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《 王城襲撃 》


「エステル、子供達の具合はどうだい? 少しは良くなった?」

ジョージが双子を看病するエステルを訪ねて来た。


「ジョージ様、お呼び立てして申し訳ありません。子供達は落ち着いておりますが、陛下がお帰りになるまで落ち着かなくて・・・ ご一緒にお茶でもと思いまして」

エステルはベッド脇の椅子から立ち上がり、ジョージを出迎えた。


「香りが良いローズティーが手に入ったのです」

淡いローズ色の液体が注がれるカップから甘い香りが立ち上った。


「あぁ、本当に良い香りだ」

ジョージがカップを手に取り微笑んだ時だった、遠くから女の悲鳴が聞こえた。ドアの外に立つ近衛騎士クリスが剣に手を掛ける。


「ジョージ様、ローズ達とここでお待ち下さい」

エステルは立ち上がり部屋を出ようとする。


「エステル、ダメだ。君も子供達とここに居なさい」


「大丈夫です、万一に備えて策は講じております。敵はおそらく西棟を目指している筈。今日、私達は廟へ赴き、王城に居るのはジョージ様だけの予定ですから」

王族一家を狙うのならば、ジョージもまた標的になる。廟への道に警備を回せば王城の警備は手薄になり、刺客にとっては襲撃の願ってもないチャンスだ。


「私をここに呼んだのも敵の裏をかく為か・・・」

ジョージが肩を竦める。


エステルはジョージに微笑みかけると部屋を出て静かにドアを閉めた。

(念の為、ドアに魔法をかけておきましょう)

エステルは脳裏に防護魔法を書き記すと、前室の壁に掛けておいた剣を取った。


「準備は良い?」

クリスは大きく頷きながら、ポケットから小さなホイッスルを取り出し二度短く吹いた。

廊下から庭に降りると、小柄な兵20人ほどが駆け寄って来た。近衛騎士団所属の騎士見習いの少年達だ。


「皆、準備は良いですね。日頃の訓練の成果を見せて頂戴」

エステルが年若い騎士見習い達に微笑みかけた。


「「「はい! 妃殿下」」」

少年達はエステルに一礼すると、小型のボーガンを手に散って行った。


「クリス、ここは任せましたよ」

エステルは庭沿いに西棟に向かった。



西棟の侍女は予めアレックスの部下に入れ替えてあった。先程の悲鳴も敵の襲来を知らせる為にわざと大声を出したのだ。

西棟の庭の茂みに見習い達がボーガンを構え身を隠した。


【アベル、様子はどう?】

エステルが西棟内で見張りをしているアベルに問いかけた。


【刺客は7人だよ。侍女達を脅してジョージ殿下の行方を捜しているところさ。手荒な真似はされていないから安心して。皆、打ち合わせ通り『寝室だ』とか『書庫だと思う』とか言って、奴らをウロウロさせて時間を稼いでいるよ】

アベルが愉快そうに答えた。


【怪我人はいないのね。では、こちらの準備が整ったから、侍女に合図を出して頂戴】


【了解!】

アベルは徐に戸棚の陰から姿を現すと、ある侍女の前でニャーと鳴いた。


「あ、思い出しました! エステル様に庭のバラを差し上げると・・・ きっとジョージ殿下はお庭ですわ。バラ園は・・・」

6人の刺客が庭に降りて来た。侍女から聞いたバラ園を目指して庭を横切ってくる。1人は侍女達の見張りに残ったようだ。


「放て!!」

刺客が庭の中央部分の開けた場所に出た瞬間、エステルが茂みから姿を現し号令をかけた。


放射状に配備していた見習い達が、一斉にボーガンの矢を刺客に降り注ぐ。突然の襲撃に刺客達は対応できず、次々と倒れて行く。だが一人、味方の身体を盾に矢を避けた者が居た。矢の雨が止むと、その男は剣を抜きエステル目掛けて切り掛かった。


【エステルに向かって行くなんて、命知らずだなぁ~ エステルの噂を聞いた事無いのかな?】

のんびりしたアベルの声を聴きながら、エステルは鞘から剣を抜くことなく男を一撃で昏倒させた。


仲間の悲鳴に気付き部屋を出ようとした見張り役に、背後から影が忍び寄る。

「縛り方が雑なのよ、未熟者!」

刺客の後頭部に隠し持っていた鉄の棒を振り下ろすと、彼女は腰に手を当てフンと鼻を鳴らし、自身を縛っていたロープで気を失った男を雁字搦めに縛り上げた。

侍女に扮していたアレックスの部下達は一斉に庭に走り出て、次々と倒れている刺客達を縛り上げて行く。見習い達が放った矢は先端を鈍くして強力な痺れ薬を塗布していた。刺客達は掠り傷しか負っていないにも拘らず、呼吸するのがやっとという状態だった。


エステルが合図をすると、一人の少年がホイッスルを長く二回吹いた。近衛騎士ロバートが衛兵5名を引き連れて駆け寄って来た。彼らは念の為、ジークフリート一家の居住区域の周囲に配備されていた。


「ロバート、彼らの侵入経路に怪我人が居るかもしれません。至急、各門から西棟までの安全を確認して頂戴」

エステルはロバートにそう命じると騎士見習いの少年達を振り返って微笑んだ。

「皆、よくやってくれました。鏃に触らないよう注意して矢を回収して頂戴。ボーガンの手入を終えたら、宿舎に戻ってクリスかロバートから新たな指示があるまで待機です。本当にご苦労様でした」

賛辞に目を輝かせる少年兵に見送られて、エステルは娘達の寝室に向かった。


【アベル、子供達の所に戻って頂戴。幸いな事に、王城内に内通者は居なかったようね。身近な者を疑わずに済んで良かったわ】


【そうだね、エステル。君達が残ると発表されたのは今朝早い時間だった。内通者が居たら南棟も狙われただろうからね】


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