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16.まだまだ続くぜクリスマス会!!その3!



「うい。戻ったぞ」


 ケーキと皿、フォークを人数分携えた俺と浜松さんは遼太郎の部屋のドアを開けた。

 特にノックもせずに。

 

 部屋に入るとやけに二人がそわそわとしている。遼太郎は俺たちのほうじゃなく明後日の方向を眺めており、高橋さんは斜め下を向いて髪を手で梳かしている。


 …はは~ん。何か進展があったなこりゃ。


「ほい。ケーキと皿」

「お、おう。ありがとな」

「あ、ありがと。春成くん、浜松さん」

「いえいえ」


 机の上に、それらを置き、ケーキ箱を開ける。

 二人はわざとらしくのぞき込みながら、ケーキに気を取られているふりをしている。

 その実、バレたかどうか気が気じゃないだろうに。何してたかはしらないけどね!



「た、食べようぜ。俺、チーズケーキにするわ」

「じゃ、じゃあ私はガトーショコラ!」


 さっさと俺たちの意識を逸らしたいようで、すごく焦っているのが見て取れる。だがしかし、俺はそんな二人に「何やったの??」なんて聞かない。間違えたあとで聞く。とりあえず今はこいつらに乗ってやろうじゃないか…。


「じゃ、俺はショートケーキにすっかな。浜松さんはどうする?」

「私はチョコケーキにするわ」

「おっけ。じゃあ取り分けるか」


 俺たちは自分が選んだケーキをそれぞれの皿に取り上げる。

 そして俺は地面に腰を下ろす。それに続くように浜松さんも腰を下ろした。



 俺の横に。



 いや、俺の横に腰を下ろすのはなんら不思議ではない。でも。

 近くない!? ほぼ触れているような距離に居るんだけど!


「何?」

「あ、いや、何でもないよ」

「そ。じゃあ食べましょ」

「そ、そうね」


 なんか睨まれたんだけど。

 千朿ちゃんと会ってから様子がおかしい。ケーキを持って遼太郎の部屋がある2階に上がってくる時もブツブツなんか言ってたし。


「う、美味いな~、これ」

「そうね。とっても美味しいわ」

「ほんとだ! 美味しい!」

「チーズが口の中でとろける~」


 それぞれが思い思いにケーキを口に運ぶ。

 ほんとにこのケーキは美味しい。スポンジがふわっふわでありながら、味がしっかりとついている。クリームも甘すぎず、濃厚なミルク感がする上質なクリームだ。



「む」

「あ」


 気がつくと、俺の皿からケーキが消えていた。

 誰だ! 誰が取った! 誰が食べたんだ!



「お、俺のケーキが消えた…」

「お、お前もか。遼太郎…」

「美味しすぎてすぐなくなっちゃうよね!」


 本当にその通りだ。気付いたらなくなってしまってた。まるで魔法だ。俺は魔法使いの素質があるのかもしれない。ちょっとロンドン言って柱に突っ込もうかな。



 馬鹿なことを考えて居ると、女子二人も食べ終えた様で、カチャカチャと机に皿を置いていく。

 本当にみんな一瞬で食べちゃったな…。


「あ、そういえば」

「ん?」

「さっき下から千朿の声聞こえたけど帰ってきたのか?」


 遼太郎がそう言って尋ねてきた。さすが兄だな。気付いていたのか。

 千朿という言葉にピクッと浜松さんが反応を示した。まただ。


「千朿ちゃんなら、帰ってきてたよ」

「ふうん。大丈夫だったか?」

「…何が?」

「いや。何もなかったなら良いんだけど。それで千朿は?」

「部屋に行ったよ。まだ勉強するんだってよ」

「真面目だね~」

「ねえねえ、千朿ちゃんって誰??」


 高橋さんが話に混ざってくる。遼太郎のことに関しては知っておきたいらしい。

 なぜか千朿ちゃんを知ってるはずの浜松さんは混ざってこない。マジで何があったんだ…。

 

「俺の妹だよ」

「妹! 遼太郎くん妹居たの!」

「いるいる。可愛いぞ~? 来年は俺たちの高校に入るらしいし」

「なっ、そ、それは本当!?」


 ガバッと浜松さんが身を乗り出して遼太郎に迫る。


「お、おう。そのために今勉強してるし…」


 急な浜松さんの食いつきに思わず身を逸らしてしまう遼太郎。

 そしてそれに気付いたのか、浜松さんは元の位置に戻る。


「す、すみません。驚いたもので…」

「い、いや良いんだけど…」

「あ、そろそろプレゼント交換しないと」


 高橋さんがそんなことを言う。

 あ、そうだった。プレゼント交換しないと。


「よっし。じゃあ各自プレゼントを出しましょう!」

「おー」

 

 俺がそう言うと高橋さんが反応してくれた。嬉しい。

 と、各自自分のバッグを漁り始める。今回のプレゼント決めのルール。一人2000円以内。それの範囲に収まるなら何個買ってもよしとしている。


 全員が、バッグからプレゼントを取り出す。

 俺は小ぶりの袋で遼太郎や高橋さんも俺と同じくらいで、浜松さんもそうだ。


「で、どうやって決めるんだ?」

「う~ん、やっぱり回してストップって言うのは?」

「いや、それだとストップって言う人が欲しいプレゼントを取れてしまう」

「じゃあどうするの?」

「完全なランダム。それはこれだ!」


 俺はバッグから紙を一枚取り出す。そしてそれをバンッと机に置いた。


「あみだくじ…?」

「そう! 俺が予め作っておいた! ここに名前を書いて、その先にある名前の人のプレゼントを受け取るって感じだ」

「お~いいね」

「わくわくするね!」

「確かに…良い案だわ」

「よし。決定!」


 あみだくじすれば完全なランダムの上、線を追っていくときのわくわく感が出るからいいだろうと思って作ってきておいたのだ。

 といっても、縦の線を四本引いて、その下に名前を書いて折って隠しているだけの紙だ。


「線は後から書くからな。ほら、各自名前を書いていってくれ。」

「おうよ!」


 各自が俺が用意していたボールペンで名前を書いていく。

 左から俺、浜松さん、高橋さん、遼太郎だ。

 ふむふむ。


「よし、じゃあ線を引いていくぞ」

「よっしゃ!」


 俺はみんなの前で適当に線を引いた。様に見せかける。

 さて、遼太郎や高橋さんは本当にこれがランダムだと思っているようだが。

 そんなわけがないだろう!

 実は、この隠された紙の下の名前の順番は左から、高橋さん、遼太郎、浜松さん、俺の順番だ。この場合、合計で五本の線を引けば、高橋さんは遼太郎と、遼太郎は高橋さんとプレゼントを交換するように仕向けることができる!!

 昨日何回も予習したから問題ない!


「じゃあ、まずは俺から!」

「おお!」


 俺は自分の名前から生えている線をたどって下に向かっていく。


「よし、俺はここだな!」


 たどり着いて線に丸をつける。まだ誰の物かは公開しない。ドキドキ感を演出するためだ。


「よしじゃあ、次は~、高橋さんだ!」

「誰になるかな!」


 高橋さんの線をたどっていく。そして丸をつける。


「次は浜松さん!」

「楽しみね」


 また丸をつける。


「最後は遼太郎!」

「残ったのはあそこだな!」


 遼太郎は最後なので特に線をたどらず丸をつけた。


「よし、じゃあ行くぞ~」


 紙の折り目に手をかける。


「いいか?」

「は、はやく…!」

「開けろ開けろ」


 適当に焦らしてから、折り目をばっと開いた。

 そこには俺の計画通り、俺と浜松さんが交換して、高橋さんと遼太郎が交換するように書かれていた。


「よし、じゃ交換!」


 あみだくじの結果に従ってお互いのプレゼントを交換する。

 そしてそれを開けていく。


「うわ~! これコロンだ!」

「そ、そうなんだよ。女子が喜ぶ物って何か分からなくてさ。コロンだったら匂いも軽いしいいかなって」

「いい匂いする! ありがと!」


 早速高橋さんは貰ったプレゼント、コロンを取り出し、嬉々として首筋にトントンとつけている。

 遼太郎はそれに見とれている。と言うか、うなじを見つめてる。この変態め。


「遼太郎は何を貰ったんだ?」


 さっさと開けろと遼太郎を急かす。


「あ、そ、そうだな……」


 クリスマス用に装飾されたそれを丁寧にほどいていく。


「マグカップ?」

「そ!」

「うわぁ! マジかありがとう! 丁度この前割れたんだよ! 嬉しい~!」

「へへっ。よ、喜んで貰って良かった!」


 出てきたのはマグカップだった。男子でも女子でもつけるようなデザインのそれを持ち上げて遼太郎は喜んでいた。

 ふむ。お互いに上手くいったらしいな。よかったぜ。


「次は浜松さんだね! 何貰ったの?」

「あ、私? そ、そうね、開けましょうか」


 何やら俺のプレゼントをじっと眺めていた浜松さんは高橋さんに声をかけられて我に返ったように、開け始めた。


「アロマストーンとアロマオイル…」

「俺も何を送って良いのか分からなくてな。冬は部屋に居ること多いだろうからって思ってそれにした」


 印のないところで買った。正直、女子に喜ばれて男子にも受けのいい物なんて分からなかった。まあ、今回は浜松さんにあげるって分かってたから、女子受けの良さそうなのを買っておいた。匂いは柑橘系の奴だ。


 浜松さんはアロマオイルを箱から取り出し、キャップを開けた。


「いい、匂いね。ありがとう、小野寺くん」

「お、おう」


 匂いを嗅いだ浜松さんはにっこりと笑った。その笑顔は嬉しい物をみるような、愛おしい物をみるようなそんな笑顔だった。思わずドキッとしてしまう。

 なんだ…。顔が熱くなってきた…。


「よし、最後だぞ。春成!」

「…おう! 開けるぞ!」


 浜松さんから送られたプレゼントを開ける。

 袋から中身を取り出した。


「これは…イヤーカフ?」


 出てきたのは銀色のイヤーカフ。


「ええ、ちゃんと値段内には収めてるわ」

「そ、そうか。ありがとう」


 アクセサリーなんてつけたことはなかった。まだ高校生だし。でもこの選択はピアスを開けている彼女らしいな。


「どうだ? 似合ってるか?」


 試しに耳につけてみる。

 耳の軟骨の所に引っかけるようにして。


「ええ、とっても似合ってるわ」

「そ、そうか。あ、ありがとう」



 また微笑まれた。

 たったそれだけのことなのに、少しドギマギしてしまう。美人の優しい笑みは破壊力が違うぜ…。




 

 






 











 

 

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