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第一章の16ーコーネリア姫

第一章 向こうの世界へ


コーネリア姫

 美樹は緊張した(ふる)える手で呼び鈴を鳴らした。中から「はぁい!」と子供の声がして、やがてドアが開けられた。目がくりくりした三歳ぐらいの可愛い男の子だった。

 考えもしなかったが、当たり前と言えば当たり前だったのかもしれない。スコット王子とコーネリア姫には子供がいたのだ。

 「どなたですか?」と訊く男の子に「ママはいる?」と訊いた。男の子は奥に言ってママを呼んだ。

「ママー、ママに誰か、お客さん」

「どなた?」

「知らない!」と答える男の子に、「やれやれ!」と言いながら女性が出てきた。若く美しい女性だった。顔は面長で肌は白く、均整の取れた体で、優しそうな顔にブロンドの髪をしていた。

 確かにその顔は生活味を帯びていて、よく見ないと分からないが、美樹達七人が富士の樹海でかけるが拾ったペンダインに映し出された立体映像の人その人であった。あのペンダントはかけるが持っているはずであった。だが、そのかけるはもういない。

 美樹が自分の名前を名乗るよりも早く、その女性は「美樹さん?」と訊いてきた。さらにドアを開けて他のメンバーの顔を見て驚きと嬉しさの混じった顔をしていた。


 「来てくれたんですね!」と言った。

「コーネリア姫ですね!」と美樹は確認した。

「もちろんです。とにかく上がってください。こんな所を見つかったらまずいのです」と言って六人を部屋に上げた。

部屋には先ほどの男の子の他に、男の子よりはちょっと大き

い女の子がいた。そしてサラ姫によく似た男性がいた。一目でスコット王子と判った。

 美樹は一通りのことを話すと、地底王国のサカール王から頼まれた二通の手紙をスコット王子とコーネリア姫に渡した。特にスコット王子は、懐かしそうにすぐに封を切って読み出した。安否が気付かれる内容が書かれていたらしい。コーネリア姫も手紙の封を切って読んだ。

 手紙の内容はスコットへの手紙と違って政治的な内容も含まれていた。地底王国は人類とではなく、コルシカ王との和平条約を結んでいる。コルシカ王の実娘であるコーネリア姫が戦うという場合には全面的に支援すると書かれていた。

 コーネリア姫が人類軍と戦うとしても、地底王国はコーネリア姫のサイドに付くと言う内容だった。この手紙がサイキス大統領の手に渡ったら、人類国に対する不穏な動きと取られ攻撃されかねない内容であった。ひとまず、本人に渡すことが出来たことで美樹は胸を()で下ろした。


 美樹達が一息付くと、コーネリア姫は嬉しそうに言った。

「そうだ!皆さんに会わせたい人がいるんですよ!」と言って奥の部屋に呼びに行った。

 コーネリア姫が呼びに行ったその人が、どこか遠い所にいたのか、連れて戻ってくるまでに時間が掛かった。コーネリア姫が連れて来た人が信じられないと言った風に呟いた。

 「美樹、俊一、加奈、キャサリン、ホルヘ、そしてキムさん」その人は美樹達を見て信じられないと言った顔をして呟いた。

美樹はその彼を見て呟く用に言葉が洩れた。

「……かっかけるぅ?」


 コーネリア姫に連れられた男は明らかにかけるだった。

皆、かけるに駆け寄った。

「かける、本当にかけるなのか?幽霊じゃないのか?」

「幽霊じゃないよ!こうやって足もあるし」とかけるは言って足で飛び跳ねてみせた。

「幽霊は私だけで十分よ!」と女の子の声がした。

「カリーナも一緒なんだよ」とかけるが説明した。

「かける、生きていたのね!心配かけて!」と美樹がかけるを抱きしめた。

かけると皆は抱きしめて再会を喜んだ。

 未だに興奮が覚めやらぬかける達は、居間に座りお茶菓子をつまみながらコーヒーを飲んで歓談していた。


 コーネリア姫が言った。

「驚いたでしょう!実はかけるさんに超一級の殺し屋を差し向けたのは何を隠そう私なのよ。あの時、サイキス大統領と人類軍のカーライル将軍とが、かけるさんを本当に殺すために殺し屋を雇ったという情報を得たの。ゴルゲ軍も殺しを考えていたという情報もあったわ。それで先に私が雇ったスナイパーにかけるさんを殺す様に頼んだの。但し、ペイント弾で心臓を撃たれた様に見せかけて欲しいと頼んだの。さすがに超一流のスナイパーで難しい仕事をこなしてくれたわ。かけるさんは弾丸の衝撃に失神してペイント弾の赤い血を流して死んだ様に見せかけたの」

 「病院にも手を廻して、嘘の死亡診断書を書いてもらって、それをマスコミに流したのよ。そうやってかけるさんを死んだことにすれば、狙われなくなるし、この海中都市に運び込むのも怪しまれることなく出来る。一芝居打ったって訳なの。あなた達にはかけるさんが死んだと思わせるのは悪いことしたとは思うけど、仕方なかったのよ。まさかサラ姫がそのニュースを見て、あなた達をここに連れて来てくれるなんて思いもよらなかったのよ」


 コーネリア姫の話が一段落したところで、かけるは皆に訊いた。

「でも僕が皆と別れたキルケ病院では、この世界のために責任とか使命を果たすのは嫌だ!と言っていたのに、よく来てくれたね!」と言った。

そこで、美樹達はここまで来た道中を、ワクワクしながらかけるに話した。

「そいつは凄い大冒険だったね!でも羨ましいよ。僕は砂漠の戦闘エリアを抜けてきたから砂だらけだったからね」

「あら、私達だって大変だったのよ!ビーチでのシュノーケリングや舞踏会などだけじゃなく、オークションで売られそうになったんだから」と美樹が言った。

「売られそうになったんじゃなくて、実際に売られちゃったのよ!買ってくれた人がサラ姫だから良かったけど」と加奈が補足した。

「とにかく、これでまた七人揃ったね」とかけるが皆を見渡すと皆頷いた。

「私も一緒よ!忘れないで!」とカリーナが言った。

「ああ、そうだったね。カリーナを忘れちゃいけないね」と言ってかけるは笑った。何故笑っているのか答えられないが、なんとなく平和な気分になり笑いがこみ上げてきたのだ。皆も笑った。久しぶりに皆で揃って笑うことが出来た気がした。

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