今はとても幸せですが、ふとした瞬間の過去の出来事を思い出すこともたまにはあります。
「ティアラさん、今日も良い天気ですね」
「おはよう。ええ、そうね。とても良い天気。柔らかな日射しが心地いいわ」
私ティアラはとある国の姫だ。
現在は貴族の出の男性と結婚し幸せに暮らしている。
ただ、ここへ至るまでには、大きな苦難があった。
「アディントは快晴が好きね」
「はい」
「貴方の性格に似ているから……かしら?」
「いやそれはありません」
「そこは否定するのね」
「自分の性格はそこまで晴れやかではありませんので。さすがに評価していただきすぎです」
かつて私は近くの国の王子と婚約していた。
しかし王子には既に愛する女性がいて。
それゆえ私は常に邪魔者として扱われており、心ない言葉をかけられたり嫌がらせされたりといったことも多かった。
だがそれも仕方のないことと思っていた私は我慢していたのだけれど――ある時食事に毒を混ぜられて、死にかけ、その時ついに悟った――私の存在の邪魔さというのは無理矢理殺してでも消したいほどだったのだ、と。
……そこまで嫌がられているのならもう彼から離れるしかないだろう。
そう考えて、私はすべてを明らかにした。
それまでされてきたこと。
意地悪な発言。
嫌がらせ行為。
などといった、不快にさせられてきたことを。
そしてついに毒物による殺害を試みられたことも親や周囲の人へ明かした。
すると私の父は激怒。即座に婚約を破棄する方向で動き出してくれて。父をはじめとして周りの人たちも協力してくれ、おかげで、私は近くの国の王子から離れることができた。
「評価、って……もう、そういう話じゃないでしょう」
「失礼しました」
「もうっ。いちいち真面目なんだから。冗談交じりに言っただけのつもり、謝る必要なんてないのよ」
「ですが」
「それに、私は貴方を愛しているもの、貴方の人柄を評価しているか否かと言われれば評価しているとなるわ」
「ありがとうございます」
ちなみに元婚約者となった王子はというと、後に、愛している女性と結婚しようとするも女性の出のことで親と揉めて勘当されたそうだ。
彼は愛のために王子という位を捨てたのである。
ただ、それでもその女性とは上手くいかず、結局その女性とは離れ離れになってしまったそう――悲しいことだがそれが定めだったのだろう。
また、噂によれば、女性と離れることとなってしまった際に彼は心を病んでしまったそうで。以降彼が表舞台に出てくることはなくなったらしい。かつては王子として民からも知られていた彼だが、今の彼はもう何者でもなく、また人の目に触れることもほとんどない。
「……まぁ、私には貴方のすべてを評価する権限なんてないのだけれどね」
「いえいえ。こうして褒めていただけることはとても嬉しいことです。感謝しています」
◆終わり◆