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【Web版】Let's ISEKAI shout  作者: 並木道 礫
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007話 撃退困難


応援が到着するまで防衛に徹する。そうすれば大規模討伐隊が窮地を救いに来てくれるはず。


だが、その思惑は大きく外れる事になった。


「…ミランダよ、魔力は後どれくらいかの?」

「はは…もう、お役に立てる程残ってないっすねぇ。」

「サトキはどうかの?」

「まだいける…が、使えそうな魔法がないな。」


【隔離障壁】が破られ、その要のミランダの魔力も少ない。ラミットも先程大質量のブレスを晒すために魔力を使い過ぎた。

残るは魔力バカのサトキであるが、使える魔法が【ボックス】と【薄羽刀】のみ。戦闘経験も合わせるなら一番戦力にならない。


「…致し方あるまい。現時刻を持ってハランスを放棄、各シェルターに逃げてる住民ならば安全じゃ。【暴走竜】をなるべく人気のないところに誘き寄せるぞ。」


幸いにして避難シェルターは地下深くに土魔法によって作られている。上が瓦礫に呑まれても後で救援隊が助け出してくれるだろう。

そしてハランスを放棄すると言っても、防衛を放棄するのであって、これ以上余計な被害をこの街で出さないために、他の場所へ誘導することに切り替える。


「街の南、コウラス平野まで再びご足労願うとしようかの。」

「うへぇ…普通馬車とかでいく距離っすよ。」

「お前…こんな時までソレ貫くのかよ…っ、来たぞ!」


Gyaaaaaaaaa ooooooo!!!!!


咆哮と共にサトキ達へ突進をかます【暴走竜】。3人は三方向にバラバラに回避して、【暴走竜】の真後ろで合流した。その集合場所目掛け竜の尻尾が叩きつけられるがそれも難なく回避。

ミランダが基本魔法のアロー系で注意を引きながらコウラス平野へ向けて3人は走り出した。直線で逃げればすぐに追いつかれてしまうため、林の中を縫うようにして時間を稼ぐ。


「ブレスが来るぞい!散開じゃ!」

「次、左前脚!」

「またブレスっす!」


【暴走竜】の攻撃はブレスや前脚、尻尾での攻撃が多く、予備動作をよく見ていれば避けられぬほどではなかった。サトキは「これなら問題はなくないか?」と思い始める。

たしかに【隔離障壁】や【ボックス】を容易に破壊する攻撃力は驚異的ではあるものの、高位冒険者の頭数さえ揃ってしまえば討伐できないほどではない。現に3人で誘導だけならどうにかなっているのだ。だが、その直後の【暴走竜】の攻撃により、その考えは全て吹き飛ぶ事となる。


「っ…彼奴め通常よりもかなり帯電しておる!超広範囲攻撃くるぞ!」


よくよく見れば先程から【暴走竜】の体の周りにバチバチと電流が迸っているのが確認できる。それが見る見るうちに広がり、近くの木などへ放電を始めた瞬間、それはやってきた…


雷竜種固有魔法【巨人のヘカトンケイル落雷エレキックバン


帯電させていた電気を上空へ向け一斉に放出。それらは落雷となり地面へと降り注ぐ。

地面に落ちたものは大きく抉り、木々に落ちたものはその熱量により発火、辺りは瞬く間に火の海と化し、辺りが焼け野原となってしまった。


「なんつう魔法だよ。」

「ふぃ、危なかったっす。サトキっちの【ボックス】があってよかったっすね。」

「まさかこんな所で固有魔法を放つとはの…うまく足止めを食らってしまったのぉ。」


サトキの【ボックス】により避雷できたが、遂に【暴走竜】に接近を許してしまった。唸る【暴走竜】の双眼が射殺さんばかりに3人を捉えていた。


「サトキ、ミランダよ。これはちと覚悟を決めてもらうしかないようじゃ。本来なら将来ある、特異魔法を使う2人は逃がすべきじゃが…こうも牽制されては逃がせるものも逃がせん。」


【暴走竜】は攻撃こそ仕掛けてこないものの、此方の一挙一動に注視しているようにも見える。隙を見せれば直ぐにでも襲ってくるだろう。


「はぁ…俺もこっち・・・に来て早々には死にたくないからな。やれるだけやるよ…何よりギルド長からの報酬も気になる。」

「ホッホッホ、まぁ期待して良いよ。あとラミットでよいぞ。戦闘中でギルド長とは呼びずらかろう。で?ミランダ、お主はどうする。」

「え〜、それ選択肢なくないっすか?私だけで逃げれるわけないじゃないっすか…はぁ、やりますょ〜。」


通常、高位冒険者パーティーが複数で挑むべき【暴走竜】にたった3人で挑む。無謀極まりない事態だ。しかし現状、それしか手立てがない為に覚悟を決める。


「はっ!」


誰が合図を送るでもなく戦闘が始まった。最初に動いたのはラミット。手を上へと掲げ【落下魔法】の一つを放った。


落下魔法【空気重積エアフォールダウン


空気の層を丸ごと切り取り、そのまま超高速で落下させる魔法。威力は切り取る空気の層の面積に比例する。今回落下させたのは【暴走竜】の頭上、横幅20メートル、縦5キロの空気。その質量が一気に叩きつけられた。


Gyaaaaaaaaa⁉︎


地上にもその余波で爆風が吹き荒れるがサトキの【ボックス】でそれは防いだ。ミシミシと【暴走竜】の体から何かが軋む音が聞こえるが、倒すには至らないのは誰もが分かっている。ミランダは続けて魔法を放った。


落下魔法【自重落下】


サトキや酒場のオヤジに使った身体を下方向へ落下させ続ける魔法だ。これは対象の体重が重ければ重いほど効果のある魔法で、【暴走竜】は自身の体重で身動きが取れなくやっていた。


「よし、今じゃ!ミランダ、特大のを叩き込んでやれ!」

「了解っすよ…【石槍祭ロックフィスティバル】!」


地面から無数の、魔力が続く限り石槍を発生する基本魔法:土5の攻撃魔法だ。【自重落下】で地面に貼り付け、【石槍祭】で下から串刺しにする合わせ技。並みの魔獣であれば必殺のコンボだが、【竜】とは魔獣の上位に位置するもののことを指す。つまり…


G…Gyaaaaaaaaa!!!!!


咆哮…人間で言うならば気合の叫びとも取れるその行為で、【暴走竜】は無理やり【自重落下】から逃れる。しかも【暴走竜】がいた場所には、先端の欠けた石槍が僅かに地面から顔を出している程度。

どうやら竜のあまりの硬さに石槍の方が負けてしまったようだ。


「あれ、普通なら串刺しになってるはずっすけどねぇ…」

「上から押されて下から刺されてるのに、どんな硬さだよあの竜。」

「これは予想外じゃの…っ来たぞ!」


【暴走竜】は遠距離だと分が悪いとわかったのか、その巨体には似合わない速度で突進を仕掛けて来た。ミランダとラミットは反射的にその射線から逃れるが、サトキは反応が僅かに遅れてしまった。


「ちっ!」


反射的に【ボックス】を魔力値500で展開…しようとした。しかしその瞬間、何かに頭を掻き乱されるような気持ち悪い感覚が襲ったのだ。その感覚は一瞬だったが、凶悪な【暴走竜】に対してその隙は大きすぎた。


「サトキっ!!」

「サトキっち!」


「がっっ⁉︎」


身体に凄まじい衝撃が走ったかと思ったら、景色が前へとすごい速さで流れて行く。否、サトキが後方へと吹き飛んだのだ。そして突進と同時に【暴走竜】は追撃とばかりに魔法を放つ。


雷竜種固有魔法【雷針】


何億ボルトもの電流を強制圧縮し生成した雷の針で、吹き飛ばされ空中にいるサトキにとって簡単に回避できるものではない。スキル:即死無効と高いHPがある為耐えれる可能性は高いが、それでもいま取れる方法が少なすぎる。目の前に【ボックス】を展開しようとしても【雷針】の速度が早すぎて恐らく間に合わない。それよりも後方に迫る岩に防御態勢をとらなければ…とサトキの状況判断が追いついていなかった。


「サトキっち!」


ミランダが飛んでいくサトキと【雷針】の間に障壁を挟むが、難なく【雷針】に突破された。的確に座標を捉え展開するのは流石と言えたが、いかんせん【守護魔法】は元来戦闘向けのものではない為に、強度が足りなさ過ぎ簡単に突破されるのだ。


「かはっ⁉︎」


轟音と共に岩へ叩きつけられたサトキは肺の空気を一気に押し出される。更には【雷針】が胸へ直撃し可視化出来る程に圧縮された雷が辺りに弾け飛んだ。時速100キロほどでぶつかった岩はヒビが入り、サトキはぐったりと頭を垂れる。【雷針】と竜のタックルなど喰らえば普通は即死、かなり幸運で天文学的な奇跡があれば瀕死と言ったところだ。


「くっ」


ラミットはせめてサトキへの【暴走竜】の追撃を防ごうと【空気重積】を発動するが、身体に帯電させた電気をレーダーがわりに、軽々と【空気重積】は回避される。ならばと【自重落下】を仕掛けると【暴走竜】は空へと飛び上がった。竜種は空を飛べる龍とは違い、飛行することは出来ない。しかしホバリングなど一定時間飛び上がることは可能なのである。


「なっ⁉︎あやつ知能があるのか!」


ラミットの【落下魔法】は重力を操作できる魔法ではない。指定した対象を下方向へと落とす魔法なのである。例えば【空気重積エアフォールダウン】であれば【対象Aの頭上の空気B(範囲は変数化)をAに対して落下】といった具合にだ。そして【自重落下】は地面を起点とする魔法で【地面に掛かっている対象Aの自重を連続して下方向に落下】という魔法構築がなされており、魔法をかける相手は地面と接している必要があるのだ。


それを知ってか知らずか【暴走竜】は【自重落下】魔法を回避してみせたのだ。当然ラミットは驚きの声を上げるが驚いてばかりではない。それならばと基本魔法:火6【火炎旋風】という炎の竜巻を発動し、【暴走竜】を地面へと叩き落とそうとした。


Gyaaaaaaaaa!!!!


だが【暴走竜】はその【火炎旋風】の発生起点を瞬時に見抜き、ブレスにより地面を吹き飛ばす。自分に対する攻撃が止んだ事を確認した【暴走竜】は地面は着地。未だ岩にめり込みぐったりとしたサトキ、呆然と自分を見るミランダとラミットを一瞥する。


飛行能力の乏しさと知能の低さ…それ故に【竜】と呼称される魔獣が、知能の高さを伺える立ち回りをしたのだ。ミランダとラミットは二人して同じことを考える。もはやこれは【という魔獣・・・・・を相手にしていると考えるべき…と。

ならばこうも考える…


「これは、無理…じゃな。」

「はぁ、人生そんな役回りばかりっすね…」


知性の低い竜ならばうまく立ち回れば、倒せはせずとも時間は稼げる算段だったラミット。

自身の攻撃力は低いが、サトキとラミットの2人と協力すれば時間を稼ぐ事は可能と考えていたミランダ。そもそも普通の竜に戦略的思考が出来るはずもない、今回は明らかに異常であり、2人の予想とは大きく違うものとなって最悪の展開を迎えようとしていた。状況は絶望的、誰もがそう考える…1人を除いて…








「おー、いててて…犬じゃないんだからそんなにタックルされても嬉しくないっての。絶対目にもの見せてやる。」








「なっ⁉︎サトキ!生きておったか!」

「た、タフっすね…」

「ぃてぇ…人を勝手に殺すなって。肋骨が2、3本折れてるけどな。」


常人ならば即死。というより身体の原型を留めないくらいの死に方をしていてもおかしくない状況だ。竜のタックルをモロに食らって生きている方がおかしいのだから。魔力値が高い事は知っていたラミットだが、まさかここまでサトキが異常極まりないとは…と考える。


「思ったほど痛みもなかったけど、自転車に跳ね飛ばされた感覚だよ、ったく。」


本来であればそんな筈は無い…無いのだが、現にサトキはこうして生きている。


GRUUUUUUUU?


自分が確実に殺したと思っていた人間。それがひょこりと立ち上がり、言葉を紡ぐ…それは雷竜にとっても不可思議な現象だった。雷竜には自負があった、人間が言う魔獣というカーストにおいて、自身は上位に位置していると。固有魔法もさる事ながら、人間なんぞ前足が掠るだけでも死んでしまう弱小種族。そんな人間が自分のタックルを食らって、ひょっこりと立ち上がったのだ。


「あー、そこのトカゲ。お前のお陰で奇しくも条件が揃った・・・・・・みたいでな。お礼をしてやろう喜べ!」


Ga⁉︎


サトキと【暴走竜】間には25メートルほどの距離があった。それをサトキは瞬間移動と見間違う速度で【暴走竜】の目の前へと現れたのだ。その場にいたものは何が起きたのか分からないが当然、一瞬サトキの姿を【暴走竜】は見失った。


「【駆動甲冑ブーストアーマー】…ふんっ!」


Gggaa⁉︎


ガツンッ!と硬質な音とともに【暴走竜】の頭が仰け反る。サトキがジャンプとともに【暴走竜】の顎をアッパーカットで打ち上げたのだ。


「【薄羽妖刀】…」


そのがら空きの【暴走竜】の首元にサトキは何かを握る仕草をしながら袈裟斬りの様に振り切る。


Gyaaaa⁉︎


「硬っ!ちっ、浅いか?」


何も持っていない筈の手を振り切ると何故か【暴走竜】の首から鮮血が勢いよく飛び散った。その鮮血が掛かったからか、よくよく見ればサトキの手には細長い刀の様なものが見て取れた。しかし両断するには至らず薄皮(といっても10cm程)を切っただけの様だ。


G…Gyaaaaaaaaa!!!!!


先程から次々と起こる不可思議な事象。困惑しながらもまるで自分を鼓舞するかの様に吠えながら、【暴走竜】は前足をサトキに振り下ろした。初速50キロを超えるその攻撃は見てから躱すのでは遅い。サトキはそれを…


Ga⁉︎⁉︎


…避けなかった。色白の細いその手で前足の爪部分を掴み、見事その勢いを殺し切っていたのだ。これには流石の【暴走竜】だけでなく、ラミット、ミランダも目をひん剥いて驚いた。


G…Ga…Gyaaaaaaaaa!!!!!


その僅かな攻防。時間にして2分、その僅かな時間で【暴走竜】は自分の未来を幻視した。このままでは自分は負けると…

そんな【暴走竜】がとった行動は、敵前逃亡…戦略的撤退ともいう。その巨体を巧みに翻し、元来たコウラス平野方面へとひた走って行こうとした。が、もう未来は決まっていた様だ。


「逃げんなよ、まだお礼は済んでねぇぞ!」


ばっとサトキが【暴走竜】の走り去る方向へと手を翳した。並の【ボックス】では突破される可能性がある。正方形の結界は一面が破壊されれば他の面も連鎖的に破壊されるため、一点突破に弱い側面を持つ。ならばと…


結界魔法【浮遊するフローリン牢獄プリズン


10×10cmの正方形の【ボックス】、それが【暴走竜】の行く手を何十、何百、何千と立ちはだかった。そしてこの【浮遊するフローリン牢獄プリズン】の特徴。それは一つ一つが宙にふわふわと漂っているなやだ。結界の基本的概念、相対位置の固定という面を完全に無視した魔法だった。しかしサトキは何も無意味にその概念を否定したわけではない。


目の前にはふわふわと宙を漂う無数の半透明の箱。【暴走竜】は意に介さず正面からその群に突っ込んで行く。箱は宙に固定されず浮いているだけの為、容易に押し退ける事ができる。その為【暴走竜】はそのまま走り抜けようとして…


Gya⁉︎


突然身体が動かなくなった。足先や尻尾は部分的に動かす事が出来る。しかし身体が全く動かないのだ。少ししてその原因に気付いた【暴走竜】。それは先程サトキが展開していた【浮遊する牢獄】。先程までふわふわ浮いていただけの箱たちが【暴走竜】が触れた物だけ、その場で固定されたかの様に動かなくなり、身体を動きを阻害していたのだ。


Gggaa⁉︎


必死にその拘束を解こうと身体を動かすがビクともしない。爪で引き裂こうにも先端しか動かす事ができない。なんとか逃げなければ…そうもがいていた【暴走竜】に小さな影が落ちた。どうにか目線だけをそちらは向けると、頭上には自身を見下ろす人間…サトキが手に何かを持つ様な仕草で振りかぶり、落ちてくるではないか。


G…Gyaa!……


それは断末魔か咆哮か。【暴走竜】の首は、綺麗になんの抵抗もなく、ストンっと落とされた。あれだけの混乱を招いた【暴走竜】、だがその最後は実に呆気ないものだった。


「っと。うわ、グロッ…」


危なげなく着地したサトキは、【暴走竜】の惨状を見て眉を顰める。自分がした事ではあるがグロイものはグロイのだ。しかし両断された場所からは血が吹き出していなかった。そんな事には気にも留めないでラミット達の元へ向かうサトキ。


「……。」

「……。」


だが2人の元へようやく辿り着くも、ラミットとミランダは口をポカンと開けたまま、一向にサトキに反応を示さない。


「ていっ!」


そんな放心状態の2人にサトキはチョップを繰り出した。


「ぬおっ⁉︎」

「たいっす⁉︎」

「終わったぞ?」


あっけらかんとそう言うサトキに、ラミットは深いため息を吐いた。ミランダも何言ってんだこいつ…みたいな顔だ。


「はぁ…サトキ、お主自分が何をやったのかわかっておるのか?【竜殺し】じゃぞ?なにゴブリンでも倒して来たかの様にあっけらかんとしとるんじゃ。」

「は?竜って倒せば【竜殺し】って呼ばれんの?でも複数パーティー討伐が竜種は推奨されたんだろ?別に倒せないわけじゃないし、なら今頃【竜殺し】だらけじゃないか?」


サトキの最初の拠点にあったアルフォン世界史という本には【竜殺し】の記述が載っていた。なんでも【竜殺し】とは冒険者の世界において数ある栄誉のうちの一つらしい。


「何言ってんすか…複数パーティーは推奨・・されてるんであって、ソロが禁止されてるわけじゃないっす、もちろん自己責任すけどね。【竜殺し】って言うのはソロで竜を討伐したものに与えられる称号っすよ…しかも今回は【暴走竜】っすからねぇ。どんな報酬が出ることやら。」


「え、マジで?でもラミットやミランダも居たし。」

「ほぼ一人で討伐したじゃろうが、じゃからお主の功績じゃ。」

「そっすねぇ…報酬は惜しいっすけど、人の手柄を横取りするほど堕落してないっすから。」


確かにラミットやミランダも戦闘には参加していたが、【暴走竜】を討伐したのはほぼサトキだ。たしかに【竜殺し】の名に相応しいだろう。


「いや、俺として…はそんな厨二チック、なのは…」


「お、おい!」

「サトキっち⁉︎」


突然バタリと崩れ落ちたサトキ。ラミットとミランダが急いで駆け寄る。


「…寝とるの。」

「…寝てるっすね。」


が、当の本人はその場で寝息を立てて気持ち良さそうに寝ていた。どうやら緊張の糸が切れたのだろうとラミットが呆れて言う。


「…ともかく、街へ戻り急ぎ領主と民達を解放せんとな。ミランダ、サトキを抱えてやってくれ、何そこまで重くあるまい。」

「えぇー、起こして自分の足で帰ってもらいましょうよ〜。」

「お主もう少し労ってやらんかい…ほれ、つべこべ言わずに行くぞい!」

「ふへぇ…」


そんなやり取りの後、サトキを背負ったミランダとラミットは急ぎハランスへと引き返して行った。






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