表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/38

第四章の6ーユーベルタンと対面

第四章 トカゲの尻尾


ユーベルタンと対面!

 すかさず俊一が周囲を見渡して透視した。そして加奈が聞き耳を立てた。換気ダクトを通して銃撃音が伝わってくる。

 材質によるものか俊一は近くまで行かないと部屋の中が見渡せない。そして加奈もほとんど何も聞き取れなかった。

 そこで、七人は通路を端から端まで歩いた。監視カメラはかけるが念力で別の方向に向けていた。手前から探していって奥まった部屋の前に来た時、俊一がぼそりと呟く様に言った。

「この部屋は全く透視出来ないよ」

「私もこの部屋は全く中の音が聞こえないわ」と加奈も言った。

「ここね!」とキャサリンが言った。他の部屋にはない物が中にあるから、壁も特別なのだろう。中にユーベルタンがいると思うと皆は背筋がゾクゾクと震え寒くなる気がした。

「どうやって入るか?」と俊一が訊いた。

「既に監視カメラの位置を変えた時点で、気付かれているかも知れないし、ここはいっそのこと堂々と、ご対面といきますか!」とかけるが皆の顔を見ながら言った。皆言葉ではなく(うなず)きを持って返した。

 かけるはドアノブに手を掛けて回すと鍵は掛かっていない様だった。ドアを少し開けたままにして様子を見たが、中からは何の反応もなかった。

 どうやら、いきなり撃たれることはなさそうだ。かけるはドアを思い切って開けた。


 人類軍は、三機のヘリコプターに分乗して、教会の敷地外に降り立った。既にキーワイル警察と人類国の警察が先に着いていた。

 軍は、警察から塔の地下で戦闘がなされている状況を聞いた。塔の地下で、未だに銃撃戦は続いてはいたが、銃撃の間隔がまばらになっていた。

 人類軍は地上に数人を残して、残りの兵は塔の中に入った。一人の兵士が、塔の中のエレベーターを足にワイヤーを引っ掛けて頭から降りて行った。そしてエレベーターの地下の扉から催眠ガスを数発撃ちこんだ。数分経過すると地下の銃撃が止んだ。

 人類軍の兵士がガスマスクを(かぶ)り地下エレベーターホールに降りて行くと、既に中は惨劇と化していた。地上と同じく迷彩服姿、警察官の姿、消防士姿、さらにガウンを身に(まと)ったユーベルタンが六体いたのだ。これには人類軍の兵士もびっくりした。

「ユーベルタンを見つけました!」とあっちでもこっちでも言い出したのだ。

 人類軍が催涙ガスを使わすに催眠ガスを使ったのは偶然であるが、催眠ガスであったのが良かった。ユーベルタンサイボーグは涙腺がないので、催涙ガスは効かないが、催眠ガスは脳がユーベルタンのクローンであり呼吸するので、ユーベルタンサイボーグは眠ってしまったのだ。

 戦いは、ユーベルタンサイボーグの勝利であったことが明白だった。ユーベルタンサイボーグ以外の人間は、五体満足なのがいなかった。腕がなかったり、足がなかったり、血を流して死んでいる有様だった。

 ユン教教団の幹部と思われる者達も絶命しているものがほとんどだった。催眠ガスを使わなくても、彼らのほとんどは既に息絶えていた。それに比べると、ユーベルタンサイボーグは、数々の銃撃やロケットランチャーや手榴弾を受けてボロボロになってはいたが、六体とも五体満足で催眠ガスで眠っているだけの様だった。


 かけるがドアを開けて、かける達は部屋の中を見渡した。

「すっげぇ!」と思わずホルヘが感嘆(かんたん)の声を上げた。中は天井も高く広くライトもこうこうと点いていた。工場であることは一見して認識できた。機械が休む間もなく生産し続けていた。

 「うげっ!きもちわるぅ!」と加奈が言った。皆同意見だった。ここはユーベルタンサイボーグを生産している工場だったのだ。機械が休みなく、ユーベルタンサイボーグを生産している。


「いやぁ、かける君達、やっと来たのかい?待っていたよ」と地下一階の騒ぎなど何でもないかの様に、ユーベルタンはひょうひょうとした調子で言った。

「どこだ!ユーベルタン、出て来い!」とかけるは叫んだ。

 目の前の空間にユーベルタンが現れた。

立体ホログラム映像だ。

「加奈、キャサリン、ユーベルタン本体の場所を探し出してくれ!」とかけるは小声で(ささや)いた。

「しょうがないねぇ。君達を招待したつもりはないが、せっかく来てくれたのだから、姿を現さないといけないね。全く君はよく人の邪魔をしてくれるねぇ!君と遊んであげる程、私は暇じゃぁないんだがねぇ。まぁせっかく来てくれたのだから面白いショーを見せて上げよう!ちょうどいい具合にショーを盛り上げる役者達が来た様だ」とユーベルタンが言うとスクリーンが下りてきた。

 スクリーンには地下一階のエレベーターホールが映し出されていた。そこには相当数の人が殺傷されていた。そこにガスマスクをつけた軍人の姿が多数いる。

「奴らは人類軍の連中さ。まぁ見ていたまえ!せっかくの客を歓迎してあげようじゃないか」と立体ボログラムに映し出されたユーベルタンが言った。

 ユーベルタンがリモコンを操作すると、ホールの一つのドアが開き、スクリーンに十体のユーベルタンサイボーグが飛んで入って来た。

 すぐさま物陰に隠れて、人類軍の兵士達も応戦した。全く兵士の銃もロケットランチャーも役に立たなかった。ユーベルタンサイボーグは空中で避けてしまうし、当たったとしても無傷で立ち上がった。

 兵士達に驚愕(きょうがく)の色が現れ始めた。それも長くはなかった。あれだけいた兵士達は次々と倒されていった。最強の兵士達も、ユーベルタンサイボーグの前に全く無力でしかなかった。

 「嘘だろう!さっきはマイクの部下達にあれだけ銃撃戦が続いたのにぃ!」と俊一が驚愕の表情で言った。

「はははは、さっきはマイクの部下とユン教の教団幹部が銃撃戦をしていたから、あれだけ長く続いただけのことだよ。彼らごときを相手に、ユーベルタンサイボーグに本気を出させるまでもないからね。遊んであげていただけさ!だが今回は訓練を受けた軍隊だ。ユーベルタンサイボーグの力試しにちょうどいいだろう」

 ユーベルタンの言うことは大袈裟(おおげさ)でも何でもなかった。本気を出したユーベルタンサイボーグはあっという間に人類軍の一個小隊を壊滅してしまった。煙が強制排気により瞬く間に排気された。そして、銃撃音が治まって暫くして沈黙が訪れた。

 戦闘の後には、兵士の死体が、地下一階のエレベーター前のホールに増えただけだった。立っているのはユーベルタンサイボーグ十体と催眠ガスにより眠っている六体だけで、しかも無傷である様だった。

加奈が兵士の死体を見て、息を飲み込み「ひどい!」と呟いた。他に言う言葉が見つからなかった。


 「……お前は一体何を企んでいるんだ?こんな危険な殺戮サイボーグを沢山製造して!」とかけるが怒りに胸がはちきれそうになりながら叫んだ。

「まだ分からないのかい?私の狙いはあくまでもお金を儲けることさ。君らも見た様に、この私の頭脳を持って、サイボーグの(よろい)を着た、彼らは無敵と呼んでも差し支えあるまい。そんな彼らを欲しいって言う人に売ってあげるのさ」

「そんな馬鹿な!また戦争を企てる気か?」

「君はまだ子供だから分からないだろう。国だけじゃなく、個人でも組織でも欲しい人は一杯いるのだよ。戦争になればなおさらのことだが、例え平和な世の中においても欲しがる人は一杯いる」

「こんな殺戮兵器を欲しがる人なんかいるもんか!」

かけるの言葉にユーベルタンは冷笑した。

「君には分からないのかな?人の憎しみや恨みのエネルギーは君が考える以上にもの凄い大きなものだよ。例えばいじめられて憎しみを抱いている人がいるとしよう。いつもいじめられてばかりで憎らしい奴に復讐したい。そんな人にこの最強のサイボーグを買ってもらう。そうすれば弱い人の願いを叶えてあげて、復讐も果たすことが出来るだろう。また、たとえば、地主に搾取(さくしゅ)されている小作農民がいるとしよう。田畑を幾ら耕しても自分の土地にならずに、朝から晩まで働き尽くめ。そんな人がこのサイボーグを手にすれば、地主に成り代わることも出来る。また何にも防衛能力がない小国が手にすれば、これ一体で防衛も出来る、またはこれを武器に相手と交渉することも出来る。分かるかね?私は皆の願いを叶えてあげてるのだよ!弱い者を助けてあげているのだよ。はっはははは」とユーベルタンは得意の高笑いをした。

「そんなの詭弁(きべん)だわ!誰かがそのサイボーグを手にしたら、他の皆が恐怖で眠れなくなるじゃない。人々を恐怖で縛って不公平を生み出すだけじゃない!」と美樹が言った。

「ほぉぅ、それでは君達の能力は公平だと言うのかい?この世界で君達だけが他の人にはない超能力を持っている。それは不公平ではないというのかね?」

「それは……」と美樹は返す言葉がなかった。

「あたし達の能力は平和のために使っているわ。あなたのサイボーグは違う。破壊のために使っているでしょう!」と美樹の代わりに加奈が口を開いた。

「私のサイボーグも平和をもたらすものだよ。考えてもみたまえ!A国とB国と二つの国があって、戦争になるのは戦力が互角だからさ。だがどちらかが圧倒的な戦力を持っていた場合、戦争にはならないだろう。誰だって、勝ち目のない戦はしたくないものさ。さらにどこかで戦争をしている。戦争を鎮圧するためにこのユーベルタンサイボーグを送れば戦争を治めることだって出来る。すなわち、この最強のサイボーグがあれば平和だって作り出せるのだよ」

「でもあなたは、A国にもB国にも双方にユーベルタンサイボーグを売るつもりでしょう!それじゃぁ、戦争を長引かせているんじゃない!また戦争を起こしているんじゃない!」とキャサリンが言った。

「そりゃぁ、そうさ!欲しいと言う人がいるから売るだけだよ。買った人が買ったユーベルタンサイボーグで戦争を起こそうが、私の知ったことではないだろう?何か悪いことでもあるのかい?」

「だがお前の作ったユーベルタンサイボーグで、多くの人の血が流れるんだぞ!」とホルヘが叫んだ。

「だから何だって言うんだい?ユーベルタンサイボーグを売った後に、買った人がどう使おうが、私がとやかく言うことではないだろう。それともなにかい?売る時に、『このユーベルタンサイボーグは戦争には使用しないで下さい!』とでも但し書きを入れろと言うのかい?」

「ふざけんな!遺族はどうなるんだ?お前のユーベルタンサイボーグに殺される人の遺族はどうなるんだ?とキムが叫んだ。

「それは私の知ったことではないし、私が干渉すべき問題でもないのと違うかい?」

「お前には金より大事なものはないのか?お前の子供達のことが心配にならないのか?」と俊一が泣き喚いた。

「何を感情的になっているんだね?愚かな奴め!金を稼いで何が悪い。そんなことを言うのは、自分で金を稼いでいないで親の(すね)をかじっているだけのアマちゃんだけだ!坊やなんだよ、君達は!そうやって親が金を稼いだおかげでお前達だって生きていられるのではないか!私の子供達に関しては、お前達に言われなくても、必ず探し出してやる。なあに、どうせマイクの能無しのやることだ。奴の頭ごときでは私の頭脳には勝てんよ。私の子供達にもしもの事があれば、彼らのクローンを作ってやるさ」

「狂ってる!」と美樹が言った。

どうやら君達とは意見の相違がある様だね、話しても無駄な様だからこれで失敬するよ。私も忙しい身だからね」そう言うとユーベルタンの立体ホログラム映像は消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ