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痛いのは嫌いです

 「このバカ!!怖かったんだから!本当に怖かったんだから!!」


 「だからごめんって言ってるだろ!?頼むから叩くのやめてくれよ」


 翌日になってもあずさはあの犬の件をまだ根に持っていた。ちなみにあの犬は学校の裏でこっそり飼われることとなった。

 

 「・・・それで、美恵子にはいつ告白すんの?」


 「告白!?」


 「そらそうでしょ。好きな人がいたら告白する。それが普通でしょ」


 いやそうかもしれないけど、何でこの人こんなにあっさり言うんだ!?


 「・・・もう少し先。せめて、自分が自身を持てることができたら、告白します・・・」


 「そう・・・・ふ~ん」


 なんかまたあずさが悪い笑みうかべたけど、大丈夫だよな?


 「それじゃ。授業はしっかり受けなさいよ~」


 笑って手を振りながら、あずさは上級生の校舎へと消えていった。



 そして時間はあっという間に過ぎて放課後。


 「・・・おっかしいな。あいつらどこに行ったんだ?」


 いつもどおり、竜馬や秋風さんたちと帰ろうと思ったら、なぜか人とも姿が見えなかった。

 仕方が無いので下駄箱まで一人で行ってみたら人とも靴が無かった。


 「なんだよ。みんな帰っちゃったのか・・・」


 一人で帰ることになったことに対して少し肩を落としながら靴に履き替えたとき、俺の携帯が鳴った。相手は・・・スザク?

 あのヤロウ、先に帰っておいて一体何のようだよ。


 「スザクか?一体何のようだ?」


 『・・・お前の連れは預かった』


 「は?おいスザク今回は何の冗談だ?言っとくけど俺はそんな手に引っかかったりはしま」


 『きゃあ!やめて!!助けてクロぉ!!』


 「!?おいスザク!?今の何だよ」


 『お願い!助けて!神楽坂くん!!』


 今にも泣き出しそうな声で助けを求めるスザクと秋風さんの声がスピーカーから流れてきた。


 『・・・今のを聞いても、冗談といえるか?』


 「テメェ、どこのドイツだ?二人に何しやがった」


 『学園の外れにある廃校舎まで来い』


 男は場所を告げると一方的に電話を切ってしまった。


 「ッ!おいコラ!クソ!こんなときに竜馬のバカは何やってんだ!!」


 けど、愚痴っていてもしょうがない。俺は一人今は使われていない廃校舎へ向かった。




 廃校舎の前にたどり着くと、髪を金髪に染めたガタイのいい男が立っていた。言っておくが、俺はアイツに見覚えは無い。


 「電話してきたのはお前か。秋風さんたちは?」


 「さあな。そんな奴らは知らん」


 男は人をあざけ笑うかのように言う。


 「つうか、お前誰だよ?なんで俺を呼び出した?しかも秋風さんたちまで使って」


 「理由なんて無いさ。ただ、しいて言うならお前を殴りたかったから」


 男はファイティングポーズをとり軽い足取りでステップを取り始めた。


 「せいぜいサンドバックとして役に立てよ!!」


 男は地面を思いっきり蹴り俺の懐まで一気に接近し、そのまま俺の顔面に向かってこぶしを振る。だけど、このくらいなら何とかよれられ


 「うおぉ!!」


 こぶしをよけようとした瞬間、運悪く足を滑らせバランスを崩した。体制がずれたせいで男のこぶしは俺の顔面にまっすぐ突き刺さる。口の中に血の味が広がる。


 「まだまだいくぜぇ!!」


 まだ体制が整っていない俺に容赦なく次の一撃がぶち込まれる。腕をクロスしジャブを防御するが


 「っく!」


 「おらどてっぱらががら空きだぞ!!」


 防御の薄くなった俺の腹に重たい一撃が入る。一瞬だが、呼吸困難にも陥った。

 その後も次々と打ち込まれる攻撃。ジャブ、ボディブロー、ジャブ、右ストレート、フック、ブロー、キック、アッパー。面白いように決められ、面白いくらいよけられなかった。


 「・・・っがは!!」


 何とか反撃しようとこぶしを突き出すが、俺のこぶしは軽くよけられ、逆にまた一撃を喰らい地面に倒れる。


 「・・・弱い。それに運がねぇな。最初の一撃のときに体制崩したせいでリズムが崩れただろ?ウチの生徒でここまで運の無い奴は初めて見たぜ。お前本当にここの生徒か」


 ああここの生徒だよ。この学園で、唯一の神無くんだよ。


 「そういやお前、2年の安西が好きなんだってな。だったら、何でお前他の女のためにそこまでするんだ?好きな女のためならともかく、あの二人はそんなんじゃねぇんだろ」


 ・・・スザクたちのためにここまでする理由?そんなの


 「・・・ダチだからに決まってんだろ・・・」


 俺は、口元の血をぬぐいながら、重たい身体に鞭を打ちながら立ち上がる。


 「あの二人は、俺の、ほんの少ししかいない友達だからだ・・・スザクに秋風さんに竜馬、俺の友達って訊かれて迷わず上げれる数少ない奴だからだ!」


 たしかに特別好意は持っていないけど、それだけあればあいつらのために身体張る理由には十分なんだよ!!


 「・・・へぇ。それじゃ、訊きたいことも聞けたし、続き始めようぜ!!」


 再び男のこぶしが迫りくる。だが、俺は奴のこぶしに合わせカウンターパンチを繰り出す。さっきは体制が崩れて対応できなかったが、それさえなければこのくらいの攻撃!


 「・・・かはっ!?」


 と、今度は頭に何かが当たり体制が崩れた。横目に見えたあれは・・・空き缶?

 

 「っく!おらぁ!!」


 完全に注意がそれた俺に奴の第二撃が突き刺さる。

 再び地面に投げ飛ばされる俺。


 「はぁ・・・今のは、危なかったぜ」


 ・・・今の、アイツ明らかに味方いるだろ?

 しかし、もうそんなことも考えていられない俺は猛スピードで立ち上がり男に近づく。

 男が再びこぶしを振りかざし、俺を狙った。が、次の瞬間。


 「っおわ!?」


 最初の俺のときと同じく、男が運悪く足を滑らせた。別の言い方をすれば、俺に運が回ってきた。

 ダメージを受けあがらない腕の変わりに俺は全身の力を使い足を振り上げる。そして迷わず


 男の首めがけ一気に振り切る!!


 「ごっがはぁ!!」


 今度は男が後方に吹っ飛ぶ。残り少ない体力が尽きないうちに止めを誘うと一歩前へ踏み出したとき。

 背中に誰かが抱きついてきたような感覚を覚え足を止める。そして誰かが俺の前に飛び出してきて


 「・・・スザク?え?で背中についてるのが・・・・秋風さん?」


 連れ去られたはずのスザクは俺の前で両手を広げ珍しくあわてたような顔をしていて、抱きついている秋風さんは涙できれいな顔がゆがんでいた。


 「クロストップ!さすがにこれ以上はいいから!」


 「ぞうでずよ!がぐらざがぐんだっでごんなにボロボロなんでずがら!!」


 ・・・・えっと、スザクと秋風さんが心配してくれるのはうれしいんですけど、これって、どういう状況?


 「いや~本当ボロボロにやられたわねクロ!北川君もお疲れ様!!いい仕事してたわよ!」


 そしてもう一人、黒い髪、黒い瞳。ブレザーアンド学ランの奇妙な格好をした女子が笑いなが物陰から出てきた。

 あれ誰だ?北川ってあの金髪? 


 「いつつ~・・・ちょっとあずさちゃんひどいじゃないか!!こんな役俺に押し付けるなんて、いつも言ってるだろ俺は喧嘩とかそういうのは嫌いだって!!」


 あっれ~~~~~~~????さっきとぜんぜんキャラが違うぞ~~~~~~~????


 「あ、あの・・・」


 俺が恐る恐る声をかけてみると


 「ごめんね!君大丈夫?怪我とかない?本当にごめんね!とりあえず一緒に保健室へいこ!!」


 どうなってんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

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