7話
昼休みの教室は、いつもより賑やかだった。文化祭の準備も終わり、試合も一区切りついたことで、クラス全体が少し浮かれた空気に包まれている。武田聡太は弁当を広げ、友達と談笑していた。だが、その視線の先には竹田沙織がいる。彼女は女子グループと笑いながら話しているが、時折ちらりと聡太の方を見てくる。その一瞬が、聡太の心臓を跳ねさせる。
「なあ、聡太。」
隣の席の友達が声をかけてきた。
「お前ら、付き合ってるだろ?」
その言葉に、聡太は弁当の箸を落としそうになった。周囲の友達も「え、やっぱり?」とざわめき始める。
「ち、違うって!幼馴染だから仲がいいだけだよ!」
慌てて否定する聡太。だが、友達はニヤニヤしながら続ける。
「でもさ、文化祭の準備のときも息ぴったりだったし、試合のときも沙織、泣いてたろ?あれ、どう見ても彼女の反応じゃん。」
聡太は冷や汗をかきながら必死に言い訳する。
「だから幼馴染なんだって!小さい頃から一緒だから、自然にそうなるんだよ!」
---
放課後。バスケ部の練習が終わり、体育館の片付けをしていると、沙織が近づいてきた。
「ねえ、今日の昼休み、聞こえちゃったよ。」
「……ああ、あれな。」
「みんなに疑われてたでしょ?」
「必死に誤魔化したよ。幼馴染だからって。」
聡太はため息をついた。沙織はくすっと笑う。
「便利だね、幼馴染って。」
「便利すぎて、逆に怪しまれてるけどな。」
二人は顔を見合わせ、同時に笑った。だが、心の奥では少し不安が広がっていた。秘密の関係が、少しずつ周囲に滲み出している。
---
帰り道。夕焼けの中、二人は並んで歩く。人通りが多く、手を繋ぐことはできない。だが、昼休みの出来事が頭から離れない。
「……もしバレたらどうする?」
聡太が小声で尋ねる。沙織は少し考えてから答えた。
「そのときは、そのときだよ。大事なのは、私たちが一緒にいることなんだから。」
その言葉に、聡太の胸は温かくなる。だが、同時に頬が赤くなる。沙織はその様子を見て、また笑った。
「ほんと、いちいち照れるよね。」
「……悪いかよ。」
「悪くないよ。そういうところ、好きだから。」
聡太はさらに赤面し、視線を逸らした。夕焼けの光が二人の影を重ね、秘密の関係を優しく包み込んでいた。




