ダンジョンソムリエ
気晴らしに書きました。
短い上に、駆け足気味です。
よければどうじょ(/・ω・)/
「この連動式の罠はまぁ、及第点だな。しかし、モンスターの配置が今一つだ。モンスターを主とするならば、此処にこの罠は不適切だ。この場合はモンスターが雑味なのかな?うむ、兎に角品がないな」
男は更に歩を進める。
その動きは一見歩いているようにしか見えないが、その行く手に仕掛けられた凶悪な殺人トラップを難なく避け、迫り来る魔物を一撃で伸していく。
「ふむ、罠とモンスターを交互に配置か。悪くはないが面白みに欠けるな。独創性がない」
そんな男の姿を画面越しに見る人物の顔は汗だくだくだった。
どうやらとても緊張しているようだ。
この人物はこの建物、いや、ダンジョンの主だった。
その力は本気を出せば、街程度なら簡単に滅ぼせるほどの規格外な力の持ち主である。
”ダンジョンマスター”
超常的な力を振るいダンジョンを以って、その力を強める異形の存在。
世間では”魔王”などと呼ばれるような者たち。
それがダンジョンマスターである。
腕を振るえば街が消え、拳を振るえば国が消え
そんな語り草と共に彼らは人々から畏怖されていた。
しかし、そんな彼らにも天敵なる者は存在した。
「魔王シヴェッセン殿、テイスティングは終了した。これより総評と行こう」
その突然の声にダンジョンマスターは更に顔を青くする。
先程まで地下12階にいた筈の人物が何故か最下層30階の更に奥にあるこの部屋にいる事実に。
「な、何時の間に」
「言った筈だ、テイスティングは終わった。だからちょっとばかし急いでてここまで来たまで。ああ、安心すると良い、このダンジョンのシステムには一切干渉していない」
まるで、やろうと思えばそれが可能であると言わんばかりな物言いである。
仮にも魔王を前にしての物言いではない。
「マスター、コレ、ハイジョ?」
「ハイジョハイジョー!」
ダンジョンマスターの側にいた二羽の美しい女性が甲高い声を上げて恐ろしいことを言う。
一見、端正な顔だが、口を開くと尖った歯が光、肩から生えるのは翼で、足は鳥類特有の形をしている。
そして、その口調は歪で幼く、まるで子どものようであった。
上の要素によって彼女たちが人ではなくモンスターと呼ばれる存在であることは明白である。
「ハーピー、まぁ、ダンジョンに関係ない私用ならば問題はないか」
男は黒い手帳に何かを書き込んで行く。
それにダンジョンマスターの男はいち早く反応する。
「こら、黙ってろ貴様ら!すみません、それでは総評の方よろしくお願いします」
尚も騒ごうとするハーピー二羽だったが、ダンジョンマスターが指を鳴らすとその姿が忽然と消えた。
「よろしい。では、まずは結果発表といこう」
ダンジョンマスターの男はごくりと喉を鳴らす。
額から流れ出る汗は止まらず、手にかいた汗は彼が握るズボンを濡らし、足の震えは消えない。
「”哭鳴”のダンジョン。今回の審査の結果、ダンジョンクラスは・・・・第五級とする。ギリギリお目溢しとしよう」
黒いスーツの男の言葉にダンジョンマスターは「よ、よかった」と言い残しその場に倒れる。
どうやら精神の限界だったらしい。その顔は安心した為かとても安らかな顔であった。
因みに第五級とは最低ランクの階級である。
「しかし、気を抜くな。モンスターと罠の配置が今一つで互いを生かし切れていない。更に通路についても単調で、美しさに欠ける。そしてモンスターについてだが、使い勝手が良いゴーレムやウルフに頼り過ぎだ。傾向として罠も後半につれて数頼みになっている印象は否めない。まぁ、それでも、堅実さやオーソドックスな仕様については一定の評価も与えられよう。以降は罠とモンスターのバランス、そして「質」を考えながら、ダンジョン造りに励んでくれることを期待する」
言いたいことを言い終えると、黒服の男はダンジョンマスターが倒れているのに漸く気付いた。
「またか。最近のダンジョンマスターは軟弱だな」
男は何処からか取り出した羊皮紙に何やら文字を書き込んで行く。
それが終わると、今度はその紙をダンジョンマスターの上に置いて二言。
「今後のダンジョン経営に期待する。
ダンジョンマスターよ、これからもダンジョンの王であれ」
そして男は姿を消した。
”ダンジョンソムリエ”
ダンジョンを愛し、ダンジョンを味わう者に付けられた称号。
ダンジョンマスターを軽く凌駕する実力を持ちながらもその力を基本ダンジョンのテイスティングにしか使わないという変わった存在。
そんな彼の訪れたダンジョンには二つの結末が待っている。
一つは繁栄。
彼の言う通りにダンジョン経営に取り組んだ魔王たちのダンジョンは多くの夢を見る者達が訪れ、その多くが命を散らしながらも、長い間その人波が絶えることはなかった。
もう一つは消滅。
ダンジョンマスターの本懐を忘れ、ダンジョンから外に出て、人に害を為し、私欲と暴虐の限りを尽くす魔王とそのダンジョンは気付くと何者かによって消されていた。
そんなダンジョンには「ダンジョンソムリエが現れたに違いない」と、多くのダンジョンマスターたちが噂した。
「次は・・・・東に向かうとするか」
彼は今日も未知なるダンジョンを探す。
ダンジョンマスターは今日も眠れない。
彼の名はダンジョンソムリエ。
ダンジョンマスターの天敵であり、且つ心強いアドバイザーでもある。




