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言い訳は「幼馴染」  作者: 双鶴


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19/22

19話

三月の柔らかな風が校舎を包み込む。桜の蕾はまだ固いが、春の気配は確かに近づいていた。武田聡太は、鞄の中に忍ばせた小さな包みを何度も確認していた。ホワイトデー――バレンタインで沙織から本命チョコをもらった以上、きちんとお返しをしなければならない。だが、渡すタイミングが難しい。


昼休み。教室はいつものように賑やかだ。友達が「今日はホワイトデーだな。お返し用意したか?」と冷やかす。聡太は慌てて笑いながら答えた。

「まあ、幼馴染には渡す予定だよ。」


その言葉に、友達は「やっぱり仲いいな」と笑った。だが、聡太の胸は跳ねていた。幼馴染という言い訳に隠された本当の気持ちを、今日こそ伝えたいと思っていた。


---


放課後。体育館の片付けを終え、夕焼けが差し込む廊下で、聡太は沙織を呼び止めた。


「ちょっと、いい?」

「なに?」


沙織は不思議そうに首をかしげる。聡太は鞄から小さな包みを取り出し、差し出した。


「これ……ホワイトデーのお返し。」


沙織は驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。包みを開けると、中から出てきたのはシルバーのペン。細身で、手に馴染むデザイン。キャップには小さな星の刻印が入っている。


「……これ、すごく綺麗。」

「勉強のときに使ってほしいと思って。」


聡太は照れくさそうに視線を逸らした。沙織はペンを握りしめ、頬を染めながら笑った。


「ありがとう。大事にするね。」


---


沈黙が流れる。沙織が小さな声で続けた。

「でも、みんなの前では“幼馴染だから”って言うんでしょ?」

「……そうだな。でも、心の中ではちゃんと“彼女”って呼んでる。」


沙織は驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。

「なら、許してあげる。」


二人は目を合わせ、夕焼けの光に包まれた。秘密の関係は、ホワイトデーのお返しによってさらに強く結びついていった。


---


帰り道。夜の街は春の気配を漂わせていた。二人は並んで歩きながら、ペンの話を続ける。


「ねえ、このペン、試験のときに使うね。」

「……緊張するな。」

「でも、私が使ってるって思えば、聡太も頑張れるでしょ?」


沙織の笑顔に、聡太はまた赤面した。胸の鼓動は速いまま。だが、その鼓動こそが、二人の秘密の証だった。


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