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空色杯「五百文字未満の部」参加作品

彼女が求める空の色

作者: 野中 すず

 五百文字制限企画の為に書きました。

 テーマは「空色」です。

「マミ、死んだ爺ちゃんが言ってたんだけど、昔は空って青かったらしい」

 ロイは隣に立つマミに語りかけた。


 焦土と化した街。

 世界規模での戦争。

 舞い上がった粉塵により太陽の光は届かない。


 ロイは見上げる。

 真っ黒な空。破壊による赤、オレンジが時折走る。

明日(あす)、僕も出撃だ。僕達は勝つ。戦争が終われば……」

 ロイはマミの顔を覗く。

 少し膨らみ始めた腹を覗く。

「いつか青い空ってのを見れるかも知れない。その時、僕がいるかは分からないけど……。君と僕達の子供が見れるなら本望だ」

 沈黙を守り続けていたマミが口を開いた。


「カア――――」


 ロイは驚く。

「マミ?」

「カラスの真似よ」

「なっ、なんで……?」

 マミは瓦礫の上を指差す。

 カラスが一羽。


「あのカラスに話しかけたのよ。『私の隣のバカを殴っていいか?』って」

 ロイは話についていけない。

「カラスの返事は『殴れ』って」

 マミは視線をカラスからロイへ移す。


「あなたがいない世界で青い空を見て、(なん)になるの? あなた卑怯だわ。ただの自己満足」

 ロイはマミの涙に気付く。

「同じ卑怯なら、逃げて隠れて仲間を裏切ってでも生きて帰ってきてよ。黒い空のままで私は構わない」


 

 ――カラスが瓦礫から飛び立った。


 



 

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― 新着の感想 ―
カラスの黒と、空の青。 対比が見事。 そしてカラスは不吉の象徴ですよね。 それに対して、そんな風に思った。 「負けるもんか」って気持ちがそれで表現されてて 明確に言葉に出すよりも胸に迫ってきます。…
男女間の考えの違いが良く表現されていると思います。男性はロマンティスト、女性はリアリストが多いそうです。わたしはいつもぽやーんとしているからどちらでもないですが(笑) ほんとに生きて帰ってきて欲しい…
「あなたがいない世界で青い空を見て、何なんになるの?」 という台詞がすごく刺さりました。 仕事上「将来世代に遺す」ということを意識することは多いのですが、現役世代の犠牲前提なんて正しいわけがなくて、今…
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