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第七十一話 ストーカー退治? 後編

倉持から相談を受けた後、とりあえず昼間に付けられた記憶はないということだけを確認し、「詳しい話は放課後で。」と学校終わりに落ち合う約束をした。

そして現在待ち合わせ場所として指定してあったファミレスで1つの席に着いていた。


「わざわざ放課後にすみません。」


そう言って頭を下げる倉持に彰人は「別に良い。」と言って手を軽く振った。

頭を上げた倉持は感謝の籠った潤んだ瞳で彰人を見るが、そのあとすぐにジトッとした目をした。


「あのー、別にあなたたちは呼んでないんですが。」


そう言いながら彰人の周りに座る先間、香織、葵を見る。

その目には「彰人様との2人きりの時間が...」と書いてあった。

しかし、もちろんそんな意味をくみ取ることなどできない彰人はまあまあといった感じで倉持を制する。


「そう言うな。皆、お主の事を心配しておるのだ。」


「...ありがとうございます。」


倉持は一応といった様子でぺこっと頭を下げる。

香織と葵はそんな倉持に苦笑いをしながらも、「私たちも何か力になれることがあればと思って。」と言った。

そんな2人を見習って先間も「僕も。」と言ったが、その心は違った。


(正直彰人に相談した時点でこの問題は解決するとは思ってるけど...逆に彰人が何をするかの方が心配なんだよね...。)


そう、先間はどちらかというと彰人の言動を見守るために同席をしていた。

今までの経験上、魔法が使えることは隠している彰人は人前で無茶はしない。しかし時々友達や知り合いの事となるとやり過ぎる節があるのだ。

今回に限ってはそのストーカーがまだどんな相手か分からないが、警戒をしておくに越したことはない。

ある日急に倉持のストーカーが空を飛んでからでは遅いのだ。

しかし先間のそんな不安など露ほども知らない倉持は、それぞれの反応に申し訳なさげにすると今度はもう少し深く頭を下げた。


「それで、お主が付けられているのはいつからなのだ?」


「あ、えーと...視線を感じ始めたのは数日前からです。」


「いつも夜に感じるのだな?」


「そうです。最近雑誌の撮影で時々学校を早退してて、その撮影が終わった後、夜に電車で帰ってくることが多いんですが、その時の駅前ではかならず視線を感じます。」


「ふむ...実際に付けている相手の姿を見たことはあるのか?」


「それがどうも巧妙に隠れているのか今まで見たことはなくて...でも、本当に視線は感じるんです!」


倉持は姿を見たことがないと言う自分の発言で、ストーカー被害の信ぴょう性が薄れたことを気にして、慌てて否定をした。

しかし彰人はふっと軽く笑うと「そもそもお主の発言を疑ってはおらぬ。大丈夫だ。」と言った。

その言葉に倉持の顔はポッと赤く染まる。


「でも今まで姿を見せてなかったとしても、早めに手は打っておいた方がいいわよ。」


それまでのやり取りをそわそわしながら聞いていた正義感の強い香織は、身を乗り出しながら言った。


「現にストーカーの中には、たちの悪い奴もいるって言うし!」


「そうだよね。美和ちゃんまだ中学生だし、相手がいつ暴走しないか心配だよね...。」


香織の発言に乗っかるようにして、葵も心配そうな顔でそう呟いた。

それを聞いた倉持は「そうですね。」と言いながら頷いた。しかしそのあとすぐに困ったように眉を下げると、「でも...」と続けた。


「こうして話を聞いてもらっておいて何なんですが、もし本当におかしな人にストーカーをされているのであれば、それこそ警察とかに言った方がいいですよね...?」


ストーカーに付けられているかもしれないと感じた際、最初に相談する相手として彰人が思い浮かんだ倉持は、今日の通学路で見かけた彰人に思わず声をかけてしまった。

しかし、今話している中で改めて思うとすごくリスクのあるお願いをしようとしているのでは、ということに思い当たった倉持はおずおずと警察への相談を切り出した。

しかしそれを却下したのは先間だった。


「それは難しいと思うよ。」


先間はこちらを見た倉持の目に少しドキドキとしながらも(相手をモデルだと思うな...ただの美和ちゃんだ。彰人にいつもぴったりくっついていた、ただの女子中学生なんだ。)と自分に言い聞かせることで気持ちを落ち着かせた。


「警察って何か事件が起こらないと本格的に動いてくれないっていうし、姿も見たことがないんじゃおそらくやってくれることも限られてくると思うんだよね。」


しかしそんな先間の言葉に倉持は被せるようにして言った。


「でも!だからってやっぱり彰人様に何かをお願いするのは危険な気がします!それこそもし2人きりで守ってもらっているときに、ストーカーに彰人様の事をか...かれ...。」


倉持は彰人の方を見ながら何度か「かれ」という言葉を言った。

しかし”彼氏”というキーワードがどうしても口にできなかった倉持は、大きく息を吸い言い直した。


「恐れ多いですけど、もし恋人だなんて思われてしまったら、彰人様に被害が及ぶ可能性も...。」


「倉持よ。」


しかしそんな倉持の言葉を彰人は途中で遮った。

そして一口飲み物を飲むと、倉持を正面から見据えて口を開いた。


「我の事は心配をするな。このことを相談した時点で、お主はどっしりと構えていればよい。あとは我に任せておけ。」


(やっぱりそうなるよね。これ彰人、気合入ってるやつだ。)


先間は自信満々にそう言いきった彰人の言葉に隣で苦笑した。

これで倉持側はなにも問題はない。後はストーカーが空を飛ばないよう、先間が彰人を見張っておくだけだ。

そして倉持はそんな彰人の言葉に最初少しびっくりした顔をしていた。

しかしその言葉が徐々に体に染み込んでいくとともに目がハートになり、最終的には「分かりました。」と頷いた。

ちなみに隣からそのやり取りを見ていた葵も、「豊島君、カッコいい...。」と小声で呟きながら目をハートにしていた。


「あんた...任せろっていうけど、どうするのよ。ホントに気をつけないと相手は大人かもしれないんだから...。」


「まあまあ、朝霧さん。大丈夫だよ。」


根拠のない彰人の発言に不安になる香織だったが、先間がまあまあと宥めた。

しかしそうは言ってもやはり不安な香織は「そうは言うけど...」と続けて何かを言いかけるが、すでに『このストーカー問題をどう解決するか』に頭が切り替わている彰人の耳に、その言葉は入ってきていないようだった。


「ではどのようにして倉持をつけている奴を見つけるかだが...やはり一番は視線を感じる状況を再現することだな。」


「再現ですか...。」


そう呟いた倉持の言葉に、彰人は大きく頷いた。


「そうだ。理想的なのは、今までで一番視線を感じるというその撮影終わりの駅前の状況を作り出せればベストなのだが。」


「あ、それなら一応問題ないです。」


どのようにして同じ状況を作り出そうかと思っていた彰人だったが、倉持から思わぬ返答が返ってきた。

彰人は「む?」と言い、倉持を見る。倉持は軽く頷きながら言った。


「明日も撮影です。それで夜に電車で帰ってきます。」


それを聞いた彰人はあまりのタイミングの良さに少し驚いた顔をしたが、すぐ後にニヤリと笑って言った。


「では明日決行だ。」


少し緊張した感じで「分かりました。」という倉持と、「私たちも行くわ。」と言う香織たち。

そして相変わらず不敵な笑みを浮かべる彰人。

その笑顔を見た先間は軽くため息をつきながら思った。


(ストーカーの撃退の仕方...頼むから普通の方法にしてよ。)

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