洗礼式と家庭教師
今領地には基本的に母と俺しかいない。
父はたまに帰ってくるが王都の屋敷から王城通いである。
領地の屋敷にはメイド十数名、コック数名、庭師数名と兵士数十名だ、王都の屋敷ににも同数近くいるそうで兵士の数は領地の数倍抱えている。
公爵って物凄くお金持ち。
兄弟の兄2人と姉は8歳から王都の学園で寮生活。
長男アーグストライト13歳
次男アーグハヤフス10歳
長女アリステラ9歳
勿論家族全員美男美女である。
そんな俺も父に似た銀髪に母に似た綺麗な薄いエメラルドグリーンの瞳をしている。
自分で言うのもなんだがめちゃくちゃイケメンである。
そして洗礼の儀当日、正装に着替えて待機していた。
メイドが呼びにくる。
「アーグクリストフ様、アーグスト様がお呼びにございます」
「わかった。今出るよ」
メイドに連れられて外へ出ると父と母が待っていた。
「お待たせ致しました」
「うん、さぁ乗りなさい」
普段は父や、母、兄が先に乗るが今日は俺が主役であり一番最初に馬車に乗る。
教会までは物の数分である。
それまでの間に父にこれからの説明を受けた。
今日のステータス次第で家庭教師を選ぶ事、魔法か剣もしくはどちらも、スキルによっても変わるそうだ。
今日で将来が決まると言う。
教会に着くと受付を済ませる。
この世界は統一宗教である。
創造神である女神ミリアーヌを神とするミリアーヌ教会ただ一つである。
「これはこれは閣下、お久しゅうございます」
「今日はよろしく頼む」
「はい。こちらが今日の主役ですかな?」
「はい。アーグスト・フォン・パワード公爵が三男アーグクリストフ・フォン・パワードと申します。今日はよろしくお願い致します」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は司祭のビスマルクと申します。以後よろしくお願い致します。ではアーグクリストフ様こちらへ」
司祭に通されたのはミリアーヌの像がありその前に祭壇が設けられていた。
「それではアーグクリストフ様、ここでお祈りをお願い致します」
「はい」
祈りを捧げると俺の前にミリアーヌが立つ。
「創造神ミリアーヌが汝の祈りを聞き届けましょう。創造神ミリアーヌの加護、身体強化神、身体能力神、魔法適正神、剣適正神、その他適正聖、各種耐性神、スキル大賢者、鍛治、アメゾン、アイテムボックス、テレポート」
適正は5段会あり無地、強、超、聖、神となる。
適正聖、神は人ならざる力を行使できるようになる。
「もういいよ。貴方はこれで人類いや、生物最強になれるわ」
「やめてよ、普通に生きたい」
「無理無理、神格を得てもらわないと」
極たまに聞こえる不穏な声が聞こえた気がする・・・。
「ステータスオープン」
司祭が告げると俺のステータスがデカデカと映し出される。
えー?これはプライバシーの侵害だよ・・・。
「「おーーー」」
「これは素晴らしい」
「やはり私たちの子ね」
「アメゾン?」
何故か喜ぶ両親。
人ならざる者となった俺に恐るところじゃないの?
ていうかアメゾンには流石に困惑しているようだった。
家に帰ってその理由が解明される。
どうやら王家の盟友と言う称号はこの国を守る英雄の一族なのだ。
父や兄弟達も聖や神の適正を持っていてその中でも俺の適正は神ばかりで素晴らしいという事だった。
そして極め付けは創造神ミリアーヌの加護だ。
各成長率10倍。
これには流石の両親も度肝を抜かれたようだった。
「さてアークよ、家庭教師だが・・・魔法も剣も鍛えよう。当てはあるからしばらく待ってくれ。王都に戻次第連絡を取ってみよう」
「わかりました。よろしくお願い致します」
「それでだ、お前の将来に付いてだ。お前のそのステータスなら何にでもなれるぞ。王宮筆頭魔法士、同じく筆頭剣士にもな。三男のお前は将来貴族位から抜ける。好きな職業に付きなさい」
「俺は冒険者になりたいです」
「冒険者か・・・少し勿体ない気もするがSS級冒険者になれば国王ですら頭を下げると言われているからな。なるのなら頂点を目指せ。それが我一族の義務だ」
「はい。勿論なるからには頂点を目指します」
「勿論勉強も頑張りなさい。貴族の子供は8歳から王都の学園に入学することになる。入学前には陛下に謁見もする。目指すは首席だぞ」
「はい」
「試験で分からないことがあったら私が教えてあげるから大丈夫よ」
そんなことも出来てしまうがミリアーヌに問題が解けるのか不安だから勉強ちゃんとしよう。
「解けるわよー」
数日後、家庭教師がやってきた。
A級冒険者パーティー紅き咆哮の2人だった。
この国最強の冒険者が家庭教師って父はいくら支払ったのか・・・。
「よう坊主、俺は剣士ダニエだよろしく」
「ダニエ不敬ですよ。私は魔法使いのマーリラと申します。よろしくお願い致します」
「俺はアーグクリストフです。お2人が家庭教師だなんて光栄です。3年間よろしくお願い致します」
こうして優秀な家庭教師を得たアークは適正、耐性、スキルを使いこなして行った。
魔法には初級、中級、上級、特級、殲滅級とある。
上級は上位魔物を特級はドラゴンを、殲滅級は国を滅すると言われている。
大賢者スキルは殲滅級を放てる唯一無二のスキルである。
魔法適正は威力を高め消費MPを抑えたりする。
剣適正神は動作速度向上、強靭化、斬鉄等能力向上の他に手に持つ剣自体にも付与がされる。
英雄一族の中でも異質のステータスである俺の魔法や剣術にA級冒険者達は最初驚いたようだったがそれでも経験の差があり勝てる気がしなかった。
いくら適正や耐性、スキルが凄くても経験に勝る物はないのだ。
「坊主、なかなかやるな。だがまだまだだな。しかし3年間の間に俺たちを超えさせてやる。覚悟しろよ」
「はい。頑張ります」
「アーク何こいつ?アークに勝つとか殺す?」
女神よ頼むからやめてくれ・・・
俺はA級冒険者から全てを吸収する。
3年間みっちりと訓練を受け、その間にも父の承諾を得て領地外の魔物という魔物を殺めていった。
そして最後にはA級冒険者に土をつけるまでに成長したのだ。
「いやー負けた。アーク、強くなったな。だが鍛錬は怠るな。S級にはまだまだ届かないぞ。そして未だこの国から輩出出来ていないSS級は今のままでは不可能だろう・・・」
「届かせるためにはどうしたらいいでしょうか?」
「それなら学園を卒業したら俺のところへ来い。お前を強くしてくれる人の所へ案内しよう」
「ありがとうございます」
「アーク様、強くなるだけではダメですよ。こんなダメな男になってしまいます。勉強も頑張って下さい」
マーリラはダニエを指差して笑う。
「わかりました。沢山勉強します」
「お前達!俺はそこまでダメな男じゃないぞー」
最後の授業は笑いながら終わった。
「ダニエさん、マーリラさん本当にありがとうございました!」
手を振りながら帰っていく2人を見送ると街の鍛冶屋へと向かうのだった。