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1話 拾い者

20才に上京してから3年。


運よく大手企業に就職が決まり、最初は夢と希望に一抹の不安を抱いて上京した。


会社まで電車で25分、6畳、風呂・トイレ付きで月4万の、おんぼろアパート。

それも、私にとってはホワイトハウス以上の物だった。


職場の嫌な上司も、女性同士の汚い関係も何とか耐え抜いた。


仕事だって頑張った。

田舎者の私は皆に認められ出世しようといつも一人で残業して、結果だっていっぱい出した。


そんな生活を3年も続け、彼氏の一人も出来なかった自分へのご褒美。


月15万、日当たり良好な8畳の居間と6畳の寝室に様々なオプション付き。

会社までは少し離れてしまうけれど、私はその部屋に飛び付いた。



そんな私がある日、部屋の前で拾った物。


安崎 茂 14才、中学2年生。

身長150センチぐらい、声変わりもしていないような子供なのだが、結構なイケメン。

しかし、ハッキリ言って天然で今時の東京の中学生とは思えないほど、お子ちゃま。


親と喧嘩して家を追い出されたという事なので、私は初めは捨て犬を拾う感覚で家に上げた。


「友香さん〜、ご飯冷めちゃいますよ〜」


茂が私の顔を覗き込んでいる。


「あ、ごめん」


机の上には茂手作りの豪華な料理の数々が並んでいる。

私はその中の私用の麻婆豆腐へと箸を伸ばす。


「おいしいですか?」


「ん〜、38点」


なんて心にも無い事を言ってみる。

本音を言えば、その辺の店で食べるよりもずっと美味しい。

お金を出してでも作り方を教えて欲しいぐらいだ。


「すいません!僕辛いの食べられないから、味見出来なくて・・・」


茂は私の言葉を真に受け、本気で落ち込んでしまう。

私は茂みたいなイケメンの落ち込んだ姿が大好きで、たびたびこうして意地悪している。


しかし茂も中2にもなって、これぐらいの物が食べられないなんて。

相変わらず、幼稚園児のような可愛い味覚している。


「甘いかもしれないですけど、こっちなら自信あるので」


茂用の麻婆豆腐が私の目の前に出される。

小学校の給食のよりも甘そうだ。


「大丈夫、38点で我慢するから」


私はスプーンで麻婆豆腐をすくいご飯にかけ、麻婆飯にする。


「チンジャオロースも食べてみてください!」


「あいよ〜」


必死になる表情も、なかなか。



茂を拾って来てよかったこと、それは3つある。


1つ目は言うまでも無いと思うが、食事だ。

今まではコンビニ弁当だったが、茂が来てからは毎日お店並の料理を食べている。


2つ目は癒しだ。

毎日家に帰るとイケメンが「おかえりなさい」と言ってくれるだけでも嬉しいけど、落ち込んだ表情やマッサージしてくれたりなどと挙げていったらキリが無い。


3つ目はちょっと暗いが、ゲームの相手ができたこと。

私は昔から格闘ゲームが好きで、高校時代は私に格闘ゲームで勝てる人はいないと思っていたぐらいだ。

そんなの私の最近の趣味は茂に毎日少しづつ格闘ゲームを教えること。

成長していく姿を見るのが、なかなか楽しい。


「ねぇねぇ、あとでさぁゲームしよっか?」


私にとっては正直3つ目が1番嬉しいかもしれない。

なんかオタクっぽくて嫌だな。


「いいですよ!」


茂も結構乗り気のようだ。

そうと決まれば、急いで食事を終わらせなければ。


「友香さん、もっとゆっくり食べてください」


そんなこと言われても、今日は残業もしないで早く帰って着たんだ、1秒たりとも無駄にできないんだ。

茂の言うことを無視して、早々と食事を終わらせる。


「茂も早く!」


「まってくださいよ〜」


茂も慌ててご飯を食べている。

私は、その間にゲームの準備をしておく。


「あと8分以内に食べ終わらなかったら、家から追い出すぞ〜」


「むひれすよぉ」


口にご飯を詰めて喋るから、上手く喋れていない。



初恋愛物なので、生暖かい目で見守って下さい。

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