13話
12月の教室は、色とりどりの飾りで華やかに彩られていた。窓際には小さなツリーが置かれ、黒板には「Merry Christmas!」の文字。クラス全員が集まり、恒例のクリスマス会が始まろうとしていた。武田聡太は、机の下に隠したプレゼントを握りしめていた。中身は、シンプルなマグカップ。誰に当たるか分からないから、無難なものを選んだつもりだった。
一方、竹田沙織は小さな包みを抱えていた。リボンで丁寧に結ばれたその箱は、どこか特別な雰囲気を漂わせている。
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プレゼント交換が始まる。音楽に合わせてプレゼントがぐるぐると回され、曲が止まった瞬間に手元にあるものが自分のものになる。聡太の手元に残ったのは――沙織の包みだった。
「え……」
思わず声が漏れる。沙織も驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。
「偶然だね。」
周囲のクラスメイトは「おー、幼馴染だから引き寄せられたんじゃない?」と冷やかす。聡太は慌てて笑いながら答えた。
「ち、違うって!ただの偶然だよ!」
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包みを開けると、中から出てきたのは革のしおりだった。名前のイニシャルが刻まれている。聡太の「S」と、沙織の「S」。
「……これ、俺の?」
「うん。勉強のときに使えるでしょ。」
沙織はさらりと言った。だが、その瞳は少し照れている。周囲の友達は「え、なんか特別じゃない?」とざわめいた。
「幼馴染だから、名前知ってるだけだって!」
聡太は必死に誤魔化す。だが、心臓は跳ね続けていた。
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会が進み、ケーキやジュースが配られる。クラス全員が盛り上がる中、聡太と沙織は隅の席で小声で話していた。
「……ほんとは、私が渡したかったんだよ。」
「え?」
「プレゼント交換じゃなくて、直接。」
沙織は少し頬を染めて笑った。聡太は言葉を失い、ただしおりを見つめる。革の質感が、彼女の想いを伝えているように感じられた。
「……ありがとな。大事にする。」
その言葉に、沙織は嬉しそうに頷いた。
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会が終わり、帰り道。夜の街はイルミネーションで輝いていた。二人は並んで歩きながら、しおりの話を続ける。
「ねえ、あれ、バレそうだったね。」
「ほんとだよ。心臓止まるかと思った。」
「でも、ちょっとくらいならいいでしょ。」
沙織は笑った。その笑顔に、聡太はまた赤面する。クリスマスの夜は、幼馴染という言い訳に隠された恋人同士の秘密を、さらに強く結びつける時間になった。




