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城って無駄に豪華なんだよね

城って無駄に豪華なんだよね、落ち着かない。基本的に私は城には近づきたくない。いつも私をいじめる大嫌いな奴がいるから……。けど、仕方ないのだ、行くしかないのだ。何故なら私とあいつより合わないのが帽子屋と女王様だからだ。女王に会いたくないがために女王が注文した帽子を私に送り届けるぐらい帽子屋は此処を嫌っている。小さくため息をついていつものように門をくぐ。帽子を兵士に渡すと応接間に通され、いつもの声が迎えてくれる。


「よくきたな、三日月ウサギ」


満面の笑みで迎える女王なのにどうみてもナルシストにしかみえない男。いや、ナルシストは威厳のある態度をとるために必要な要素だとジャックはいっていた。もしかしたらこの黒ベースに赤という格好も無理してやっているのかも知れない……可哀想に。しかし、男なのに女王というのはどうかと思う。性別もわからないほど馬鹿なナルシストなのだろうか。なにか理由でもあるのだろうか。


「ウサギ、家畜動物の分際で我に不満でもあるのか」

「……なんでわかるんですか?」

「顔に書いてあるわ!」


いけない、つい表情に出ていたのか。私が思うに帽子屋と女王様は同族嫌悪というやつだと思う。ナルシストとナルシストは反発するものと何かの本に書いてあった。怒りを押し殺してドカッと豪華な椅子に座る女王様と隣でそれをなだめる親衛隊長のエースさん。


「女王様、彼女も悪気があるわけではないのですから」

「しかし」

「…………」

「……っく、わかった」


エースさん何をささやいたんだろう、けどこうしてみると二人って主従関係というよりも信頼関係だよね。エースさんは女の人で城の中で一番綺麗でスラッとしていて剣も強い、それに優しい!私としてはジャックと仲良しなのが信じられない。なんでこんな人が男ではないんだろう……。


などと思っているといきなり後ろから頬をひっぱられ、上に持ち上げられる。痛さにジタバタしながら後ろを睨み付けるとやはり大嫌いなあいつの姿がみえる。青い瞳が挑戦的に此方をみつめる。


「よう、馬鹿ウサギ」


髪の毛は真っ白なくせに腹黒のシロウサギ!自分が1つ年上だからって私をいじめまくる嫌なやつ。


「腹黒ウサギ、私は仕事してるんです。もう貴方の嫌がらせには応じませんから」

「商品を届けるなんてお前以外でもできる簡単な仕事だろ?俺みたい頭を使う仕事でもないからお子様にはちょうどいい」


その瞬間のあいつのどや顔ほんとに嫌い!商品を届けるのだってちゃんとしたお仕事だよ!などと思いつつ、口では絶対に勝てないから涙がでないようにこらえながらあいつを睨むしかない自分が悔しい……。


「こら、シロウサギ。彼女が来なくなったら女王陛下の品物が来なくなるんですよ!」

「大丈夫ですよ、エースさん。来なくなったらジャックに持ってこさせればいいんですよ。あいつは一応向こう側の人間なんですから」


確かに昔は城と帽子屋が敵対してたから(今でも仲が良いとはいけないけど……)スパイという名前の橋渡しとしてジャックは城にすんでいる。帽子屋はどうやらお茶の専売権を持ってるから城も危険視してるらしい。帽子屋がコーヒー好きすぎてお茶は全然家では出されないけど。


「シロ、あんまり苛めてやるな。それに我はジャックには帽子は運ばせんからな。シロ、もしジャックが運んできたら貴様も首にするからな」

「……はいはい、女王様のおきのままに」


エースさんも女王様もほんとに優しい……っていうかジャックなにしたんだろ?と不思議に思うが、忌々しそうな表情で何かを思い出してる女王様に話しかけたら自分に被害がきそうで聞きづらい。すると、エースさんがしゃがんでこっそりと耳元で教えてくれる。


「ジャックはね、女王様のお気に入りの帽子も適当に運んでくるからいつも此方に来るまでに型くずれさせるんだ」


確かに女王様は帽子だけは好きと豪語してよく私服で帽子を使ってくださってるし、ジャックは基本的にモノには無頓着。しかし、なぜそれで私を気に入ったのかと思わずエースさんの顔を見るとニコリと笑い、エースさんが帽子をみつめる。そして、まるでイタズラを相談するような笑みで教えてくれる。


「三日月ちゃんが来てからは型くずれしないし、君とのおしゃべりを女王陛下は最近は楽しみしてるんだ。今日なんか帽子が届くのをウズウズと待ってたしね。三日月ちゃんは帽子屋になぜいるんだ、城に引き取りたいと相談するくらい君は気に入られてるよ」

「おい、エース。無駄なことは話すな」


女王陛下のムッとした声にエースさんは苦笑を浮かべて私から少し離れる。え、ホントですか?と思いながらマジマジと私が女王様をみてしまったからか女王様は咳払いを一つして此方を見づらそうに話す。


「三日月ウサギ、さっさと日が落ちるまでに帰れ。また来週貴様が責任もって我の帽子をもってくるのだぞ……それと、いつでも遊びにこい。貴様なら歓迎してやらんこともない」


最期はふんぞりかえるように言う女王陛下だが、今までの流れでつい帽子屋よりもまともな人だと感動してしまった。凄く嬉しい気持ちで頷くと隣にいたシロウサギが盛大な舌打ちをしてくる。


「早く帰れ、馬鹿ウサギ」

「言われなくても、この腹黒ウサギ」

「夢見がちなお子様は邪魔なんだよ」

「そっちだって好き嫌い激しいお子様舌のくせに」

「「べー!!」」


二人して舌を出すとエースさんが後ろで笑いをこらえて、女王陛下は呆れた顔をする。なんだか恥ずかしくなり、急いで応接間から出ていく。


「あ、ジャックが門で待ってるから気をつけて帰ってね」


後ろからエースさんが教えてくれて足取りが少し軽くなる。一人で帰るよりジャックがいる方が楽しい。


やっぱり腹黒ウサギは大嫌い。……まあ、お城はジャックもいるし嫌いじゃないけど。さて、今日のコーヒーのお菓子はなにかな?なんて、思いながらジャックの待っているお城の門へ続く庭を歩く、それがアリスの出会いとなるとは……。

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