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15.クリスマス会その2!!!

15話 クリスマス会2


「うわ~恐かったね!」

「そ、そうだね…!」

「あ、わ! ご、ごめん。その、恐くて」


 高橋さんはしがみついていた遼太郎の腕から慌てて飛び退いた。

 俺の後ろで二人が初々しいやりとりをしている。

 対して俺の方はと言うと。


「いって~…」

「ご、ごめんって。わ、わざとじゃないから」


 手を握りつぶされそうになっていたことについて謝られていた。

 ホラー映画が終わって、俺の手を握っていることに気がついた浜松さんは恥ずかしさからか顔を桃色に少し染めていたが、俺が苦悶の表情を浮かべているのを見て、自分の力の入れように気がついた様だ。

 ぱっと手を離して俺に謝ってきた。


「あ、ああ。うん。分かってる分かってる。てか、ホラー映画苦手だったんだな」

「え、ええ。あまり見たことがなくて」

「へえ。……危うく俺の手がなくなるところだった…」


 ぼそっと呟く。もちろん本気で苛ついている訳ではない。ただ、珍しく焦っている浜松さんが面白いだけだ。


「ご、ごめんって。ほんとごめん…」

「いいよ、いいよ。浜松さんに握られて俺としては役得って感じだし」

「…何言ってんのよ」


 なんかマジ謝りになりそうだったので、悪ふざけはやめて適当なことを言っておく。まあ、こんな美女に手を握られたと考えればあの痛みは代償みたいなものだ。


「その、いやじゃなかった?」

「い、嫌なんかじゃないよ…! むしろ嬉しいっていうか…」

「え…」

 

 後ろの二人はまだやっている。

 遼太郎の一言に顔を赤くした高橋さんが固まってしまっている。そして遼太郎も少し恥ずかしそうに顔を背けている。

 …ふっ、あと少しだな。


「よーし! じゃあ見終わったし、ケーキ食べるか!」

「そ、そうだね!」

「そ、そうするか!」


 恥ずかしそうにしていた二人が即反応する。

 渡りに船って感じだったんだろうな。


「じゃあ、俺と浜松さんはケーキと皿取ってくるな!」

「お、俺の家だし、俺も行くよ」

「良いって。いつもの場所だろ?」

「そ、そうだけど」

「なら二人はそこでゆっくりしててくれ。ほら行くよ浜松さん」

「え、ええ」


 遼太郎の家には何回も来ている。だからそこに何があるかは大体把握している。お父さんもお母さんも千朿ちゃんも俺のことは知っているから別に俺がケーキと皿を取りにリビングに来ても何ら問題はないだろう。


 俺と浜松さんは二人を部屋に残し、ケーキを取りにリビングへと向かった。

 さあ、二人とも。少しの間だが、何をしても俺たちには分からないぞ…!




 ***



「あ、お母さん。ケーキとお皿取りに来ました」

「あら、あの子は取りに来なかったの?」


 リビングに出ると、遼太郎の母親がキッチンで何かしていた。夕ご飯の仕込みでもしているのだろうか? 遼太郎の父親はどこかへ出かけてしまったみたいで、居なかった。来たときは居たのに。


「あいつは今、彼女が出来そうなので置いてきました」

「…まあ! ほんとなの!」

「ふっ、ええ。俺たち二人の尽力のおかげで」

「まあ! しゅん君! ありがと! あなたも!」

「あ、えっと。それほどでは…?」


 まだ出来たと決まっていないのに遼太郎ママはとても喜んでいた。

 そりゃこれまで浮かれた話がなかった言われている遼太郎に彼女が出できるかもとなれば喜ぶか。


「あなたがここに居るってことは…さっきのショートカットの子よね! 可愛らしい服着てた!」


 浜松さんが俺と一緒にケーキを取りに来ているのを見て、高橋さんの方が彼女になりそうな子だと悟る。さすが。察しが良いな。


「ですです」


 遼太郎ママはこちらに近づいてなぜか小声で話し始める。このリビングには俺たち以外誰もいないのに。


「それで、どう? あの子うまくやれそう?」

「そうですね…。高橋さん、相手の子が結構積極的なので…。時間の問題かと」

「高橋さんって言うのね。やるわね」

「ええ、彼女はやり手ですよ」


 なんか秘密の会話をしているような雰囲気を遼太郎ママが出していたので、俺もそれに習って真剣な顔でそう告げた。二人で屈んで、こそこそと秘密の会議だ。

 その様子を浜松さんは怪訝そうな目で見ている。なんでそんな顔をしているのだろうか。この距離的に全部聞こえてるはずだが…。



 ガチャ。



「あ、帰ってきたみたいね」


 玄関の開く音が聞こえると、遼太郎ママはさっとかがめていた体を起こし、玄関へ向かった。と言っても、リビングの扉を開ければすぐ玄関なのだが。

 

「お帰りなさい」

「ただいま~。ママ。靴いっぱいあるけど誰か来てんの?」


 会話丸聞こえである。ドアを開けっぱなしで話しているから。

 声からするに千朿ちゃんが帰ってきたみたいだ。


「一ノ瀬くんのご兄姉かしら?」


 まだ彼女にあった事のない浜松さんは俺に聞いてきた。


「そ。妹の千朿ちゃん。来年は俺たちの高校に入るって息まいてるよ。頭良いのに図書館行って勉強しているらしい」

「へえ。真面目な良い子ね…」


 今日も恐らく図書館に行っていたのだろう。クリスマスだと言うのに、勉強熱心な子だ。


「…え! 春成さん来てるの!」

「ふふっ、そうよ? 隣には随分と綺麗な子が居たわね~」

「なに!?」


 だから全部聞こえている。


「綺麗な子だってさ」

「う、うるさいわね…」

「まあ、実際綺麗だな」

「……」


 遼太郎ママに綺麗な子と言われて照れているらしい。髪をせわしなくイジイジとしている。自分の容姿は優れていると思っているのに、褒められるのは慣れていないのだろうか?

 恥じらう浜松さんを、見ていると、ドタドタと足音が聞こえた。


「春成さん! いらっしゃい!」


 玄関に続くドアから千朿ちゃんが姿を見せた。千朿ちゃんは遼太郎の妹らしく、端正な顔つきをしてる。目はリスの様にパチクリとしており、長いまつげが特徴的だ。体型維持にも気を遣っているらしくスタイルは抜群にいい。すらっとしていながらも、どこにとは言わないが程よく肉がついている。きっとモテているんだろうなぁ。


「お邪魔してるよ。千朿ちゃん」

「いえいえ! ゆっくりしていって下さい! 何なら泊まって行ってくれても良いんですよ?」

「なっ!」


 なぜか浜松さんが反応する。驚いた様に千朿ちゃんを見ている。

 分かる。分かるよ浜松さん。俺も最初は驚いたよ。でもこの子はこういう子だ。多分遼太郎以外の兄が出来たみたいで嬉しいのだろう。そう思ってくれるのは俺もまんざらではない。


「いや、今日は夜になる前には帰るよ」

「そ、そうですか。じゃ、じゃあまた泊まりに来てくれますか!」

「うん。そのうち泊まりに来るよ」

「やった!」


 目の前に俺たちがいることなど気にせずガッツポーズをする。前、泊まりに来たときは遼太郎と一緒に一晩中ゲームをしたり、駄弁ったりしていた。それが楽しかったから又呼びたいと言うだけだろう。

 だから、俺をにらみつけるのはやめて貰って良いかな? 浜松さん。なんか批難の視線をバシバシ感じるよ。


「そ、それで、その」

「?」

 

 千朿ちゃんがもじもじと言いにくそうにしている。今までこんなことなかったのに。

 視線はチラチラと浜松さんを見ている。

 …ああ、なるほど! 浜松さんが綺麗で緊張してるのか!

 ここは先輩らしく二人の間を取り持つか。


「ああ、この人は浜松胡町さん。最近仲良くなった俺の友達だよ。綺麗な人だけど恐い人じゃないから安心して」


 俺がそう言って浜松さんを紹介する。

 それを聞いて、千朿ちゃんは胸をなで下ろすように息を吐いた。


「なあんだ。友達か…」


 ぼそっと何かを呟く。俺は距離があって聞き取れなかった。最近ゲームを大音量でやっているからか聞き逃すことが多い。でも、浜松さんは聞き取れたのだろう。その声にピクリと反応をしていた。ように見えた。

 

 千朿ちゃんは顔を上げてニコッと笑った。笑った顔が少し遼太郎と似ている。あいつよりは何倍も可愛らしい笑みだけど。


「初めまして。浜松さん。私、遼太郎の妹の千朿です。春成さんとは、最近よく遊ぶ様になりました。…春成さんの妹みたいなものですね」


 ん? なんか変なこと言ってね? いやでも、俺に妹は居ないから、強いて妹は誰かってなったら千朿ちゃんになるのか? 遼太郎の家に来た時はよく遊んでるし。


「そ、そうなの。私はさっきも紹介があったけど、浜松胡町よ。よろしく。千朿さん」

「ええ、よろしく。浜松さん」


 何でか知らないけど、浜松さんが敬語じゃない。大体初対面の時は敬語なのに。

 てか、この二人なんかあったの? 二人とも笑ってるのに、体から出てる雰囲気が笑ってないんだけど…!


 助け遼太郎ママ!


 遼太郎ママの方を見ると、にこやかに二人を見ていた。

 そして俺の方を見て口をパクパクと動かした。


『がんばって』



 遼太郎ママぁ!!!!


 







 

 








 


 

 







 

若干楽になってきた!

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