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転生龍も楽じゃない!  作者: PeaXe
第二章 何か違う。という話
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23/72

22 花火の前に

 世の中色んな生物がいるよね。

 って話。


 龍祭り2日目。


 ナインの鶴の一声により、龍祭りは5日間に渡って開催される事となっている。

 飲み物屋台は連日の熱気にてんやわんやする事が予想できたため、予想来場者数を大きく上回る数のドリンクが用意されていた。


 また、転移魔法などという便利な、しかし使える者の限られる魔法を使えば。どれだけ遠い外国の商人でも、5日間を無事に乗り切れるほどの商品は補充できる。


 魔法があればガス代要らず。

 魔法があれば電気代要らず。

 場所代は格安で、様々な国からの来場者が後を絶たない……。


 また、よからぬことを企んでいれば、そもそも国に入れない。ドラッグやテロなど以っての外だ。完璧な安全性の保証がされた楽しいお祭りで、一押しの新商品を店頭に並べ、客の目を引こう、と考える商人達は大勢いた。


 もっとも、ナインが持ち込んだ日本夏祭り風の模擬店は、それ以上に目を引いていたが。


「当たったのです!」

「わ、わ。凄いよクロウ。かわいいぬいぐるみ!」

「みゅっ」


 ちなみに今は、高度な魔力コントロールと緻密な魔法操作が要求される、魔法的当てを遊んでいる。


 昨夜、無断で抜け出した上、勝手にペットを持ち帰ってきたナイン。こっぴどく叱られた彼女は、しかし今夜も抜け出そうとしていた。

 そこを護衛2人に見つかってしまったのは、まぁ必然と言わざるを得ない。


 ただこの2人。ユウトとシュンは、体躯の大きさはナインより優れていても、知略においてナインに及ばなかった。

 今現在、ナインについているのは、クロウ、ユウト、シュン、リミの4名のみ。それ以外は全員、ナインに撒かれてしまったのだ。


 彼等がナインに追いつけたのは、ひとえに、ユウトがナインの移動基準を理解しつくしていたからに他ならない。

 元クラスメイトは伊達ではないのである。


「それで、次はどこか、ユウト殿」

「何故俺に聞く……」

「付いて行こうとすれば、ナイン様は消えてしまうからな」


 随分と疲れた様子のユウトに、同じく疲労感の拭えない表情のシュン。彼等は絶賛、子供から目の離せない父親の気分満喫中。

 ナインは早々に、クロウとリミを懐柔してしまったのだ。


 少しでも目を離せば、その隙に逃げてしまう事必至である。


「金魚すくい」

「何だ、それは?」

「小さな魚を、こう、すくう遊びだ。破れやすい紙で出来た道具で、こう、ひょいっと」


 ユウトがジェスチャーで説明すると、シュンはあぁ、と呟いて理解を示す。

 すると。


「次あれ! 何か金魚っぽいのがたくさんいるところ!」


 魔法的当てを満喫したらしいナインが、ちょっと遠くに見えた金魚(に近い肉食魚)すくいに目をつけたところであった。


「お見事」

「どうも」


 ユウトとシュンは、お互いに肩を叩き合う。

 ナインの知らない所で、着実に絆を育てるユウトとシュンであった。



「カラフルですね……」

「カラフルなのです……」

「みゅう」


 模擬店の中では、赤に黄色に青と、実に彩り豊かな魚が泳いでいる。

 それを見たリミとクロウは、キラキラと目を輝かせた。


 また、何とか飼う事を許してもらったミュリフューイの子だが、ナインにミュンと名付けられた。隅々までお手入れされ、元々ふわふわのもふもふのサラサラだった毛並みが更に良くなっている。つやつや、良い香りなどが加えられたのだ。

 汚れを落とすとあら不思議、体重が驚くほど軽くなった。たとえ愚者の腕輪を身に着けたナインでも、軽々と肩に乗せられるだろう。


 ミュンもまた、濃い金色と紅色の瞳をキラッキラに輝かせていた。また好奇心旺盛で、ボムフィッシュを捕まえようと水槽へ手を伸ばし、リミに止められている。

 ちなみに、ミュンは今、クロウの頭の上にお腹をくっつけていた。


「これは、魔法なのです?」

「ええ、そうですよ、クロウ様」


 ガラスなど張られていないが、まるで分厚い氷に見えるように水が張られ、その中を金魚が泳いでいるのだ。それは宙を舞うかのように、金魚達が泳いでいる。

 水属性の結界を応用した、直接魚に触れる事も出来る水槽だ。中に閉じ込めた物を窒息死させるという、普段の使われ方からは創造できないほど美しい光景が広がっている。


 ちなみに、この世界に金魚という生物はいない。

 いるのは、3秒ほど空気に触れるだけで爆発する「ボムフィッシュ」というモンスター。別名初見殺し、爆魚、女神の涙(爆)とも呼ばれる、手の平サイズの魚である。


 リミ達の言うとおり、色も柄も、ついでに形もデメキン、ランチュウ、ベールテールなど、まちまちだ。同じ柄がいないのはともかく、形まで違うのに性質はほぼ全く同じ。爆発する以外は、本当に金魚と酷似した生物である。

 夜空に飛び上がって爆発したそれは、完全に、花火であった。


「19時には夜空に放り投げて、爆発させるんでさぁ」


 ねずみ顔のヒュミアが言うには、氷に閉じ込めたボムフィッシュを空の至る所に配置し、任意のタイミングで爆発するよう仕組むという。

 ボムフィッシュの柄と同じ形の花火が打ちあがるため、しばらくは日本で見たような、美しい物は見られない。火薬に関する知識が不足しているためだ。


 しかしオウレンディアス曰く、線香花火に似たものが、別の月にはあるという。そのため、いずれ火薬による打ち上げ花火を作りたい。

 そう決意するナインだが、隣では別のことに気を取られる者がいた。


 クロウである。


「爆発……死んじゃうのです?」

「ええ、そうですね。まあ、そもそも寿命が短く、繁殖力が強く、彼等自体は肉食で」

「どう危険かって言うと、あっちで言うピラニアみたいな? 爆発する分余計に危険だね」

「なのです?!」

「害獣、モンスターの類です。手を出さなければ害は無いのですが、だからと言ってそのままにしておくと増えて大変な事に……。こうした催し物に使えると分かれば、ボムフィッシュを減らす活動も活発になってくれるでしょう」


 ナインとリミの説明が付く事によって、クロウの憂いは晴れた。

 金魚はかわいらしく、弱々しいが、こちらの金魚はかなり逞しい。その上害獣認定されているため、犬や猫のようなペットとしての見方は出来なくなった。

 下手すると爆発するような魚を、かわいそうだとは思えなくなった。


 爆弾を愛でるのは、一部の危険人物か、警察によくいる爆弾解除の達人くらいである。


「今日も数匹増えたようですし、今夜はきれいな花火が見られそうですね」

「花火……! 楽しみだなぁ! ね、今何時?」

『現在の時刻はPM06:32です』

「あと30分もあるぅ……」


 1ヶ月ほど延期になった祭りの事を考えれば、あと30分未満は非常に短い。

 とはいえ、ワクワクしている分余慶に長く感じるのは常だ。


「お姉ちゃん、30分の間に、もう少し屋台を見て回るのです!」

「そうですね。あ、おばけ屋敷はいかがです?」

「だ、ダメなのです!」


 クロウは顔を引き攣らせ、飛び上がって否定する。

 彼は、おばけの類が苦手なのだ。


「あら、クロウ様はおばけが苦手ですか? 本物の幽霊やゴーストの類は、使っていないはずですが」

「あぅあぅ」


 リミの発言は、暗にこの世には幽霊もゴーストと呼ばれるモンスターも存在すると言っているようなものである。


 実際にいるのだからしょうがない。

 ナイン達が元いた世界より、ずっと身近にいるのだ。

 墓場はもちろん、望めば死者と対話できるマジックアイテムも手に入る。


 とはいえ、それらが苦手な人間も、元いた世界より随分と多いのだが。


 むしろ多すぎるくらいなのだが。


「ちなみに、リミは?」

「私ですか? そうですね、龍人になってからは魔法が使えるようになったので、いずれは挑戦してみたいです。元から存在は感じ取れていましたし」


 感覚の鋭いリミは、小さい頃から「そういうもの」が見えていた。本来幽霊は、意思が強くなければ霊感があっても見えないのだが、リミには見えていた。

 だが魔力の扱いそのものは上手ではなかったため、見て聞くことは出来ても、触る事が出来なかった。


「リミはチャレンジャーだねぇ」

「僕は入らないのです~!」


 おばけ屋敷に行くと決まったわけではないが、クロウは既に泣いていた。

 苦手で済むレベルの泣き方ではなかった。


 そして―― 5分後。


 彼等の目の前には、でかでかとおばけ屋敷と書かれた看板が立っていた。



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