↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生龍も楽じゃない!  作者: PeaXe
第三章 ダンジョンコア
PR
53/72

52 そして通常運転へ

 今回やや短めです。

 いつものやらかしが含まれます。


 天を突くほど巨大な、漆黒の結晶。

 一同は世界会議の会場に突き刺さったそれを、ただただ見上げていた。


「でっかい」

「おっきい」


 ナインとルルリエリル……ルルは、ポカーンと口を閉じもせずに呟く。

 結晶が現れ、会場の建物に突き刺さってから10分と少し。


 ナインとルルは、仲良く足跡のベンチに座っていた。

 見た目10歳前後の2人には少し大きめのベンチであるため、2人とも足が地面に付いていない。


 結晶を作り出した張本人であるルルは、これからどうしよう、と考える気力さえなくなっていた。考える気が無いのではなく、魔力を著しく消耗した故に思考力が低下したからだ。

 もっとも、この後にやる事は決めていたので、思考力を手放したとも言える。


「行かないの?」


 ナインは、ルルの擬音語がたっぷり含まれた意味不明な言語を理解していた。そのためそう尋ねる。

 ルルは大きく頬を膨らませた。


「行かないんじゃなくて、行けないの。私、歩けないもの」

「歩けないって?」

「歩けないは歩けない、よ。足が動かないの。物心ついた時からね」

「あ、だからあの雲か」

「そ、だからあの雲よ」


 移動する際にわざわざ出していた黒い雲。

 あれは足が動かせないルルが、移動するために作り出した移動手段だったのだ。


 そして今、それを作り出す魔力は無い。


「近くに行けば良いのか」

「ええ。私が障れるくらいにね」

「じゃ、運ぶか」

「いいの?」

「ああ。あの感じだと、地下まで影響ありそうだから、見に行きたい。まぁ、ロキが何も言わない時点で、死傷者はゼロだろうが」

『はい。ダンジョンの一部が崩壊しましたが、それ以外に被害は出ていません』


 相も変わらず無表情なロキが、ユウトへ静かに事後報告を済ませる。


「で、具体的にはどうするの?」

「うんとね。結晶の中の魔力を、ぜーんぶ私の中に移す」

「ふむふむ、そこから?」


 ナインは何気無く尋ねる。

 魔力の結晶から、溜め込まれた魔力をを吸収するのは昔からある技術だ。ただ、結晶の大きさは尋常ではなく、たとえルルの今持つ魔力が少なくなっていたとしても、結晶の魔力を全て吸収できないはずだ。

 その対策があるのかどうか……。


 ルルはナインの問いに微笑んで。



「え?」



 首を、傾げた。







 漆黒の結晶は、特に闇の魔力を漏らす事も無くそこにそびえていた。

 何の因果か、或いは必然か。


 花の舞う会議場を、完全に潰す形で、結晶は落ちていた。


 壁の破片やガラスの欠片が足元に散らばっており、素足は厳禁だ。

 落ちた衝撃で崩壊しなかった場所も、床が斜めに傾いていたり、固定されていない物が落ちて壊れたりしている。


 ちょうど壁が完全に壊れて結晶が剥き出しになり、空も見えるようになっていた場所を見つけ、そこまで進む。そうして、ルルを抱えながら、ユウトは危険が無いかを確かめながら慎重に近付いた。


「じゃー、とりあえず始めるねー」


 ぺとり、と。ひんやり冷たい結晶に、ルルの真っ白な手が触れる。

 その言動はとても能天気で、実に緊張感が無い。


「うん。私もがんばるよ!」


 そんなルルの横で、ナインはルルの小さな手を取り、優しく握りこむ。


「こっちゃこ~い」


 またもや詠唱とは思えない言葉を、結晶に触れた手へかける。


 途端。


 ふわりと黒い靄のようなものが、ルルの手を介して、ルルの中江と入っていく。


 そしてナインは、ルルの中に流れ込んでいた大量の闇の魔力を、自分の中へと吸い出す。と同時に、魔力の属性が自分の魔力と同じ純粋な光へと変換されて行った。


 これが、ナイン達の作戦。

 あらかじめ、ロキに魔力の属性を変換する魔法を教えてもらい、それを使ってナインの魔力を回復してしまおうという作戦である。


 ただ、いくらナインでも変換した魔力の量が量のため、結晶の中へと送り返す。

 闇の魔力を失い、徐々に透明度を高めていた結晶が、今度は白く輝きだしていた。


「何か、デタラメが起きている事は理解できました」

「奇遇ですね。俺もです」


 付いて来ていたサゼンタの、全てを悟ったような表情に、ユウトはあっけらかんと答える。

 やがて、溜め込まれた光の魔力が、眩しいほどに輝きだす。


『―― 吸収できる闇の魔力の消滅を確認』

「ルルちゃんストップ!」

「聞こえたもーん! ありがとね、ナイン」


 ふわりと微笑んで、ルルは再び真っ黒な雲を生み出し、そちらへ移動した。

 というか、ユウトが乗せた。


「さて、上はもう大丈夫、なのかな」

「は、はい。おそらくは。……このような事態が初めてなので、経過観察は必要ですが、毎回これ以上の事は起きていない、はずです」

「それなら良かった。じゃあ、すぐ地下に行かないとね!」


 全快になったナインが、大きく伸びをしながらニッコリと微笑む。

 ようやくダンジョン攻略に戻れるのだ。今にも走り出しそうな雰囲気に、ユウトはやや疲れた顔で、目を逸らす。肉体的にも魔力的にも疲れていないのに、非常に疲れを感じたのだ。


 すると、ちょんちょん、とロキがナインの肩をつつく。

 珍しい事に、すぐさまナインはロキに振り向いた。


『報告します』

「ん、どうしたの、ロキ?」

『地下ダンジョンの属性変化を確認。闇の属性と光の属性が混ざり、ナビスキル:ライトスプラウトを取り込んで形状変化を成し遂げています』

「……うん? どういうこと?」

『つまり、あの巨大な結晶が、地下のダンジョンのコアに接続され、ナインが結晶の属性を変更した際コアにも光の属性が注ぎ込まれ、ダンジョンそのものの属性も追加されたのです』

「えー、と。光の属性が増えると、どうなるの?」

『簡単に説明すると、暗闇が広がっていた空間に、デフォルトで明かりが灯ります。また、出現モンスターに大幅な変化が起こります』


 そこで一呼吸置き、心なしか、視線が険しくなる。


『また、最大の問題が1つ』

「な、何?」

『ダンジョンの構造が変更されたため、出口のない隔離空間が発生。孤立した者が出現しました』

「……何ですとぉー?!」

「だ、誰だ?! どこの代表だ?!」



『個体名:リミです』



「「「あ、なら大丈夫だわ」」」



「「?!」」


 ナイン、ユウト、シュンの明らかにホッとした様子に、ルル、サゼンタが驚きに表情を凍らせる。


 リミ。

 ナインの仲間だよね?

 ナインのお世話係的な人だよね?


 と。


 彼女達が驚く横で、あはは、うふふ、と3人は笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。