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第七十五話 ストーカー退治? 後編その5

それから一部始終を倉持が説明してくれた。

若干、ストーカーに話しかけられた瞬間、その背後から現れた彰人が「その子に手を出すな!」といった部分や、ストーカーと話し合う最中、倉持の方を見た彰人が白い歯を輝かせながらサムズアップし「お前の事は必ず守る。そう言っただろ?」と言った部分など、真実が脚色されてそうな個所は多々あったが、なんとなく流れは分かった。


「...ということなのです。つまりは彰人様、素敵。カッコいい。彰人様こそ現代に降臨されし英雄ということなのです。」


「うんうん、そうだね。...で、肝心のストーカーが倒れてる原因なんだけど...。」


先間は倉持に向かってうんうんと頷きながら棒読みで「エイユウスゴイ」と繰り返し言った後、最初から気になっていた部分を再度尋ねる。

しかし倉持は呆れたように肩を竦めると言った。


「だから言ったじゃないですか。じゃあそこだけ繰り返しますので、よく聞いてくださいよ?彰人様の威光の前に意識を保てなくなった暴漢は...。」


「いや!大丈夫!よくわかったから!」


先間は手をぶんぶんと振りながら倉持にストップをかける。

倉持はなぜか不服そうにえーっという顔をすると、「まあ、わかってくれたならいいです。」と言った。

先間は少しホッとすると、スススっと彰人に近づき小声で尋ねた。


「それで?実際、魔法とか使ってないよね?」


「まあ、使ったか使ってないかで言うと使ったな。...いやいや、待て。だがもちろん、倉持や七瀬にはバレておらんぞ?」


魔法を使ったと言った瞬間、ぎょっとした顔をする先間に対し、弁解するように彰人は言った。

そんな中、香織の声がかかる。


「とりあえず、もう夜も遅いし帰りたいんだけど...この人どうするのよ?警察呼ぶ?」


倉持の話に疲れた顔を見せる香織は、そう言いながらストーカーを見た。


「そうだよね。何事もなかったとはいえ、スタンガンまで持ってたわけだし...。」


葵も香織の言葉に頷いていたが、彰人が「いや。」と声を上げた。


「後は我に任せてくれ。」


「え?彰人?」


先間は驚いて彰人を見る。

それぞれも同様に驚いた顔で彰人を見た。


「しかし彰人様。これ以上彰人様のお手を煩わせるわけには...。」


「大丈夫だ。それほど重労働をするわけではない。」


「そうは言ってもね...この人だっていつ目を覚ますか分からないし危険じゃない?いくらあんたの”威光”に当てられてる、とはいってもね。」


その言葉に満足そうな顔をする倉持を見て、軽くため息をつきながら香織はストーカーを眺める。

しかし、彰人は「問題ない。」と言い切った。


「ちなみに、このスタンガンも我の方で処理しておく。」


「いやいや、処理って...あんた何者なのよ?」


ジロッと彰人を見た香織に、彰人は当たり前のように答える。


「ご存じのとおり、パン屋の息子だ。」


その言葉を聞いた香織は何かを言おうと口を開くが、少し逡巡したのちはーっと大きく息を吐き出すと言った。


「もう好きにしなさい。じゃあ私たちは帰るわ。」


そう言って隣にいる葵と倉持を呼ぶ。

葵は心配そうに彰人をチラチラと見るが、自信満々と言った様子の彰人の姿に(まあ...豊島君なら何とかしてそうな気がする。)と思った。

倉持は倉持で、はなから彰人の言葉を信じ切っている様子で、彰人の目の前まで来ると深々と頭を下げた。


「今回は私のお願いを来てくれてありがとうございました。助かりました。」


「別にこれくらい何ということはない。」


「彰人様はそう言われますが...いえ、ここで何かを言うのは無粋ですね。だとしたら、私ができることは一つ。」


そこまで言った倉持は今日一番の笑顔を見せた。

その笑顔を見た先間は思い出す。


(そう言えば美和ちゃんてモデルさんだった!)


そう思った先間は再び緊張しかけるが、倉持の次の言葉に固まった。


「必ずや彰人様の英雄譚を学校中に広めます!」


倉持はそう言って香織たちのもとに走っていく。

先間は脱力しながら思った。


(たとえモデルになろうが、芸能人になろうが...美和ちゃんは美和ちゃんか。)


「それで彰人、実際この後どうするのさ?」


先間は彰人を見ながらそう尋ねた。

彰人は自分の足元に転がるストーカーを見ると、話し始めた。


「まあ、先ほど倉持が述べたようにこの者の言動は少し過激だったのでな、今後同じことをされては叶わんと少し我の方で探ってみたのだ。」


「探ったって...何を?」


「この者の真意...というよりは、簡単に言うとストーカーへと駆り立てる原動力のようなものだ。」


「まあ、そんなものどうやって探ったのかはこの際置いておいて...何か分かったの?」


先間の問いに彰人は真面目な顔で頷くと、ストーカーを見る目に少し憐憫をたたえた。


「全ての原因がこの者にあるわけではない。根本的な原因は、この者が置かれている環境だ。」


「環境?...うーん、でもそれが分かったからといってどうしようもなくない?」


「ふっ、先間よ。我を甘く見るな。問題を引き起こした原因が分かっておいて、解決策が思い当たらないような無能ではないぞ。」


胸を張りながらそう言った彰人に、先間は(なんとなくそう言うと思ったけどね。)といった顔をしながら尋ねた


「彰人、不自然じゃない程度に頼むよ。」


「任せておけ。」


そう言った彰人はいまだに足元で眠るストーカーの頭付近に片手を近づけると、何かを詠唱した。

それと同時に彰人の手が淡く光り、その光を浴びたストーカーは、なぜだか少し心地よさそうな顔をした。


************


「ほら、起きて!学校に行く時間でしょ!」


俺はけたたましく響いた声に、目を覚ます。

そして布団の中でもぞもぞと体を動かしながら思った。


(この声は上の方の姉ちゃんか...そう言えば、昨日は下の姉ちゃんだったからな。)


「まだ起きそうにないですか?」


「あっごめんね。今起こしてたんだけど...ほら!幼なじみちゃんも来たよ!」


そう言って姉ちゃんはドアをどんどんとノックした。

それに加えて今聞こえてきた声は隣に住む幼なじみだ。

以前(本来は自分が毎日起こしたいけど、朝弟を起こすのは姉の仕事だからって言われちゃって。)と言っていたが、最近では何かと理由をつけ、毎日部屋の前まで来ている気がする。


「分かった分かったよ!起きるって!」


俺はドアに向かってそう叫ぶ。

するとドアの向こうから「あ、起きた。」という幼なじみの声と、「だからまだ入っちゃダメ!ほら、弟が起きてくるまで居間で待ってましょ。」という姉ちゃんの声が聞こえてきた。


「じゃあ、私たち下で待ってるから、早く着替えて降りてきなさいよ!」


「早くしないと学校遅れちゃうよ!...でも、2人そろって遅刻したら、より一層付き合ってるって周りから思われるからそれもいいかも...。」


そんなことを喋りながらトントンと階段を下りていく音を聞き、俺はやれやれと肩を竦めた。


(全く毎日何かとかまってくる2人の姉に、小さなころから遊んでいて今じゃ学校のアイドルと化してる幼なじみか...。俺は何もしてないってのに、まるでハーレムみたいだぜ。)


そんなことを考えながらベッドから体を起こす。

そしてうーんと伸びをした瞬間、地面に落ちている一冊の雑誌が目に入った。

俺は「何だこれ?」と独り言を呟きながら、その雑誌を手に取りパラパラとめくる。


(はあ、姉ちゃんの雑誌か。そう言えば昨日の夜、下の姉ちゃんが俺の部屋に遊びに来てたな。俺がベッドに潜りこんだ後も、何か隣でごそごそと動いてる気配があったけど、雑誌を読んでたのか...ん?)


俺はそんなことを思いながら雑誌を閉じようした瞬間、あるページが目につきた。

どうやらそのページは中高生のファッションが載っているページだったらしい。まだ幼さの残る顔をした中学生と高校生のモデルが、みんなそれぞれたどたどしいポーズで載っている。

俺は(最近の中学生や高校生ってお洒落だもんな)と思いながら、ざっとそのページに目を通す。そして、その中に1人飛び切り整った容姿を持つ女の子を発見した。


(この子だけレベルが違うな...名前は倉持美和...。)


そんな時、一階から声が響いた。


「こらー早く降りてきなさい!」


「まだ降りてこないのー?」


俺はその声にふっと笑う。


(もし俺が孤独だったら、こういう雑誌のモデルとかにも夢中になっていたのかもな。でも今は周りにいる女に付き合うだけで精いっぱいだ。)


そう思いながら俺は「今行くって!」と一階に叫び返し、雑誌をパタンと閉じたのだった。

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