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《 謀反の真相 》


アレックスはマンチェスター子爵領にいた。カーライル港の沖合で荷を受け取った船を突き止め、船主を見張っていたのだ。


「アレックス様、確かに荷は倉庫に運び込まれましたが、動かす様子はありません。今回の参拝は襲撃対象ではないのでしょうか?」

数日間倉庫を見張っている部下がアレックスに問いかけた。


「後手に回っている我々が動かぬ証拠を掴むまで、奴らが動き出さぬよう願うが・・・ 」

アレックスは顔を曇らせた。自分ならこんな好機を逃す筈はないのだから。


アレックスは強硬手段に出た。夜陰に紛れて倉庫に忍び込んだのだ。

(これまでに購入した物も確認したい。もし、ここ以外に保管場所があればそこから既に襲撃場所に運ばれていることも考えられる)

アレックスの勘が早く確かめるべきだと訴えていた。


倉庫に入り東方の文字が書かれた箱を探していると、足音が聞こえドアの施錠が外された。

「親方、これを今頃運ぶんですか? 今からじゃ間に合わないのでは」


「これはお屋敷に運ぶ。あっちは思ったより平らな所が狭く、置く場所がもう無いらしい。万一、事が露見してお屋敷に軍が押し寄せた時にでも使うのだろう。まぁ、これまで見つからなかったんだから、足が付くことは無いと思うがな」

二人の男が話しながら、箱を二つ持ち出した。


アレックスは直ぐにでも二人を取り押さえ『あっち』とは何処なのかと問い質したかったが、黒幕を突き止めるまではと思い留まった。その判断が取り返しのつかない事態を招くとは、その時のアレックスは知る由もなかった。


二人が箱を荷馬車に乗せ走り去ると、アレックスは近くに隠してあった馬に飛び乗り後を追った。近くの茂みから様子を窺っていた部下二人もアレックスの後を追う。荷馬車はマンチェスター子爵領を出て西へ走り続けた。男達が荷を運び込んだのはウィリアム王即位に伴い軍務大臣を退任したウォルター・ハロルド男爵の領地だった。


「何故ハロルド卿が・・・」

アレックスは絶句した。ハロルド男爵はウィリアム第一王子に剣術指南役として仕えた人であり、軍事に関する師であった。大臣の世代交代を考え、先王よりも高齢であるハロルド男爵には大臣職を引退してもらったものの、名誉顧問としてウィリアムは礼を尽くしていた。


余りに意外な人物の登場にアレックスは戸惑った。確実な証拠を握らぬ限り彼を糾弾することは出来ない。一時間ほどすると荷馬車が館を出て来た。マンチェスター方面に戻る荷馬車を尾行し、人気のない場所で船主と部下を拉致した。


「お前達が密輸した武器を何処に運んだ! すぐに吐かないと只では済まさんぞ!」

アレックスが船主の胸倉を掴んで詰問した。


「何のことだ? お前らこそ空の荷馬車を襲うとは間抜けな強盗だな」

船主はしらを切り通す。


「こいつを見張っていろ」

船主を部下に投げつけると、アレックスはもう一人の男を死角へと引き摺って行った。


「お前、命は惜しいよな? 俺は気が短い、直ぐに答えなければ下っ端のお前は直ぐに処分する。良いな、一度しか聞かないぞ! 密輸した武器はさっきの館以外何処に運んだ? 何処で使うつもりだ!」

アレックスの剣幕に男は震えあがった。


「あ、あの・・・ 王都の西の山って・・・ 俺は行ってないからどの山かは知らないです! ホントです!! 俺は積み込む時に手伝っただけで・・・ ホントですって!」


(王都の西? 王墓廟への道筋で山間を通る道はない・・・ 狙いは別の日なのか? いや、そんなはずはない。だとしたら・・・ )

「まさか!!」

アレックスは男を突き飛ばして叫んだ。

(まさか、それほどの射程距離があるというのか・・・ 渓谷奥の山から街道の馬車を狙えると・・・ しまった!)

アレックスは部下に船主たちの拘束とハロルド男爵邸の監視を命じると、王都へ向け馬を駆った。


(何故だ! 何故ハロルド男爵が謀反など・・・ )

鞭を振るい馬を全速で走らせながらアレックスは考えた。ハロルド男爵は先王も絶対の信頼を置いていた人物で、ウィリアムの事もとても可愛がっていた。大臣を罷免されたことが引き金とは思えない。その時アレックスの脳裏に、ある記憶がよぎった。フィリップの出生について調べた書類にハロルド男爵家の名があったような・・・


(俺は何をやってる! 今は陛下の安全だけを考えるんだ!!)


今からではウィリアム達の出立前に王都に着くのは絶望的だ。アレックスは一縷の望みを託し、愛馬にさらなる鞭を入れた。




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