友達
道具を手に入れるのには限界がある。王都の貧民街の力を持ってしても、ルキエルを喜ばせる道具を集めるのは難しくなってきた。
そんな時、貴族が悪戯心を出した。もともとはルキエルが、貴族を悪戯で誘惑したのだ。貴族は、道具を口実に、ルキエルを屋敷へと連れていった。もちろん、やることはやった。そして、貴族の男は口実で使った、壊れた道具が保管されている倉庫にルキエルを連れていく。
ルキエルは、子どものように喜んだ。その姿に、貴族は目を奪われた。
私は、この時、やっと気づいた。いつも側にいたから、私は気づかなかったのだ。ルキエルは、道具を直すことで、妖精憑きとしての格を上げていっていたのだ。それは、ちょっとした変化だ。だが、それは見た目や人としての魅力を上げることとなる。
貴族は、ルキエルに魅入られてしまった。ルキエルには自覚がない。ただ、無邪気に喜んでいるだけだ。しかし、その姿は、貴族の心を鷲掴みするのに、十分な威力があった。
「君には全てあげたい」
心奪われた貴族は、道具どころか、命だって差し出そうとしている。
それなのに、ルキエルは何も気づいていない。無邪気に、道具を貰えることを喜び、女のように甘える。貴族の気持ちは、ルキエルには通じていない。
そのことに、貴族は気づいていた。苦笑して、ルキエルを抱きしめ、蜜事を囁いた。
こうなると、もう、貴族の男は、ルキエルから離れられないだろう。ルキエルのために、全てを捧げる無償の愛だ。
この光景をハガルは記録として見る。私の主観は記録には出ない。ただ、あるがままに、出来事が流れるだけだ。大したことがない一場面だろう。むしろ、何かあったな、程度で流し見ることだろう。
だけど、妖精として、この貴族は尊い。貴族は、死ぬまで、ルキエルを思い、身を捧げることとなる。
そんな出来事も、本当にハガルは一場面として流し見した。そして、次の段階に移行するようだ。
「道具いじりと妖精憑きの格が上がったことは、何か関係があるかもしれませんね。少し、詳しく調べましょう」
そこは、隠された筆頭魔法使いである。ルキエルの格が上がったことは、重要な案件として持ち上げる。
「では、あの妖精憑きを保護するのか?」
もう、ルキエルの側にいるのは、うんざりしていた。随分と長いこと、ハガルから離れていた。私だって、ハガルの側にいたいのだ。
この役目には交代がない。何せ、妖精に名づけをしないといけないのだ。名づけ、良いことばかりではない。運が悪いと、この名づけのせいで、私はルキエルに支配されるかもしれないのだ。だから、この役目はずっと私だ。妖精だから、疲れることもないが、ハガルが恋しくて、ついつい抱きついてしまう。
「家族を殺す算段がついていません」
「家族ごと、保護すればいいだろう。ハガルのように」
「貧民街の支配者に、手を出すわけにはいきません。だから、殺したかったんです。貧民街は、必要悪です。その支配者とあっては、保護するのは不可能です。殺して排除すれば、支配者は勝手に生まれます。そのほうがいいんです」
「………」
最初の頃は、簡単な案件だった。それが、どんどんと難しく、面倒なこととなっている。
「もういいだろう!! あの男はあのままにしておけばいい」
「ラインハルト様に恨みがあるのが気になります」
そうなのだ。父親は、皇帝ラインハルトに恨みを持っていた。
私は詳しく話を聞くことはない。どうでもいいからだ。ルキエルの母親が死んだ理由も知らない。話しているかもしれないが、興味がないので、聞いていなかった。
もの言いたげに私を見るハガル。私に調べてほしいのだろう。
「私はルキエルを守るためにいるだけだ。そんな情報収集なんてしない」
「いいではないですか!! 知りたいんです」
「ラインハルトのためか? それとも、ルキエルのためか?」
「両方です」
どっちか片方を選ばない強欲な妖精憑きだ。だから、最強なんだろう。それに付き合わされる妖精は、たまったものではないが。
だが、ハガルの身の回りは、騒がしくなってしまい、ルキエルどころではなくなった。
ハガルの血のつながらない父親が、大魔法使いアラリーラの金をだまし取ったのだ。そのため、王都の貧民街も酷い騒ぎとなった。
妖精憑きの持ち物には、妖精が付くという。迂闊に手に入れると、妖精に呪われることがあるのだ。
大魔法使いアラリーラが持っている金は、正当な方法で手に入れれば、ただの金だ。だけど、騙して手に入れた場合、呪われた金となる。
呪われた妖精金貨となったそれらは、ルキエルの父親と敵対する勢力を一掃することとなった。
ついでに、ハガルは筆頭魔法使いとして、表に出ることとなってしまった。
お互いに落ちつたところで、私はハガルの元に行った。ルキエルの母親が死んだ理由、ルキエルの父親が皇帝ラインハルトを恨む理由を記憶として持って行ったのだ。
それを見たハガルは、真夜中だというのに、皇帝ラインハルトの寝室に乗り込んで行ったのだ。
「な、なんだ!? 敵か?」
「ラインハルト様のハーレムのせいで、ルキエルがひどい目にあってます」
「え、誰?」
皇帝ラインハルトは、ハガルが秘密裡にやっていることなど知らない。ハガルは、色々と言い訳を作ってはいるが、皇帝に報告していないのだ。
そのことを思い出し、ハガルはルキエルのことをゼロから話した。
真夜中に、いきなりやってきて、ハガルから、とんでもない話をされたラインハルトは、物凄く迷惑そうだ。ハガルの話なんて、聞いていても、大したことではないのだ。
「それで、ハーレム解体のついでに、女を殺したから、どうしたというんだ」
「その中に、ルキエルの母親がいたんです。ラインハルト様が女遊びをするために、ハーレムなんか作るから、不幸な者が出ました。解体なんかしないで、そのまま、続けていれば、ルキエルだって、不幸にならなかったでしょう」
「………」
ラインハルトにとって、ハーレムはどうしても隠しておきたい事実なのだろう。ハガルの口から、恨みをこめてハーレムのことを語られると、黙り込むしかない。
「だから、金で解決を」
「気狂いを起こした父親にとっては、金で解決出来る話ではなかったんですよ。全て、金で解決しようなんて、恥ずかしい」
「お前にだけは言われたくないよ!! あのどうしようもない父親の借金を返したり、遊ぶ金を渡したり、挙句のはてに、妖精金貨まで発生させただろう!!!」
「反省しています。もっと、厳しく監視するべきでした。もっと格上の妖精にしてやればよかった」
ギロリ、とハガルは最高位妖精たちを睨む。皆、目を合わせない。絶対にやりたくないことだからな。
ハガル、反省の方向が酷いな。結局、金は渡すんだな。それを聞いたラインハルトは呆れるしかない。解決方法も反省も人外なんだ。
「それで、その妖精憑き? をどうしたいんだ」
「魔法使いにします」
「許さん!! そんな貧民出の貧民育ちの妖精憑きを栄えある魔法使いにするわけにはいかない!!!」
「隠せばいいんですよ、隠せば。もう、魔法使いに出来るほどの実力をあります。そう、私が教育しました」
「お前、私の許可なく、何やってくれてるの!? 私の敵の力を伸ばすって、どういうことだ!!」
「ルキエルを魔法使いにするためにしたことです。あそこまで格が上がったのです。魔法使いに出来ます」
「魔法使いにして、どうするんだ?」
「私の側につけます。私の側にいれば、安全です」
「許さん」
ハガルの望みを聞いて、ラインハルトは厳しい顔となる。
「どうしてですか!? ルキエルは優秀な妖精憑きですよ。なんと、道具の修理まで出来ます。この才能のお陰で、妖精憑きとしての格を上げていきました。きっと、これからもっと、強くなります」
「お前はわかっているのか? お前がやろうとしていることは、捕まえた暗部の女と同じことだ。側に置いておくことは、自由に見えるが、そうえではない。お前はその妖精憑きを側において、囲って、可愛がりたいだけだ。代わりなんぞ、いくらだっているものだ。それだったら、若い魔法使いから選べばいい」
「い、いやです。ルキエルがいいんです!!」
ボロボロと泣き出すハガル。
まさか、泣き出すとは思ってもいなかったラインハルトは慌てた。
「そんな、泣くことはないだろう。妖精憑きなんて、いくらだっている。これから、ハガルがいいと感じる妖精憑きが誕生するかもしれない」
「い、いません、ルキエル、のような、妖精憑きは、いません」
ラインハルトの胸で泣くハガル。泣いたハガルの顔を見て、ラインハルトは違う衝動を動かしてしまう。
このままでは、解決できないので、私は、解決出来る者を無理矢理、連れてきた。
「いつまで、私は使われるんですか」
賢者テラスだ。我々、最高位妖精が見れる妖精憑きは、この男しかにいない。
テラスは私の記憶を読み取り、だいたいの事情を理解した。
「ハガル、こちらに来なさい」
「て、テラス」
その美貌を晒し、ハガルはテラスに泣きつく。泣いているハガルをあやすなど、テラスにとっても随分、久しぶりのことだ。仕方なく、ハガルの背中をさすって、落ち着かせる。
「どうして、その妖精憑きがいいのですか。妖精憑きなんて、いくらだっているでしょう」
「友達になりたいんです」
少し落ち着いたハガルは、よどみなく答える。
「どうして、この妖精憑きなのですか?」
「私にはない強さと、かっこよさがあります。貧民でありながら、ルキエルは、かっこいいんです。ぜひ、友達になりたいのに、ラインハルト様はダメだというんです」
「言ってない!! 魔法使いにするのは許さん、と言っただけだ!!!」
とんだ濡れ衣である。すぐ、ラインハルトは否定する。
もう、いつ死んでもおかしくないテラスは、呆れるしかない。
「陛下は皇帝です。間違っていません。ハガル、今のままでは、友達にはなれませんよ」
「だから、魔法使いにして、側に置いて」
「その妖精憑きの復讐は終わっていない。私が死んでしばらくは、我慢しなさい。まだまだ、その時でないことは、ハガルもわかっているでしょう」
「復讐なんかどうだっていい。そんなもの、私には関係ありません。私はルキエルが欲しいんです」
「友達となりたいというのなら、まず、段階を踏みなさい」
「時間をかけて、仲良くなりましたよ。女遊びの店に連れて行って、一緒に遊びました」
とんでもない段階を踏んでいることを報告するハガル。聞いているテラスはもの言いたげにラインハルトを睨む。女遊びをするようになったのは、元をたどれば、ラインハルトのせいなのだ。
「そこまで仲良しだとはな。どうして、私に報告しない。野良の妖精憑きがいるのなら、私への報告は必須だろう」
「報告したら、殺せ、とかいうではありませんか」
「いや、保護くらいは命じるぞ」
「ラインハルト様がハーレムなんか作らなければ、きっと、ルキエルとはいい友達でいられたでしょうね」
ハーレムのことは、ラインハルトにとっては逆らえない事実である。それを言われると、ぐうの音も出ない。
「過去は変えられません。陛下が女好きなのも、変えられ、ないと思っていましたが、違いましたね」
テラスはじっとラインハルトを見る。ラインハルトは思いっきり顔を背ける。
「ともかく、今はそういう時期ではない。私が死んだ後は、ハガルが魔法使いの支配者です。まず、やるべきことをやりなさい」
「だから、私は癒しとして、ルキエルが欲しいんです」
「ハガルは昔から、執着すると、手がつけられませんね。その妖精憑きに嫌われますよ」
テラスも反対するのだ。ハガルは頬を膨らませて、さっさと部屋を出ていった。皇帝とテラスの許可が降りないのだ。ルキエルを側に置くような真似はしない。
「最後まで、本当に手がかかる弟子だ。だが、友達か。望めば、全てを手に入れるだけの力があるというのに、友達を欲しがるとは。考えてみれば、ハガルには、友達という友達はいませんでしたね」
「え、いないのか!?」
「いるはずないでしょう。筆頭魔法使いであることを隠してたんですよ。遊んでいるように見えて、実は裏で暗躍していたんですから。その上、陛下はハガルを束縛しています。友達と遊ぶ暇なんて、ハガルにはありません。私が死んでからでいいですから、ハガルのためにも、その妖精憑きの処遇は考えてやってください」
「私が、その妖精憑きの母親を殺したんだろう。どうにか出来る案件ではない」
「それは、身から出た錆というものです。女遊びを昼も夜もしたいからって作ったくせに、ハガルに出会って、すぐ解体だなんて。どう説明するのですか?」
「………」
「ハガルのためにハーレムを解体したなどと知ったら、ハガルだって傷つくでしょう。友達の母親が死ぬきっかけが、ハガルだなんて。私が死んだ後にしてくださいよ。もう、あなたのハガルの間を取り持つのは面倒です」
「すまん」
もう、寿命が目の前の賢者テラスに言われて、皇帝ラインハルトは謝るしかなかった。
結局、ルキエルがハガルの元に連れて来られるのは、時間がかかった。賢者テラスがいう通り、順序が必要だった。
ハガルなりに、考え、そして、時間をかけて、ルキエルを手元に引き寄せる方法を実行した。
皇帝ラインハルトを民衆に晒し、復讐を執行させるのだ。
それを聞いたラインハルトは、もう、両手で顔を覆って、泣くしかない。
「私は、皇帝なのにぃ」
「ルキエルの母親を殺したのはラインハルト様です。責任をとってください」
言い方が酷いな、ハガル!! 皇帝として、ラインハルトがやったことは間違っていない。ハーレムを解体したのだ。その中にいた女たちは、ラインハルトのことをあれこれ知っているのである。情報を表に出すわけにはいかないので、口封じするしかなかったのだ。
ラインハルトは、気の毒だ。もうすぐ寿命だってのに、特別大事なハガルに命じられて、囮として、民衆の前に晒されるのだ。しかし、ハガルのためだ。我々、最高位妖精にとっては、ラインハルトなんて、そこら辺いる人と変わらない。大事なのは、ハガルだ。
そして、見事、ラインハルトを囮にして、復讐を果たそうとする一派を捕縛するハガル。もう、お気に入りのルキエルは、特別な地下牢だ。そこは、元は、篭絡した暗部の女たちを閉じ込めるために作られた牢屋だ。地下牢だけど、快適に過ごせるように家具とか色々と置かれている。来客用のソファまであって、かなり贅沢な作りだ。
そして、ルキエルの父親は、最低限のものしかない、薄汚れた地下牢である。ルキエルの兄弟は、普通の牢屋に入れられた。
すでに、ハガルは関わった貴族を調べ上げていた。ついでに、関係ない貴族も道連れにして、大掃除である。妖精の呪いをかけて、さっさと一族郎党、滅ぼしたいばかりだ。
だけど、それなりにやるべきことがある。いくら、処刑したくても、証言をとらなければならない。それが例え、貧民といえどもだ。
この証言をとるために、ハガル自らが前に出た。手元にルキエルを閉じ込めたので、もう、ご機嫌だ。
ルキエルの関係者で、最初に取り調べられたのは、元凶である父親だった。父親は、襲撃時、ハガルの姿を見て、何故か抵抗をやめてしまった。
そんなこと、まったく興味がないハガルは、ルキエルを女のように蹂躙した父親を前にして、素顔を晒した。この素顔が有効、と感じたのだろう。
牢獄にいたルキエルの父親は、ハガルを一目見て、しかし、苦笑するしかない。
「お前のような者が側にいれば、確かに、ハーレムは解体されるな」
「気狂い、していませんね」
ルキエルの父親は、正気の目をしていた。
それには、私は目を疑った。この男は、ルキエルの前では、狂い、ルキエルのことを愛する妻の身代わりとして溺愛していたのだ。私の目から見ても、そうだった。
しかし、今、目の前にいる男は、冷静な目をしている。
「いつから、気狂いのふりをしていたんですか?」
「なぜ、俺が気狂いをしていた、と知っている?」
ハガルは逆に質問される。ハガルにとっては、知っていて当然のことだが、ルキエルの父親にとってはそうではない。ルキエルの父親は、鋭い目を向ける。
「なるほど、騎士団でもそれなりの地位にいた実力者というだけのことはあります」
「何故、それを!?」
「別に、あなたのことなんて、どうだっていいんです。ルキエルのことが知りたかったんです。あなたのことは、ついでです」
皇帝まで囮にして、大がかりな捕り物をしたというのに、ハガルの目的はルキエルただ一人だと聞いて、ルキエルの父親は呆然となる。
「妖精憑き、だから、か?」
「それもあります。欲しかったからです。ついでに、帝国の膿を取り払っただけですよ。それで、いつから芝居をしていたのですか?」
「ルキエルが妖精憑きとわかってからだ」
随分と長い間、この男は気狂いの芝居をしていた。そして、そのために、ルキエルを散々、女として愛したのだ。
「随分と長い芝居ですね。どうして、そんなことを?」
「妖精憑きだと貴族に知られていた。ルキエルをとられるわけにはいかなかった。大事な息子だ」
「子どもは、ほかにもいるではありませんか。ルキエルだけが、大事なのですか?」
「皆、大事だ。だが、妖精憑きであるルキエルは、どうしても、狙われてしまう。だから、貧民なりのない知恵で、ああするしかなかった」
貧民街の支配者が溺愛する妖精憑きだ。貴族も迂闊には手を出せなかった。
この男がまともだとわかった途端、ハガルは疑問に思うことを矢継ぎ早に質問する。
「どうして、腕っぷしよりも、妖精憑きとしての力を伸ばしたのですか?」
「腕っぷしなんて必要ないだろう。妖精憑きは、才能がありすぎる。下手に腕っぷしを鍛えては、兄の威厳がなくなる」
ルキエルは、腕っぷしがなくても、技術が化け物だ。数度、目で見ただけで、相手の技術を体得してしまう。それを使って、戦うのだ。腕っぷしがなくても、兄ライホーンは、ルキエルに勝てない。
「どうして、復讐を実行したのですか?」
「ルキエルが望んだからだ」
「どういうことですか?」
「俺が一時的とはいえ、気狂いを起こして、ルキエルをサツキの身代わりに抱いたことで、ルキエルは壊れた。連れ戻してみれば、ルキエルはどんどんと女のようになっていった。そして、惰性で俺を受け入れ、そのまま、俺の力がある限りは、守っていられるかと思っていた。ところが、平民地区に行ってから、ルキエルは変わった。何か目的を持ち、とうとう、サツキのふりをして、俺に復讐を促した。全て、俺が悪かった。だから、実行するしかなかったんだ」
貧民なりの愛し方だ。そうするしか、考えられなかった。貧民では、それが当然なのだ。ルキエルのために、失敗するとわかっている復讐を実行したのだ。
「それで、あなたは、関わった貴族どもの情報を私にくれるのですか?」
「そんな必要なんてないだろう。勝手に、処刑したい貴族を処刑すればいい。あんたには、それだけの権力と力がある」
「そうです。私には、証言なんて必要ありません。ラインハルト様と帝国に弓なす貴族は、一族郎党、滅び去ってもらいます」
「さすが、千年に一人、生まれるという最強の妖精憑きだ」
「何か、お望みはありますか? ルキエルが手に入りましたので、私はとても機嫌がいいんです。それなりのお望みなら、かなえてさしあげますよ」
それを聞いて、ルキエルの父親は穏やかに笑う。
「俺はいつか、殺されることが決まっていた。だが、サツキの子どもたちには、そんな危険な目にあわせたくない。もし、どうにか出来るなら、力を与えてやってほしい」
「わかりました。ルキエルの兄と弟は、腕っぷしを鍛えてあげましょう。姉は、必要ないでしょうね。あの女には、むしろ、罰が必要です。妹のほうは、最強の守護があります。まあ、望むのであれば、身分だってさしあげますよ。平民でも、貴族でも、お好きなものを選んでください。ルキエルが手に入るなら、安いものです」
「どうして、それほど、ルキエルを欲しがる?」
妖精憑きの感覚を、ルキエルの父親は理解があるようだ。ハガルの執着に苦笑する。
「最初は、同情からでした。あなたがルキエルを手籠めにしていたのを知って、殺してやろうと思いましたよ。止められましたが。それから、ずっと見守っていたんです。ルキエルは生き方がかっこいいいです!!」
「かっこ、いい?」
「腕っぷしがなくても、その技術だけで、相手を負かしてしまうのは、かっこいいです!! 頭もいいですから、やり方に無駄がありません。そんな姿を見せられたら、憧れてしまいます!!! 妖精憑きなのは、ついでです。ルキエルとは、ぜひ、友達になりたいです!!!」
子どものように手振りをして、ハガルはルキエルの戦い方を表現する。その姿は滑稽だ。だけど、ルキエルの父親を笑顔にさせた。
「そうか、かっこいいか。ルキエルは、自慢の息子だ」
そして、嬉し泣きをした。




