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第一章の5ーキルケ病院

第一章 向こうの世界へ


キルケ病院

 刑務所を抜けたのはいいが、あの指揮官が街中を歩かせる訳にいかないと言っていた。かける達が街中で普通に歩いているのは何か問題になるらしかった。

 それに刑務所を脱獄したのだから、追っ手が探し回っていることだろう。隠れ家が必要だった。だが、人類というだけで目立ってしまう様だ。刑務所の中がロボットだらけであったことから、おそらく、このロイドという国はロボットだけらしい。人類と戦っているということだった。ということはあまり街をうろつく訳にはいかない。

 一行は、ビルの陰を通りながら隠れ家となる様な場所を探していた。ちょうど道の向こう側に窓ガラスが数枚割れている廃墟となったビルを見つけた。

 ロボットが通らない隙を見つけて、そのビルの中に入ってみた。表の門柱にキルケ病院と書かれていた。

 どうやら病院が廃業されて、そのまま取り残されてしまったらしい。廃業してビルを解体するのは事業主に課されてなかったのだ。だが、ここならロボット警察のパトロールが来ない。

 ここに来るまでロボット警察はしゃかりきになって刑務所を脱獄したかける達を追っていた。今まで見つからなかったのは、単に運が良かっただけと言えるかもしれない。

 事実、何度もロボット警察が走り回っているのを街角で見つけた。指名手配と書かれた写真付きの紙が街の至る所に貼られていた。加奈などはその写真を見て「可愛く撮れてないじゃないのぉ、どうせならもっと可愛い写真を載せてくれればいいのにぃ!」と文句を言っていた。確かに指名手配の写真は、指名手配の言葉の響きが悪いのか写真が悪いのか、いかにも犯罪者の様に悪そうな顔が七人並んでいた。

 指名手配のチラシを、片っ端から()がしてる加奈を美樹が止めて言った。

「まぁまぁ指名手配の写真に腹立てていても仕方ないでしょ。それに貼られていたチラシが破られていたら、あたし達が来たことを怪しまれるでしょう」と言った。

確かにその通りだった。あまり指名手配のチラシを剥がす人は犯人か賞金稼ぎ以外にいないだろう。ロボットであっても同じで、通りを歩くロボットは、かける達の指名手配のチラシを見ても剥がそうなどとはしていない。


 美樹が先頭を行くかけるの腕を引っ張った。

「やっぱり止めようよ、ここ、なんか薄気味悪いよぅ!」と言った。

「確かに見るからに薄気味悪いけど、だからこそロボット達が立ち寄らず安全な隠れ家となりうるんだよ」

「そうね!ここは我慢しましょう!また見つかったら今度こそ脱獄出来ないでしょうしね」とキャサリンが言った。

美樹はそれ以上何も言わずに、皆で固まって中に入って行った。

 廃屋の病院の中は薄気味悪いことを除けば、部屋はたくさんあるし住み易い。トイレやシャワーも付いている。当然、水は出ないし電気もないが雨風は防げる。幸いにも井戸があるので水は確保出来る。病院の台所はまだ使える様だ。

 野菜や肉などは無かったが、非常食として取っておいて片付ける間もなく廃業したのか、封が切られていない非常食がそのまま残っていた。

 缶は缶切りはないが、キムが馬鹿力で開けることが出来た。瓶は栓抜きがないがこじ開ける事が出来た。こじ開けられない瓶は美樹が手刀で瓶の口を切ったので問題なく飲めた。賞味期限を過ぎていたが背に腹は変えられなかった。

 加奈とキャサリンは、お嬢様育ちなので賞味期限の切れた食料を口にするのを躊躇(ためら)っていたが、放って置いても腹が鳴って次第にがぶりつく様になった。これで取り合えずは隠れ家として生活出来る様になった。


 病院内の部屋は自由に使えるだけあったが、皆が分かれて眠るのは狙われたら危ないと言って、寝る時は病室にたくさんあるベッドを使って、同じ部屋に一緒に寝ることを主張したのは美樹だった。

 美樹がそう言った時、俊一はスケベそうな顔を見せた。その顔を見て美樹は訂正して、男子と女子は別々で、隣の部屋に寝ることを主張した。加奈もキャサリンもそれに同意した。一人で部屋を使うのはこの薄気味悪い病院で恐かったのだ。

 男子女子と別れてから俊一は壁を透視して覗けないかと画策したが、病院の壁は思った以上に厚く鉄板なども入っているらしく、目を凝らしてもなかなか見通すことが出来なかった。

「ちくしょう!見通せないぞ!」

「おまえ、いい加減にそんなこと止めたら!信用なくすぜ!それに覗かなくても見えちゃってるんだろう!」とかけるは言った。

「心配要らないぜ!、俺は元から信用ないからな!俺の高尚(こうしょう)な個人的な趣味に口を出さないでもらおうか。それに覗きで見えるから興奮するんで、覗きじゃなく見えても興奮しないのだよ」

「まぁ、そうだな!」とかけるは言いながら、何故覗きが高尚な趣味なのか分からなかったが黙っていた。

 その夜は疲れていたせいもあり早くに寝入った。電気がなく明かりがないので夜になってしまうと真っ暗になってしまい、何も出来なくなってしまうのだ。キャンプに行くということで懐中電灯など持って来ていたが、牢屋に入れられた際、リュックなど取り上げられていて、持ち帰る暇もなかったのだ、身に付けている物以外は何も無かった。

 幸いにもかけるはポケットライトやナイフ、フォーク、のこぎり、やすりなどが一体となった便利なツールは持っていた。かける以外にもホルヘもキムも俊一も似たようなツールは持っていたが、女子は全部リュックの中だったので何も役に立つツールは持っていなかった。

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