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ほんとにジャックはいけすかない

帽子屋に所属する三日月ウサギは子ども扱いされる日常に不満。ハートの城にスパイとしてもぐり込んでる一応先輩のジャックと超がつくほどコーヒー好きで親じゃないのに三日月に対して親バカな帽子屋。この二人に振り回され振り回す平和な日常の中、ときどきアリスという存在が来ることを知り、楽しみにしてたのに現実はうまくいかないようでやって来たアリスは曲者で……ここはゲームの世界?攻略を手伝ってほしい?アリスに振り回される三日月ウサギが行き着いた結果は……。不思議の国のアリスの世界観の乙女ゲーを舞台に繰り広げられる話。アリスは転生者なので苦手な方はご注意ください。

三日月ウサギはテラスで帽子屋お気に入りのテーブルの帽子屋お気に入りのティーカップにいつものように砂糖を三杯とミルク一杯を入れる。そう、いつものように……。


「三日月、君は何をしているのかね?」


イライラがにじみ出ている帽子屋だが、それも普段通り。そしてその二人をみて嫌な笑みを浮かべているジャックも普段通り。


「え……砂糖とミルクを入れてる」

「砂糖とミルク?貴様は相変わらずコーヒーを侮辱してるのか!コーヒーというのはな、繊細なんだ。個々で風味の違いを出し、飲んでるものに快適な苦味と酸味を……」


三日月は長くなりそうな帽子屋の話を受け流しながらもコーヒーをかき混ぜる。


見た目はカッコいいかも知れないが帽子屋はコーヒーになると可哀想な人になる。コーヒー中毒だし、味を壊すといってミルクと砂糖を入れる度に説教をする。コーヒーの説教だけ一人称が君から貴様になるくらいコーヒー愛用者だし。こんな30代手前にはなりたくないものだと十代後半の自分は思う。それにコーヒーをブラックで飲むなど全然美味しくない。風味よりも甘くて美味しいのにかぎるなどと考えてるとつい考えに夢中になってしまい、相づちがおろそかになってたようだ。


「三日月~、聞いてないのまるわかりだからフリならもう少し上手くやれよな」


ジャックの言葉にパッと顔をあげると、体が怒りで震えている帽子屋が目に入る。思わず自分の耳がピクリとたつ。


「三日月、何か言いたいことはあるかね?」

「……ご、ごめんなさい」

「ほう、それは私のありがたいコーヒーの解説を聞いてないことかね?それともこんな大人になりたくないなどと考えてたことかね?」


思わず体がヘビににらまれたカエルのように固まり、助けるようにゆっくりとジャックを見るが、ジャックは笑みを浮かべて口パクをする。


(自業自得だろ)


ゆっくりと口パクで伝えられた言葉に思わず拳を握りしめるが慌ててそれをほどく。ここで帽子屋に怒りを感じたと勘違いされたら説教が長くなる。というかまためんどくさいぐらいネチネチ言われる。


「君への罰は……帽子屋屋敷にある全おやつを一週間没収」

「没収!?……し、仕方ないよね」

「ああ、おやつを買っても無駄だぞ。君の行動や思考は分かりやすいからな。どうせ、隠れておやつを入手するつもりなんだろう?そうだ、おやつがあるのを発見次第更に一週間延長にしよう」


まるで悪魔の笑いが聞こえてきそうなほどの笑みと言われた内容に思わず呆然とする。


「ひどい、ひどい、この悪魔!変人!コーヒー中毒者!帽子屋なんてずっと変な帽子かぶってお爺ちゃんみたいなしゃべり方のくせに精神年齢子どもだから嫌い!!」

「……ぷっ」

「お爺ちゃん!私はまだ30代……っ、ジャック貴様も何を笑っている。貴様らいい加減に私を敬わんか!特に三日月、私は君の保護者役なのだから……お父さんポジションなんだよ私は」

「誰が保護者よ!お父さんよ!ただコーヒー飲んでるのに茶会とか意味わかんないネーミングセンスだし、コーヒーカップの1つ1つに名前をつけて笑顔で名前呼びながらカップ磨いてるところとかもはっきり言ってきもい!もう私は部屋に戻るから!!」


コーヒーカップを凄い勢いでたたきつけた事を不安に思いつつ、勢いで部屋に戻る。そして布団の中に潜りつつ、窓から恐る恐る外を眺める。反抗期とかなんとか大声で嘆く帽子屋が見えて、少し申し訳なさを感じつつ、結局謝りづらくて部屋に留まる。


しばらくするとトントンとノック音がして、恐る恐るあけるとジャックが笑顔で隙間から覗きこんでいる。


「三日月、ほら」


手にはさっきまでテーブルにあったクッキーの入ったかごがあり、これあげるから入れてくれという意志がみえる。クッキーの甘い臭いが辺りを漂う。誘惑に負けて部屋に入れるとため息と共におでこをコツンと叩かれる。


「あんまり保護者を困らせるなよ。帽子屋が俺から君への餌付けならお菓子は食べていいって」

「……餌付けとは言ってないと思う。それに私はウサギだけどペットじゃないんだけど」

「ほんとのウサギならお菓子は食わないって。帽子屋はお前のこと妹のように可愛がってるけどプライド高いから自分からは渡せないの。謝るなんて出来ないからね~あの人」

「……」


むすっとした気持ちで黙りこむと口元にクッキーを差し出される。少し見上げないと目線が合わない目を見つめると食べるよう促すような視線を送られる。


「子どもじゃない」

「ならさっさと食べて部屋から出てこい。いつまでもいじけてるから子どもなんだよ」

「……ん」


口元のクッキーを口で奪い、食べこんでからジャックを睨むとジャックは笑いながら頭をなでる。このいけすかない兵士は本当に私の扱いか上手い。というか、ムカつくほど人をみてる、


「……一緒についてきてよね、謝るから」

「わかった、わかった」


ほんとにこのジャックはいけすかない。

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