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第六十九話 ストーカー退治? 前編

その日の夜、先間はいつものように寝る前にスマホでネットサーフィンをしていた。

ベッドに寝っ転がったまま、いくつかのネットニュースの記事を読み漁る。しかしこの行為は気をつけなければ無限に時間を消費してしまうことも知っている先間は、(あと次のページだけ見たら寝ようかな)と思いスマホの画面をタップした。

そして画面が切り替わった時だった。


(ん?)


先間はある記事が目に留まり、何の気なしに開いてみた。

そしてその記事の中に貼り付けてあった画像を開いた瞬間、眠気が吹き飛んだ。


(こ、これ!彰人に言わないと!)


そう思った先間は、すでに少し前に思っていた次のページを見たら寝ようという考えは忘れていた。

そのため素早くスマホを操作すると検索サイトを開き、さらなる情報収集に勤しむのだった。


************


「彰人!」


「おぉ、先間か、おはよう...む?どうしたのだその隈は。」


先間に呼ばれて振り向いた彰人は、先間の目の下にはっきりと表れている隈を見てビックリした。

若干足元もおぼつかないような動きではあったが、先間は「なんでもないよ。」と首を振った。


「そんあことより、重大ニュースがあるよ。」


「重大ニュース?」


自分の寝不足を一蹴し言った言葉に、彰人は首をかしげて聞き返す。

先間は「彰人、驚くよー。」と言いながら、少しだけもったいぶる様な動作でポッケからスマホを取り出すと、彰人の目の前に突き付けてこう言った。


「見てこれ!美和ちゃん!」


彰人はそのスマホの画面をちらっと見る。

そこには【最近注目の読者モデル】と銘打って、何人かの女性が並んでいる画像が表示されていた。

その中の中央、おそらく一番注目度が高いであろう位置にいるのは、確かにあの彰人のストーカー...ではなく、倉持美和だった。

先間はスマホの画面を見たままの彰人にうんうんと頷きながら語りかける。


「わかる、わかるよ彰人。びっくりするよね。まさかあれだけ身近にいた子がいつの間にかモデルデビュー...いや、それどころかその中でも売れっ子モデルに片足を突っ込んでいるなんて。でもさ、大丈夫。モデルになったからって美和ちゃんが変わったわけじゃないんだから。少し遠くに行ったような気がするかもしれないけど...。」


「いや、倉持がモデルになったのは知っておったが。」


「っなんで!?」


彰人がさらっと告げた言葉に、先間は目をひん剥いて驚いた。

しかし彰人はそんな先間の様子に肩を竦めた。


「スカウトされたその日に街中を歩いている我を見つけ、報告をしてきたのだ。」


「その日に!?ちなみにいつ頃?」


「そうだな...もう半月くらい前になるか。」


彰人が思い出すように言い、先間は呆然とした様子で「半月...結構前だ...。」と呟いた。

そして少し面白くなさそうに口をとがらせると言った。


「あーあ、せっかく彰人を驚かせようと思ったのに。」


「まあなんだ...倉持の事で我を驚かせるのは無理だと思うぞ。あやつはことあるごとに我を捕まえて、近況を報告してくるからな。...というかなぜあんなに我の居場所が分かるのだ?」


最後の方は小声で呟くようではあったが、彰人のそんな言葉を聞き、先間は(せっかく夜遅くまで情報収集をしたのに。)と思いながらちぇっと地面を蹴った。

そんな時、後ろから別の声が聞こえてきた。


「あんた達こんなところで何やってんのよ。早く歩かなきゃ遅刻するわよ。」


突如聞こえた声に彰人と先間は振り向いた。

そこには朝から元気そうな香織と、その横には「おはよー。」と言いながらひらひらと手を振る葵の姿があった。

彰人と先間はそろって「おはよう。」と挨拶をした。


「ほら、今日は迷子の子供もいないでしょ。だから遅刻は駄目よ。」


いつかの日に彰人と先間が遅刻した時の理由を持ち出しながら香織は言った。

当時は彰人に対する香織の目がいように厳しく、その理由も全く信じてもらえなかった。しかし先間が言った「彰人に全然子供が懐かなくて...」という言葉を聞いた瞬間、「なんか一気に信ぴょう性が出てきたわね。」と言ってその日の言及が終わったのだった。

彰人は今でもそのタイミングで香織が納得したことだけは、腑に落ちていなかった。


「まあ、私たちは先に行くわ。葵行こ!」


「うん。じゃあ、また学校でね。」


そう告げると香織と葵は彰人たちの隣を通り過ぎようとした。

しかしその瞬間、先間は大きな声で「あ!」と言った。

その声に驚き、香織はぎょっとしたように先間を見た。


「な、なによ。びっくりしたわね。」


「朝霧さんと七瀬さん。実は重大なニュースがあるんだよね。」


「「重大なニュース?」」


香織と葵はそろって首を傾げた。

先間は気を取り直したようにコホンと一つ咳ばらいをすると、「びっくりすると思うよ。」と言いながらスマホを香織たちの前に出した。

香織と葵はその画面をのぞき込む。


「ね?まさか美和ちゃんが...。」


「へー。美和ちゃんやるわね。」


「すごいね。少し前にモデルデビューし始めたばかりなのに、もうこんな特集に抜擢されてる。」


「え?」


香織と葵から返ってきた予想外の反応に先間は目が点になった。

その間も香織と葵は「まあこれも時間の問題だったわね。」や「テレビとかにも出そうじゃない?」などと話し合っている。

先間はそんな2人を見ると、「ちょっと待って!」と言った。


「もしかして...2人とも美和ちゃんがモデルやってたこと知ってたの?」


「知ってたわ。」


「知ってたよ。」


先間の問いを聞いた2人からは、当然と言った様子で返事が返ってきた。

先間はショックを受けたような顔になり「え?もしかして知らなかったのって...僕だけ?僕が夜遅くまでかけて調べた時間は...。」と呟いた。

そんな中、彰人は「まあ、倉持もたまたま言うタイミングを逃したのだろう。そんなことより...。」と言いながら学校のある方向をちらっと見た。


「先間よ。そろそろ急がねば本当に遅刻になってしまうぞ。」


彰人はそう言って先に歩き始めた。それを聞いた香織と葵も、「もうこんな時間!」と慌てたような素振りを見せる。


(たまたまね...。まあ今回はそういうことにしとこ。)


そう思い彰人の後ろについて歩き始めた先間だったが、目の前の彰人が急に立ち止まった。


「危な!どうしたの急に立ち止まって?」


彰人の背中に追突しかけた先間はそう尋ねる。

しかし彰人は返事は返さないまま、隣の路地にすっと顔を向けた。

先間もつられてそちらの報告を見ると、そこには彰人たちに向かってズンズンと近づいてくる人影があった。

そしてその人は彰人の目の前で立ち止まると、彰人の顔だけを見て言った。


「彰人様、おはようございます。」


「あぁおはよう。倉持。」


そうそこにいたのは、先ほどまで話題の中心にいた倉持その人だった。


(まさかの本人登場!)


先間は驚きながらも「おはよう。」と言いかけたが、うまく声が出なかった。

あれなんで?と考える先間だったが、すぐに気づいた。先間は目の前の倉持に緊張していた。

前回あった時は美人な女子中学生だったが、今では売れっ子の読者モデルだ。

先ほど彰人に言っていた言葉が見事なブーメランとなって先間自身に突き刺さる。先間は意外とミーハーだった。


「美和ちゃんじゃない。おはよう。」


「おはよー。」


香織と葵も倉持に挨拶をした。

倉持はちらっとそちらを見ると、「おはようございます。」と言い、すぐに彰人に向かい合った。


「相変わらず豊島がいる時は、私たちへの反応が雑ね。」


香織が呆れたようにそうぼやき、葵は少し困ったように笑った。

彰人は目の前の倉持を見ながら言う。


「久しぶりではあるが、倉持よ。学校はどうした?それに我らもそろそろ行かなければ遅刻してしまうのだが。」


「えぇそうですよね...わかってます...。」


彰人の言葉に倉持は小さく頷く。

しかしそう言いつつも何かを言い淀んでいるようだった。

その様子を見た彰人は若干の違和感を覚える。いつもならば、彰人の腕にくっ付きながら色々と喋っている倉持が妙におとなしい。

彰人は「ふむ。」と言いながら顎を触ると倉持の顔を見ながら言った。


「どうした?何か相談でもあるのか?」


それを聞いた倉持はびっくりしたような顔で彰人を見上げると、すぐにまた俯いた。

彰人はそんな倉持の姿をじっと見つめ、言葉を促した。

倉持は足元を見ながら切り出した。


「そう...ですね。相談というか、こんなこと彰人様にお願いするのもどうかと思うんですけど。...実は...。」


倉持はそこまで言うと満を持したように顔を上げ、言った。


「最近、誰かに付けられている気がするんです。」

ちなみにこの話は時系列的に第六十一話~第六十三話の「漫画の恨みは漫画で晴らす」よりも前の話になります。

そして香織と葵が倉持からモデルになるという話を聞いたのは、第四十七話~第五十話の「修羅場は気づけばそこにある」と同日です。


つまりそれより以前にはすでに彰人は知ってたということですね。

一人だけ知らなかった先間、かわいそう。

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