プロローグ
プロローグ
「あんた、何でやり返さないの?あんたがやり返さないからあいつだって図に乗るんだよ!あんた、悔しくないの!ねえ、解ってんの!」
伊達美樹が大月かけるに詰め寄った。いつも繰り返されてきた会話だ。
大月かけると伊達美樹は幼馴染の高校ニ年生。大月かけるは背も高くスラッとしているのだが、気が優しく大人しいために小さい頃から苛められてきた。やられてもやり返さないので苛めの恰好の餌食になってしまうのだ。
今もクラスの佐伯和雄に殴られていた。佐伯和雄は不良の中の不良という程の硬派な輩ではなく、不良に憧れて自分より弱い奴を苛めてるだけの存在。
佐伯和雄に「昼のパンを買って来い!」と命令されて、かけるは怯えながら「……いっ嫌だ」と弱弱しく反抗したために「ふざけんな!お前は俺の言う事を聞いてりゃいいんだ!」と言われて殴られたのだ。
佐伯は「けったくそわりい!」と近くにあった机を蹴っ飛ばして教室を出て行った。
かけるが苛められるシーンを見ていた伊達美樹が大月かけるに駆け寄って来て言ったのが冒頭の言葉だ。伊達美樹は大月かけるの幼馴染である。小さい頃から大月かけるが苛められるのを助けるのは伊達美樹の役目だった。
その伊達美樹に「『嫌だ!』と言って少しは抵抗しなさい!」とずっと言われ続けてきていたので、かけるは今日実行してみたのだ。ほんのちょっとの勇気を振り絞った訳だが、かけるは殴られ、さらに美樹にまで責める様に言われて、かけるはちょっとの勇気を振り絞った事に対して後悔した。
伊達美樹は、大月かけるとは正反対に気が強く小さい頃から空手を習っており、高校ニ年生になった今では黒帯を締めていた。小さい頃から、かけるとは逆に男の子を苛める立場だった。とは言っても、弱い者苛めはせずに強い男の子に喧嘩を売って泣かしてしまうのだ。
そんなかけると美樹は幼稚園、小学校、中学校と一緒であったためか、小さい頃からかけるが苛められていると、どこからともなく美樹がやってきて、正義のヒーロー、もとい正義のヒロインとしてかけるを助けるのだ。
美樹がかけるを助けると、かけるを苛めていた男の子達から、美樹は男女と言われて馬鹿にされたものだが、美樹が「なに!」と言ってすごむと皆逃げてしまうのだった。美樹からすると、苛められてもやり返さないかけるが歯痒く、かけるが苛められた後は、いつも決まって冒頭のセリフを吐くのだった。
「そんなこと言ってもなぁ!僕は気が弱いんだもん、やり返すなんて出来ないよ!」とかけるは殴られた頬を手で抑えながら言った.
「あんた、苛められて舐められて悔しくないの!あんた男でしょ!付いてる物付いてんでしょ!」
「そんなこと言っても……」
「でも今日はとにかく抵抗の言葉を言ったのは誉めてあげるわ!今度は殴り返すのよ!蹴飛ばしてあんな奴のしちゃってもいいわ!あたしが許してあげる!」
「そんなぁ、とんでもないよ!、相手を殴るなんて出来る訳ないよ!それに美樹が許しても相手は許さないよ」
「ええい、ぐだぐだうるさい!かけるが奴を殴らないなら、あたしがかけるを殴るよ!あたしのパンチは痛いよぉ!」
「そっそんなぁ」
かけるは喧嘩など生まれてこの方したことなかった。喧嘩も出来ず、かといってスポーツが得意ということもなく、むしろ苦手でしかなかった。
50メートル走や100メートル走でもビリではないが、ビリから数えた方が早い。短距離だけでなくマラソンも10キロメートルマラソンなどでも完走出来ない時もあったくらい持久力も根性もない。体育でサッカーやってもソフトボールやってもバスケットボールをやっても大した活躍出来る訳でなく、むしろチームのお荷物的な存在で、かけると一緒のチームになった生徒達から不満が出る程だった。
かけるは水泳部に所属していたが、タイムを測るレースでは到底勝ち目がなかった。タイムレースでは勝ち目がなかったものの遠泳は得意だった。一度一人で約12キロメートルを休むことなく泳いだこともあった。だが遠泳は出来ても、学校内では遠泳の授業などないので遠泳が出来ることで目立ったことはなく、校内で行われる水泳大会では水泳部でありながら、水泳部以外の一般の生徒にも負けてしまう有様で皆から笑われていた。校内の水泳大会でも勝てないのだから、地区大会などには、学校の恥だと顧問の先生に出場さえさせてもらえず常に観客席で応援するだけの存在だった。
かけるは喧嘩もスポーツも運動も得意でないのなら、勉強が出来るかって言うとそうでもなかった。学校の成績は常に普通程度で、成績で誉められた事も一度もなかった。成績が良い生徒は目立つのは当然だが成績の悪い生徒も目立つ。成績の悪い生徒には先生も力を入れるものだが、成績が普通の生徒は全く目立つことがないものだ。親も塾にやったり通信添削の教材などでかけるの成績を上げようとしたが、かけるが続けられずに途中で止めてしまったので、親もかけるの成績に関しては何も言わなくなった。
かけるには小学校六年の妹の亮子がいたが、この亮子はかけるとは違って頭も良く運動も出来てクラスの学級委員をやっている程、皆の信望も厚く友達も多かった。そのため、親の期待はかけるから妹の亮子へと注がれ次第にかけるは親から見放されていった。かけるにとっても、妹と比べられるよりも見放されていた方が気が楽だったのだが、そんなかけるの状況が本人を卑屈な存在にさせ「どうせ僕なんか……」と言うのが口癖になっていた。
かけるは空を飛ぶことが夢だった。大空を誰に気兼ねなく思いっきり自由に空を飛んでみたい。そんな願いを強く持っていた。そのために、かけるはお金を貯めてラジコン飛行機を購入し、休みには一人で飛ばしていた。ラジコン飛行機が晴れ渡る青空の中で宙返りしたりする時、かけるにとって至福の瞬間だった。
美樹がかけるに説教している時に、「また説教されてんのか、かけるは?情けないなぁ!」と声を掛けて来たのは柴本俊一だ。俊一はちょっと太めというレベルではなく、はっきり言ってデブだった。デブで汗ばかりかいているためにクラスメートは敬遠していた。肌が触れると汗でべたべたしているために誰も近づきたくなかったのだ。髪も爽やかなさらさらではなくべたべたで、顔も脂ぎった感じがあり、当然のごとく女子にはもてなかった。
さらに俊一はスケベで、よく女子更衣室を覗いたりしていたため、クラスの女子からあからさまに嫌われて避けられていた。運動もデブなために苦手で、勉強もかけるよりも成績が悪く赤点とは深く長い付き合いだった。
でも俊一は細かいことを気にしないタイプの人間で、誰に嫌われていても落ち込むことなく、自分は自分でそれはそれなりに楽しそうだった。
そんな俊一とかけるの二人の趣味が合った訳ではないが、クラスの中で友達の少ないタイプで仲間外れ的な存在であったため、友達となり親友と言える存在になった。
美樹はさばさばしたボーイッシュな性格であったため、誰とも気兼ねなく気さくに話していた。女子に嫌われている俊一とも気軽に話していた。
「何だ、俊一か!お前は、相変わらずデブだなぁ!少し運動しろよ!」と言ったのは美樹だった。
「余計なお世話だよ!それに、ちゃんと運動だってしてるよ。女子更衣室覗いて逃げる時などは、自分でも信じられない程のスピードで走ってるよ」
「そういう問題じゃないだろう!また懲りずに覗いていたのかよ、お前は!懲りない奴で本当にスケベな奴だなぁ!そんなことじゃいつまで経っても女の子に嫌われるままだぞ!」と美樹が呆れた声で言った。
「こいつの取り得はそれだけだからなぁ」とかけるが美樹の言葉に追い討ちをかけ俊一に言った。
「うるせえや!万年苛められっ子が!それより見ろ!加奈ちゃんが笑っているぞ!やっぱりいいなぁ、加奈ちゃんは最高だよ。加奈ちゃんの笑顔を見ていると幸せな気分になれるんだよ。加奈ちゃんは天使みたいな存在だよ」
かけると美樹は顔を見合わせて「またか」と言った顔をしてお互いの顔を見合わせた。
俊一が見ているのは木下加奈、クラス一番の、いや学年一番の、いや学校一番の美人、というより可愛いお嬢様と言った感じの女の子だ。ラッキーなことにかけると俊一と加奈と美樹は同じクラスだった。
加奈は人を嫌うと言ったことが無いようなお嬢様で、自分から話し掛けては来ないものの「おはよう」と挨拶すれば、「おはよう」と笑顔で返してくれるのだ。他の女子はかけると俊一を避けていて、かけると俊一も挨拶しなかったが、加奈だけは別だった。
かけると俊一は加奈に憧れ惚れていた。二人は恋のライバルというか、加奈からするとまるで眼中にないといったタイプなので、ライバルとしていがみ合うことはなく共に相手のために協力していた。恋というよりも憧れと言った方が的確な表現であり、一方的な片想いでしかなかった。
加奈は友達とにこやかに笑いながらお弁当を食べていた。加奈は木下物産の社長令嬢で、お金持ちの家庭に生まれたお嬢様らしくおっとりした性格で世間知らずのお嬢様というイメージそのままの女の子だったのだ。だから加奈を好きな男子はかなりいたのだが、多くは身分違いとアタックする前に尻ごみしていた。
美樹がボーイッシュに髪を短く、いつもジーンズを穿いてスポーツシューズを履いているのに対し、加奈は艶々(つやつや)と黒く光る髪は長く、いつもスカートを穿いて靴もスポーツシューズではなく女の子用のピカピカ磨かれた革靴を履いていた。
そんな全く正反対な美樹と加奈だが、何かと仲が良いらしく、加奈と仲良しの美樹と友達ということで、かけるや俊一は加奈と話す様になったのだ。
かけるや俊一はその点に関してだけは美樹に感謝してもしきれない思いがしていた。俊一が、加奈と仲の良い美樹と幼馴染であるかけるに話し掛けたのは、加奈目当ての魂胆があってのことだった。
クラスの中でもう一人、かける達と話す女子がいた。彼女の名前はキャサリンと言った。フィリピン人のお父さんとフランス人のお母さんの間に生まれたハーフだ。
父が外交官の仕事をしていた都合上、日本の国籍を有していなかったが、日本の学校に籍を置いていた。
英語が堪能であったため、アメリカンスクールなどに通うことも考えられたのだが、本人のキャサリンがせっかく日本にいるのだから日本人がいる学校に行くと言い出したのだ。加奈の強い意志によりかける達と同じ学校にいるが、語学や学校の成績はかける達の及ぶところではなかった。
彼女の父親の母国語であるタガログ語、母親の母国語のフランス語、そして英語、日本に来てから日本語も堪能であった。会話だけでなく語学をマスターするのも早く、既に日本語において日常会話のみならず、日本語の本を読むのも全く不都合を感じさせないほどのレベルであった。
キャサリンは才女と呼べるに相応しく、語学の才能だけでなく、勉強においても頭角を現した。英語はもちろんのこと、数学、コンピューター、社会、物理や化学といった科目に加えて現代文や古文といった科目にまでハイレベルの成績を取っていた。
キャサリンの性格は至って冷静の一言に尽きる。以前、割と大きな地震があり、クラスの皆が慌てて机の下に潜った時、一人涼しい顔で座っていた。
揺れが収まってから隣の子が「怖くないの?」と訊いたら、「そうね、今の地震はマグニチュード5ぐらいあったかしら。でもこの学校の構造から判断して、このぐらいは耐えられるわ。大丈夫よ」と言ってのけた。キャサリンのあまりに冷静な応対に隣の子は「はぁ」とだけ言っただけだった。
いついかなる時も冷静なキャサリンは、クラスメートから見ると妙に冷めててつまらない存在でもあった。何かにつけて冷静に分析する様な彼女の口調は、周囲からは冷たく受け取られクラスメートを寄せ付けなかった。
クラスメートも話し掛けたい程楽しくないので話し掛けず、また彼女も自分から話し掛けるタイプではなく一人で本を読んだりと独りで行動することがほとんどだった。そんな友達に馴染めない彼女であったためかけるや俊一とはいつしか話す様になった。クラスの中で仲間外れの様な点が自然とお互いに同類の仲間として惹き合ったのだ。
惹き合ったと言っても彼女から声を掛けたのではなく、俊一がスケベ根性を出して話し掛けたのだ。
キャサリンは父の仕事の都合上、世界を転々と移動しており、日本に来たのは高校入学の時なのでニ年前のことだ。また父親の仕事次第でいつ日本を離れていくかも知れなかった。引越しが多かったために、親友がなかなか作れず寂しい思いをしてたのだ。
取っ付き難い性格のために皆が敬遠するのだが、俊一はスケベ根性が照れよりも先にありキャサリンに話し掛けた。気安く話し掛けてくれたのが嬉しかった様だ。それからというもの俊一やかけるとは気軽に話す様になった
一学期の期末試験が始まる前にかけると俊一と美樹と加奈とキャサリンの五人揃って一緒に勉強した。
この勉強会は俊一から言い出したものだった。俊一は加奈に近づくチャンスでもあるし、それ以上に赤点を取って補修授業などになってしまっては、期末試験の後に待ち構えているせっかくの夏休みが灰色になってしまう。
かけるとしても自分の成績が良くなかったので話に飛びついた。美樹は楽しければいいという性格なので乗ってきた。俊一に誘われた時は、加奈も迷っている顔を見せたものの、美樹に誘われて笑顔でOKしてくれた。
勉強会でなくてはいなくてはならない存在なのがキャサリンだ。キャサリンが一番勉強出来るので、キャサリンが参加してくれないと美樹や加奈にとっては自分が勉強を教えるだけになってしまう。我関せずと言ったキャサリンを皆で頼み込んでOKしてくれた。
場所は地域の公民館で行うつもりで出向いたが、うるさいと叱られて早々に追い出されてしまった。図書館を追い出されて次に候補になるのがキャサリンの家か加奈の家だ。他の三人の家は小さく五人も入る場所がないという理由で却下された。かけると俊一と美樹が頼み込むと加奈が快く承諾してくれた。携帯電話で家に電話して家の人の了解を取ると皆で陽気に加奈の家に行った。
加奈の家は門作りから一般庶民のものとは異なっていた。庭には池があり一匹数百万円の錦鯉が悠々と泳いでいる。かけるの家など門をくぐるとすぐ玄関だが、門から玄関までゆったりとしたスペースがある。玄関を入ると大きな花瓶があり、加奈によると値段は三百万円だそうだ。居間には寅の剥製がある。ゆったりとしたソファーまである。加奈の部屋に入ってびっくりした、十畳ぐらいある。かけると俊一は向き合って溜め息をついた。
勉強会は楽しくはかどった。俊一などこれで百点間違いなしと、実力はともかく気合だけは十分に、否十二分にあった。
勉強会は場所を変えてキャサリンの家でも行われた。キャサリンの家も大きいが、外国もの絵画やドリンクバーなどもあり、垢抜けたお洒落な感じがした。二回の勉強会を通して五人の仲は深まっていった。いつしか、名前で呼び合う仲になっていた。期末試験が終わったら夏休みにキャンプに行こうということまで決めた。
期末試験の結果は勉強会の成果が出たのか、かけるはいつもになく答えを埋められた。期末試験の結果が良かったせいか、一学期の成績表が返って来たのを見ると、ほんのちょっと良くなった。
いつもは赤点と長い友達の俊一でさえ赤点を取らずに済んだ。美樹も加奈も成績が上がった。さらに不思議なことに教えてばかりだったキャサリンの成績も上がった。
これで心おきなくキャンプに行けることになった。キャンプとはいっても皆それぞれ部活に所属しているから部活の活動日を外して富士五湖の近くのキャンプ場に行くことになった。
キャンプはかけると俊一と美樹と加奈とキャサリンの五人にプラスして、もう二人一緒に行くことになった。
その二人の内、一人がホルヘだ。
ホルヘはメキシコ人でかける達より一歳年下の高校一年生、二世であるためメキシコのスペイン語より日本語の方が流暢だ。陽気なラテン系の男で、水泳部に属している。かけるにとっては水泳部の後輩にあたる。
かけるはホルヘをキャンプに誘う気は無かったが、ホルヘに夏休みはどこかに行くのかと訊かれキャンプのことを話してしまったのが運の尽きだった。
ホルヘが自分も連れて行けと駄駄をこねる子供の様に聞き分けなかったため「皆にホルヘが一緒に行ってもいいか訊いてみるよ!」と言わざるおえなかった。皆は「いいんじゃない!」の一言で快諾してくれた。
ホルヘはラテン系の乗りで先輩や後輩に対して友達感覚で話し掛けてくる。生意気だとむかついている部員も多かったが、かけるは特に気にすることはなかった。ホルヘとしても先輩達の中では気を使わないといけないので好きになれなかったが、同じ先輩でもかけるには気を遣わずにすんだので、かけるにはよく話し掛けてきた。かけるもホルヘも水泳部の中で浮いている存在であったため仲が良かった。
ホルヘは水泳部では日本のレコードを塗り替えるタイムを持っていた。水泳に関しては、かけると違って速く、水泳部の期待の星だった。水泳部の中で期待されているだけに、生意気と思っている先輩達も無視する程度で何も手出しすることはなかった。
そんな水泳部の期待の星のホルヘだから、夏休みは休みもなく練習する様に、水泳部顧問は練習メニューを組んでいたが、なにせホルヘは練習が嫌いだった。よく練習をサボってしまう。サボって誰か女の子とデートしたりと風船のごとくふわふわと軽い男だった。
そんな軽い男だからかけるとしては一緒に行って女の子、特に憧れの加奈にちょっかい出したら大変と断りたかったのだが、かけるの性格故に断りきれなかったのだ。かけるは皆がホルヘが行くことに反対してくれることをちょっぴり期待していただけに、皆の反応に少々がっかりしてしまった。
もう一人はかけるの家の隣に越してきた韓国人のキムだ。既に日本には幼少の時に両親に連れられて来たので日本語は達者だ。彼は高校三年生でかける達より一つ年上だ。体がでかく高校のボディービル部に所属しており、筋肉ムキムキのマッチョだ。
何かと面倒見がいい男で、かけるを家に食事に招待してくれたりしてくれた。顔もイケメンで学校でも女子にもてた。
少々ナルシストの気がある。以前、かけるがキムの家に招待された時、キムは自分の部屋の姿見の鏡の前でパンツ一丁の裸になり力瘤を作り、かけるの方を向いて微笑んだ時などは、かけるはぞっと寒気がして全身鳥肌が立ったものだ。
たまたま道で合ったキムにキャンプの話が出て、かけるの方から誘ってしまったのだ。ニカッと白い歯が魅力的な笑顔でキムはOKした。キムの件もホルヘと同様に他の皆の承諾は取ったが、その時に加奈が嬉しそうにOKしたのがかけるにはひどく気になった。
イケメンであるキムの噂は一学年下のかけるの耳にも入ってきたのだから、加奈も知っていただろう。かけるはキムが来ると行って喜ぶ加奈を見て失敗したと思ったが、時すでに遅かった。