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【Web版】Let's ISEKAI shout  作者: 並木道 礫
12/49

12話 不死身?



警ら隊side


警ら隊長のバドソンはどうするべきか必死に考える。目の前には黒尽くめの集団が5名。アザポート店主ロベルト氏の妻、ノンノ夫人が人質に取られている。ロベルト氏はノンノ夫人を人質に取られようとした際、それを阻もうとして背中から袈裟斬りにされ、今地面に伏せている。


ナイフによる裂傷なので傷はそこまで深くないだろうが、どちらにせよ時間が経てば出血多量によるショック死もあり得る。しかし手当しようにも黒尽くめ達に遮られてを出せない。


以上を踏まえると大変不味い状況であった。


「隊長。ここは一気に…」

「ダメだ、ノンノ夫人に流れ弾が行く危険性が高い。それに奴らの目的が不明瞭なんだ。場合によっては人質なんぞ簡単に切り捨てる可能性がある。」

「しかし…」


この膠着状態が続いて約5分、ロベルト氏の状況を考えても短期決戦が望ましいが、その手立てがない。


「ギルドからの応援はいつ頃になりそうだ?」

「恐らくあと10分以上掛かるかと…」

「…そうか。」


それでは間に合わない。ギルドは基本的に街一つに対して一箇所、それはこの国では当然のことだ。ギルドは中立的立場の公的機関という位置付けだ。競争を避けるためにこの決まりが出来た、が。


万が一、警ら隊では対応できない事案が発生した場合、場所によっては距離的問題でギルド員が駆けつけるまでにかなりの時間を要するのだ。今回がその事案にあたった。


「く…仕方ない。総員、戦闘準…」

「な、なんだっ⁉︎」

「誰だ⁉︎」


それは突然空から降って来た…美少女と美女が織りなす特異魔法保持者の闘いだった。




サトキside


「ミランダ。」

「了解っす。」


まさに阿吽の呼吸。ミランダは警ら隊と周りの野次馬を守るように守護魔法で障壁を張る。サトキの結界魔法と違うのは脅威となり得る側面に壁を作るか、箱で囲うかの違いだ。


地面へと着地したサトキはそのまま膂力任せに一直線に黒尽くめの逹に肉薄した。第1優先目標はロベルトとノンノの保護。2人に【ボックス】を展開。


「⁉︎」


ノンノの方の【ボックス】は黒尽くめの2人の腕ごと結界に入る形になった。しかし、【ボックス】が展開されたと同時、黒尽くめの2人の腕がまるで斬られたかのようにポトリと落ちる。言葉を話せないのか、声が出せないのか、その内の1人は驚愕の表情を浮かべノンノの【ボックス】から飛び退いた。


「(痛みを感じないのか?)」


サトキは既存の結界魔法に汎用性を持たせようと考えていた。実は最初こそ適当に考えた【ボックス】だが、様々な使い道が判明する。


まず純粋な防御としての【ボックス】。魔力バカのサトキが、込めれば込めるだけ強度が増す防御法。


次に、捕縛としての【ボックス】。範囲内の酸素供給を遮断することで相手を窒息させ意識を刈り取る。強度も折り紙つきだ。


そして攻撃としての【ボックス】。相手の身体を跨ぐ様に展開して、【ボックス】に切断のイメージを加える。すると【ボックス】が通過する面に切断するという効果が付与されるのだ。勿論取捨選択は可能である。


この3つか今のところサトキの思いつく【ボックス】の運用方法だった。今回使ったのは勿論攻撃法としての【ボックス】。そして第1目標を達成したら次は…


「(敵の殲滅…)」


先程飛び退いた1人に、更に肉薄したサトキ。右手に座標固定していない縦7センチ程の棒状の【ボックス】を展開。それを土台に


「(【薄羽刀】…ラッ!)」


下から上へ逆袈裟斬り。黒尽くめの1人を斜めに両断する、が。


「は?」


両断した筈の上半身、その腕がサトキの腕をがっしりと掴んだのだ。よく見るとその目にはまだ光が宿っていた。


「こいつら!不死身か⁉︎」


腕を掴まれ動きが鈍くなったサトキに、両側面からナイフを振りかぶった黒尽くめが襲い掛かる。一瞬反応が遅れた、が。その2人が突如爆発したと思ったら後方へ吹き飛んだのだ。


「…ミランダか。」


チラリと確認するとこちらに両手を向けニッコリと笑っているミランダ。恐らく火魔法で援護したのだろう。普段の振る舞いを考えなければ、かなり出来るお姉さんなのだがな、と、それを確認するとサトキは反対の手にも【薄羽刀】を発現。腕を掴んでいた黒尽くめの上半身を今度こそ動かない様に細切れにした。


「…(こいつら何なんだ?)」


上半身と下半身が別れても動ける人間…もはやそれは人間ではないが、亜人でもないだろう。最初はゾンビかとも思ったが、掴まれた時確かに体温を感じた。異常に打たれ強い人間か?現にミランダに火魔法を撃ち込まれた2人は既に立ち上がっていた。だが、ミランダも相当強力な魔法を放った様で既にボロボロだ。その2人に加え、先程から全く動かない者が1人、【ボックス】で腕を両断された者が1人。


と、漸くいままで微動だにしなかった黒尽くめの1人がサトキへと手を翳す。瞬間的に身構えるサトキ。だが、その異変は一瞬にして起こった。


「なっ⁉︎」


手を翳された、どんな事にも対応できる様に集中した、そして何故かサトキは黒尽くめの、片腕のない者に抱きつかれていた。側から見れば美少女に対する単なるセクハラであるが、今はそんな状況ではない。途端、抱き着いて来た者の魔力が急激に膨らみ、溢れ出す様に大きくなるのをサトキとミランダは感じ取った。


「(まさか⁉︎)ミランダ‼︎俺ごと障壁で覆え!!!」

「サトキっち⁉︎くっ!!!」


急激な魔力の膨大。明らかに身の丈に合わない魔力に、サトキは嫌な予感がした。迷う事なく自分ごと魔力を出来る限り注いだ【ボックス】で覆う。その周りを更にミランダが守護魔法で障壁を構築する。それでも不安の残るミランダは、警ら隊と野次馬、更にはロベルト夫婦にも追加で障壁を張った…辺りを消しとばす爆発が起きたのはそれと同時だった。


閃光。遅れる爆音。そして爆風。


サトキを、正確には黒尽くめの1人を爆心地とする爆発が、周囲50メートルを軽々と吹き飛ばした。家屋は骨組みごと吹き飛ばされ、地面は抉れている。周囲にいた人間はミランダの障壁によって何を逃れたが、その後ろの範囲にいた住人は只では済まないだろう。


「な…どんだけの威力っすか…」


ミランダは驚愕する。勿論、黒尽くめの1人が“自己暴走”によって自爆攻撃を仕掛けたこともあるが、焦点はもっと別。暴走竜の攻撃をも防いだサトキの【ボックス】。それに加えその周りをミランダの守護魔法【幾重の羽】という多重障壁で覆い…それでも半径50メートルも・・・・・・・・・吹き飛んだのだ。


まだ砂煙が舞うその中心にいた筈のサトキ。だがあの爆発を生身で食らえば、幾らサトキでも…


「…が…てぇ…こな…クソが…いてぇな!!!!!」


結構元気だった。少なくとも悪態をつく元気はある様だった。流石のミランダも安堵の溜息を吐く。着ていた服は所々消し飛び、男女共通で大事な部分は辛うじて隠れている。所々皮膚が赤くなったり煤けているし、髪も爆風でグシャグシャになっていたが、逆にそれだけだった。


「黒尽くめも相当タフっすけど…サトキっちも相当っすね。」

「あぁ⁉︎聞こえてんぞミランダァ!!!誰が体力ゴリラだ!」

「いや、言ってないっすよ…」


ゼーゼーと息を荒らげるサトキ。だが見た目以上にサトキ本人はかなり内心で焦っていた。



−【ステータス】


【サトキ・カンバル】種族 ハイヒューマン


成長上限 100/100


HP1509/5000 MP7500+10000/10000+10000


基礎魔法:火1(7) /10 水1(7) /10 風1(7)/10 土1 (7)雷1(7)/10


特異魔法:結界魔法 5(8)/10


スキル:苦痛耐性(発動中) 毒耐性 即死無効


固有スキル:【反比例アンチアップ】発動中

→HPが少なくなればなるほどMP、基本魔法、特異魔法の値を一時的にブーストする。最大ブースト値は状況変動、ブースト開始は総HPの50%以下。



HPがゲームでいうなら赤ゲージに突入していたのだ。攻撃力だけでいうならば暴走竜の一撃よりも強かったという事になる。サトキが仮にこの世界産の身体だった場合、確実に即死であろう。


だが幸か不幸かスキルが発動していた。これならばスキル専用結界魔法も使用できる…が。


「…くそっ!」


サトキとてハイヒューマンといえど、人間ベースの身体だ。数値だけでは表せない疲労とダメージを身体に負っていた。うまく身体が動かせない、身体が重く反応が鈍い。HPこそまだ常人の数倍あるにも関わらず、生身の身体は既に悲鳴をあげていた。


「………。」


先程、不可思議な魔法を使った1人が、再びサトキへと手を動かす。その手にはナイフ。見たところ何も変わったところはないナイフ、だが瞬きした瞬間、そのナイフはサトキの腹部へと刺さっていた・・・・・・


「が…な、に?」


暴走竜の一撃でも、辺りを吹き飛ばすほどの爆発を受けても、大怪我どころか滅多な外傷さえも負わなかったサトキ。それが何の変哲も無い只のナイフが、サトキの腹部にまるで現れたかの様に刺さっていた。

元来、成長上限MAXと高HPを誇るサトキを、防御力というカテゴリに分けるなら、恐らく全生物の上から数えたほうが早いだろう。HPの高さはそれ即ち直接防御力へと繋がる。


防御力が高ければナイフも弾くし、暴走竜の一撃よりほぼ無傷で耐えれる。確かにHPが減ってくれば防御力も減少するが、それでもサトキのHPはまだ十分にある。


それらを踏まえて…


「なん…だ…と?」


−【ステータス】


【サトキ・カンバル】種族 ハイヒューマン


成長上限 100/100


HP1209/5000 MP7500+10000/10000+10000


基礎魔法:火1(7) /10 水1(7) /10 風1(7)/10 土1 (7)雷1(7)/10


特異魔法:結界魔法 5(8)/10


スキル:苦痛耐性(発動中) 毒耐性(発動中) 即死無効


固有スキル:【反比例アンチアップ】発動中

→HPが少なくなればなるほどMP、基本魔法、特異魔法の値を一時的にブーストする。最大ブースト値は状況変動、ブースト開始は総HPの50%以下。


身体異常:腹部刺傷(転移貫通)


状態異常:ベラクルスカブト毒0.01mg(強制摂取)


だった一度の攻撃で、只のナイフでHPを300も持っていかれていた。そして初めて見るステータスの身体異常と状態異常欄。そこには転移貫通の文字が。


「(転移、貫通…転移…特異魔法か!)」


恐らくサトキの知識に照らし合わせるならば、今の状態は【防御力無視】とか【絶対貫通】状態だ。転移魔法によるナイフの内部転移。攻撃法【ボックス】と似た様な原理である。そしてHP300ダメージ、毒耐性が発動していることと状態異常と出てることから常人ならば即死レベルの致死毒だろうと、割とサトキの頭は冷静に分析を行っていた。


だが同時に、サトキはあの転移魔法を使う黒尽くめの1人と自分の相性が悪すぎる事を悟った。物理干渉を無視して相手にダメージを与える転移攻撃。物を距離に関係なく移動させる転移移動。サトキと言うよりは、防御系統の魔法師全てに対して相性が悪かった。


だがサトキは兎も角、それ相応・・・・の経験を積んだミランダは対処方法はあった。


「サトキっち、チェンジっす!」

「ミランダ!?」


ミランダはサトキの横から飛び出すと転移使いへと両手を後ろから勢いよく突き出す。


守護魔法 【槍 壁ジャベリンウォール


ミランダの目の前にいくつもの六角形の小さな障壁が形成され、転移使いに凄まじい速さで一直線に飛んで行く。本来の使い方は障壁を相手にぶつけて怯ませる用途だが、それを細分化し無数に発現させたのが【槍壁】だ。しかし当たる直前、転移使いは姿を消し代わりにミランダの頭上へと現れてナイフを振りかぶった。


「(まずいっ、あのナイフには!)ミランダ!」

「片面しか展開できない障壁使いが、何も対策していないと思ったっすか?」


ガキンッ!!!!!


振り降ろされたナイフはミランダの頭上に展開された障壁に阻まれる。だが今のタイミングは明らかに間に合わないものだった。


守護魔法 【自律するオート幻小楯ミラージュシールド


ミランダが自身の弱点を補う為に編み出した魔法。片面にしか障壁を展開出来ない守護魔法は、どうしても死角が存在する。守り手にとって死角は脅威以外何物でもないが、その全てをカバーする事は出来ない。ならばと、【自律する幻小楯】は自身の死角と認定した場所に自動的に障壁を発現する魔法である。ただし、その強度は任意で発現するものよりも低く、連続展開は出来ないと言う難点がある。


そしてそういった攻撃をしてくる相手に対して、次弾も当然用意されている。



土魔法+雷魔法【魔法剣:雷萬】並列魔法:同時複製


攻撃を防がれた直後の僅かな硬直、それを見逃さず雷を帯びたナイフを並列魔法で複製、一斉に射出する。並列魔法は高等技術…だが出来ないとは本人も言っていない。空中に浮かぶ雷萬のナイフ16本、上下合わせ32本、左右合わせ64本…ミランダが並列魔法で出せる最大出力だ。360度全方位を囲う雷のナイフ、本来なら絶対絶命の状況だが…


「……⁉︎」


声にならない声で叫んだ転移使い、しかしすぐさま転移してその場を離れる。何本かは掠ったようだが、ダメージを与えるには至っていないようだ。あれほどの物量で攻めてもやはり転移使いに距離や数は関係ないらしい。


「あいやー、サトキっち。あの人かなりの手練れっすね。ほんと驚きっす。」

「俺はお前がそんなに戦えた事に驚きだよ。だがどうする、あいつ捕まえようとしても多分転移ですぐ逃げるぞ。」




「それは問題なかろうて、わしらが来たんじゃからの。」

「治める領地の1つとはいえ、こうまでされたら王子が直接出て行っても問題ないよね?ラミット。」

「はぁ…今回は目を瞑るとするわいライト・・・冒険者殿。」

「それはどうも…」


転移使いの背後、そこから2人の足音と話し声が聞こえる。会話の内容こそただお喋りしているような内容だが、その声色には凄まじい怒気を孕んでいた。【破槌】ラミット、【五剣】ブライト…領地を脅かす不届き者に喝を入れに、冷静に冷徹に魔力を研いだ状態でそこに佇む。


「………ッ。」


何を転移使いが感じ取ったのかは分からない。しかしその中に僅かばかりの“怯え”が含まれていた事は確実だろう。両手を残りの黒尽くめ2人に向け、そしてその姿が上空10メートル2点の距離100メートルの所に姿を現し、例の魔力の膨張が始まる。


「同時に魔力暴走!?」


サトキは焦った。命を全く省みない先程の魔力暴走による大爆発。どうにかミランダと2人がかりで押さえ込んでも甚大な被害を及ぼしたのだ。2点同時となると片方は塞ぎきれない…


「ふむ、打ち上げ花火はもちっと上でやってくれんかの?」


ラミットが人差し指をクイッと上空へ向ける…たったそれだけで黒尽くめ2人は上空へ勢いよく上がり。


「くっ。」

「ひゃっ!」


地上から500メートル上空で爆発。轟音と共にダウンバーストとなって突風が地上に余波となり届いた。500メートルも上空で起こったのにも関わらず、凄まじ威力を見て取れる。


ふと転移使いを見ると、策が失敗した事で逃げたようと魔力を集中させた時だった。


「おっと、君には聞きたいことが山ほどある。少々ご同行願おうか?」


いつのまにか背後に現れたブライトが転移使いの手を掴む。しかし転移使いは気にせず転移魔法を行使…出来なかった。


「…?…⁉︎」

「あぁ、封具を使わせてもらっている。これがある限り君は魔法を使うことも魔力を練ることも出来ないよ。」


ブライトの手をよく見ると、幾多もの幾何学模様が施された白い手袋を装着し、転移使いの腕を握っていた。どうやら魔法行使を阻害する力のある魔法具のようで、一向に転移使いは逃げれずいた。しかし只為すすべもなく捕まるわけでもなく、腕を掴まれたままブライトに蹴りを放った。


「おっと、ならこうしよう。」


蹴りを難なく防ぐとブライトは転移使いの腕を決め、地面にうつ伏せに組み伏せる。その流れる様な技術は、何度も言うが文系風の容姿からは想像できない様な手際だった。


転移使いが組み伏せられた拍子に被っていたフードが取れ、顔が露わになる。


「女の子?…と、猫耳か?」


フードから露わになったのは12〜15歳くらいの女の子の顔、それに頭からひょっこり覗かせる猫耳…つまり獣人だった。シルバーの髪に長い切れ目の風貌は知的な美性を感じ取れるが、それと同時に目を引いたのはあまりに痩せこけた頬。

ブライトが「ふむ。」と思案顔になり、容赦なく転移使いのローブを剥ぎ取ると、その身体は顔と同様にかなり痩せていた。着ているものも服と呼ぶには些か物足りない貧相さ。


「獣心国の孤児…にしては、おかしくはないけど。ただの孤児でもないだろうね、襲い方が組織的過ぎる。」

「そうじゃな、孤児と考えても、あの転移魔法の使い方といい、戦闘判断といい、訓練を受けたか若しくは…洗脳を受けたか、じゃな。兎に角こやつはギルドで預かろうかの。領主殿にはワシから説明する。して、ライト冒険者殿には報告・・を少々待ってもらいたい。」


ラミットの言う報告とはギルドへの報告ではなく、国への報告だ。今回のこの襲撃、まだ目的は判らないが、下手をすれば侵略行為と捉えてもおかしくはない。ブライトには当然、それを父たる国王に報告する義務があった。今回は王子という立場から、ライト冒険者として助力していたが、そんな状況ではなくなったのだ。


「……まぁ僕も試験やら何やらで忙しいからね。3日くらい報告が遅れても仕方ないよね?」

「…恩にきる」


そこにようやくギルドから冒険者と治癒魔法師が到着し、転移使いの少女は封具の手枷をつけられて、ギルドへと連行されていく。冒険者達は被害にあった周辺住民の救助へと向かった。

ロベルトの治療も同時に開始されたが、何とかなるそうで一同は胸を撫で下ろした。


「ところで何故お二人はこんなにも早く到着できたっすか?私らは近くの図書館に居たから駆け付けるのが早かったんすけど。」

「同じ理由じゃよ、近くの飯屋で2人して呑んでたからの、騒ぎを聞きつけ飛んできたんじゃ。」



「あの……」


と、そこへノンノが駆け寄ってきた。救出の際、首元に当てられていたナイフが掠ったのか、首には絆創膏の様なものが貼られていた。


「この度は本当にありがとうございました。ロベルトも命に別状はないみたいで、何とお礼をしたらいいか。」

「あ、いえ。俺もミランダもたまたま近くを通りかかっただけですんで、2人とも無事で良かったです。でも何でこの店が襲われたんですか?」

「はい、あの黒尽くめの人達はいきなり店に入って来たら“サトキという冒険者の装備品を渡せ”と言ってきたんです。」

「俺の…?」


それをロベルトが拒絶すると、黒尽くめ達はノンノを人質に、それをロベルトが救出しようと店内で戦闘が始まり、ロベルトが負傷、ちょうど警ら隊に黒尽くめ達が囲まれているところにサトキ達が到着した様だ。


「うむ、サトキの装備かの?何か心当たりはあるのか?サトキ。」

「心当たりと言ってもな、あれは俺以外ガラクタ同然の代物だぞ?」


刃の無い柄と鞘、防御力皆無の防具、普通の人が装備しても何の意味もない。サトキの特異魔法があってこその装備品な為、他の第三者が襲撃してまで盗む様なものとは考えられなかった。


「兎に角、あの転移魔法の少女が鍵を握ると言うことじゃな。」


こうしてアザポート襲撃事件は一旦の幕を引くのだった。




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