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第三話 退屈な入学式

祭壇の上で、頭に毛が一本もない男性が演説をしている。先ほど、校長先生と呼ばれた男性だ。

確かこの学校の一番の権力者に当たるはずの役職だが、全く覇気がない。

まず人に言葉を伝えようとする気概が感じられない。事前に暗記してきた文章をつらつらと述べているだけのように聞こえる。いや、事実そうなのかもしれない。


今彰人は体育館の中で入学式と呼ばれる儀式に参加していた。

今年高校に入学する生徒たちを集めて、入学を祝う儀式だ。

中身のない頭の禿げた校長は話はまだ続きそうだ。


(無駄な時間の消費だな)


彰人は話を聞くことを放棄し、少しだけ頭を動かし周りを見渡した。

あまり生徒数の多くない学校の様だ。おそらく今年入学している生徒の数は40人ほど。男女比は半々といったところだ。

みんな緊張をしているようで、顔が固くなっている。


(この者たちが我の...いや、俺の同級生か)


これだけの人がいてみんな魔法が使えないことに違和感を覚える。

不便のように思えるが、それが当たり前の世界だということは転移前に勉強済みだ。


************


約一か月前、元の世界で日本への転移が命じられた後、その地球と日本のことについて勉強をした。

勉強するために使用した道具は、彰人の転移先が決まった後、オーブリーがおもむろに取り出してきた、一冊の本だった。


「転移先が決定した後、その世界の情報が学べるようになる本だ。名は『シカイの書』という。頭の中で移転先の世界、今回だと地球や日本の事だな。その世界で知りたいことを思い浮かべながら本を開くと、答えが書いてある。」


説明しながら、オーブリーが本を手渡してきた。

一見するとこちらも古汚い本に見えるが、手に持つとそのすさまじい魔力が伝わってくる。

転移先を決めた『ダーツの樽』と同じく、この世界に二つとない国宝級のマジックアイテムなのだろう。


アンガスは少し考えを巡らせた後、本を開いた。

ページに目を通し、ふむふむと呟いたのち、本を閉じる。

気になったオーブリーは尋ねた。


「何を調べたんだ?」


「日本という国に住む種族の容姿です。どうやらこちらの世界でいう人族と似た姿を持つ種族しか住んでいないようです。」


「そうか。でもなぜ最初にそんなことを...」


「容姿の美的感覚がずれていたら大変ではないですか。ともに3年間を過ごす相手は、美しいほうがいいでしょう。」


当たり前でしょうと言いたげなアンガスの顔を見て、オーブリーはこっそりとため息をついた。


(本当に多才な息子だとは思うが...いかんせんこの美に対する認識だけは改めてもらわねばなるまい)


そんなことを思われているとは露程も知らないアンガスは「むっ。我ということが...日本で一番の美女の姿は、と...ほう!素晴らしい美しさ!このマルカタナ国でもそうはいないぞ!」などと本を見ながら興奮している。

オーブリーは、先ほどよりも大きなため息をついた。


それからアンガスは毎日勉強尽くめの毎日を送った。

なんせ3年間を過ごす世界のことを、一か月で把握しなければならなかったので、一日机に向かい本をめくりながら地球と日本についての知識を学んだ。


まず、驚いたのは魔法が存在していないということだった。

今まで生きてきた世界で当たり前の常識だったことが、存在すらしない世界。

少し不安にはなったが、さらに勉強を進めていく中で、代わりに科学が発展していることで、魔法の代用のようなことをできることを知った。


また魔法がないことの影響で、魔族や魔物が存在していないことも驚いた。

日本だけではなく、地球に住む全員が人族らしい。

魔法の使えない人族のみが住む世界。

常に魔物の脅威があり、魔法を駆使しながら魔族と事を構えることが当たり前な世界で生きてきたアンガスンからすると、限りなく平和な世界だった。


それと、もちろん日本では使用する言語が異なるとのことだった。

実際に聞いたり喋ったりする時には、自動的に転移先の世界の言語に翻訳されるらしく支障はないが、名前だけはどうしても異世界で使用できる名を決める必要があった。

そしてその名前は代々国王が決める習わしらしい。


オーブリーはうんうんと考えたのち、「ではアンガスよ、お前は二ホンで『豊島彰人とよしまあきと』と名乗れ。」と言った。

アンガスは理由を聞こうとして辞めた。どうせ適当だろうと思ったからだった。


他にも異世界の高校で3年間を過ごすという非常に自由度の高い試練の中にも、ルールは存在していた。

大きくは3つ。


1)異世界の原住民に正体がばれてはいけない

2)異世界先の環境に適応した生活を送らなければならない

3)3年後元の世界に返ってきた後、異世界は問題なく存続ができないとならない


1)に関しては特に疑問はない。聞いたままだ。

2)は少し曖昧だ。アンガスもいくつかオーブリーに質問をしたが、とにかく移転先の世界の常識に従った生活を送れということらしい。

アンガスは「では地球に存在していない魔法は使ってはならないのですか?」と質問をしたが、オーブリーから返ってきたのは「魔法を使って行う行為が適応していないならな」と歯切れの悪い返答だった。

3)については、極論を言うと世界を破滅させたり、あまりにも自身の影響力が強すぎてその世界の常識がねじ曲がってような言動は禁止ということだった。アンガスもそもそもそんなことを起こす気はさらさらないので、これは実質無いのと同じだった。


(つまり今回の場合、魔法を使わず正体もばれないまま3年間を過ごすことが最低限のルール。いくらなんでもぬる過ぎる。この試練の目的は何なのだ。)


アンガスは同じ問答を日々繰り返したが、結局その答えは転移当日まで出ることはなかった。


************


彰人の転移前の回想も終わりかけたと同時に、入学式も終わりを迎えたようだった。

どうやら次は入学生全員で教室に移動するらしい。

そこで入学生全員の顔合わせをするのだろう。


(おそらく自己紹介もあるだろう。40人の前で喋るのはこの世界にきて初めてだな。ミスの無いようにしなければ。)


彰人は今一度決意を固め、立ち上がった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] とりあえず第3話まで拝見しましたが、化学→科学なのだろうと思います。
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