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第二章の4ーコーネリア暗殺

第二章 人類国第二回大統領選


コーネリア暗殺!?

 かける達はキーワイルの街に帰った。キーワイルの街は、相変わらず深夜にも関わらず賑やかだった。美樹がサラ姫に携帯から電話をかけた。キーワイルの港の近くにはサラ姫の潜水艇が待機していた。サラ姫はかける達に会っても何も訊かずにいた。

 ただ、美樹が右手の親指を立てただけで、サラ姫は全てを理解した。

 潜水艇は十二人乗りだ。かける達七人と乗組員がサラ姫をいれて三人、それにサリーとケリーがいた。疲れていたかける達は船員室でぐっすりと寝てしまった。

 キムとホルヘとかけるは怪我をしていたが、まだ深夜であり病院も緊急病棟でなければ開いていない。緊急病棟に行く程ではない。海中都市までは我慢出来るだろう。


 海中都市に付いた時には朝四時半を廻っていた。ホルヘとキムとかけるは、病院に行って診察を受けることになった。美樹と俊一はかける達に付き添って病院に行った。幸いにも三人とも大きな怪我でなくてすんだ。

 その頃、キャサリンとカリーナと加奈は、サリーとケリーをお父さんのスコットの元に届けにスコットの部屋に戻った。コーネリアは演説中で海中都市にはいなかった。サリーとケリーはスコットに連れられて自分の部屋に行ってベッドで寝た。サリーとケリーはもう深夜であり、よほど疲れていたせいもあって、キャサリンと加奈におんぶされている間にぐっすりと眠りに付いていた。スコットに会って目を覚ましたが、ベッドに入ってすぐに眠りについた。


 朝五時を過ぎた頃、朝一のニュースが始まった。いつもより三十分ほど早い。かける達は病院での検査を終えて、待合室で病院の支払いを待っていた。支払いはスコットが全て出してくれる。

 待合室で待ちながら、何とはなしに他の患者と一緒にテレビのニュースを見ていた。

 朝のニュースは緊急ニュースを告げていた。

「緊急ニュースをお伝え致します。本日大統領選を控えたコーネリア大統領候補者が、大統領選を辞退するというニュースです」

そこで画面は切り替わって、コーネリアが記者会見の中で大統領選を辞退すると言っていた。

 それはかける達がコーネリアに頼んで芝居してもらったビデオテープだった。


 テレビ番組を見ていたかける達は目を大きく見開いて瞬きすら忘れる程のショックだった。

「まさか、あのビデオテープが。どうして?」と美樹が呟いた。

「そんなはずはない。ビデオテープは倉庫の中で燃え尽きたはずだ。あの状況下でビデオテープを取り出せる人などいなかったはずだ」とかけるは言った。

「それじゃぁ、どうして?」とキムが言った。

かけるは急いでコーネリアに電話した。寝ているかもしれないが緊急事態だ。

 かけるが電話すると、コーネリアは起きてテレビのニュースを見ていた。

「これはどういうことですか?ビデオテープは焼けて消滅したんじゃないのですか?」と訊いた。

「ええ、ビデオテープは焼けました。コーネリアさん、今から言うことを他に洩らさないで下さい。声にも出さないで下さい……スパイがいる可能性があります。今回のビデオ撮影のことを知っている人が、我々のほかに誰かいますか?」とかけるが訊いた。

 「ビデオの撮影に関しては秘密が洩れない様に注意しました。役者には大統領になった時に、大統領選辞退のシーンをテレビ局に売り込もうと冗談にしていたから、皆は冗談と思っていたはず……」とそこまで言って、何か思いついた様に「あっ!」とコーネリアは叫んだ。

 「どうしたんですか?コーネリアさん!」

「思い出しました。マイクだけには全てを話していました」

「マイクってコーネリアさんの秘書で、スケジュールも全て管理していた人ですよね?」とかけるが訊いた。

「そう、今回の誘拐についても、彼だけには全て話していました。サラ姫にビデオテープを運んでもらったのも彼だわ!他の人に任せていられないもの。でもまさか彼が!」

「マイクのことはこちらで調べます。コーネリアさんは緊急記者会見を開いて大統領選を辞退しないことを民衆に急いで伝えてください」とかけるは言った。

「分かりました」とコーネリアは応えると電話を切った。

かけるはすぐにキャサリンに電話した。キャサリンにコーネリアの秘書であるマイクを調べてくれと言った。そして、既に戻っているカリーナにも調べてもらってくれと言った。どうやって調べるかは分からないが、キャサリンとカリーナは何か情報を掴むだろう。

 「こうしてはいられない。僕達も早く戻ろう!」と言って、病院からスコット家族の住むフロアーにエレベーターで上って行った。潜水艇のドック内に病院があるのだ。キャサリンとカリーナは既に其々(それぞれ)調べに行っていなかった。


 コーネリアは急いで緊急記者会見をした。

「先程、私が大統領選を辞退すると言った、根も葉もない間違ったニュースが流れたことをお詫び致します。私は大統領選を辞退せずに最後まで戦います」

記者から質問が飛んで来た。

「どういうことなんですか?わずか一時間前に大統領選を辞退すると表明した人が、コロコロと態度を変える。あなたは、そんないい加減な気持ちで、大統領選に望んでいらっしゃるんですか?」

もはや、コーネリアが隠しておけることではなかった。ますます疑惑を大きくするだけだ。

 「今なら全てをお話出来ます。一部の噂で聞かれていた方もいるかと思いますが、四日前に私の二人の子供達が誘拐されました。誘拐犯の目的は、最初お金を要求してきました。ところが彼等の本当の要求はお金ではありませんでした。私が大統領選を辞退することが本当の目的だったのです。そこで、誘拐犯人グループを安心させるために、私が大統領選を辞退するという偽情報が必要だったのです。そのためにあのビデオを撮りました」

「そのビデオが、何故国民の前にニュースとして流れたんですか?」

「それは私にもどうしてなのか分かりません。調査中です。調査が分かり次第皆様にお伝え致します」

「誘拐犯は捕まったんですか?子供達は無事に帰ってきたんですか?」

「誘拐犯については、まだはっきりとした事は言う事が出来ません。子供達については、先程保護されたと連絡がありました」

 記者からは、まだ質問が矢継ぎ早に飛び交っていたが、秘書のマイクが記者会見中のコーネリアに近付き、記者会見を無理に切った。

「さぁ、これくらいで解放してください。コーネリア大統領候補も疲れていますので、また詳しいことが分かり次第、皆様に報告いたします」

それだけ言うと、秘書のマイクはコーネリアを促して、記者会見の席を後にした。マイクの態度は、一見優しい秘書が候補者を(かば)うかの様に見えた。

 マイクが記者会見を途中で切ったために、コーネリアの印象が記者達に悪くなった。そんな記者の感情もあったためか、ニュースではコーネリアに批判的な報道がなされた。

 コーネリアの嘘の記者会見ビデオに対して、国民の信頼を失うこともあるかもしれないが、コーネリアの子供達が誘拐された事情を同情する国民もいるだろう。コーネリアの子供達が誘拐されたことを嘘と思う国民もいるだろうし、これで票がどうなるかは全く読めなくなった。


 その頃、かけるはキャサリンとカリーナのいないメンバーと話し合っていた。

「コーネリアの秘書のマイクがスパイだとすると、子供達が助かった今、最後の手段はコーネリアの暗殺がありえるかもしれない。僕はこのままコーネリアの(そば)に飛んで行くから、後でキャサリンやカリーナの情報を教えてくれないか?時は一刻を争うから僕はもう行くよ!」とかけるは言って部屋を出た。

 大統領選は午前十時から開始される。一刻の猶予もなかった。

 部屋を出たかけるをホルヘが追って来た。

「かける、ここは海中都市だぜ。どうやって海上に出るんだよ?」

「サラの潜水艇に乗せてもらうさ!」

「おいおい、ドックの人はまだ起き出していないぜ。皆を起こしてからじゃ遅いだろうよ。俺が海上まで運んでやるよ!」

「そんな無茶だよ!水圧がどれだけあると思ってんだよ!」

「大丈夫、潜水艇のドックに耐圧スーツがあった。それで海上まで運んでやるからそこから飛んで行けよ。その方が早い。今は一刻の猶予も許さないんだろう?」

「そうだね!やってくれるかい?」

「もちろん!まかせとけ!」


 二人は潜水艇のドックに行った。潜水艇のドックはまだ開いていない。このドックはキーワイルと、そして人類国との定期便の発着の時しか使うことはなかった。サラの潜水艇などは臨時に使わせてもらうのだ。定期便の来ない時間帯は人もガランとして誰もいないのが普通だ。

 ホルヘに付いて潜水ドックの一つの部屋に入ると、確かに潜水服があった。潜水服と言ってもドライのダイバースーツよりもうちょっと生地が厚い程度の物だ。

 海中都市はあくまでも海底都市ではなく海中都市なのだ。最短距離で、海上まで五十メートル程とそんなに深い所にはないのでダイバースーツの様な潜水服で海底都市の外の補修などの作業も事足りたのだ。

 二人は潜水服を来こんで潜水ドックに行った。このドックから作業員が外に出て作業することもあるので人間の出入り口もある。

 作業口の部屋に水を満たしてから外に出る必要がある。かけるとホルヘは、作業口の部屋に水を満たしてからかけるとホルヘは海中都市の外に出た。割と海流が速いが、二人とも水泳部員だ。流されない様に海中都市の壁に掴まりながら、慣れるまで待って二人は上に向かって行こうとした。

 ところが、かけるの酸素ボンベの酸素を取り出すレギュレータのチューブが、海中都市の出入り口に挟まって抜けなくなってしまった。

 それを、ホルヘが無理にかけると一緒になって引っ張るものだから、チューブが破れてしまって、空気がぼこぼこと上に上がり、上に上がるに連れて水圧が減少するので大きな泡になって行った。慌てたかけるはその泡に乗り海流に流されてしまった。かけるの酸素ボンベは、激しい泡を吹き出していた。

 ホルヘが素早く泳ぎかけるを捕まえた。そして、自分のオクトパスと呼ばれるダイバーの相棒用にある予備の酸素マスクをかけるに(くわ)えさせた。ホルヘの酸素ボンベからかけるは酸素を吸って右手の親指を立ててホルヘの方を見た。二人は肩を組みながら海上を目指してゆっくりと上がって行った。潜水病にならぬ様に途中で休みながら海上に出た。


 「有り難う、ホルヘ!ホルヘがいなかったらどうなっていたことやら」とかけるが感謝の言葉を言った。

「なぁ、俺がいて良かっただろう!その潜水服脱げよ。俺が持ち帰るから」とホルヘが言った。

 ホルヘは浮き袋を持ってきていたので、かけるは海上に浮きながら酸素ボンベを脱ぎ、潜水服を脱いで袋に入れて沈まない様にホルヘに預けた。

「戻るのに酸素足りるかい?」とかけるは訊いた。

「おいおい!俺を誰だと思ってんだよ!酸素ボンベがなくても海中都市まで戻ってみせるぜ」とホルヘは言って右手の親指を立てた。

 「それにしても(まい)ったなぁ、こんなずぶ濡れで飛ぶのか風邪引いてしまいそうだよ」とかけるが言った。

せっかく厚手の潜水服と言うかダイバー服で水に濡れずにいたのだが、海上に浮かびながら潜水服を脱いだ際にびしょ濡れになってしまっていた。

さらに悪いことにダンに掴まれて投げられた右腕に包帯を巻いてもらっていたがびしょ濡れになって傷口に染みる。かけるは潜水用の道具を全てホルヘに渡して飛び上がった。

 「それじゃぁ、後はよろしく!」と言ってかけるは飛んで行った。かけるはコンパスを持っておりコーネリアのいる場所を地図で見ていたので迷わずに行けた。

「気をつけてなぁ!」とホルヘは手を振った。

ホルヘだから人の潜水服も酸素ボンベも持っていられたが普通はなかなか出来なかっただろう。ホルヘはまた潜って海中都市に帰って行った。


 ホルヘが海中都市に帰って、ハッチを開けてもらって中に入った。スコットの部屋に帰るとキャサリンとカリーナは既に帰っていた。

 キャサリンはすぐに海中都市のコンピュータールームに行ってメインコンピューターにアクセスした。さすがに、ダン達の様に情報が消されていることがなかったので、すぐに情報を取り出せた。カリーナも仲間が集まる場所で訊いて来てすぐに戻ったのだ。

 最初にキャサリンが口を開いた。

「かけるに言われてコーネリアの秘書のマイクについて調べてみたわ!マイクは確か、コーネリアの大統領選出馬時に秘書派遣協会から派遣されて来たんだったわよねぇ」

「この秘書派遣協会というのが曲者でね、当然収入源は秘書を派遣した企業や個人から頂くんだけど、それだけでは運営上やっていけないから、個人や企業からの寄付金を受け付けているの。利益法人ではないから、秘書を送ってその給与に上乗せされてもらう形になっていないの。手数料として秘書を送り込んだ時に頂いているだけなので、秘書を毎月決まった人数送れる訳ではないので定期収入がないのね」

 「だから活動資金として、寄付金を受け付けているんだけど、寄付金を送る多くの企業の内、80%はユーベルタンが何らかの形でバックにいる会社なのよ」

 キャサリンの言葉を聞いて、次にカリーナが聞いてきたことを話した。

「私は、ゴースティンが集合している場所で聞き込みを行ったわ。さすがにゴースティンね。コーネリアが秘書の要請を行った時に秘書派遣協会にいたゴースティンもいたのね!コーネリアの秘書を派遣する際に、実は秘書派遣協会は別の秘書を派遣するはずだったの。でも、ある人からの圧力がかかってね、マイクが派遣されたということだったわ。そのある人とはもう解るわよね。ユーベルタンだって」

「どうやら、間違いはないみたいね。誰が黒幕だってことが」と加奈が言った。


 「早速、かけるに言ってマイクの身柄を確保させましょう」と美樹が言って、かけるの携帯に電話した。ところが、かけるの電話にかけても呼び出し音が鳴らなかった。何度もかけても呼び出している気配がない。

「加奈、ちょっと加奈の携帯からかけてくれない?なんか調子悪いみたい」と美樹が加奈に行った。

加奈がかけるの番号を呼び出して電話を掛けた。やはり何も呼び出し音が鳴らなかった。

「かけるの電話がおかしんじゃない?」と加奈が言った。

「ああ、そうだ!」とホルヘが叫んだ。

「何だ!ホルヘ!」とキムがホルヘの方を見て訊いた。

「かけるの携帯、海上で潜水服脱いだ時に水没したかもしれない」

「ええ!それじゃぁ、かけるとどうやって連絡取るのよ?」

「コーネリアさんの携帯に伝えるしかないだろう!」

「分かったわ!コーネリアさんに電話してみるわ」と美樹が言った。

「只今、電話に出ることが出来ません。御用の方はピーと鳴ったらご用件と電話番号をお願いします。当方から掛けなおしさせて頂きます」と留守番電話のテープの声がした。

 美樹は名前を述べたが用件を述べずに、電話を下さいとだけ残して電話を切った。下手に用件を留守番電話に残して、マイクに気付かれてしまうことを怖れたのだ。

 だがコーネリアは美樹達が考える以上に状況が悪い状況にあった。マイクは、コーネリアの携帯の留守番電話を聞いて「ふっ」と鼻で笑って、また留守番電話設定にして、テーブルに置いた。


 「どうやら、あんたの頼もしい味方が気付いた様だな!」とマイクが見た方向にはコーネリアが縛られて猿轡(さるぐつわ)を噛まされてソファーに座っていた。

「あんたの娘の誘拐が失敗することもあろうと思ってね、あんたのビデオをダビングしておいた。なあにね、俺が港まで持って行ったんだから幾らでもコピーする時間はあったさ。それをニュースで放映して、せっかくあんたの大統領選辞退の舞台を作り上げてやったのに、また記者会見して白紙に戻しちまうとはな。人の好意を無にしやがって!」

「このまま行っても、遅かれ早かれあんたの異界からの人間達が俺のことを突き止めるだろう。あんたには悪いが死んでもらう。幾ら何でも死人が大統領になることは出来ないからな。まぁ、これも運命と思って諦めてくれ!」とマイクは言った。

 コーネリアが大統領選を辞退せずに最後まで戦うことを表明することは、記者会見が始まるまでマイクは知らされていなかった。

 マイクがスパイかも知れないと、かけるから聞いていたコーネリアは、マイクに言わずに記者会見を行ったのだが、マイクはコーネリアが記者会見をするという情報を事前に嗅ぎつけ、急いで記者会見会場に駆けつけた。

 事前に記者会見を止めることは手遅れだった。全てコーネリアがしゃべってしまっていた。

 マイクは何事もない振りをして、コーネリアを記者会見会場から外に出して、部屋に連れ帰ってそのまま監禁(かんきん)してしまった。部屋にはマイクの手下がいて素早くコーネリアを縛ってしまった。コーネリアは「マイク、あなただったのね!信じていたのに!」と言ったところで猿轡(さるぐつわ)を噛まされてしまったのだ。

 マイクとしてはなるべくこの手は使いたくなかった。コーネリアが暗殺された場合、一番疑われるのがサイキス現職大統領だ。しかも、コーネリアの子供達が誘拐されていたことを、コーネリアがしゃべってしまっている。だが、今となってはそんなことを言ってもいられない。コーネリアが暗殺された場合にしても、サイキス大統領には(やま)しい点はない。疚しい点があっても、ユーベルタンが付いてさえいれば、幾らでも噂をもみ消すことが出来る。噂をなんとでも出来るのがユーベルタンの権力が強いところなのだ。


 マイクは狡猾(こうかつ)な男だ。頭が良く大学の秘書科を主席で卒業した後、常に強い人の元で秘書をやり、さらに強い人に出会ったら、その人に自分を売り込んで、巡り巡ってユーベルタンの秘書となった。

 ユーベルタンの命によりコーネリアの秘書となったが、コーネリアなどユーベルタンに比べると強さのかけらもない。マイクはそんなコーネリアに何の興味も抱いていなかった。マイクにとっては、サイキス現職大統領でも物足りなかった。

 マイクは、ユーべルタンという最高であり最強の人物を見つけた。だが、マイクにとっては、ユーベルタンに仕えているのではない、ユーベルタンに忠誠心など持っていなかった、マイクは、ユーベルタンを最高の権力者として利用しているのだった。

 そしてユーベルタンもマイクの秘書としての能力を自分のために利用しているのだ。マイクにはそんなビジネスライクで情を挟む余地がない関係が逆に心地良かったのだ。


 「あんたをこのまま殺してしまってもいいが、俺の手を血で汚したくない。あんたは、この男どもに始末を任すことにするが悪く思わないでくれ。あんたのことは嫌っちゃいないが、俺もある人に仕えている身でね。あんたの秘書として働くのも悪くなかったぜ!」そうコーネリアに言い残してマイクは部屋を出て行った。

 部屋にはコーネリアとマイクの手下である二人の男達だけが残った。大きな男と小さな男と大小コンビで、黒い服に黒いサングラスをかけていた。

「さぁ、そろそろ行きますか?」と大男は大きなスーツケースを持って来て「さぁ、ここに入ってもらおうかな」と言った。

 コーネリアは手と足を縛られていたが、大男が抱えてスーツケースに容れようとするのを、胴体をくねくねと曲げたり、体を硬直して嫌々(いやいや)した。だが大男はコーネリアが抵抗してもものともせず、コーネリアを抱えてスーツケースの中に押し込んだ。コーネリアも必死に体を硬直させたがスーツケースの中にすんなりと押し込められてしまった。

 スーツケースを転がしながら大小コンビの黒ずくめの男達は部屋を出た。スーツケースを引っ張りながら、廊下を進み地下にある駐車場に向かう。

 廊下を黒ずくめの大小コンビはスーツケースを引っ張りながら廊下を歩いていると、途中で海で泳いできた様に、服も髪もごわごわの少年が急いですれ違った。少年とは言っても十七歳ぐらいの年齢であるが、青年と呼ぶには早すぎるし少年と呼ぶには遅すぎる年齢だ。

 その時、スーツケースの中のコーネリアが暴れスーツケースからゴトゴトと音がした。黒ずくめの小男が足でスーツケースを蹴飛ばすと静かになった。走ってすれ違う少年に気付かれたかと思ったが、少年は何かとても急いでいた様で、全く二人が引っ張っていたスーツケースを気にも止めずに走り去って行った。

 二人の大小コンビは、スーツケースを駐車場に止めてあるシルバーのセダンダイプの車のトランクに乗せ、キュルルルと駐車場から激しくタイヤを鳴らして走り去った。


 かけるは来る前に、所在地を航空映像で確かめていたので、コーネリアの滞在しているホテルの場所を、迷わずに探し当てることが出来た。携帯電話は水没してしまったために使えなかった。仕方がないので、公衆電話を探して、キャサリンの携帯電話に電話した。

 そしてキャサリンの調査を聞いて、マイクがスパイである可能性が高いということで、ホテルの中を急いで走ってきたのだ。ホテルに入ったはいいが、コーネリアがいる部屋が分からなかった。

 ホテルのインフォメーションで訊くと、さすがに不審がられて教えてくれなかった。

 だがラッキーなことに、その時部屋の中から出てきたホテルのマネージャーらしき男が「君はかける君?」と訊いてきた。その男は、以前、コーネリアによってかけるが紹介されたニュース番組を見ていたし、さらにコーネリアの選挙演説カーに同乗しているかけるの顔を覚えていたのだ。

 彼はホテルの主任らしく、彼が保証してくれたおかげで、ホテルのインフォメーション係はコーネリアの部屋を教えてくれた。

 かけるは走って廊下を移動している時、黒ずくめのスーツに黒いサングラスの大男と小男の、映画から抜け出してきた様な格好のコンビを見た。やけに大きなスーツケースだなぁと思っていたが、急いでいたせいもあり、気にしている余裕などなく、そのまま通り過ぎて、コーネリアがいるとされる部屋の中に入った。部屋の中は既に(もぬけ)の殻だった。


 部屋の中に入ったかけるは、暫く状況が飲み込めずにいたが、ふと先程の黒ずくめの男達を思い出した。二人の男達が一つの大きなスーツケースを持っていたのが、不自然な感じがしたのだ。

 急いでいたのでその時は気付かなかったが、大男と小男はかけるが走って行くと止まって、すれ違う時にスーツケースを蹴っていたのをかけるは思い出した。

 「しまったぁ!」とかけるは来た道を引き返して、駐車場まで出てみたが、どこに行ったか分からないし、手掛かりすらない、既に後の祭りだった。

 かけるは公衆電話に駆け込み、キャサリンの携帯に電話し、一歩遅かったことを話した。スコットや美樹達の誰かに、コーネリアから連絡がなかったか訊いたが、答えはかけるの期待していたものではなかった。

 先程、大きなスーツケースを引く、妖しい大男と小男の大小コンビを見かけたことと、ホテルにはマイクがいなかったことを伝えて、マイクを探す様にキャサリンに頼んだ。

 そして、美樹に代わってもらい、美樹の携帯からコーネリアの携帯に電話し続ける様に言った。


 コーネリアはスーツケースに閉じ込められてから、何とかしてポケットの携帯電話を取り出そうともがいていたが、狭いスーツケースの中、しかも手も足も縛られている状態ではどうしようも出来なかった。

 コーネリアの携帯電話については、マイクが美樹からの留守番電話を聞いた後、テーブルの上に置いていたが、自分が部屋を出る時、再びコーネリアのポケットの中に入れてあった。

 それはマイクの優しさではなくて、コーネリアが遺体で見つかった時に、いつも持っている携帯電話がないのは不自然だからだ。

 そして、マイクはコーネリアの携帯電話の電源を入れたままにして留守番電話設定のまま、コーネリアのポケットに返した。これも電源を切ってしまっては逆に不自然だ。コーネリアを知る者に、後になって不自然さを指摘される訳にはいかない。

 マイクは黒ずくめの男達に、コーネリアが自殺した様に見せかけて殺せと言い渡してあった。暗殺ではなく自殺であることが明白ならば、民衆がサイキス現職大統領を疑うことがないと踏んだのだ。

 民衆からすれば、コーネリアは既に大統領選に出ないとか出るとか意志をコロコロと変えている。

 もちろん、自分の子供達の誘拐があったせいだが、相当なプレッシャーになって感情が不安定になっていたと言えば、民衆の中に若干疑う者はいても、噂はその内に消えるとマイクは考えていたのだ。


 コーネリアは、こんな所で死んでいる訳には行かなかった、何としててでも抜け出さないといけない。強い執念(しゅうねん)を持っていた。

 これはコーネリアだけの問題ではない。コーネリアが死んでしまっては世界の和平が成り立たない。コーネリアに和平への期待を抱く人々を裏切ることになってしまう。自分だけのためではない。何としてでも、こんな所で死んでいるわけにはいかない。

 両手が上着のポケットに入れられた携帯電話に手が触れた。指を伸ばして人差し指と中指に携帯電話を挟もうとする。指がつりそうだ。汗がびっしょりと顔から流れる。汗が目に入り()みて痛い。手がだるいし感覚が鈍い。だがここで諦める訳にはいかない。自分だけのためではないのだ。

 コーネリアは手がつりそうにプルプルと奮えながらも、人差し指と中指で携帯電話を挟みながらポケットから取り出した。そこで指が滑ってしまった。

 コーネリアは携帯電話をポケットから取り出したのはいいが、スーツケースの中に落としてしまった。顔からもの凄い量の汗が噴出(ふきだ)していた。狭いスーツケースの中で携帯電話がどこに行ったのか分からなくなってしまった。

 コーネリアはもはやこれまでと思った。自分はよくやった、精一杯努力した、こんなに手をつりそうになりながらも頑張った。自分はこんな状況の中で、出来るだけのことはやったと思った。

 コーネリアが諦めかけた時、自分を応援してくれるスコットや異界から来たかける達や自分を支持してくれる応援者の顔を思い浮かべた。「まだ諦めちゃいけない!」と思い直した。

 倉庫に行ってからでは間に合わないかもしれない。今やらなければ皆の信頼を裏切ることになる。

 コーネリアは体や手や足を動かして携帯電話の場所を探った。あった!足の方に落ちていた。足で携帯電話を挟んで後ろ手に縛られている手の方に持ってきた。手も足もつりそうになるのを(こら)えて、足を曲げると携帯電話に両手が届いた。

 コーネリアの使い慣れた携帯電話だ。後ろ手に縛られていてもキーの配置は分かる。先程から何度もマナーモードにしている携帯電話が振動していた。バイブレーションしてもコーネリアが出ないために携帯電話の留守番電話に切り替わってしまっていた。バイブレーションがした時、コーネリアは通話ボタンを押した。コーネリアは「んー、んー」と猿轡(さるぐつわ)をされたまま声にならない声で(わめ)いた。


 美樹はずっとコーネリアの携帯を呼び続けていたが、留守番電話に切り替わるだけで、何度やっても応答がなかった。それでも続けて電話をかけ続けた。何度、かけ続けただろう。リダイアルで掛けているから、ボタン一発であり手間はかからないが、美樹は何度かけたか分からない程電話をかけていた。

 美樹の指は事務的にリダイヤルを押して電話を切って、またリダイヤルを押していた。そんな時電話が通じた。

「コーネリアさん!コーネリアさん!」と美樹は呼んだが聞き取れる声はしなかった。

「繋がった!でも誰も出ないみたい!」と美樹は言って加奈に携帯を渡した。

 加奈は猿轡を噛まされていても、コーネリアの声を聴き取った。

「コーネリアが助けてー!」って言ってる。車で運ばれているみたい。声を出さない様に口を何かで塞がれているわ!」と言った。加奈と美樹は電話を切らずに大急ぎでメインコンピューターの近くにいるキャサリンの方に走って行った。

 「キャサリン、コーネリアが出たわ!この電話を逆探知して場所を割り出して!」と美樹が言った。

キャサリンはマイクの居場所を探すのを一旦止めて、警察の逆探知機器をコンピューターに繋ぎ地図を出した。「携帯の信号が出されている場所を、リアルタイムで追いかけるわ!」とキャサリンは言って黙り込んでいた。暫くすると地図が現れて、地図の上を赤い点が移動していた。


 美樹は加奈に「携帯を貸して!」と加奈の携帯をもぎ取って、かけるが電話を掛けてきた公衆電話に電話した。

「かける!コーネリアさんの居場所がわかったわ。コンドル通りを東に進んでいる。車に乗せられているみたい。今ニュースクエア通りの交差点を超えたわ!」と叫んだ。

「よくやったね!今、メディソンビルの前にいる。ここからどう行けばいい?」

「ちょっと待って、メディソンビルだってどこにあるか探して!」と加奈に言った。

美樹と加奈とキャサリンは地図を隈なく探して見つけた。

「ああ、あった!ここよ!ここ」と加奈が叫んだ。

「いい、かける!そこからグラブ通りを北に行って、カリブ通りとぶつかったら左に曲がって、それからしばらく行くとコンドル通りにぶつかるわ!そのコンドル通りを右に行ってずっとまっすぐ行った所をコーネリアの車は走っているわ」「分かった、また連絡する!」とかけるは早々に電話を切ろうとした。

「ちょっと待って、加奈の携帯に電話して!番号はxxx-xxxxだからね!」

「ちょっと待って!メモするから!xxx-xxxxだね!」

「そうよ!」

「OK、それじゃまた連絡する」


 かけるはすぐに飛んで美樹の説明した方向を目指して進んだ。大小コンビはコーネリアを誘拐して、車でかなり前に出たはずだが、かけるは飛んでいるのでスピードが圧倒的に違う。迷わなければ追いつくはずだ。有り難いことに道は車で混んでいる。コーネリアを乗せた車はスピードを出せずにいるはずだ。

 通りを飛ぶかけるを見た人類国の人々は、かけるを見上げながら「何だ!あれは!鳥か?飛行機か?いや、人だ!人が飛んでいるぞ!」と映画スーパーマンを見た人の様に驚きの声を上げたが、かけるはそんな彼らに構っている暇はない。

 美樹の言う通り飛んで行くと、コンドル通りに出た。そのコンドル通りを右に曲がった所で公衆電話を探したが見つからなかった。

「ちきしょう!、こんな時に俺の携帯は沈黙しているとは……」と苛立ち紛れに言って、自分の携帯を取り出して電源を入れた。携帯に電源が入った。水没して一時的に電源が入らなかったが、有り難いことに携帯電話が復活していた。

「さすがに僕の携帯、いざと言う時に復活してくれた!」とかけるは飛びながら加奈の携帯に電話をかけた。

 「携帯の電源が復活したから、このまま切らずに道案内してくれ!」とかけるは言った。

「今は、えっとぉ。ちょっと待って!…カリブ通りからコンドル通りに入ってちょっと行った所だ!」

「分かったわ!そのまましばらく行くと、メリソン通りにぶつかるから、そのメリソン通りを左に曲がって!」

「OK、分かった。このまま電源を切らないで待っていてくれ!」とかけるは飛んで、メリソン通りを左に曲がった

「OK,メリソン通りを左に曲がった。次は?」

「しばらく、そのまままっすぐ行って、クラスル通りを右に曲がって!」

「OK、分かったクラスル通りだね!」

かけるは飛んでいるだけに速かった。

「クラスル通りを右に曲がった。次は?」

「そのままクラスル通りを真っ直ぐに走っている!」

 「OK!キャサリンに言って、この先人通りが少なく誰もいない場所があるか、彼らがコーネリアを始末するのに適当な場所を探し出してくれ!」

それを加奈がキャサリンに伝えると、すぐにキャサリンから返答があった。キャサリンは既にどこに行こうとしているのか、推測してはじき出していた。


 キャサリンが電話に出た。

「かける、そのままクラスル通りを真っ直ぐに走るとクイスト港に出るわ。その港の倉庫のどれかだと思うわ。そこなら人通りもないし、倉庫にも人がいないから目立たないし、銃声も聞こえないはず」

「キャサリン、奴らはコーネリアが自殺した様にみせかけて殺すはずだ。どういう方法があるかな?」とかけるがキャサリンに訊いた。

「そうね!そういうことなら車ごと海に飛び込むとか?」

「車はコーネリアのものではないはずだ。駐車場にコーネリアの車はあった。それでは自殺と思われない。その可能性はない。他には?」

「わざわざ人通りが少ない場所を選んでいるから、薬などの可能性は低いわね。やはり銃での可能性かしら?」

「コーネリアは銃を所持していない。自分が所持してないのに銃で自殺は不自然だ。他には?」

「身投げなんてどうかしら?」と美樹が、ふと思いついた様に言った。


 「それだ!クラスル通りを行って断崖絶壁(だんがいぜっぺき)になっている場所はあるかな?」とかけるは興奮して訊いた。

「それなら、クイスト港に行く一つ前のドール通りを右に曲がって、山道を登って行くとナリト岬があるわ!断崖絶壁の自殺の名所となっている場所よ!岸壁の下の波が渦巻いているため、一度落ちたら死体が上がらないって有名な場所らしいわ!」とキャサリンが即座に答えた。

今まで赤い点を追っている間に、キャサリンはその周辺の場所を事前に調査していたのだ。

「OK、分かった、キムやホルヘや俊一はどうしてる?」

「彼らは、既にホルヘがあなたを海上に送って戻って来てから、すぐにサラ姫の潜水艇で発進したわ!」

「さすがだね!彼らにクイスト港に着岸してすぐにナリト岬に行く様に行ってくれ!」

「分かったわ!」とキャサリンは言うと、加奈に指示した。

 加奈が俊一の携帯に電話して、クイスト岬に着岸してナリト岬に向かう様に言った。

地図の上の赤い点を追いかけていた美樹が叫んだ。

「思った通り、ドール通りを右に曲がったわ!」

「思った通りだ!」とかけるは言って、さらにスピードを上げた。

「かける!」キャサリンが呼んだ!

「何だい?」

「マイクの居所が分かったわ!」

「どこだい?」

「テレビ局よ!」とキャサリンは言った。

キャサリンはマイクの携帯電話番号を調べて、携帯電話の発信場所を追っていた。

「テレビ局だって?」とかけるは拍子抜けの声を上げた。とっくにどこかに逃げて身を隠したと思っていたのだ。それが堂々とテレビ局にいるというのが驚いたのだ。

「何故だ?」とかけるは呟いた。

キャサリンが言った。

「コーネリアを自殺したように見せかけるなら、コーネリアの遺書を見つけたとか言って、芝居を打つんじゃないかしら!」


 キャサリンの読みは当たっていた。

マイクは既にキャサリンの筆跡に似せて書かせた遺書を用意していた。

 マイクは筆跡を似せる専門家もユーベルタン経由で知っていたのだ。マイクはその遺書を手にテレビ局に出演した。そして一芝居打ったのだ。朝八時のことだった。

 ニュースの音楽が流れアナウンサーが多少興奮気味に話した。

「緊急のニュースが入ってきました。本日、大統領選挙を予定していた大統領候補者であるコーネリアさんが自殺した可能性があるということです。コーネリアさんの秘書でありますマイクさんが、今朝、コーネリアさんがいないことに気付き、そしてこの遺書を見つけたというのです」とアナウンサーが言うと、カメラが引いて、アナウンサーの隣にいたマイクにマイクロフォンが向けられ、テレビカメラもマイクを映し出した。

「マイクさん、コーネリア大統領候補の遺書を見つけた様子を教えてくれますか?」

「ええ、昨日と言い、今日と言い、コーネリアさんには大変なプレッシャーだったかと思います。昨夜、そして今朝と大統領へのプレッシャーから、一転二転と考えを変えていたのですから、相当なプレッシャーを受けていたことが(うかが)えました。今朝、記者会見を終えて分かれる前に、何か深く沈んで悩んでいる様な感じを受けまして心配しておりました。その後、コーネリアさんの部屋に珈琲をお持ちして、元気付けようと行ったのですが、部屋は(もぬけ)(から)になっており、机の上には遺書が置いてあったんです」と言って遺書をアナウンサーに手渡した。

マイクは涙をうっすらと浮かべていた。

 「ちょっと拝借!」とアナウンサーがコーネリアの遺書を読み出した。

「死を選ぶしかなかった私をお許しください。私は子供が誘拐されて気が動転しておりました。子供の誘拐は、大統領選に関してではなく単にお金目当てだったのです。でも私は、その子供の誘拐を言い訳に大統領選を降りようと思いました。今になって私には大統領をやれる自信がなくなりました。それで最初の声明を出しました。ところが周囲の人達や応援してくれる人達に『今更、大統領選を止める訳にはいかない』と方々(ほうぼう)から言われ、説得された形で二回目の声明を出しました。私は出来ないという自信の無さと止めるに止められない責任の板ばさみになり、私の心は(つぶ)れてしまいそうでした。私は自分のこの重圧を逃れる(すべ)を知りません。私には死を選ぶより仕方ないかと思います。私のために皆様にご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません〜コーネリア」とアナウンサーは、コーネリアの遺書を一気に読み終えた。

遺書の終わりには、ご丁寧にコーネリアのサインまで書かれていた。

 アナウンサーは、遺書を読み終えて折り(たた)んで、マイクに返した。

「全く残念なことです。大統領選が一人の候補者を追いつめてしまいました」とアナウンサーはカメラに向かって話し、マイクに向き直って「それで、コーネリア大統領候補はどこで自殺されたと思われますか?」とマイクに(たず)ねた。

「おそらくナリト岬だと思います。よくナリト岬に行っては海を眺めていることが多く『ここで死んだら体は浮き上がって来ないのよねぇ』って言っていたことがありますから。でもまさか、本当に死のうと考えていただなんて!」とマイクは答えた。

 そこでマイクのニュース番組への出番は終了した。マイクは完璧な策だと思った。これでコーネリアがナリト岬から放り投げられて、死体がどこかの岸に上がっても、ナリト岬から死体が上がらなかったとしても、大統領選挙はサイキス現職大統領に無投票で決まる。


 コーネリアは車が止まったのを感じた。トランクが開けられスーツケースごと外に出された。そしてスーツケースが開けられた。その瞬間、コーネリアはプシューとスプレーを吹きかけられて意識が遠のいていくのを感じた。催眠ガスだと気付いた時には眠りの中にいた。

 黒ずくめの大男と小男の大小コンビは、コーネリアの両手や両足を縛っていた縄を解き猿轡を外した。縄で縛られていたり、猿轡をしたままでは、自殺に見えないからだ。

 そしてコーネリアを崖の所まで運んで行き、ご丁寧に靴を脱がせて、崖の突端に揃えて置いた。もちろん白い手袋をして指紋が付かない様にしている。

 そうして、両手と両足を大男と小男が其々(それぞれ)持って「一、二の三!」と掛け声と共に、コーネリアを断崖絶壁から海に投げ入れた。


 かけるがナリト岬に付いた時には、シルバーの車が止まっていた。かけるはさらに突端まで飛んで行くと、正に二人の黒ずくめの男達が、コーネリアを海に向かって投げ入れようとしている所だった。

「止めろー!」とかけるは叫んだ。

 黒ずくめの二人は、かけるがいた方を振り返ったが誰もいなかった。

 かけるは飛んでいては間に合わないと、瞬間移動して崖下の海面にコーネリアが落ちる瞬間に、コーネリアの体を受け止めた。

 瞬間移動のおかげで、二人の黒ずくめの大小コンビは、かけるの声は聞いたが姿は見えなかった。かけるは落下してくるコーネリアを受け止めたのはいいが、コーネリアの加速の付いた重力は思ったより威力があり、かけるはコーネリアを抱いたまま海に落ちてしまった。

 いくらかけるが水泳部員とは言っても、睡眠薬を()がされ、さらに海水が吸い込んだ衣服のコーネリアを抱えていては泳げない。コーネリアの体はとても重く感じられた。

 しかも、かけるがコーネリアを受け止めて落ちた場所は渦が複雑に巻いている。かけるは悪いことに右腕がダンとの戦いで痛めており、さらに今まで飛びっぱなしで自分で感じている以上に疲れが出ていた。

 かけるはあろうことか波の水を飲んでしまった。それでも浮き上がろうとするが、渦巻く流れの速さに、かけるはコーネリアを抱えたまま渦に巻き込まれて沈んでいった。

 浮き上がろうとすればする程、引きずり込まれる蟻地獄の巣に吸い込まれる蟻の様だった。水泳部であり、泳ぎも得意なはずのかけるが、コーネリアを抱えたまま(おぼ)れてしまっていた。


 「くそう!だめだ!」かけるが海の中で諦めかけたときにかけるとコーネリアを抱き抱える奴がいた。ホルヘだ。ホルヘが助けに来てくれた。ホルヘはかけるからコーネリアを受け取り、かけるの手を引っ張って、近くの岩場に二人を這い上がらせた。

 「……ホッホルヘ、どっどうして?」とかけるは肩で息をしながら訊いた。

「状況を訊いてな、クイスト港にサラ姫の潜水艇が着いたら俺だけそのまま海沿いにここまで泳いできたんだよ!いやぁ、気を利かして良かったよ」

「あっありがとう!」とかけるは言って、暫く岩場に仰向けになって寝転がった。仰向けになったかけるの胸が激しく上下している。

 ホルヘはコーネリアを起こそうとしている。

「コーネリアさん!コーネリアさん!起きて!」

コーネリア姫は水を飲んでいる様だった。顔に頬を近付けたが息をしていない。手首の脈も止まってしまっている。

 ホルヘはコーネリアの顔を横に向けて胸を何度か押した。そしてマウス・トゥ・マウスに移ろうと思った時、コーネリアはゴホッゴホッと言って水を吐き出した。

 コーネリアは暫くハァハァと言って話など出来ない様子だった。

「コーネリアさん、助かりましたよ!良かったですねぇ」とホルヘが言った。

「ゴホッいいえ、まだです。ゴホッ大統領候補者である私が大統領選挙開始一時間前に生存が確認されない場合は、その時点で死亡したものと思われ、大統領選挙は無投票でサイキスに決まってしまいます」とコーネリアは、呼吸が苦しそうに(あえ)ぎながら言った。

 「それじゃぁ、どうすればいいんですか?」とホルヘは言いながらダイバーウォッチを見た。十時から大統領選挙であるから、九時までにはコーネリアの生存が明白にならないといけない。今、八時四十五分だ。

「おそらく、マイクがテレビ局で私の死亡を告げていると思います。私が生存していることをテレビで放映しないといけません」

「しかし、ここからテレビ局までは遠すぎます。間に合いません」かけるも、体力が回復していたので会話に参加した。コーネリアが大統領選出馬の際に、かける達をテレビのインタビューで紹介したのがテレビ局であるから、かけるはそれを覚えていた。


 「私に考えがあります」

そういうとコーネリアは携帯でどこかに電話をした。コーネリアは睡眠薬で眠らされても携帯を手放さなかった。コーネリアの携帯はかけるのとは違って防水になっている。海水の中で()まれてもまだ電話が通じた。

「ああ、フランク、私です。コーネリアです」

「コーネリア!自殺したんじゃなかったのか?」

「自殺なんてしてません!それよりも私の生存をテレビで緊急に伝えて欲しいのです」と言った。

 コーネリアが電話しているのは、長年来の付き合いでテレビ局のディレクターをしていた。

「分かった!だが今どこにいる?」

「今、我々はどこにいますか?」とかけるやホルヘの方を見た。

かけるがナリト岬ですと即座に答えた。

「ナリト岬です」

「ナリト岬だって、あの自殺の名所の?本当にナリト岬に行っていたのか!しかし、ナリト岬は遠い。間に合わない!」

「間に合わせないといけません!我々の未来が掛かっているんです」と言った。

「分かった!我々の支局を知っているか?」

「ええ、知っているわ!そこに行けばいいのですか?」

「そこでテレビ撮影の準備をして待っている」

「分かりました。ありがとうございます。それではしっかりとお願いします」


 コーネリアはもう一度電話した。

「サム、私です。コーネリアです」

「コーネリア、本当にコーネリアなのかい?君は自殺したってニュースで言っていたぞ!」

「自殺なんてしてません。時間がないんです!カルツテレビ局の支局を知っていますか?」

「ああ、知っているよ!」

「そこで私が生存していることを証明して欲しいのです。私がテレビの放送に出演しただけでは、国民にビデオと思われてはいけません。そこで、人類国議会議長のあなたに、その場で私が生きていることを証明して欲しいのです」

「分かった。大統領選一時間前だから九時までだよな!……こりゃ大急ぎだ!」


 コーネリアは電話を切ると、かけるとホルヘを見て言った。

「この断崖絶壁を登らないといけません。手を貸してくれますか?」

上を見上げると四十メートル程ある。既に時間は九時四十八分になっていた。

「お乗りください!」かけるはコーネリアをおんぶして崖の上を目指して垂直に飛んだ。かけるは疲れていたが力を振り絞って飛んだ。

 崖の上にはキムと俊一とサラ姫がタクシーで待っていた。すぐにコーネリア姫はタクシーに乗り込んた。

「カルツテレビ局の支局まで大急ぎ!」と言った。

タクシーの運転手は、自殺の名所からおんぶされてびしょ濡れになった女が上がってきたのにびっくりしてしまい叫びながらタクシーを降りて走って逃げてしまった。

「助けてくれ!俺は何も悪いことしていない!呪うのは人違いだ!」と叫んで駆けて行ってしまった。

 既に時計の針は八時五十一分を廻っていた。

サラ姫もコーネリアも車の運転は出来なかった。

「分かった!俺がやる!」とキムがハンドルを握った。

「しっかりと掴まっていてくれよな!」と言うが早いか、サラ姫と俊一とコーネリアを乗せたタクシーはキムの運転で走り出した。車はドリフトさせてタイヤを(きし)らせて走って行った。

 コーネリアがそこ右、そこ左と言っている通りにタクシーは走っていたが、タクシーはすぐに渋滞にぶつかった。全くと言っていいほど、車が流れていない。

 「ちきしょう!しっかり掴まっててくれよ!」とキムは言うと、キムは歩道をホーンをけたたましく鳴らしながら車を走らせていた。歩道にいた歩行者が皆逃げ惑っていた。もの凄い荒い運転だ。歩道に出ている売店も()ぎ倒していた。

 そんな無法者の運転を警察のパトカーがサイレンを鳴らして追って来た。だが、パトカーと鬼ごっこをしている暇はない。キムはサイレンを鳴らして走ってくるパトカーを無視して車を走らせた。途中、地下鉄の入り口で通りが狭くなっている所は、右側のタイヤを段差で巧いこと上げ片輪走行で切り抜けた。

 実はキムは十八歳になって車の免許を取ったばかりだか、免許を取る前から無免許で夜運転していた。誰もいない道路などで練習していた。警察に目をつけられない様に、仲間にも友達にも黙っていたのだが、そんな訳で車の運転には自信を持っていたのだ。ボディービルは趣味としてやり、将来はレーサーになりたいとさえ思ったこともあった。

 残りカルツ支局まで五十メートルと言う所で歩道を進むタクシーをパトカーが道を塞いだ。キムはバックしようとしたが、後ろからパトカーが突っ込んできた。右側の路上は車の渋滞、前はパトカーで後ろもパトカーで、左側はビルが建っていた。

 時計の針は八時五十九分二十秒を廻っていた。コーネリアはまだ諦めていなかった。タクシーのドアを開けて走り出した。


 そんなコーネリアをかけるは、後ろから脇を抱いて飛び上がった。かけるが空を飛んで後ろを付いてきていたのだ。かけるは「コーネリアさん、目を閉じて!僕にカルツテレビ支局のスタジオのイメージを送ってください!」と言った。コーネリアは前に、カルツテレビ支局のスタジオにてテレビ出演した記憶がある。その記憶をイメージとして強く思い描くや否や、かけるはコーネリアを抱えて瞬間移動をした。

 次の瞬間には、かけるとコーネリアは、突然スタジオに姿を現した。いきなり姿を現したかけるとコーネリアに、スタジオに集まっていた人々は、声を上げびっくりしていた。

 フランクのおかげで撮影の準備は整っていた。サムも着替えている余裕が無かった様で、普段着のままカルツ支局に来ていた。

 コーネリアが「さぁ!始めましょう!」と言う一言で、皆自分のすべきことが分かって、テレビカメラがコーネリアに向けられた。


 カメラの横で指を折りたたんで三、二、キューが出た。ニュースの本番が始まった。時計を見ると九時五十九分五十八秒だった。カメラは最初からコーネリアに向けられていた。

コーネリアは落ち着いた声で話し出した。

「皆さん、おはようございます。コーネリア大統領候補です。本日は、私の自殺などという馬鹿げたニュースが皆様に伝わり、大変申し訳なく思います。私の秘書が、勝手に私を自殺させることにした狂言でございました」

 コーネリアはマイクの陰謀を全て明らかに話した。さすがにマイクのバックにいる者については証拠もないので黙っていた。訥々(とつとつ)と語り、大統領選には強い意志を持って臨みますと言って結んだ。

 スーツケースの中で汗まみれになり、海に落ちてそのままのコーネリアはドブ(ねずみ)の様に汚く髪も乱れて靴も履いていない。いつも上品なコーネリア姫とは別人の姿であった。だがそれだけに説得力があった。そうして、コーネリアとサイキスの大統領選の一騎打ちの舞台の幕が切って落とされた。


 マイクはコーネリアの放送から暫くして逮捕された。マイクはコーネリアの放送を見て自分の身が危なくなると、ユーベルタンに助けを求めた。

 ユーベルタンの手助けなくては逃げられないと踏んだのだ。それで、ユーベルタンに電話で連絡を取って「どこかに逃がしてくれないと、全て黒幕はあんただとばらすぞ!」と脅した。

 マイクにとっては、手助けを要求することも交渉の一つであり、ユーベルタンに対しての切り札だと思っていたのだ。だが、ユーベルタンの方が一枚も二枚も上手(うわて)だった。

 ユーベルタンはマイクの言う通りに、マイクを逃がす手筈(てはず)をすると言ってマイクを(おび)き寄せ、マイクが現れた場所に警察を呼び寄せマイクを逮捕させた。


 マイクは頭が良いので、そんな場合を考えて、ユーベルタンとの電話での会話のテープを作成しており、そのテープを証拠として持ってユーベルタンを脅して逃げるつもりだった。

 マイクは警察に捕まって、そのテープを証拠として提出したが、警察の中には、ユーベルタンから金を貰い、ユーベルタンの言う通りに動く警察官は幾らでもいた。ユーベルタンは先に手を廻し、マイクが提出したテープを警察で燃やさせた。

 マイクが幾ら、他の警察官に証拠物件を燃やされたと説明しても、誰もマイクを信用する者はいなかった。

 中にはマイクを信用する正義感に燃えた警察官もいたのだが、ユーベルタンが背後にいることを知っている警察官は皆見て見ぬ振りをした。ユーベルタンに警察官一人で歯向かう程、勇気のある警察官などいなかった。

 マイクはさらにそのことを弁護士に話したが、証拠物件が既にないのでは話にならない。弁護士も同情は見せたものの何も出来なかったし、またユーベルタンを敵に回す弁護士などもいなかった。

 そうしてマイクは、禁固二十年の刑を言い渡されて、刑務所に入れられてしまった。


 大統領選が開始された。現職大統領サイキスやその姉であるアイラや妹であるユリサ、さらに彼らの父であるユーベルタンでさえも、もはや何をすることも出来なかった。

 サイキス側は、コーネリアの生存が確認されたのは九時を過ぎてからであるから、大統領選一時間前に生存が確認されていないと主張した。

 テレビのニュース番組に映し出されたのが九時二秒前であり、サムがコーネリアを生存確認したのは九時過ぎだと主張した。

 しかし、大統領選挙管理委員会は、そのサイキス側からの異議を却下した。テレビ撮影の前に既に議会の議長サムは、コーネリアの生存を確認していたと証言したためだ。


 大統領選は、民衆の関心の高さを示す様に投票率が90%を超えた。そして有効投票数の80%という圧倒的な民衆の支持を集めてコーネリアが次期大統領に就任した。民衆はコーネリアの熱意と政策に人類国の未来を賭けたのだ。


 コーネリアの子供達の誘拐事件について具体的な捜査が始まっていた。警察は、三人のロボットの何でも屋ダン、クリスティーナとザルドーが、お金目当てに単独で誘拐事件を企んだと一度は結論付けたが、民衆がその警察の結論では納得せずに、再捜査を要求する動きが高まった。

 コーネリアも大統領に就任して、その三人の背後にいる者を徹底的に洗う様に再捜査を命じた。コーネリア個人のためではなく、今後、警察が民衆の信頼を勝ち取るためには、徹底して正義を貫く姿勢を警察が見せる必要があると考えたためだった。

 再捜査の結果、三人のロボットの隠し口座に振り込まれた多額のお金から、サイキスの姉アイラと妹ユリサの名前が上がった。もちろん彼女達の名前で振り込まれたものではなく、ダミー会社の名前で振り込まれたものであったが、名前も住所もいい加減なダミー会社の糸を追っていくと、アイラやユリサの名前が挙がったのだ。


 さらにアイラやユリサの名前が挙がると、アイラの経営するアイラ衛星開発株式会社、そしてユリサの経営するユリサニュークリアディベロップメント株式会社の帳簿をチェックした結果、互いの会社に何かの名目でお金を支払ったことにはなっていたが、実際にお金が支払われた形跡がなく、税金逃れの脱税が指摘された。

 コーネリアが大統領に就任して株価が大暴落した二社であったが、さらに会社トップの脱税容疑により、事実上の倒産となることを避けられなかった。二社の株主はアイラとユリサを提訴した。株主に対して嘘の財務諸表を掲示して、株主に損害を負わせたことに対してだ。アイサとユリサは誘拐容疑、脱税容疑、さらに民事訴訟にまで挙げられた。

 アイラやユリサが挙げられると、アイラのアイラ衛星開発株式会社やユリサのユリサニュークリアディベロップメント株式会社に、大統領権限で捻出(ねんしゅつ)していたサイキス前大統領に火種は飛び火した。

 元々、衛星開発や核開発は王制の時代のコルシカ王によって為されて来た研究であるが、それをアイラやユリサが会社として独占していた。大統領権限を私物化してきたサイキスも罪に問われることになった。

 ユーベルタンは自分に罪に被せられることはなかった。マイクのコーネリア暗殺未遂に関しても、コーネリアの子供達を誘拐したことに関しても、背後にユーベルタンの影ありと(ささや)かれたが、物的証拠が出てこなかったのだ。

 しかし、ユーベルタンの子供達アイラ、サイキス、ユリサの逮捕、そしてユーベルタンに対する民衆の疑惑が高まり、ユーベルタンと言えども、大人しくしている他なかった、少なくとも、表立って何かすることは出来なくなると思われた。

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