表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの悪友  作者: 春香秋灯
過去からの捜索者たち
12/40

過去からの使者

 明らかに俺を狙ってきた侵入者だけど、俺はコクーン爺さんに尋問をお願いした。ほら、こういうのは、慣れてる人がやるほうがいい。

 コクーン爺さんは、物凄く面倒臭そうな顔をしていたが、俺のお願いをきいてくれた。その代わり、また、とんでもない量の魔道具やら魔法具が俺の部屋に持ち込まれたけどな。はいはい、頑張ります。

「仕事、休めばいいだろう。昨夜は、あんなに楽しんでたんだからな」

 俺にしか見えない最高位妖精カーラーンが嫌味を言ってくる。

「俺が一方的にやっても、そんなに楽しくないんだよな。やっぱり、俺は蹂躙されるほうがいいな」

 長年、親父の剛直を受けていたのだ。身売りをして、そう自覚を持ってしまった。今更、そこから抜け出したい、とは思っていない。

 仕事と言っているが、俺自身の楽しみだ。金もらって、体を満足させてもらっているのだ。いいことばかりだ。

 ただ、どんどんと蔑まれていってるけどな。

 俺がお世話になっているトコは、皆さん、元は貴族だったり、平民だったりした人たちだ。考え方が崇高である。俺のような奴は、どうしても理解出来ない。結果、受け入れがたいのだ。

 カーラーンなんかは、呆れてるけどな。こいつの主であるハガルは、皇帝ラインハルトの娼夫だった。ラインハルト亡きあとは、どうなったのかは知らないが、カーラーンの反応を見るに、ハガルは育ちの良さから、俺の生き方は受け入れがたいのだろうな。

 カーラーンとしては、身売りの仕事はやめさせたいようだが、俺はやめられない。好きだということもあるけど、妖精憑きを隠すためには、表立った仕事が必要だ。この身売りは、丁度いい。

「金が足りないなら、ハガルからもっと送るように言っておこう」

「金は使っていない。だいたい、貧民に、あんな大金、使いきれるわけがないだろう」

「平民として生きていけばいいだろう。ハガルに言えば、きちんと平民としての身分も作ってくれるぞ」

「いらない。本当にお前たちはわかっていないな。貧民という立場は、色々と使えるんだ。身分がないから、犯罪行為もやれる。帝国の法律に縛られていないから、やりたい放題だ。平民なんかになったら、帝国に縛られることになるんだぞ。貧民としての利点を知っている俺が、今更、平民として生きていけるわけがないだろう」

「こんな仕事はやめろ。ハガルだって、ラインハルトを亡くしてから、男との閨事はしていない」

「それはそうだろう。ハガルと皇帝の関係は別物だ。ハガルは本物を知っている。それが皇帝ラインハルトだ。もう、必要ないんだ。十分に満たされている」

「お前は、死んだ父親の身代わりを求めているじゃないか!?」

「親父は俺の本物じゃない。ただ、俺を縛る過去だ。俺は一生、満たされない」

 俺とハガルは違う。ハガルには、寄りかかる何かは必要ない。思い出を持って、生きていける。ハガルと皇帝ラインハルトは、そういう間柄だ。

 俺と親父は、狂った関係だ。俺は亡くなったお袋の身代わりとして親父に愛された。親父は狂って俺を愛していたが、俺はそうではない。ただ、親父の体に溺れただけだ。俺には、気持ちがない。

 カーラーンは、随分と俺に情を持ってしまった。俺の寿命が尽きるまで、カーラーンとは付き合うこととなっている。カーラーンが持つ価値観はハガルと同じだ。どうしても、俺を身売りさせたくないのだ。

 そんな口論をしていても、俺は仕事場に行ってしまう。カーラーン、説得するよりも、お前の魔法で、俺を部屋に足止めするなりしたほうがいいってのに、本当に、甘くて優しい妖精だな。

 店に入ってすぐ、身なりのよい男が俺に近づいてくる。

「二日ぶりですね」

 この男は常連だ。随分と、俺のことを可愛がってくれる。

「話がある。座って話そう」

 笑顔で俺の手を引いて、椅子に座らせてくれる。この男、身なりから、貴族だろうな、と思っていたが、そうかもしれない。

 身売りの店は、別に、貧民専門というわけではない。平民、貴族が買いに来ることもある。身売りするのが貧民なので、安いし、色々と出来るからだろうな。俺がいる店は、その中では、平和的なとこだ。

 俺は大人しく座るも、男は俺の手を握ったまま離さない。

「私は見ての通り、それなりの身分がある。金もある。どうだろう、私の屋敷で暮らさないか」

 それを聞いて、俺はタリムのことを思い出す。

 コクーン爺さんの敵勢力の一員だったタリムは、俺を利用して、ヘレンお嬢さんを誘拐しようとしたのだ。俺はタリムとは随分と深い仲となっていたが、俺はタリムをコクーン爺さんに差し出した。俺が呆気なくタリムを捨てたので、タリムはすっかり役立たずとなった。

 失って、ちょっと後悔した。タリムほどの剛直の持ち主は、なかなかいないな。

 残念ながら、目の前の男は、平均的なものだ。タリムほどの剛直ではない。

 そんな失礼なことを考えているなんて、これっぽっちも思っていない、常連の男は、熱い視線を俺に送ってくれる。

「悪い話ではないだろう」

「忘れられない男がいる」

 タリムはもうこの世にいないのだが、そのことは、表沙汰にされていない。海の貧民街では、タリムはある日突然、いなくなったことにされているのだ。

 俺は、タリムに捨てられた体をとって、まだ未練があるような顔で、こういうお誘いをお断りしていた。死んだ後も、タリム、それなりに役立ってるな。

「聞いてる。付き合ってた男がいたとか。捨てられんだってな。酷い男がいたものだ」

「仕方がない。俺が、なかなかいい返事をしてやれなかった。もっと早く、いい返事をして、一緒に暮らしていれば、今も隣りにいてくれただろう」

 ちょっと悲しげな顔を見せれば、常連の男は慰めるように俺を抱きしめてくれる。

 俺の視界の端では、最高位妖精カーラーンが、ものすごく呆れた顔をして、俺を見下ろしていた。

「お前が捨てたくせに、よくもまあ、そんな嘘を吐くな」

 周りには聞こえないから、平気で俺を責めるカーラーン。俺は隠れて笑うしかない。

「私はそんなことはしない。どうだろう、身売り一年分を支払うから、それで一年、私の屋敷で暮らしてみないか」

 おおっと、金か!! さすが貴族様、そこら辺の平民では出来ない手段をポンと出してくるな。

「金には興味がない」

 が、俺、金持っているから、無理だ。聞き耳たてていた奴らが、驚いている。

 常連の男もびっくりだ。だって、俺の身売り一年分って、女の身請けよりも高い。それを断るといううのだから、皆、驚いたよな。

「男とは、金なしでの付き合いだった。俺が一方的にそうお願いしたんだ。だから、今も忘れられない」

「そうなのか」

「今日は帰ったほうがいい。お互い、気まずいだろう。また、別の日に買ってくれ」

「いや、今日は買おう。その男を忘れさせてみせる」

 うーん、しつこいな、この常連。タリムを越えるには、剛直の太さと長さが足りない。平均的だから、そこら辺の女たちは喜ぶが、俺は物足りないんだよな。タリム並であれば、俺のほうから喜んで交渉しに行くんだがな、残念!!

 俺の身売りは、声をかけられたら、それで決まる。俺は、それなりの経済力が必要なほど、高額だ。順番とかない。

 常連の男で決まりか、と俺が席を立とうとして、止まる。常連の男は、いつもの通り、俺の手を引っ張りも、俺が動かないので、不思議そうに見返してきた。

 俺は、店の出入口のほうに目をやる。いつもの通り、開け放たれたそこは、物珍しそうに中を覗いたりする人々が行き交っている。ところが、突然、皆、立ち止まっているのだ。一方を呆然と見ている。その視線の先にあるものは、どんどんとこの店に近づいてきて、そして、入ってきた。

「お兄ちゃん!!」

 人々の視線を奪う可憐な美少女は、まっすぐ、俺に駆けてきて、抱きついてきた。

「レーリエット、生きてたんだな」

 俺は力をこめて、レーリエットを抱きしめた。

 レーリエットを抱きしめたまま、俺は店の出入口のほうを再び見る。レーリエットから遅れて、これまた綺麗な男が歩いてくる。嫣然と微笑み、俺の側に跪く。

「探しました、ルキエル様」

「よりによって、お前らが来るとはな」

「ご命令通り、レーリエットを守りました。褒めてください」

「よくやった、ナナキ」

 言葉だけで褒めてやると、ナナキは嬉しそうに笑って、俺の手を握り、頬ずりする。

 常連の男は、突然のことに、呆然となる。俺のとこだけ、倒錯してるからな。でも、これ、王都では平常運転なんだよな。普通なの、普通!!

 レーリエットは末の妹だ。見た目がもう、美少女なんだよな。歩いているだけで危険だから、護衛として、ナナキをつけていたこと、すっかり忘れてた。

 ナナキは、ちょっと特殊だ。ナナキは俺が拾った男だ。どこの誰なのかわからないが、ぼこぼこにされているところを俺が助けて、そのまま面倒をみていたら、懐かれた。それからずっと、俺だけに忠実な男だ。

「お兄ちゃん、もう身売りなんてしなくていいのよ。一緒に、王都に帰りましょう!!」

「そうですよ。ルキエル様に逆らう奴らは、僕は全て排除しました。もう、安全です」

「お前ら、俺がいなくなってから、何してくれてんの!?」

「ナナキがね、頑張ったのよ。王都の貧民街の支配者になったの!!」

 とんでもないことをレーリエットが言ってくれる。もう、店の中にいる人たちはしーんと静かになっちゃったよ。常連の男も、もう、驚いて、硬直しちゃってる。

「俺は、そんなこと命じてない!!!」

「だって、お兄ちゃん、王都からいなくなっちゃったから!!!」

「お前らのこと、見捨てたんだ。わかったら、もう帰れ」

「仕方ないよね。あのどうしようもない男が、お兄ちゃんにあんなことしてても、私、助けられなくて。見捨てられても仕方ないよね。ごめんなさい」

 俺の胸で泣き出すレーリエット。ちっくしょー、レーリエットは俺が可愛がって育てた妹だから、突き離せない!!

 もう、涙でぐちゃぐちゃの顔しても、レーリエットは可愛いな。俺は抱きしめる。いかん、不埒な男が近寄ってこないように、守らねば。

「なんだ、身内は可愛いんだな」

 にやにやと笑う最高位妖精カーラーン。うるさい!! 妹は俺の良心なんだよ!!!

「レーリエット、仕方がない。僕が何度も、殺してあげます、と提案したのに、断られてしまいましたから」

「お前ね、そういう物騒な提案、受け入れるわけがないだろう。もっと穏便な奴持ってこい」

 ナナキはちょっと怖い奴だ。親父相手に、本当に逆らおうとするから。俺に対してだけは、忠実なんだけどな。

 ナナキだったら、もしかしたら、親父を殺せたかもしれない。だが、俺はそれを許可しなかった。俺が親父の娼夫扱いされている中で、平穏としている奴らを潰してやるためには、親父はどうしても生きていてもらわないといけなかったからだ。実は、俺のほうが物騒なんだよな。結果、最高の潰れ方をしてくれたけどな。ざまあみろだ。

 もう、今日は仕事は無理だった。俺は、レーリエットをナナキに渡して、常連の男に頭を下げる。

「すまない、私用が出来た。また、今度、声をかけてくれ。その時は、部屋代だけでいい」

「さっきの話、よく考えてくれ」

「答えは一緒だ。断る。割り切れないのなら、もう、俺を買わないほうがいい。俺は、見ての通り、訳アリだ。深く関わっていい男ではない」

 ついでに、この状況を使って、一年契約をお断りした。俺もほどほどにしないとなー。





 一年もいれば、俺の所在は公となる。俺はレーリエットとナナキを連れて、海の貧民街の支配者がいる頑強な建物に行った。

 たまたまなのか、建物の前にコクーン爺さんとワシムがいた。

「随分と早い帰りじゃな」

「身内がきたんだ。こっちの可愛い子が、俺の妹レーリエットだ。こっちの綺麗な男は、身内ではないが、俺に懐いちゃったんだよな。ナナキと呼んでる」

「兄が随分とお世話になっていると聞きました」

「ルキエル様をこれまでお世話していただき、ありがとうございました。これからは、王都で僕がお世話します」

「帰らない!! 王都には行かないからな!!!」

 油断すると、こいつら、勝手に話進めちゃうな。俺は容赦なく、拒否してやる。

「身内、いたのか」

「しかも、随分とまともな」

「レーリエットとナナキには、人並の教育したからな」

「それなのに、どうしてルキエルは、こうなんだ?」

「本当に」

 コクーン爺さんとワシムは、レーリエットとナナキが、それはそれはまともそうに見えて、驚いている。そして、残念な感性の俺に、呆れる。

「そうだ、昨夜、捕まえた奴ら、生きてる?」

「まだ、何もしてないが」

「ちょっと確認するから、そのままにしてもらっていい?」

「お主関連だからな。急ぐことでもないから、かまわんぞ」

「ありがとう。ほら、俺の部屋に行くぞ」

 俺はレーリエットとナナキを連れて、さっさと部屋に向かう。この二人、立っているだけで目立つから、さっさと閉じ込めよう。

 だけど、こういう時に限って、足止めにあったりする。

「珍しいですね、この時間にいるのは」

 ヘレンお嬢さんにまで捕まる俺。身売りの仕事に行ったはずの俺がいるので、ちょっとヘレンお嬢さんは機嫌がよい顔を見せる。美人はどんなふうでも美人だな。怒ってる顔もいいけど、笑っているのもいい。

「お兄ちゃん、まさか、恋人?」

 俺の後ろから顔だけひょっこりと出していうレーリエット。

 ヘレンお嬢さんが、俺のことを兄と呼ぶレーリエットを見て驚く。

「身内がいたのですか!?」

「わけあって、見捨てたんだ」

「あなたって、本当に最低な男ですね」

「お兄ちゃんを悪くいわないで!!」

 レーリエットが俺の前に出て、ヘレンお嬢さんに叫んだ。

「お兄ちゃんは、私たちのこと守ってくれたのよ!! 見捨てられたのは、私が悪いの!!!」

「だからって、あなたみたいな妹を見捨てるなんて」

「見捨てた、なんて言っておいて、私にはお兄ちゃんの妖精が付いてるもの。お兄ちゃんがいなくても、お兄ちゃんの妖精が、悪い奴ら皆、やっつけてくれたんだから」

 そうなんだよなー。そのことも忘れてた。だから、さっき、身売りの店で、レーリエットが近づいて来るのがわかったんだよな。

「レーリエット、俺が妖精憑きなのは、内緒の話だ」

「ご、ごめんなさいぃ」

「ヘレンお嬢さんは、たまたま知ってたからいいが、もう言うなよ」

「うん、言わない」

 俺に対しては、レーリエットはしおらしくなる。だけど、ヘレンお嬢さんに対しては、品定めみたいに見て、笑う。

「お兄ちゃんのこと悪くいうくせに、お兄ちゃんの身売りを止められないなんて、大したことないのね」

「っ!?」

「あれは、俺が好きでやってるの!! もう、行くぞ。ナナキ、レーリエットを黙らせろ!!」

「レーリエット、無駄口は、ルキエルに嫌われるぞ」

 ナナキは上手に、レーリエットを操作する。

 俺は魔法で、部屋のドアを開けて、レーリエットとナナキを無理矢理、押し込んだ。

 ヘレンお嬢さんは、レーリエットに痛いことを言われてしまって、俯いて、黙り込む。

「レーリエットが失礼なことを言いました。本当にすまない」

「いえ、彼女の言っていることは、間違っていません。あなたの身売りを止められなかったのですから」

「俺の身売りは仕方がない。色々と理由があるんだ」

「好きでやっていると」

「好きでやっているなら、わざわざ、王都の貧民街の元支配者の娼夫、なんて売り文句はつけない」

「身売りの金額をあげるためでしょ?」

「金には困っていない。あの売り文句で、王都にいる奴らをおびき寄せてるんだ。俺は、訳アリだ。平穏に余生を過ごすためには、始末しないといけない奴らがいる」

 俺のことを妖精憑きだと知っている奴らはまだ生きているだろう。どうにか、そいつらを始末しないと、俺も枕を高くして眠れないんだな。

 ヘレンお嬢さんは、青白い顔をして、俺を見ていた。あ、ちょっと本性出し過ぎたな。

「コクーン爺さんたちには、迷惑かけないようにするよ」

 俺はヘレンお嬢さんに軽く言って、部屋に入った。





「白状しろ。お前たち、俺の誘拐を誰かに頼んだな?」

 昨夜の出来事を話して、早速、確認である。香を使うなんて、俺の表面から裏面から知ってないと、出来ないことだ。

「だったら、わざわざ、ここまで迎えに来ません」

「他人の手にルキエル様をお任せさせません。ルキエル様に手を出した奴ら、見せてください。吐かせて殺します」

 そーうーだーよーねー!! レーリエットは怪しいが、ナナキはそうではない。ナナキは、俺に関してだけは、絶対に他人に任せないのだ。だから、今回、ナナキはレーリエットと一緒に、わざわざ海の貧民街まで来たのだ。

 ナナキは単純明快だ。俺の命令は絶対だ。俺は最後、ナナキに、レーリエットを守るように命じた。その命令は俺が解除するまで、ずっとだ。そうなると、俺を迎えに行くには、どうしても護衛対象であるレーリエットを一緒に連れて来るしかないのだ。

 レーリエットは、もうそこが定位置、みたいに俺に抱きついて離れない。

「レーリエット、いい年頃なんだから、離れなさい」

「こうしていれば、身売りなんて出来ないでしょ」

 本当だ、これは無理だ。賢いな、レーリエット。可愛いレーリエットを手放せない俺は、明日も身売りの店に行けないな。

 レーリエットを抱きしめたまま、俺はナナキと真面目な話をすることにした。

「それじゃあ、昨夜の奴らは、他の身内か。兄貴と弟は元気か?」

「ライホーンとロイドは、つい最近だが、保釈された。貧民街に戻ってきたところを僕が保護しました」

 褒めて、と手を握ってくるナナキ。はいはい、と俺はナナキの頭を撫でる。そうか、兄のライホーンと弟のロイドは無事なのか。良かったのか、良くなかったのか、なんともいえない。俺の中では、見捨てたようなものだからな。

「姉貴は?」

「お姉ちゃんったら、酷いのよ!!」

 姉貴の話になると、レーリエットが割り込んできた。姉貴とレーリエット、実は仲が悪い。親父が復讐失敗してから後、何かあったんだろうな。

「お兄ちゃんたちが捕まってすぐ、王都の貧民街に、お姉ちゃんの男を支配者に立てたのよ!!」

「そうなんだ」

「ナナキが勝負を仕掛けても、のらりくらりと逃げて、勝手に支配者を名乗らせてたの」

「でも、今はナナキが支配者なんだろう?」

「突然、その男が死んだの。誰かに切り殺されて」

「………」

 思い出した、コクーン爺さんが切り殺したな!! 俺が解放されて間もない頃、貧民街を歩いていると、姉貴が俺を見つけちゃったんだよな。それでちょっといざこざになって、多勢に無勢なところ、たまたま通りかかったコクーン爺さんが、王都の貧民街の支配者を名乗る男を切り殺しちゃったんだよな。あんまりにも、呆気なかったから、忘れてたよ。

 黙ってよ。俺はコクーン爺さんがやったことを墓場まで持っていくことにした。知ってるのは、その場で生き残った俺とコクーン爺さんだけだ。

「ということは、姉貴は今、新しい男のトコ?」

「ナナキにすり寄ってきたの。ナナキったら、お兄ちゃんの身内だからって、そのまま受け入れちゃうんだから」

「仕方ありません、ルキエル様の身内ですから」

「お前な、俺の親父を殺そうなんて提案したよな。それはどうなの」

「ルキエル様を苦しめる奴は、身内でも、許しません」

「………」

 こいつの前では、発言、本当に気を付けよう。

「ということは、俺を誘拐しようとした奴らは、別か。貴族か、親父の昔の部下か。今更、俺なんか捕まえたって………まあ、使い道はあるか」

 目の前に、俺のことが大事で、大切で、絶対的服従している、王都の貧民街の支配者ナナキがいるな。こいつ、俺を人質にとられようものなら、大人しく、支配者なんて降りるだろうな。

「今日は、どこかに泊まるのか?」

 聞きたいことは聞けたので、今後のことを尋ねた。

「私はお兄ちゃんとここで寝る!! あの男は死んで、やっとお兄ちゃんは夜、自由になったんだもの。昔みたいに、一緒に寝よう!!!」

「いや、ちょっと、年齢的に、体とか、まずいだろう」

 レーリエット、お前はもう立派な女だ。抱きつかれると、色々と柔らかいとことかぶつかってくるよ。女抱いた経験がないから、何も起こらないけどね。

「僕は床で寝ます」

「王都の貧民街の支配者をそんなトコで寝させるわけにはいかないだろう!?」

「僕の支配者はルキエル様です。ルキエル様こそ、王都の貧民街の支配者です」

「やめてぇえええー-----!!!」

 平穏が遠い!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ