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5.人を判断する基準


「えっとホントに浜松さんだよね…?」

「そ! 浜松胡町であってるわよ!」


 テーブルに並べられた料理を食べながら確認をする。

 何度聞いても信じられない。あの暗い女性がこの美女だなんて…。

 よく見てみたら周囲の人もチラチラと彼女のことを見ているじゃないか。まあそれくらい美女なんだけど…。


 でもなんで学校じゃあんな感じなんだろう。雰囲気も全然違う。クラスじゃ真面目で、極力喋らない。でも今の浜松さんは良く笑うし、雰囲気も明るい。言葉遣いも親しみ易く砕けている。


「む、なんですか。その訝しむような目つきは」


 顔に出てしまって居たみたいだ。


「いや、なんでその姿? で学校にいかないんだろうって」

「ああ、それですか。理由は単純ですよ」

「手間がかかるとか?」

「それもありますけど、一番の理由は面倒くさいことが起きるからです」

「面倒くさいこと?」

「自分でも自分がどれくらい可愛いかは分かっているつもりなんです」

「…はい」

「この姿で行くと、告白してくる生徒も複数でますよね」

「…自信満々じゃん…」

「ええ、自己肯定感だけは高いですから。それで、告白してくる人が多いとそれに時間を取られるじゃないですか」


 うん、確かに…。毎時間告白とかされたら自分の時間なんて0だ。

 思わずうんうんと頷いてしまう。


「そう。それだけじゃないんですよ。女子同士での妬みなども発生しますよ。私の彼氏を奪っただの、私の方が好きだったのに。とかね」

「うわ~…。女子同士のそれってやばそう」

「実際やばいくらい陰湿でしたよ。ハブり方が。むかついたんで全員後悔するくらいにはやり返しましたけどね」


 良い笑顔を向けられてしまう。

 なんだろう、この人やっぱり強いよな? 精神的にタフ過ぎる。


「それに取られる時間が馬鹿らし過ぎて。じゃあモテない様にすればいいじゃんって思って学校ではあんな感じなんです」

「へ、へえ。大変でしたね…」


 気付けば彼女はほとんどの料理を食べ終えていた。しゃべりながら合間合間でバクバクと食べている。

 …そう言えば、そんな感じで考えて居るなら何で俺にばらしたんだ…?


「あの、なんで俺にはばらしたんです?」

「敬語じゃなくていいですよ。同い年ですし」

「あ、そう?」

「ええ。それであなたに声をかけた理由ですか」

「うん。俺とかにもバレない方が良くない?」


 俺がそう言うと彼女はにんまりと頬をつり上げた。

 そんな顔も非常に絵になる。妖艶な笑みとはこのことだろう。ちょっとドキッとしてしまう。


「あなたがちひろさんの彼氏だったからですよ」

「……? どういうこと?」

「ま、興味本位ってことですよ。今、あれだけ告白されて断ってる人の元カレに興味があったって感じです」

「そ、そうなんだ…」


 なんだ…。そんな理由か。


「そうですね。でも、案外話してみると、……あなたいい人ですよね」

「いやいや、普通の人だよ」

「普通なら知らない人にはあんまり着いていかないですよ。断られることも考えていたんですから」

「それはまあ、知り合いだったら失礼になるなと思って。実際知り合いだったし」

「それもですよ。私の言葉を信じるところもいい人だなって思いますよ。ちょっと心配にはなりますけど」

「…確かに」

「でしょう?」


 彼女はそう言って残っていた全ての料理を平らげてしまった。それで居ながらお腹がいっぱいな様子はない。余裕そうにジュースを飲んでいる。


「そう言えば、聞いてもいいでしょうか?」


 彼女はそう言いながら目をじっと見てくる。


「いいよ。何?」



「どうして、ちひろさんと別れたのですか? そしてなぜあそこまで山下君に言われているのですか」




 シンっと時が止まった。

 また、このちひろの話題か…。心がずんと重くなる。思い出したくないんだけどな。


「相応しくないんだってさ」

「相応しくない?」

「うん。俺みたいな奴とちひろみたいな人気者だと釣り合いがとれないってさ」

「…へえ、そんなことを…」


 この話をするたびに自分は下なんだと分からせられる。姉さんはそんなことはないと言ってくれたし、遼太郎は好きだと言ってくれた。でもそれは血の繋がった家族であり、親友だからだ。だから身内を庇おうとする。

 確かに救われたがどうしても、そう思ってしまう。


「確かに、釣り合ってないですよね」


 ほら。俺との関わりが薄い浜松さんがそう言っている。ならば一般的に見ればそうなのだろう。


「そんなゴミみたいなことを言うカスとはあなたは釣り合いませんよ」

「ぇ…?」


 耳を疑う。

 彼女の口から出てきた言葉は思っていたものとは違い、ちひろを貶すものだった。それも結構強く。


「あなたは私が知る限り素敵な人ですよ。間違いなく」

「……」

「あなたは純粋で優しい。だからこそそんな言葉を信じているのでしょう」

「でも、客観的に見たら、俺がちひろと釣り合ってないのは確かで…」

「くだらないですね。なぜ、そう思うのですか?」


 彼女は俺の言葉をバッサリと切り捨てた。くだらないと。

 その言葉に少しイラッとしてしまう。俺の何をしってるんだこいつは。

 昨日今日初めて話したような奴に何がわかるってんだ。


「俺は、ちひろみたいに容姿が優れていない。人気者でもない。話せる友達も数人程度しかいない」

「ええ」

「勉強もすごく出来るわけじゃない。運動もそこそこだ」

「ええ」

「対してちひろは、学校中から好かれていて、友達も多い。まず、外見的に釣り合っていない。そしてそれを埋めるだけのものを俺は持っていない」

「ええ」

「だから俺は、釣り合いがとれていないって言われても確かにそうだとしか思えなかった。俺はちひろよりも下の人間なんだよ」


 俺は自分の想いを話した。

 自分でも卑屈だと思う。姉さんにいい人だと言われても、遼太郎に好きだと言われても、どうしてもそう思ってしまう。そんな自分が嫌いで嫌いでしょうがない。声をかけて元気づけてくれているのに。


「そうですか」

「…ああ、分かっただろ?」

「いえ、全く」

「は?」


 これだけ言っても彼女は分からないらしい。


「人に上とか下とかないですよ」


 姉さんと同じことを言う。それはきれい事だ。人はどうやっても優劣がはっきりしている。容姿、勉学、運動とかな。


「その顔は信じてないですね。なら言い方を変えましょう。人には確かに上下があります。でもそれは絶対値ではないんですよ」

「…何を言ってるんだ」

「あなたは確かにちひろさんと比べれば容姿も、社交性も優れていないかもしれません」

「そうだよ」

「でも、評価軸をそこに置いてしまえばどうしようもないですよ」

「?」

「私はね、小野寺さん。人の優劣なんて人それぞれだと思うんです。誰かに取っては誰しもが上で下。その人達が重視しているもので人を図ってしまう」


 …確かにその通りだ。人は優劣をつけずにはいられない。でも、それは人の考え方によって違う……。


「今回、ちひろさんはあなたの人気や容姿で判断した。だからあなたを下だと判断した。そしてあなたもそれを受け入れたと同時に自分を判断してしまった。容姿と人気で」

「……」

「でもそれはちひろさんの評価軸をそのまま受け入れているだけです。あなたの評価軸は何ですか? 本当に容姿ですか? 本当に人気かどうかですか?」

「……分からない」

「あなたは容姿が自分よりも劣っている人がいれば蔑みますか? 自分より下だと思いますか?」

「……思わない」

「そうでしょうね。あなたはそんな人じゃない」


 なぜそこまで自信を持って言えるのだろう。この人とは先日話しただけだ。それなのになぜ、この人はこんなにも真剣に俺に諭しているのだろうか。

 その真剣な目は俺だけを見据えている。まるで思いが届いて欲しいと、そう思っているかのように。


「あなたはあなたの評価軸で人を、自分を見れば良いんです。人の評価軸ではなく、自分の」

「……分からない。決まってない」


 そんなことを言われても分からない。そんなことを気にして生きてきたことがないからだ。これまで人からの評価、他人からどう思われているかを意識して生きてきた。陰キャだ陽キャだとそう判断してきた。


 そんな俺を見て目の前の美女は微笑む。優しげに、まるで愛おしい者をみるように。


「それはこれから見つけていけば良いんです。ゆっくりとね」

「…うん」

「それまでは自分を嫌いにならないで下さい。自分を卑下しないでください。あなたを好きと言ってくれる人達がいるでしょう?」


 居るとも。姉さんが。遼太郎が。


「……私はね、小野寺くん」

「…?」

「人を優しいかどうかで判断しています。それは私に優しい人じゃなく、人に優しいかどうかです。そうやって人を判断しています」

「優しさ…か」

「ええ。私から見れば、あなたはとても優しい人です。だから話しかけたし、話してみたいと思ったんです」


 じんわりと心が温かくなる。

 姉さんや遼太郎以外にも居た。俺のことを認めてくれる人が。俺の事を評価してくれる人が。


「私は好きですよ? 優しいあなたが」

「…ありがとう」


 自然とそんな言葉が出る。

 好きだと言ってくれた。きっと恋愛的な意味ではなく、人として。

 スッと胸がすくような感覚がした。ジメジメともやもやとした物がとれるようなそんな感覚が。







 

  





 


「さて、そろそろ行きますか」


 外を見るともうすっかり暗くなってしまっている。街灯が歩道を照らしていた。


「そうだね。もうそろそろ帰らないと姉さんが心配する」

「あら、お姉さんがいるんですか」

「あ、うん。大学生の姉が一人」

「へぇ、だからですかね?」

「?? 何が?」

「いえ、こちらの話ですよ。さ、行きましょうか。約束通りここは私が…」


 彼女は伝票を見て固まる。そして、次に財布の中を確認した。

 恐る恐るこちらに顔を向けてくる。

 うわぁ。とっても気まずそうだね。


「…あの、その」

「もしかして足りない…?」

「あの、そ、その、はい。昨日服を買ったのを忘れていました…」


 見た目はカッコいいのにやっぱり残念な人だな……。


「足りない分は俺が出すよ。俺もちょっと食べたし」

「あ、ありがとう」

「気にしないで。綺麗な人と食べれたんだから俺も楽しかったよ」

「! そ、そうですか」

「うん。あ、あとその敬語って癖?」

「あ、まあそんな感じです」


 なんだ? 顔を少し紅くして目をせわしなく動かしている。

 そんなにお金が払えないことが気まずいのだろうか? それにしてはたどたどしいな。


「そうなんだ。俺も敬語じゃないから、敬語じゃなくても大丈夫だよ」

「わ、分かった…。そ、そうします。…そうするね」

「う、うん」


 何でか知らないけど顔が熱い。

 浜松さんが何でか照れてるからこっちも照れてしまうじゃないか。


「さ、で、出ようか」

「うん、そうしよ…」


 何でか知らないけどちょっと気まずい雰囲気になりながら俺たちはファミレスを出た。

 

 その後は、彼女を家の近くまで送って、別れた。その間、お互いにあまり話さず気まずい雰囲気のまま歩いた。さっきまでは楽しく話していたのに何でだろうか…。






 ***



 

 家に帰ってきた。

 家に帰った私は、お母さんにただいまと言ったあと、さっさとお風呂を済ませて、ベッドに倒れ込んだ。


「~~!!!!」


 ベッドのぬいぐるみを抱きしめながら彼の言った言葉を思い出す。

 

 「綺麗な人だな」だなんて…! 


 顔が熱くなるのを感じる。

 今日は偶々彼に会うことが出来たので舞い上がってファミレスデートまで誘ってしまった。途中までは完璧なお姉さんだったのに。なのに彼があんなことを言うからちょっと崩れてしまった…。



 やっぱり、気になっている人と喋る時は緊張するものね…。


 









 

思ったよりも伸びている…!

超嬉しい!

ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「そんなゴミみたいなことを言うカスとはあなたは釣り合いませんよ」 まさにその通り。
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