錬金術神
アークは鍛冶屋に着くと数日間弟子入りさせて欲しいと頼み込んでいた。
「坊主、お前は鍛冶のスキルを持っているのか?」
そう言うのは鍛冶屋の店主でドワーフのアルゴラム。
「はい。鍛冶と錬金術のスキルを持っています」
そう、家庭教師との3年間で錬金術のスキルを女神ミリアーヌから得ていた。
それは街の外へ出て魔物や魔獣を狩っていた時のこと、アークの魔法威力が強すぎて初級魔法ですら中型までの魔物を木っ端微塵にしてしまうのだ。
そこで考えたのは銃だった。
ただ、それは弾丸を発射する物ではなく魔法を圧縮し加速させライフリングで回転を加えて貫通力を高めて一点集中で魔物を倒す、魔法銃の製作だった。
これが可能かどうかミリアーヌに聞いたことろ錬金術のスキルが追加されたのだ。
それは可能という事だ。
鍛治は金属を熱して金槌でトッテンカントッテンカンと打って純度を高めながら形を形成していく。
錬金術は特殊な魔力で金属や薬草などを分離、付与、調合、形成等を行える。
鍛治と錬金術のスキルを持つ鍛冶屋は重宝される。
魔法剣や付与等を行えるため上位の冒険者や貴族、上級兵士等の御用達となる。
そして街の鍛治屋の店主も両方のスキルを持つ、というよりドワーフは両スキルを持つ者が多く刀鍛治となる者は大概もっているのだ。
「坊主、数日では何も覚えられないよ」
「構いません。その代わりアルゴラムさんが鍛治をしている場にこの魔道具を設置させて下さい」
俺はそう言ってスマホを取り出した。
「これは?」
「動画・・・動く絵をこの魔道具に保存出来ます」
「なに?それはどこで手に入れた?ロストアイテムか?」
「ロストアイテム?は、はいそうです。家の家宝です」
「ほぉーこいつは凄いな。置いても構わないぞ」
それから数日、スマホで動画を撮影しながら錬金術による鍛治を教わり夜は動画を見直して覚えていった。
「ありがとうございました」
「おう!筋がいい。いつでも雇ってやるからたまには顔出せよ」
鍛治単体よりは簡単だった。
だがまだまだ学ぶ事が多い・・・。
「アークどうしたの?」
「うーん、錬金術を使った鍛治は鍛治単体よりは楽というか簡単だったけど、それでも経験がないと思った物をつくれない」
「思った物を作れるようにしてあげようか?」
「そんなのあるのか?それは思った物を思った物資で思った能力を得られるか?」
「大丈夫!欲しいなら頭撫でて♡キャー」
「仕方ないな・・・」
念入りに撫でてやった。
「それじゃー鍛治スキルを錬金術スキルと統合して、新たに特殊作成スキル・・・創造に変更。それじゃ造ってみて」
俺は前世の銃を思い浮かべる。
使い回しの良いハンドガン、サバゲで使っていたベレッタM92。弾丸の代わりに魔法を圧縮して発射するためにマガジンで魔力を貯めれるよう魔石を使用する。属性に合わせて数個用意。ホルスターもセットにして・・・
手にはベレッタM92、ホルスターは右太腿に装着されホルスターに予備マガジンが数本刺さっていた。
やったー完成!
その足で森の中へと入っていった。
家庭教師が終わってからも森の奥に入らなければいいと許可を貰っている。
浅場は比較的弱い魔物しか生息していない。
ゴブリン、一角ラビットや低級ウルフなどだ。
たまに中級のウルフやベアが出る程度である。
ゴブリンは素材にならないし肉は臭くて魔獣すら食わない、そして魔石も無い。
ゴミだ。
一角ラビットやウルフは低所得者向けの肉と言う感じで食べれるが固くて不味い。
毛皮は素材として使える。
どちらも低級冒険者向けの獲物である。
毛皮だけ剥ぎ取って肉は埋める、他の魔物が寄ってくる為だ。
毛皮はナイフで細かく剥がす、ある程度剥がして一気に剥ぐ事も出来るが脂肪が付いてしまうので出来る限りナイフで綺麗に剥がす。
剥ぎ取った毛皮は素材としてある程度数を揃えて売ると小銭が稼げるのだ。
森に入るなりすぐにゴブリンを見つけた。
俺はすぐにホルスターからベレッタM92を抜くと火属性のマガジンを装してスライドを引くと安全装置を解除して、ゴブリンの頭に狙いを定めた。
引き金を引くとバスッとガスガンの様な音がしてゴブリンの頭を貫通、力なく倒れたゴブリンは勢いよく燃え骨も残らなかった。
リコイル(銃の反動)も弱く瞬時に連射も可能。
一角ラビットは風属性でウルフは土属性でどちらも一撃で倒れた。
「こんなもんか、もう少し強い魔物を相手にしたいがこれ以上遅くなると門が閉まってしまうので早く森を出よう」
「銃って凄いわね。威力的には中級の上位種相手に数回撃てば倒せるレベルかしらね」
「なにそれそんな事もわかるの?」
「創造神よ、当たり前じゃない」
「ていうか創造神としての仕事してるの?いつも一緒にいるけどさ」
「し、してりゅわよ」
こりゃしてないな。
創造のスキルを得た事で欲しいものはアメゾンで購入するか創造する事で地球にある者は殆ど手に入れられる。
ハンドガンを造って数日、アサルトライフルのM4カービン、スナイパーライフル のL96A1を創造した。
「試し打ちしようにも小物では木っ端微塵になっちゃう・・・。今日は奥へと足を運ぶかな」
「最悪の時は私が守ってあ・げ・る♡」
「よろしく頼む」
「ウフフ」
その日は朝から森へと入った。
いつもの様に見張りを付けられる事もない。
暫く奥へ進むとそのにいたのは黄熊だった。
お前は蜂蜜大好きな熊か!?
「よく知ってるわね。黄熊の主食は蜂蜜よ」
「マジか!?もしかしてピーさんなんて呼ばれてるか?」
「さぁ知らないわ」
パンっと乾いた音を放った途端、黄熊は倒れた。
アイテムボックスに入れるとなにもなかった様に歩き出す。
直ぐにAクラスの魔獣アースドラゴンに遭遇した。
翼はなくその巨軀は岩の様にゴツゴツしている。
「アースドラゴンなんて大層な名前をしているけど岩蜥蜴って感じだね」
「貴方ね・・・こう見えてAクラス魔獣よ?Aランク冒険者の5〜6名のパーティーでようやく倒せるクラスよ!」
「へぇー」
ドカンッとけたたましい音が鳴り響くと、力なく崩れ落ちたアースドラゴンの眉間には大きな穴が空いていた。
「なんなの?その銃という代物は?アースドラゴン一撃って・・・」
真っ白な顔をしてプルプル震える女神。
Aクラス魔獣は倒せた。
この森にはAクラスの魔物しか存在しないとされる。
アースドラゴンをアイテムボックスに仕舞うと森を出る。
歩きながらミリアーヌに魔剣や聖剣について質問をした。
ミリアーヌは長々と話してくれたが、要するにミスリル以上の金属を使い光か闇の属性を付与する事で作れる様だ。
家に帰ると直ぐに家の工房へと向かう。
オリハルコン2、アダマンタイト5、ミスリルを3の合金から聖魔混合の刀を一振り創造した。
「嘘でしょ・・・聖魔混合なんてこの世界の理から逸脱した代物を造ってしまうなんて。それはマズいはよ」
「なにがマズいって?」
「この世界には魔法属性の混合なんて考えがないからよ」
「嘘・・・これも?」
そう言って火と風の属性を混合して青い炎を発源させてみた。
「火が青くなった」
「そんな事も知らないって他の世界の神とは交流無いの?特に科学が発達した地球では小学生でも知ってるよ」
「交流なんて殆どないわよ!最近だと一億年前くらいかな?」
「へぇー」
そんなもあったがこの世界に聖魔混合刀爆誕!