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アイネの疑惑
「悪いけど、ここら辺である程度の広さがあって、人目に付きにくい場所はあるかな?」
「広くて、人目に付かない場所……ですか?」
アイネは平静を装いつつ聞き返した。
どうしてもある不安がアイネの心につきまとう。
「……そんなところでなにを?」
「俺はこいつの師匠だからな。師匠は弟子を鍛えてやるものだろう」
「は、はあ……」
具体性のかけらもない返答に戸惑うアイネ。
本心なのか、わざとこんな言い方をしたのか。アイネの不安感は募っていく。
「……でしたら町外れの空き地はどうですか? ちょっとお待ちください。今地図を書きますから」
そうは言ってもアイネはアスカの要望に対応をするしかない。
傭兵のサポートは傭兵ギルドで働く者の業務内容に入るのだ。
疑惑の眼差しを向けながらも、アイネは手近にあったメモ用紙にペンを走らせるだった。