
一部屋借りて休んでいると夕食に呼ばれた。
先に着くと家族が揃っていた。
「すみません遅くなりました」
「構わない。ささ、席に座りなさい」
「ありがとうございます」
「今日から数日、うちで預かる事にしたパワード公爵家のアーグクリストフだ」
「よろしくお願い致します」
「さぁ頂こう」