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14.クリスマス会!!

14話 クリスマス会


「クリスマス会です!」

「おー!」

「おー!」


 12月25日。俺たちは遼太郎の家に集まっていた。

 持ってきたクラッカーをパアーン! とならす。最初は自分の家が使われることに渋っていた遼太郎も今やノリノリだ。

 みんな私服で参加している。

 そう、みんな私服だ。と言う事はだ。


「ほんとに、綺麗だよね! 胡町ちゃん!」

「ふふ、ありがと。高橋さんも綺麗よ」

「ほんと!? やった!」


 もちろん浜松さんもいつもの姿ではなく、美人モードで参加している。今日は深緑のカーゴパンツに灰色のトレーナーというカジュアルな服装だった。それでも綺麗なのだからすごい。

 高橋さんはカチューチャをつけて、花柄のスカートに模様つきのニットを着ている。いつものスポーティな印象とは違い、女の子らしい格好をしていた。


 一方、ファッションにさほど詳しくない俺と遼太郎は似たような格好をしている。二人とも黒のチノパンツを履いて、俺は上は黒のハイネックセーター、遼太郎はパーカー。二人とも家にあるものをとりあえず着ましたって感じだ。


「よし、じゃあ。早速見ますか!」

「おお!!」

「見よう見よう!」



 俺は持ってきたノートPCを開く。

 そしてサブスクでいろんな映画が見れるアプリを開き、ログインした。


 今日のクリスマス会の予定は4人で話し合ってもう決めてある。まず、映画を見て、その後にケーキを食べる。そしてプレゼント交換会をして終了だ。

 ちなみに何の映画を見るかは俺に決定権がある。


「さて、今回、俺達が見るのはこちら!」


 俺はその映画をクリックして、画面に映画の概要が書かれた画面を表示させる。


「おい、春成?」

「なんだよ」

「なんだよってこれ、クリスマスに見るもんじゃなくね?」

「何? びびってんの?」


 俺が表示した映画。そこには『冬の恐怖』と言う題名が映し出されていた。これは冬の山で起こった怪事件を解決していくサスペンスホラーだ。

 確かにクリスマスでみるものじゃない。でもこれは作戦だ。このクリスマス会の真の目的は高橋さんと遼太郎をくっつけること。そのための布石だ。

 名付けて、「冬のホラーでドキドキ大作戦」 だ。


「こ、恐そう…」

「大丈夫大丈夫」


 怖がる高橋さん。怖がってもやめません。


「あ、横並びだと見にくいだろうから…、高橋さんと遼太郎、後ろのベッド乗って見てくれる? そっちの方が良く見えるだろ」


 俺たちは遼太郎、俺、高橋さん、浜松さんの順で今横一列に並んで座っている。映画を見るために。

 でもノートPCの大きさだとそれじゃ見にくいだろう。

 そう思って、さりげなく二人をベッドの上に上げる。俺のベッドじゃないんだけどまあ良いだろ。本人も乗るわけだし。


「そ、そうか?」

「いいから。早く。始めるぞ?」

「わ、わかったわかった。……じゃ、じゃあ」

「あ、う、うん。お邪魔します」


 ギシッとベッドに乗る音がする。

 ベッドは寝る場所だから地面よりも安心感が増すだろう。そして心の緩んだ所にホラーで追い打ちをかけ、隣にいるお互いに意識させる! 完璧な作戦だ!


「ほら、浜松さんももっと近く来ないと見れないぞ?」

「あ、う、うん」


 浜松さんがなぜか寄ってこなかったので、こちらに寄せる。なぜか耳が赤くなってちょっと戸惑っているようだ。後ろの二人にあてられたか…? はっ! まさかそう言う妄想を!?


「な、何よ」

「いや、何でもないよ。見ようか。二人ともいいか?」

「お、おう」

「大丈夫…!」

「んじゃ」


 俺は机の上に置いてあったリモコンで部屋を薄暗くする。いわゆる常夜灯というやつだ。

 ホラーと恋にはシチュエーションが大事だ。薄暗い空間、ホラー映画、隣には気になっている異性。これはもうこれでくっつくかもな!


 俺はそう思って、画面の上映開始のボタンをクリックした。










 『冬の恐怖』が始まってからもう数十分が経っただろうか。

 物語はもう少しで佳境に入る。山にやってきた探偵がこの怪事件のおかしな部分の真相に迫りつつある。なぜあの人は死んだのか。その時に聞こえた奇妙な泣き声は何だったのか。それが探偵によって組み上げられていく。


 

……さあ、来るぞ来るぞ!



 あと少しでこの怪事件を引き起こした正体である悪霊が姿を表す。

 俺はこの映画の一番の恐怖場面を予測しながら、ちらりと後ろを見た。高橋さんが思いっきり遼太郎にしがみついている。遼太郎は遼太郎でホラー映画にのめり込んで真剣なまなざしで見てる。


 なんかちょっと違うが、距離が近づいたという意味ではいいか。


 俺がそんなことを思っていると、がしっと隣から服を捕まれた。

 捕まれた方を目だけで見る。そこには目を手で少し隠しながら映画を見る浜松さんが居た。


 ……もしかして苦手だったか。


 後ろの二人を怖がらせることしか考えていなかったからこの人が苦手なのかもとかあんまり考えてなかった。

 とりあえず、俺は安心させようと、捕まれていない方の手で、俺の腕を掴む彼女の手をポンポンと優しく叩いた。


 がしっ。


 優しく叩いたら、手を握られてしまった。

 な、なんだ。手をつないでいたいのか…? ちょ、ちょっとだけなら…。


 ……いたいいたいいたい!!


 浜松さんと手を握れたことにちょっと照れていると浜松さんはそんなのお構いなしにぎゅうっと思い切り掴んできた。よりによって手の骨の部分を縦に潰してくる。

 でも彼女は気付いていない。ホラー映画を恐る恐る見ている。



 ホラー映画どころじゃない!!




 残り30分程度。俺は手を握りつぶされる痛みに耐えながらホラー映画を見続けた。

 

 

 


 









 

 



 

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