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婚約者がとてつもない遊び人でした。〜貴方にはさようならを告げます〜

 いつも私のことを好きだと言ってくれていた婚約者エンガーだが、実は裏で複数人と浮気していた。


 ……否、正しくは、彼は誰にでもそういうことを言う人だったのだ。


 酒場で知り合った女性には「愛してる」「僕には君だけ」などと甘い言葉をかけ、偶然居合わせて落としたりんごを拾ってあげた女性には「君の家、行ってみたいなぁ。だって、君のこと、特別に想ってるから。好きだから」なんて言って深い仲を目指し、昔の友人の妹には「僕と一緒にならないかい?」「僕なら君を世界で一番大事にできる」などと誘惑。


 ……と、エンガーはそんな最低な男性だった。


 彼は誰にでも甘い言葉をかける。普通なら恥ずかしいようなことでもさらりと言ってのける。そうして器用に相手の心を奪い、望み通りに動かしたり自分の欲を満たすための道具として利用したりするのだ。


「エンガーさん、最低ですね」


 そんな人と生きてゆけるか? 人生のパートナーとして。夫婦として。……答えはノーだろう。当然だ、明らかに信用できないのだから。その真実を知らなければ? となれば話は変わってくるだろうけれど。彼の本性を、本質を知り、それでもなお彼を人生の唯一のパートナーにできる者など稀だろう。


「婚約は破棄します。……さようなら」


 だから彼には別れを告げた。

 幸せになれないと分かりきっているのに彼と生きる道を選ぶほど私は勇者ではない。



 ◆



 あれから五十年。

 私は子にも孫にも恵まれて今はとても幸せに暮らしている。

 振り返れば様々なことがあって、良いことも悪いことも経験してきたけれど、そのすべてが今の私という存在を築いているのだから無意味だったことなんて一つもない。


 今ここにある幸せを築いたのも、これまで出会ったすべての出来事なのだ。


 ああ、そうだ、そういえば。

 あのエンガーという男だが、彼は奇病を患い若くして亡くなったそうだ。

 三十歳になることなく彼はこの世を去ったと聞いている。しかもその最期の姿はとてつもなく壊れ果てたもので。お世辞にも美しいとは言えないような状態だったらしい。


 ……ろくでもないことばかりしてきた彼には幸せな未来はなかったようだ。



◆終わり◆

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