乙女ゲームのモブである双子の姉妹に生まれました~妹のお話~
好み100%です
突然だが、私には双子の姉がいる。
しっかりしている姉御肌、というよりはおっとりしていて癒されるお姉さん。という感じの。
そんな姉、張間 皐月と私、張間 子月は転生者である。
「しーちゃん、ここ行こ?」
そう言って姉が指差したのはある学園のパンフレットの写真。
『………本気?』
ソファーでねっころがっていた私は飛び上がり、部屋の角まで後ずさる。…無理もない。
「うん、"舞台"観ようよ」
姉は歌舞伎や、アイドルが出ている舞台公演を観に行くかのように…私に地獄に落ちろと言ったのだった。
"LOVEorLIFE"という乙女ゲームをご存知であろうか?…知っているなら貴方の手を強く握り締め、『同士よ!!』と叫び、知らないと言うのなら『デスヨネー』で済ませられる超マイナー作品だ。
ストーリーもスチルも悪くない。なら何が悪かったのか?…同じような作品が多すぎたのだ。
俺様(実はヘタレ)な生徒会長、
敬語系(実は腹黒)生徒会副会長、
チャラ男で関西弁(実は運命の相手を探してる(笑))の会計、
無口ワンコ系(実はヤンデレ)の書記、
双子の兄の後輩キャラ(実は弱虫)の庶務、
同じく双子の弟で兄の真似をする(実はエロい)の庶務、
兄貴肌(実は貧弱頭脳系)の風紀委員長…
の7人が攻略対象である。ちょっとおかしい設定もあるが、大体は似たようなキャラを見た事があるのではないだろうか?
なぜこんなに乙女ゲームの話をするかって?
その乙女ゲームの世界にいるからだよ!!
さらにお姉ちゃんが乙女ゲームの舞台である楼上学園の高等部に入学しようとか言い出したからだよ!!楼上学園のろうは牢屋の"牢"だと私は思っている。
ちなみに私はもちろん、お姉ちゃん…皐月も転生者だ。その上で地獄に行こうとかバカとしか思えない。
あの後?…お姉ちゃんに勝てる訳も無く、入学式に来てますよ…ちくしょー!
ポジション?もちろんモブですが何か?じゃあ渋らなくても良かったって?…それは、姉のためだったのだ。
私は黒髪のボブでどちらかというとキツめの印象を持たれやすい。つまり、性格で友達になってくれる人は少ないのだ。
一方、姉は同じ黒髪だが、フワフワの癖っ毛を肩まで伸ばしていて、優しいイメージを持たれやすい。その…つまり、モテるのだ。
『何かあったら言ってよ、お姉ちゃん』
「うん、しーちゃんこそ…じゃあまたね?」
…乙女ゲームの舞台なんて冗談じゃない。攻略対象なんざにお姉ちゃんはやらんぞ。シスコン?多いに結構。お姉ちゃんは私が守ってみせる。
…はずだったのに。
「あ、あの…しーちゃん」
『うるさい、…そう呼んで良いのはお姉ちゃんだけだ』
「…シスコン…」
『小声で言うな。絡むな、邪魔』
足を進めながら悪態をつけば、私に絡んできていた少年は顔を歪ませる。つまり…泣きそうになる。
『はあ…なんで泣きそうになる訳?』
「し、しーちゃんに嫌われた…」
『一言も言ってないでしょうが、そんなこと』
「え?好きなの?」
お前の頭はどうなっている。"嫌い"とは言ってないが、"好き"なんて会話に出してすらいないでしょうが!
こんにちは、入学してから2ヵ月経った張間子月です。…コイツの説明、しなきゃダメ?嫌なんだけど…
『深越、私はお姉ちゃんと昼食を食べたいの。違う人と食堂へ行きなさい』
「うん?…僕の名前は四緒なんだけど?」
『深越であってるでしょーが』
「そんなに兄さんと会いたいの?…僕、寂しいな」
ち が う!!確かにお前の名前は深越四緒で、深越三緒はお前の兄貴だから名字は一緒だが、そんなことは言ってない!
『…アンタ、人の話ききなさいよ』
「あ、にーさん?しーちゃんがにーさんに会いたいって…」
『四緒!』
「聞き間違えだったみたい。…ん?ああ、わかった」
コイツ…本当に電話するか!?スマホを上機嫌に仕舞いながら、コイツ…深越四緒はこっちに琥珀色の眼を向ける。
「しーちゃんのお姉さん、兄さんと一緒にお昼食べてるって」
『はあ!?…嘘でしょ、お姉ちゃん…』
お姉ちゃんのクラスへと向かっていた足をピタリと止める。………お姉ちゃんのバカぁ。
お気づきの人はいるでしょうか?…私の横でニコニコしているコイツと、お姉ちゃんの横でニヤニヤしているだろうあやつは乙女ゲームの"攻略対象"なのだ。
深越四緒は後輩キャラ&色気担当の双子の弟、
深越三緒は後輩キャラ&弱虫の双子の兄…のはずだった。
『…はあ、教室で食べるか』
「うんっ、そーだね」
『アンタは弁当持ってないでしょうが。食堂へ行きなさい』
「…いいもん、しーちゃんの姿見てれば満足!」
『きもっ』
抱き付いてくる深越四緒を避けて、私は教室までダッシュした。
深越三緒と深越四緒の性格が違ってるってどういうこと!?
『…本気で何も食べないの?』
「ん?言ったでしょ?しーちゃんの姿見てれば満足、って」
そう言って深越四緒は私の机の前に持って来た椅子にちゃっかり座ってる。…おい、お腹抑えてる手が見えてるぞ。ついでにぐぅ、って音したけど?
『…アンタ、チーズ無理だっけ』
「あ、知っててくれたんだー!」
『…ファンの子達が話してた』
「で、調査しててくれたのー?」
嬉しそうにこてん、と首を傾げるコイツを横目に私は二段弁当を広げた。
おかずの段の2つずつある物の片方は蓋に乗っけて、チーズが入っている物は弁当箱に残しておく。蓋に置いたウインナーに爪楊枝を刺し、白米の段はたて向きに置いて、真ん中で区切る。
『ほら』
「……え?」
『……卵とか、嫌いだった?』
「あ、うん…ううん、全然平気…」
どっちだよ、と思いつつ、私はウインナーを箸で摘まむ。昼休みは大抵皆、食堂へ行ってしまうため教室には私とコイツしかいない。…ちょっと寂しい感じもする。
「…やっべ、…たまんねー」
『美味しいでしょ?お姉ちゃんの手作り』
「…しーちゃんは作ってないのかあ」
『コンロに触らせてくれないし。…そもそも無理』
「そっかあ、残念」
そう言いながらも、深越四緒は幸せそうに卵焼きに爪楊枝を刺す。
「あ、ねえしーちゃん」
『なに』
「優しくしてくれてありがとっ」
『何言ってんの?食ったら帰れ』
「僕のクラスここなんだけど!?」
『ハウス』
「ひどっ…優しさついでにお箸貸してくれない?」
『嫌』
「…爪楊枝じゃお米食べれないんだけど…」
『……素手?』
「鬼なの!?」
…ちゃんと洗ってから貸しましたよ。"優しいから"ね。結局お姉ちゃんは攻略対象に目をつけられるし…これからどうなるんだろう。
「あ、三緒?」
「"どうしたの?四緒にい"」
「いや、しーちゃんのお姉さんはどうかと思って…」
「"すっごい僕の好みドンピシャなんだけど。もらっていいよね?"」
「もちろん。しーちゃんは僕がもらうけどね」
「"全然いいよー。僕は皐月さんが居ればいいもん"」
「容赦ないねえ…じゃあまた、頑張ってね三緒」
「"うん、四緒にいこそ"」
「当然だよ」
続編かお姉ちゃん(皐月さん)と三緒クンのお話書きたい…!
好評だったら………




