《 破綻の幕開け 》
「魔獣」に対する対処の遅れをエステルに指摘された『守護者』は焦っているようです
「一体何が起こったんだ!!」
爆発音と同時に装置から黒煙が立ち上り、接続している原子炉二基が緊急停止した。技術士官達がモニターに映し出されるデータを食い入るように見つめるが、事態を把握出来ずにいた。
数か月前、オゾン層の汚染物質濃度が急激に増し地表への影響が懸念された為、再び『時間操作』を行うことが決定された。
「どうでしょう博士、目標年代を更に過去にした方が清浄な状態になるのではないでしょうか?」
技術スタッフを纏めるランドルフ少佐が科学顧問のイアン・モードレッド博士に尋ねた。彼はこの計画の当初のスタッフだったトーマス・モードレッド博士の曾孫でもあった。
「当初設定された年代も汚染物質等は存在しない時代です。ただ、私の曽祖父がその年代が最適とした理由が資料には残っていないのです。私も色々と調べてはみたのですが・・・」
モードレッドは曽祖父が誤った計算をしたとは思いたくなかった。
「しかし、現に汚染が除去出来ずにいるではないですか。ここ100年の間に行われた『時間操作』はいずれも同じ年代に設定していたのでしょう? 今回それを繰り返しても同じ結果になるのではありませんか?」
ランドルフ少佐はこれ以上の失敗は許されないと口調を強めた。
オゾン層に蓄積された汚染物質が次元の歪みを誘発し、遠い過去から『魔獣』が現れると100年ほど前に定義づけられてから、幾度もオゾン層の除染が試みられたが、まったく功を奏していないのだ。世界各地から寄せられる『魔獣』による被害増加の報告、特に欧州の小国コンウェルからの鋭い苦情にランドルフは頭を悩ませていたのだ。
「分かりました。では300年ほど設定年代を繰り下げましょう」
モードレッドは渋々変更を承諾した。
そして、初めての年代設定にて実施した結果が装置の爆発だったのだ。
「汚染物質の除去は出来たのか? データはどうなっている!」
月基地でモニターを見ていたランドルフが叫んだ。次々と送られてくる観測機器のデータがコンピューターで処理されてゆく。
「失敗です!! 返って濃度が増した箇所が複数見られます!!」
観測係が叫んだ。
「どういうことだ、除去するどころか濃度が増しただと!? 博士、何故こんなことに!」
ランドルフは隣でモニターを食い入るように見つめるモードレッド博士の肩を掴んだ。
「完全に稼働する前に装置が爆発したのだ、オゾン層に影響が及ぶとは考えられん。どのコンピューターもこんな予測はしていない・・・ こんな事、あり得ないのだ・・・」
呆けたようにモードレッドは呟き続けた。




