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第二話

低いビルもある、地方都市の風景。


軍の基地の門、門柱に「陸軍機甲整備学校 滝町支部」とある。




ヒロインの戦車、その門の前に停止し、門を守る歩哨に呼びかける。

 ヒロイン「あの、新見新吉の親族のものです。家族からの届け物を持ってきました」

 歩哨の兵士、ハッチから身を乗り出したヒロインを見上げながら「聞いている」

 兵士、基地の奥を指さし「このままこの車道を進んで、左が訓練場だ。新見は今訓練中だから、終わるまで待ちなさい」

 ヒロイン、頭を下げ「ありがとうございます」


戦車を走行させるヒロインを、歩哨の兵士は哀れむような眼で見送る。




基地内を進むと、遠くから鉄板のぶつかるような騒音が響いてくる。

 ヒロイン「訓練場って、ここやろか……」




ヒロインの前に突然広がる、訓練場の広大な空き地。


そこで、2機のロボット兵器がぶつかり合っている。


両方とも身長は4、5メートルほど。分厚い装甲板と駆動メカニズムの集合体が人型を取っているような姿。巨大な日本刀でつばぜり合いしている。


2機のうち、肩に「志 25」と書かれた機体(上官)が、つばぜり合いから目にもとまらぬほどの超高速で間合いを離し、次の瞬間に突きで相手の剣を弾き飛ばす。


上官の機体の顔アップ、レンズの眼と装甲で構成されている。

 上官「気合が足りんぞ新見! つばぜり合いなら、身体ごとぶつけて必ず相手を潰せ!」


新見と呼ばれたもう一機の顔も、同じくメカニズムだけ。

 新見「はい! 新見新吉、粉骨砕身努力します!」


上官の機体、ちらりとヒロインのほうを見やる。

 上官「本日の修練はここまで! 明日は砲術理論だから、予習しておくように!」

 新見「ありがとうございました!」




上官の機体、ホバリングで去っていくのを、ヒロインは驚きの表情で見送る。


新見機、ヒロインに近づく。

 新見「小雪ちゃん、すまんのう、驚いたやろ」

と語りかける顔は、やはりメカだけで、人間の肉体は感じられない。


呆然とした表情のヒロイン。

 ヒロインモノローグ(兄やんらの剣術、全然見えんかった……あれが『第六段階』……)




訓練場から移動して、基地の外れの林のそば。


佇む新見の機体の背中へ、無限軌道の音を立てながら接近するヒロインの戦車。

 ヒロインモノローグ(この身体になってから、私は『他人に静かに歩み寄る』ということが、できなくなってしまった)


機械音を立てながら、ヒロインに顔を向ける新見機。

 ヒロイン「あの、おばさんから、着るもんと、あと、おはぎ持ってきたんよ」

 新見「ほうか」


ヒロイン、心配そうな表情で、新見機の顔を見つめる。

 ヒロイン「新吉(にい)、あの……うちに怒っとるん?」

 新見「ん? なんでや?」


ヒロイン、涙を浮かべる。

 ヒロイン「せやって、兄やん、『愛新神楽』さまの『お召し』でその身体になってから、うちを避けてるみたいやん!」

 さらに上半身だけで手を振りつつ「夏のお祭りんときも、兄やん帰省しとったのに、村まで来んかったし……」


ヒロイン、涙浮かべつつ視線を地面にやる。

 「あれなん? うちが『第四段階』止まりで、補助金が少なくなったから、怒っとるん?」


新見機、機械の顔は、何の感情も見せず、動じない。

 新見「違うて。そんなん、小雪ちゃんのせいやない。村のじいさん連中の言うことなんか、気にすな」


ヒロイン、泣き顔で言い放つ。

 ヒロイン「せやけど、兄やん、うちに顔見せてくれへんやん!」


新見機、動きはないが、そのセリフに衝撃を受けたかのような様子。

 新見「……それはちゃうねん、それは……」


それにかぶせてヒロイン叫ぶ。

 ヒロイン「なんや、そんな鉄仮面のままで! 顔くらい見せてーや!!」


新見機、一瞬静止する。

 新見「ちゃうねん」


機械の作動音と共に、新見機の顔面が開く。


そこには、脳髄が入った透明なケースと眼球があるだけで、それ以外の肉体は存在しないと一目で分かる。

 新見「見せる顔は、ないねん」


衝撃を受け目を見開くヒロイン。


新見機は顔面の装甲を再び閉じ、機械の足音で歩み去っていく。




午後の街道を走行するヒロインの戦車。


ヒロインは肉体を戦車内に引き込んでおり、下半身が存在しないという構図をもう一度はっきり見せる。


暗い車内、複雑な計器の並ぶコンソールを見つめるヒロイン。

 ヒロインモノローグ(兄やん、もうおばさんのおはぎも食べられへんのや……)


計器の一つが光り、警告音が鳴る。それに気づいたヒロイン、ハッチを開いて上半身を外へ出す。


(計器には小さく『CON Established AI-SYSTEM KGR01A』)




停車した戦車の周囲には通行人が数人いるが、皆、帽子を取って頭を下げている。


ヒロインも頭を下げる。


その側を、貴人の行列と思われるものが、ゆっくりと通り過ぎていく。


行列の中心は、巨大な機械の昆虫のような乗り物に乗った、ローブを着た人物。


その人物は、ヒロインに気付いて、ちらりと視線を送るが、その顔は新見機と似たようなメカニズムの仮面である。

(※ ミスディレクションとして、顔のパーツは新吉兄やんのものと類似しているデザインにする)


行列を見送る通行人から「『愛新神楽』さま、おありがとうございます」などの声が響く。

 ヒロインモノローグ(『愛新神楽』さま……姿を見たんは、改造手術以来や……)


ヒロインの回想シーン、手術台の上で、下半身を切除する手術を受けているヒロインの姿、手術を行うロボットアームと、『愛新神楽』の姿。

 ヒロインモノローグ(うちも新吉兄も、『愛新神楽』さまの『お召し』で呼び出されて、この身体に改造された)


遠ざかる行列を見送るヒロイン、複雑な表情。

 ヒロインモノローグ(『愛新神楽』さまは、何千年も昔から生きてる、この世で一番偉い方や。「えふわん」の種もみも、粉の肥料も、虫よけの薬も、全部『愛新神楽』さまからもらわんと、畑も田んぼもやっていけん……)


すでに行列は去り、通行人も歩き出しているが、ヒロインの戦車は停止したままで、彼女は夕暮れの空を見上げている。

 ヒロインモノローグ(でも、何のためなんやろ? 村の大人はみんな「お国のためや」言うけど、いつもそれで終わり……思考停止の呪文みたいや。なんでうちらだけ、こんな身体にされないかんのやろ?)



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