私は貴方を愛していました。〜すべて終わったその後で〜
私は貴方を愛していました。
婚約者である貴方を。
けれども貴方は他の女性へ目を向けて、私だけを愛することはなく、ただふわりふわりと根のない植物のように生きていて。
そんなだから、私たちは同じ道を歩けなくなってしまったのですね。
初めて貴方に出会った日のこと、きっと貴方はもう忘れているのだろうけれど、私は今でも鮮明に思い出すことができます。
その瞳に。
その笑みに。
この心は貫かれて。
雷が落ちたかのように、とても衝撃的な、そんな幕開けでした。
この人とならもしかしたら――そんな希望を抱いたことを覚えています。
だからこそ、こんな結末は悲しく思うのです。
互いを見つめ合えていたなら。互いを大切にしながら歩めていたなら。きっと、いえ、間違いなく、私たちには幸せな未来があったはずなのに。
そう思ってしまうから、切ないのです。
私たちの特別な時間は終わりました。霧のように。いつの間にか溶けるように消えて。残されたのは何もない私だけ。
そこには、無、しかなく。
記憶も、愛も、幸福も。そのすべてが、何もない、になってしまったのです。
その現実を見つめる時、ふと悲しみがこみ上げて、涙が出そうになることもあります。
ただ、それでも人はただひたすらに生きるもので、時は淡々と過ぎてゆくもの。
だから私も今日という日を生きてゆくのです。
◆終わり◆