15話
冬の体育館は冷たい空気に包まれていた。バスケ部の練習試合が終わり、部員たちは汗を拭いながら片付けをしている。武田聡太はタオルで顔を拭き、ベンチに腰を下ろした。そこへ、見慣れない女子が近づいてきた。
「お疲れさま。すごいプレーだったね。」
声をかけてきたのは、相手校のマネージャーだった。長い髪を後ろで束ね、爽やかな笑顔を浮かべている。聡太は少し驚きながらも答えた。
「え、あ、ありがとう。」
その様子を、竹田沙織は少し離れた場所から見ていた。タオルを片付けながら、視線をちらりと聡太に向ける。胸の奥に小さなざわめきが広がる。
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試合後の挨拶が終わり、体育館の外に出る。相手校のマネージャーは再び聡太に声をかけた。
「今度、練習試合でまた会えるといいな。」
その言葉に、聡太は曖昧に笑って頷いた。沙織は横で黙っていたが、心臓が少し速くなっていた。
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帰り道。夕焼けの中、二人は並んで歩く。沈黙が続いた後、沙織が口を開いた。
「……さっきの子、すごく楽しそうに話してたね。」
「え?ああ、ただの挨拶だろ。」
「そうかな。」
沙織は少し拗ねたように視線を逸らす。聡太は慌てて言葉を探した。
「俺にとっては……沙織が一番だから。」
その言葉に、沙織は驚いた顔をしたが、すぐに頬を染めて笑った。
「……そういうこと、もっと早く言ってよ。」
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翌日。昼休みの教室で、友達が冷やかすように声をかけてきた。
「昨日の試合、相手校のマネージャー、聡太にめっちゃ話しかけてたよな。あれ、怪しいんじゃない?」
周囲がざわめく。聡太は慌てて答えた。
「ち、違うって!ただの挨拶だよ!幼馴染の沙織と仲がいいだけだから!」
沙織は笑顔で頷いたが、心の奥では「幼馴染って言い訳ばかりだな」と少し複雑な気持ちを抱えていた。
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放課後。体育館の片隅で、二人は片付けをしていた。沙織がふと口を開く。
「ねえ、幼馴染って言い訳、そろそろ限界じゃない?」
「……そうかもな。」
聡太はタオルを握りしめながら答えた。
「でも、バレたら困るだろ。」
「困るけど……私は、彼女として見てほしいんだよ。」
その言葉に、聡太は息を呑んだ。沈黙が流れる。だが、心臓の鼓動は確かに二人を結びつけていた。




