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《 幕間 》

エステルの身元を調べていたアレックス

ウィリアムの懐刀ともいうべき彼が抱いた違和感とは・・・


俺の名前はアレックス・ダルトン。

ド田舎の貧乏貴族の四男だ。長男以外を養う経済力は無く、12歳になると『教育』と言う名目で王都へ送られた。

コンウェル王国では、貴族の子弟は12歳から3年間は王都で教育を受ける事が出来る。王立の学校は全寮制で、学費はもちろん衣食住も全て無償で提供される。ただし、裕福な貴族は自宅に家庭教師を招いて子弟の教育をするため、学校に集まるのは俺のように厄介払いされた連中ばかりである。

在学中に才能を認められれば王城に仕官することも出来るが、それは極一部。俺もご多分に漏れず自力では就職先を見つけられず、母方の叔父の伝手で近衛師団の騎士見習いに潜り込んだ。剣はからっきしだが、幼い頃から付近の山に入り狩りをしていたお陰で弓は結構使える。崖によじ登ったり、木から木へ飛び移ったりは得意で、身が軽いのも重宝されて斥候を任されるようになった。


ある日、第一王子ウィリアム殿下が国境近くの砦視察に行かれる際の斥候を申し付かった。道中恙なく砦に着き、物見櫓でホッと一息ついていた俺は不審な気配を感じた。王子の供をしてきた近衛騎士の一人が裏門を開けて男を招き入れていた。村人風の身なりだが、どこか武人の気配を感じた俺は櫓から飛び降りると二人の後を追った。

食料倉庫を視察していた殿下を、隣の棟の屋根から弓で狙おうとしている二人に俺は後ろから飛び掛かった。二人諸共地面に落ちた俺は直ぐに起き上げり、剣を抜いて殿下の盾となった。まぁ、俺と違って受け身をとれずに落下した二人は気を失っており、その必要もなかったのだけれど、殿下を始め近衛の隊長にもお褒めの言葉を頂くことになった。

後日、ウィリアム殿下からお呼びがあり、おそばで情報収集をすることとなった。正に『芸は身を助ける』だ。


3年程前、殿下から一人の治療師の身元を調べる様にと命を受けた。若い娘ながら、武術大会二部門で優勝した強者だ。かなり目立つ容姿の娘で、調査は容易だろうと思っていたが、どんなに調べてもラスゴー周辺に現れる前の足取りは全く掴めない。まるで降ってわいたように現れたとしか思えないのだ。しかし、武術は元より、人柄・治療師としての腕も申し分なく、今ではウィリアム殿下のみならずジークフリート殿下までもが親しくされている。


今回は更に度肝を抜かれた。あの恐ろしい獣に一人で向かって行くなど、腕に覚えがある猛者でもなかなか出来ることではない。しかも、己の身を顧みずジーク殿下の安全を優先した。獣に体当りした際に俺が持っていた剣は剛毛に弾かれて刺さらなかった。あの娘が直ぐに止めを刺さなければ俺もアイツの餌になっていただろう。


だが、僅かに違和感があった。あの時、獣が一瞬止まったように見えたのだ。確証がないのでウィリアム殿下には違和感があったとしか報告していない。だが、俺の勘が『あの娘が得体のしれぬ力を使った』と言っている。あの娘から悪意は微塵も感じられず、敵との認識はないが、何か不可解な力を持っているような気がしてならない。だが、それが何なのか、深入りしないほうが良いと俺の奥底で警鐘が鳴り響いている。



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