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こんにちは太陽。おやすみ世界。

作者: 出雲 寛人

灰色の雲が日差しを遮り、パラパラと雨が降り続いている。


いつから世界はこんな風になってしまったのだろう。


生まれてから一年もしないうちに一生が終わる。


それは、ルールが変わったからだ。


結果を選んでから原因がついてくる。


例えば僕が高校生になった時、すぐに決断を迫られた。


大学へ進学するか、就職するか、はたまた別の道か。


大学進学を選び、すぐに行く大学を決めた。


するとその瞬間にその大学の入学が決まっているのだ。


日時を確認すると、4年が経っていた。


浪人したか…。


そう、この世界では、結果を選択するのが先、そうなるための原因が後からついてくる。


大学入学を選択して、その結果に伴うための原因として、4年間という月日が費やされた。


その間の疲労感や満足感、葛藤や合格した喜びは心身で感じている。


この4年間のことを思い出そうと思えば些細なことでもすぐに思い出せる。


しかし僕が実際にしているのは“結果の選定、決断”だけである。


どうしてこの世界になったかは授業で習った。


面倒臭いことが嫌いな人がいて、その人がこういう世界の仕組みを作ったようだ。


なにか目標にたどり着くためのプロセスを行うことが面倒臭い。結果を決めたら自動的にプロセスが行われているのがいい。そう思ったらしい。


結果を決めてプロセスが行われるのはいいが、その後に思い出した時の感情や出来事は本当のことなんだろうか?


決断だけで終わる人生、何をどのようなタイミングで決めてもいい。


僕は一瞬で未来へ飛ぶこの世界よりも、毎日を噛み締めたいと思う。


そう考えて決断したのは、“元の世界に戻す”ということ。


つまり、原因の後に結果が来る世界。


そう決断した瞬間に、僕は走馬灯を見た。


そして98歳になっていた。


ああ、僕1人の人生ではどうやら達成出来なかったらしい。


今でもまだパラパラと振り続けている雨の日、僕は友達や家族、花束に囲まれて天国へ行った。


不思議なことに、天国からも現世は見えるらしい。


どれどれ。


僕はゆっくりと世界を見ていた。


すると、走馬灯を見て天国に行く人が急激に増えたことが分かった。


どうやら僕の一生のうちに誰かに影響を与え、その誰かがまた次の誰かに影響を与え、僕の意思が次々と伝わっていっていたのだ。


そして数年後、元通りの原因の後に結果が来る世界が訪れた。


僕は僕が生きているうちにはその世界に変えることはできなかった。


しかし、無駄ではなかった。意思が伝わることで世界は変えられる。


どうやら天国にいても眠気は来るようだ。今までは全くそんなことなかったのに。


瞼を閉じればこの天国ライフも終わるような気もするが、それも悪くない。


意識を失うほんの一瞬前、灰色の空から陽光が差し込んできたように感じた。


その温かみは僕を成仏させるには十分な温度であった。


こんにちは太陽。


おやすみ世界。

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