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《 使い魔 》

エステルを帰還させる方法が見つからず、マーリンはある方法をとります


【マーリン、本当に『使い魔』を送るの? いくら貴方でも、膨大な魔力を消費するわ。貴方自身にどんな影響が出るか・・・】

ティターニアが顔を曇らせる。


【勿論承知の上だよ。それでもやる。エステルを連れ戻せない以上、これしか手が無いんだ。僕の身体はティターニアに託すよ、恐らく意識は無い状態だろうが『使い魔』が生きている限り死にはしない】


【万一、『使い魔』に何かあれば・・・】

ティターニアは悲し気に瞳を揺らす。


【その時は、かき消す様に身体が消えるだけだ。痛みもなにも感じないから、そのまま見送ってくれ。ティターニア、君にしか頼めないんだ。済まない】

マーリンはティターニアに頭を下げた。


【いいわ、マーリン。エステルを連れ戻す術を見つけて二人して帰ってくるのよ。それまでは何千年であろうと、貴方の身体はこの妖精の森で守り通すわ】

ティターニアは頷くと、マーリンと共に異世界への扉を開けるべく草原に向かった。




「マーリン『使い魔』を送るってどういう事?」

エステルは故郷に通じる天空の鏡に向かって首を傾げた。


「エステルが留守の間に色々と試したんだよ。この鏡、小さい物なら通せそうなんだ。僕の『使い魔』を送れたら、何時でもエステルと話が出来るし、魔法の補助も出来る。『世界』を越える方法を見つける為にもそっちで調べ物が出来るしね」


「でもね、マーリン。確か本で読んだけれど『使い魔』を作る魔法って凄く魔力を消費するって。マーリンは大丈夫なの? 負担が大きいんじゃない?」

エステルは顔を曇らせた。


「心配ないよ。妖精の森に居る限り、魔力が尽きることは無い。ティターニアがついていてくれるからね」

マーリンは余裕たっぷりに答える。


その言葉を聞いてもなお不安が残るエステルは、マーリンの後ろにいるティターニアの顔を見た。ティターニアは微笑みを浮かべて頷いた。


「分かったわ、私は何をすれば良いの?」

マーリンとティターニアがそう言うのであればと、エステルも決心した。


「意識を鏡に集中して、僕を呼ぶイメージをしてくれたら良い」

【アエネーイス様、先日試したように、鏡を大きく開くイメージで力をお貸し願えますか】

エステルの横に居るアエネーイスに声を掛けると、マーリンの言葉に応える様にアエネーイスが両手を天に翳す。エステルは眼を閉じると、鏡に手を差し伸べてマーリンの姿を思い浮かべる。エステルの赤髪がふわりと浮き上がりキラキラと輝く。


異世界を繋ぐ鏡が一層光を増した。その中心から黒い点のような物がゆっくりと落ちてくる。黒い点はやがて一羽の純白のフクロウの姿になり、ゆっくりと羽ばたいてエステルの掌に舞い降りた。


「やあ、エステル」


間近に聞こえた懐かしい師匠の声にエステルは眼を開けた。掲げた掌の上の小さなフクロウが小首をかしげて羽根を広げていた。


「マーリンなの?」


「僕だよ、エステル。これでいつでも話が出来るね」

【アエネーイス様、お力添え有難うございました。いつもエステルを助けて頂き、改めてお礼申し上げます】

フクロウは横に居るアエネーイスに頭を下げた。


【これでエステルも安心してラスゴーを離れられる。しかしマーリンよ、フクロウが人の言葉を話しては怪しまれよう。それに猫のアベルならともかく、フクロウが常にエステルのそばに居ると言うのも変なのではないか?】


アエネーイスの言葉と同時にフクロウの姿がかき消えた。

【エステルと二人きり以外の時は、こうして姿を消しておきます。話も魔法で出来ますので大丈夫です】

そう言うと、マーリンは再度姿を現し羽根を広げて会釈した。


【フフフッ、なかなか便利なのじゃな。さぁ、そろそろ鏡を閉じねば・・・ ティターニアよ、これからも時折開いてマーリンとエステルの事を伝えよう】


【えぇ、アエネーイス。大月の際には呼び掛けてたもれ。マーリン、エステル、偶には顔を見せて頂戴ね】

ティターニアの笑顔が渦の中に消えて行った。



【これで良いのね、マーリン】

ティターニアが振り向いた先には、蔦に覆われた寝台に横たわるマーリンの姿があった。



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