婚約者である彼は意地悪な人でした。〜何があろうとも幸せにはなれます〜
婚約者である彼は意地悪な人だ。
ゆえにいつも私に対して心ない言葉を吐いてくる。
顔を合わせたタイミングで「相変わらずだせぇなぁ」「何だお前くっだらねぇ女だな」などと言われるのは日常茶飯事だった。
そんな彼が、ある日。
「お前との婚約だけどさ、破棄するわ」
唐突にそんなことを言ってきた。
「婚約破棄……ですか?」
「ああそうだ」
「それはまた、急ですね」
「俺はこれまで妥協してお前に付き合ってきた。が! お前は一向に努力しない。努力しようという努力が見えない。そんなやつの相手なんかしていられるものか! 俺だって暇人じゃないんだ」
「は、はぁ……」
「俺はもっとレベルの高い女性と結婚する。なぜならそれが俺に相応しい道だからだ」
……などと、好き放題言われて。
「だからすべてここまでにしよう」
こうして私はほぼ強制的に関係を終わらせられたのだった。
◆
あの唐突な婚約破棄から数ヶ月。
私のもとには良さげな人からの結婚を見据えての交際希望が届いた。
それで一度会ってみて。
すると想像していた以上に気が合いそうだったので、徐々に距離を近づけてゆくこととなった。
私たちが親しくなることを制止する者はいない。
まだ始まったばかりの関係だけれど、今は希望を信じ見据えることができている。
この先に幸せがある、と。
そう思えるから。
進むことを躊躇わずにいられるのだ。
一方、あの元婚約者はというと、婚約破棄後少しして見た目がとても良い女性と婚約したそうなのだがその女性は実は性格が最悪な女性だったらしく、尻に敷かれ虐められといった感じで痛い目に遭い続けることとなっているらしい。
見た目だけで判断するからそんなことになるのだ、と思ったけれど。
ただ、彼のような人にそう言ったところでその心にはきっと届かないだろうから、自分の考えは自分の中だけにしまっておこうと思う。
◆終わり◆