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婚約破棄されてからちょうど一週間が経ちましたので、新たな未来への第一歩を踏み出します!

 婚約者だった青年モルクスに婚約破棄されてから一週間。異性の幼馴染みであるカットカを久しぶりに家に呼んでみた。カットカとはもう数年会っていなかったのだけれど、事情を話して誘ってみたところ来てくれて。住み慣れた我が家にて、二人、お茶会をすることとなったのだった。


 今日はとても天気が良い。

 窓の外に広がる景色も穏やかな光に包まれている。


「誘ってくれてありがとな、ルージェ」

「いえいえ」


 カットカとこうして向かい合うのはいつ以来だろう?


 そういえば、だが。

 振り返ってみれば昔、彼と結婚できたら、なんて思っていた頃もあった気がする。


 ……もっとも、その夢はモルクスとの婚約によって、永遠に夢のままとなることになってしまったのだけれど


「けど急に連絡来たからびびった」

「ごめんなさいね、急に」

「いやべつに嫌とかってわけじゃないんだけどさ。でももう二度と二人で会うなんてことはないだろうって思ってたから」


 ここまで歩いてくるのは大変だった。

 けれども今はようやく穏やかな日常を手に入れられている。


 いつまでもこんな風でいられたらいいのに。


「そうよね……。だって私、もうすぐ、結婚するはずだったんだもの……」


 つい呟いてしまい。


「まずいこと言っちまったか!? ごめん!!」


 それを聞いて、慌てた様子で謝ってくるカットカ。


「いいのよ気にしてないわ」


 責めるつもりなんてなかったのだ。


「何となく思って呟いてしまっただけなの」

「そっか……」

「気を遣わせてごめんなさいね」

「いやいや、気を遣うのは当然のことだからさ、謝んなって」

「そうね。……お互い、ね」


 ちなみにモルクスはというと、現在は牢屋に入っている。

 なぜなら私の父を殴ったからである。

 身勝手な婚約破棄の件で文句を言いに行った私の父を彼は殴った――で、彼は、付近の人の通報によって現行犯逮捕された。


 幸い父の負傷は大したものではなかったのでそういう意味では大きな問題はない。


 ただ、モルクスは社会的評判を地に堕としたし、今後牢から出られる時が来たとしても社会や人々からそういう目で見られることはどうしても避けられないだろう。


 でもそれは可哀想なことではないのだ。

 たとえ今後彼が幸せになれなくてもそれは単なる自業自得というもの。


「そういえばなんだけどさ」

「ええ、何?」

「ルージェ、今度一緒にお出掛けしてくれないか?」

「お出掛け?」

「そうそう」

「ええと……どういうところへ行くつもり?」

「ショッピングとか」

「ああ、そういうのね! ならいいわね。行く行く!」

「良かった。ありがと、助かる」


 私はもう振り返らない。

 過ぎ去ったものはすべて過去という川へ流す。


「でもカットカがショッピングに出掛けたいなんて珍しいわね。何か企みでもあるのかしら」

「ええー、なんか疑われてる?」

「変な意味じゃないの。ただ、男の人って、あまりショッピングとか好きなイメージじゃなかったから」


 ――そして、未来へと。



◆終わり◆

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