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魔法使いの悪友  作者: 春香秋灯
修理屋
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短い平穏

 内戦というより、内戦の前哨戦が終わって、二週間が経った。海の貧民街、無傷だったので、すぐに貧民たちが戻ってきて、十日ほどで、元の賑わいに戻っていた。

 帝国の四大勢力である、王都、中央、山、最果てのそれぞれの貧民街の支配者は、内戦が終わった次の日には、あの恐ろしい軍勢を連れて帰っていった。残るは侯爵家次男が連れて来た軍勢の死屍累々だが、そこの後始末までしてくれたという。

 二週間経っても、侯爵家次男と軍勢を失った侯爵家からの報復はない。何せ、帝国の所有物である魔法使いを許可なく使用したことが表沙汰となり、侯爵家は妖精の呪いの刑罰を受けて、一族郎党、大変なこととなっていた。また、全く関係ないと思われた貴族、平民、貧民から血族が出てきてしまい、悲惨な結果となっているという。手当たり次第、権力と金にものを言わせて女に手をつけるから。

 そして、俺のもとには、帝国の持ち物である魔法使いを無断で使用した貴族の首のお礼に、とんでもない金が最高位妖精カーラーンを通して、送られてくる。

「ハガル、わかってないよな。俺は金なんかよりも、手紙のほうが良かったんだけどな」

 本当に、ハガル、ダメだな!! 俺のこと、友達とか呼んでおいて、金送るって、どうなの!?

「生活に困っていないか、心配なんだ。受け取ってやれ」

「こういうことするから、ハガルのあの親父が、ダメになったんだろうな」

 俺は溜息をついてしまう。

 筆頭魔法使いハガルには、大事な大事な家族がいる。皆、いい奴なんだが、父親だけはダメなんだ。ハガルを利用して、借金はする、金を湯水のように使う、はては子どもまで売ったという。本当にダメ親父なのだ。そんな親父でも、ハガルは甘やかしたんだろうな。こんな金をぽんと出されたら、そりゃ、親はダメになるよ。

 あれだな、あの親父があんな化け物みたいな姿になったのは、ハガルのせいでもあるな。

 ハガルのダメ親父、表向きでは死んだこととなっているが、そうではない。大魔法使いアラリーラの金を手をつけてしまい、妖精に呪われ、人ではなくなったのだ。世にいう、妖精金貨事件である。

 王都の貧民街では、別の勢力が、支配者であった俺の親父と敵対していた。その敵勢力が、ハガルの親父を利用して、大魔法使いアラリーラから金を騙し取ったのだ。

 ただの人であれば、何も起こらない金貨である。しかし、妖精憑きの持ち物には妖精が宿る。大魔法使いアラリーラの金貨なんて、絶対、まずいことになる。

 結果、敵勢力は大魔法使いアラリーラの金貨に憑いた妖精によって呪われ、人ではなくなったという。

 妖精金貨は全てハガルの手によって回収され、呪われた人も全て、地下牢に閉じ込められたという。その中には、もちろん、ハガルのダメ父親もいた。

 俺はいつもの箱に、ハガルから送られてきた金貨をぽんと入れる。

「使ってやれ。呪われていないから、妖精金貨にはならない」

「お前らも、きちんとハガルに注意しろ。ハガルの残った家族は大丈夫なのか?」

「あれらは、しっかりと良識を持っている。学校に通い、働いて、きちんと自活している」

「そこはまともなんだな。それで、どうして、俺には金を送るのやら」

「ダメな父親の代わりなんだろうな」

「………」

 ハガル、何かに金を貢いじゃう病気だな。いるんだよ、そういうの。男とか女とか、賭け事とか、酒に嵌っちゃうのな。それで身を滅ぼすのだけど、ハガルはそうではない。筆頭魔法使いなんて帝国で二番目の権力者だ。金なんていっぱい持っている。二番目の権力者だから、使う暇もないんだろうな。

 結果、俺みたいな奴に貢ぐことで、精神の安定を得ているのだろう。

「手紙書く必要があるなー」

「ハガルも喜ぶぞ」

 カーラーンが言ってくれる。最初は、俺のことを蔑んでいた最高位妖精カーラーンも、すっかり、毒されちゃったよな。ハガルもこんな感じで、毒されちゃったんだな。育ちが良い奴のあるあるだ。

「居場所がバレないように、書いてやるか。どんな返事くれるかなー」

 貧民だけど、親父は元は王都の貧民街の支配者だから、俺が書類関係を担当させられていた。ほら、体使うことは禁止されていたから、頭使うしかない。結果、貴族様相手に手紙書いたりもしていたよ。上手だよ。

 知り合い相手には、これが初めてのことだ。俺は、いい感じの紙を出して、早速、ハガル宛の手紙を書こうと筆をとる。

 が、いざとなると、文章なんて思いつかない。貴族様相手とはわけが違うよな。知り合いだから。

 悩んでいても、先に進めないので、俺は一度、部屋を出た。

「おい、手紙は!!」

「書くネタを考えるために、ちょっと外に出てくる」

「お前、外出禁止にされただろう」

「ほら、気配消して消して」

 妖精憑きの俺に、外出禁止なんて無駄無駄。俺はカーラーンに命じる。

 しかし、カーラーンはしてくれない。そりゃそうだ。カーラーンは筆頭魔法使いハガルの妖精だ。俺の側にいるのは、護衛である。俺の命令をきくのは、カーラーンの気まぐれだ。

 仕方がないので、俺に憑いてる妖精にやらせるも、外に出ると、捕獲されてしまう。

「ルキエル、また、抜け出して!!」

 元妖精であり、俺のこと大好きなナナキが早速、俺を見つけた。

「部屋に行ったら、いなくなってるんだもん!!」

 ナナキに護衛されている俺の妹レーリエットに抱きつかれる。あ、可愛いレーリエットに捕獲されたら、逃げられないな。

「外に出るなんて、危ないではないですか!?」

 海の貧民街の支配者コクーン爺さんの孫ヘレンお嬢さんにまで見つかった。

 俺はカーラーンを睨む。こいつ、俺の妖精の力を消しやがったな!!

「ルキエル、大人しく部屋に戻りなさい」

 コクーン爺さんが建物の上から言ってくる。

「もう、治った!! 仕事にも復帰出来るくらい、元気だ」

「その仕事も、もう許可しない。そう決まったんじゃ」

「酷いっ!! 俺の楽しみなのに!!!」

 とうとう、身売りの仕事まで取り上げられた。

「仕方がないじゃろう。道具の修理は、お主しか出来ないのじゃからな」

 こうなるとわかっていたから、俺は表に出たくなかったのだ。

 ヘレンお嬢さんの身柄を手に入れるため、元婚約者である侯爵家次男ミリアムが、内戦を仕掛けてきた。コクーン爺さんとこの内部情報はだだ漏れなので、侯爵家は二倍の戦力を投入してきたのだ。このまま、海の貧民街は蹂躙されるかと思われたが、俺が表に出て、王都、山、中央、最果ての四つの貧民街の戦力を動かし、侯爵家の戦力を潰したのだ。

 俺は、一年前まで、王都の貧民街で、魔道具や魔法具の修理をさせられていた。体使うことを禁止されていたので、頭や手先を使うしかない。魔道具や魔法具は、妖精憑きでしか修理出来ない代物だ。別に、各地の貧民街は、妖精憑きを所有しているのだから、やらせればいいのだが、出来ないのだ。たぶん、これ、道具に対する才能も必要なんだ。

 道具を修理したり、組み立てたりするのは楽しかったので、苦ではなかった。が、一年前、俺を囲っていた親父が死に、俺は自由となった。親父が仲介してやっていたことだし、色々な事情があって、俺は王都を離れたのだ。

 結果、俺が不在の一年間、各地の貧民街は、壊れる一方の道具を抱え、大変なこととなったという。

 そんな時に、俺が脅すように戦力を要求したのだ。出さないわけがない。

 そして、俺の所在はバレて、俺の自由はなくなったわけである。帝国中の貧民街にとって、俺はなくてはならない存在なのだ。

「表向きの仕事をしないと」

「身売りは、お主の正体を隠すための仕事じゃろう。もうする必要がない。お主のことは、もう、知れ渡っておる」

「………いや、気晴らしが」

「僕がお相手しますよ」

 コクーン爺さんだけでなく、ナナキまで口出ししてきたよ!! ナナキは後ろから俺を抱きしめて、首に舌を這わせてきた。とたん、俺は足に力が入らなくなる。弱いんだよ、こういうの!!!

「さあ、部屋に戻ろう。誠心誠意、ルキエルにお仕えしよう」

 元妖精だから、お気に入りを囲いたい、という欲求が強いという。ナナキは大喜びで俺を抱きしめる。閉じ込める口実が、公で出来たのだ。もう、欲望を隠さない。

「たまには別の男がいいんだよ!!」

 負けてたまるか!! 昨夜も随分とナナキにやられたが、飽きたんだよ。

「あんなに喜んでたのに!?」

「仕方ないだろう。俺の体は、親父が生きている頃から、他の男の玩具にされてたんだからな」

 俺は死んだ親父の娼夫だった。生きている年数の半分以上だ。俺は体を鍛えることを禁じられ、体力がなかった。親父は王都の貧民街の支配者を長年続けるほどの実力だ。親父の全力を俺は受け止められず、途中、意識を失ってばかりだった。親父は俺を散々、蹂躙して、その後始末は他人まかせだ。その他人が、意識のない俺に悪戯したのだ。

 俺はナナキを押し離して、距離を取る。

「だったら、せめて、俺が喜んで閉じこもりたくなる道具を持ってこい。もう、持ち込まれた道具は、全て、新品同様に修理が終わった。これで百年は壊れないぞ」

 だいたい、部屋に山積みにされた壊れた道具は、全て修理済みだ。暇なんだよ!!

 俺は親父が生きていた頃とは違う。妖精憑きの格が上がってしまったため、修理の腕前も上がったのだ。ついでに、道具を綺麗に出来てしまうので、壊れなくなった。

 壊れた道具が直され、しかも、壊れなくなってしまったので、修理しなければならない道具がなくなってしまったのだ。

「今、集めておる所じゃ。病み上がりなんだ。大人しく、療養していなさい」

 とうとう、コクーン爺さんまで側に来ちゃったよ。

 見た目はおじいちゃんだけど、その腕前は達人だ。俺は知らなかったが、軍神コクーン、と呼ばれているという。うーん、俺はまだ、コクーン爺さんには勝てないな。

「今日あたり、中央の貧民街から、ケリン殿が来るかもしれないぞ。何やら、すごい道具を持ってくる、と言っておった」

「ケリンか。あの男、体格はいいんだよな。あとは、下半身を触って」

「ルキエル!! 浮気は許さん!!!」

 ちょっと気になってたんだよな、ケリンの下半身。耳ざといナナキは激怒して、また、俺を抱きしめる。もう、飽きたー。

「味見するだけだろう。最高なのは、ナナキだ」

「どうすれば、僕だけものになってくれるんだ!? こんなに、誠心誠意、お仕えしているというのに!!」

「そういう最低なのが良かったんだろう?」

「そうだが、やはり、独占したい」

「はいはい」

 俺はさっさとナナキの拘束を外す。ちょっと妖精の力を使えば、こんなの、簡単だよ。

「心臓が止まったんじゃぞ。もう少し、大人しくしておれ」

「心臓が動いてさえいれば、三日で回復しちゃうから、問題ない」

「それでも、皆、ルキエルのことを心配しておるんじゃぞ。お主が倒れた時は、大変じゃった」

「そこは、神と妖精、聖域の思し召しだ。生きる時は生きる、死ぬ時は死ぬ、あるがままだ」

 最後は信仰の言葉を口にすると、コクーン爺さんに殺気を放たれた。

「もっと、自分を大事にしなさい。お主のことが大事だと思う者は、お主が思っている以上にいるんじゃぞ」

「わかったわかった」

 泣き落としされそうだから、俺は大人しく、建物に戻る。仕方がない。俺は今、帝国中の貧民街にとって、大事な修理屋さんだ。

「後で聞いたんじゃが、身体強化、王都では禁止されておったんじゃな。知らんかったぞ」

「兄貴から聞いたんだ」

 内戦で、俺の兄弟も参戦していた。ちょっと兄弟喧嘩して、俺が倒れちゃったんだけど、その後、コクーン爺さんと兄ライホーンが話したのだろう。

 俺は一度、王都の貧民街で、身体強化を使い過ぎて、心臓が止まったことがあった。その時、親父は大変なことになったらしい。その後、俺は身体強化を禁止されたんだ。

「親父が体鍛えるの禁止したから、俺自身が弱くなったんだよ」

「ここでの早朝訓練も、禁止じゃ」

「えー、暇なのにー」

「他にも隠し事をしていそうじゃからな。もう、戦うんじゃない」

「隠し事、お互い様だろう」

「………」

 コクーン爺さんは俺から顔を背けて黙り込む。

「俺もあんたも生きている。約束、守ってもらうからな」

 俺はコクーン爺さんにだけ聞こえるように囁いて、部屋に戻った。






 部屋に戻って、ハガル宛の手紙を書き終わった頃、ヘレンお嬢さんが部屋にやってきた。

「入らないで」

 俺はヘレンお嬢さんを部屋に絶対に入れない。ヘレンお嬢さんは気まずい、みたいな顔をして、部屋の外で立っている。

「あの時のことは忘れてください」

「忘れない。入るな」

 完全な拒絶に、ヘレンお嬢さんは泣きそうになる。

 内戦前、ヘレンお嬢さんは女の純潔を俺にとらせて、女の価値を下げようとしたのだ。ヘレンお嬢さんとしては、貴族の思惑通りになりたくなかったからだろう。女の純潔がなくなれば、貴族に一矢報える、なんて考えたろうな。それは、別に構わない。

 そんなくだらない思惑に、俺を巻き込もうとしたから、俺は腹が立っているのだ。

「何か御用ですか?」

 人前では和やかにしているが、俺とヘレンお嬢さん、二人だけの時は、俺は冷たくなる。ヘレンお嬢さんは居たたまれなくなるが、知るか。

「中央の貧民街の支配者ケリンが来ました。お祖父様が呼んでいます」

「コクーン爺さんの私室に行けばいい?」

「最上階での謁見になります」

「わかった。一人で行ける」

 ヘレンお嬢さんは何か言いたそうな顔をしているが、俺は無視する。

 背中を向ければ、ヘレンお嬢さんはドアを閉めた。

「許してやればいいだろう」

「ほら、手紙。たまには、カーラーンが持って行ってよ」

「そう言って、私をここから離して、内緒で色々とやってくれたな。内戦前、帝国中の貧民街と連絡をとりあっていたとはな。あんなに心配していたというのに、酷いな」

「お前とハガルの情報伝達がよくわからないからな」

 なんだかんだとカーラーンを部屋から追い出して、俺が各地の貧民街の支配者と連絡取り合っていたことを根にもっていた。痛いこと言われた。

「言っておくが、ハガルはお前の日常を盗み見るような真似はしないぞ。そこまで暇ではない。お前は、本当に面倒臭い男だな」

「仕方がないだろう!! 女々しいんだから」

 見た目がどんどんと綺麗系に向かっていくからか、女々しくなってきたんだ。

「そういうところ、ハガルに似てる。ハガルも、妙な所で面倒くさくて、女々しい。違いがあるといえば、女を抱いたか抱いてないかだな。ハガルは女を抱いたことがあるというのに、それでも女々しい」

「聞きたくなかった!!」

 ハガルが女相手の経験があっても女々しいということは、俺もそうなる可能性が高いということだ。

「いいか、この建物から出るんじゃないぞ」

 俺のお願いはきいてくれるようだ。カーラーンは俺の手紙を持って、姿を消した。

 建物自体に、何かされているのだろう。俺はカーラーンの約束を守って、建物の中を移動した。最上階って、大変だなー。

 俺の機嫌が良くないとわかっているから、部屋の外に出ても、ナナキもレーリエットが待ち構えていなかった。俺も一人で過ごしたい時がある。

 一人で行動して、最上階の謁見室に行く。そこには、コクーン爺さん、ワシム、中央の貧民街の支配者ケリン、あと大きな荷物を持った数人がいた。

「ヘレンは一緒ではないのか?」

「………」

 俺は無言で不機嫌になる。それを見て、コクーン爺さんはおもいっきり顔を背ける。あれだ、俺とヘレンお嬢さんを仲直りさせようとしたんだな。やめろ、そういうこと。

「それが、すごい道具?」

 大きな袋に入った二つの荷物に触れてみる。

 俺が挨拶もなしに触るので、荷物持っている奴らが殺気を見せるが、ケリンが手で制してくれた。

「あ、ごめん、礼儀知らずだった。ちょっと機嫌が悪かった。見ていい?」

「これが、その道具の資料だ」

 随分と古い紙の束を俺に渡してくれる。持った瞬間、埃みたいなのが舞う。年代物だな、これ。

 埃を魔法で取り払って、綺麗になった紙の束を見て、俺は目が離せなくなる。紙の束を大事に抱え、荷物が入った袋を魔法で取り払った。

「これは、義体じゃないか! すごい、初めて見た!! お袋の昔話で聞いたんだが、大昔は、これに妖精を憑けて、戦わせてたんだって。へえ、素材は聖域のものを使ってるんだ。どっかの聖域潰したんだな」

 義体は二体もある。持っている奴らを魔法で吹き飛ばして、義体を大事に床に置く。もちろん、床は魔法で綺麗にする。塵一つないよ。

「見た限り、壊れていないけど?」

「………お前、妖精憑き、なのか?」

「あれ、知らなかった? まあ、いっか」

 今更、ケリンは俺が妖精憑きだと知る。魔法具や魔道具の修理が出来る俺のこと、妖精憑きだと気づいていると思っていた。

 俺自身で正体をばらしたものだが、気にしない。それよりも、目の前の義体だ。

「修理、必要ないだろう」

「僕が所有している妖精憑きに操作させたが、動かなかった。まず、妖精が憑かない」

 一応、ケリンなりに試したようだ。妖精憑き、どこの貧民街だって、隠し持っているから、色々とやったんだろうな。

 俺がちょっと触れてみれば、義体は俺の意思を反映して立ち上がった。

 突然、義体が動き出して、その場にいる全員が臨戦態勢になる。

「ほら、壊れてない。俺の意思通りに動く」

「どうして!?」

「魔法使いはいくつかの属性を同時に行使する才能が必要だ。俺はこれでも、三つまでの属性の行使に成功している。一つ目は、人として生命行動。二つ目は、義体への指令。三つ目は、義体への動力の供給。ほら、こんなふうに」

 俺は普通に話しながら、指令を出して、動くための動力を与えると、義体がくるくると回りだした。

「あ、やばい」

 俺は眩暈を起こして、倒れた。だけど、義体だけは死守だ。傷つけないように、倒れさせた。

 俺が倒れたので、ケリンが俺を助け起こす。

「まさか、身体強化か!?」

「違う違う。動力が俺の想像を越えるほど必要だ。これは、そこら辺の妖精を憑けても、動かせない」

「また、無茶をしおって!!」

 コクーン爺さんが怒る。

「仕方がない。仕様を知らないやつだから。ここまで大がかりに動力を必要とする道具は、初めてだ。なあ、あの箱に入っているのは?」

 不吉なものを感じる箱だ。大きな木箱に腕やらなにやら入っている。

「義体の修理に使えそうなのを持ってきた」

「ふーん、そうなんだ」

「我々の所にあっても、無駄なものだからな。もしかしたら、義体をもう一つ、組み立てられるかもしれない」

 ケリンは適当なソファに俺を下ろしてくれる。俺は受け取った資料の束をパラパラとめくって目を通す。

「これ、よく残ってたね。大昔に焚書した奴じゃん」

 使われている文字が古い。今では使われていないやつだ。読めるけど。

「読めるのか!?」

「あー、文字には法則性がある。その法則性を読み取れば、それを今の文字に置き換えればいい。文法は今と変わらないから、読めるよ」

「どうか、僕と一緒に、中央に来てくれ」

 いきなり、ケリンに手を握られて熱く見つめられちゃう。

「どうして俺は、男にばっかり口説かれるんだろうな」

 憂鬱になってしまう。俺、海の貧民街に来て一年経つが、男にばかり口説かれてるよ。

 ケリンは顔を真っ赤にして、慌てて俺の手を離す。

「そういう意味じゃない!! 君の知識は素晴らしい。中央には、こういったものがたくさんあるんだ。なにせ、焚書した資料の写しがいっぱいだ」

「冗談冗談。こっちで、まだやることがあるから、それ終わってから、考えるよ」

 俺はちらっとコクーン爺さんを見る。コクーン爺さんは空っとぼけた顔をしている。まだ、このクソ爺から、約束の話を聞いていない。

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