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『神様レンタル』発動!

 「よいしょっ!」


 「ぐはぁ!!」


 首を決められ、意識を失いかけていた俺は段ボールの山に投げ捨てられるという行為によって意識を取り戻した。

 

 「・・・・・危うく死ぬトコだった」


 「私を忘れるっていう神をも恐れぬ罪を犯したんだから、一回死んだほうがよかったんじゃない?」


 ひどい言いようだな。 初対面の癖に


 「では問題、私は一体誰でしょう?不正解の方にはもれなく血の制裁を」


 さあ俺の脳よ、今こそ目覚めのときだ!目の前にいる女の目を見ろ、あれは本気の眼だ。


 「・・・・えっと、その・・・・ここの生徒、ですよね?」


 「その台詞はギブアップと見なす」


 「ナシでいいです!今の質問ナシでいいです!!思い出しました!生徒会長の和泉あずささんです!!」


 間一髪のところで昨日までの記憶がよみがえった俺は先輩からの暴力をなんとか回避した。


 「まあ分かったなら分かったでいいけど、一発殴るからね」


 理不尽な暴力は回避できませんでした。


 「・・・・・・ってか会長、さっきまで黒いドレス着てませんでした?」


 たしか俺が引っ張られていたときの会長はドレス姿だったはず、なのに今はいつもと変わらないブレザーと学ランのツーコンビ。


 「ああ。それはこの教室に秘密があるの」


 そう言って会長は自分の足元を指差した。教室ではあるけど、ダンボールとかが積み重なっていて、倉庫みたいな感じもするが。


 「この教室は、学内で唯一守り神が干渉できない空間なのよ。だからここに入ったと同時にドレスは消えて、元の制服に戻ったの。ちなみに召喚は普通にできるからね。エル」


 『ほい』


 明るい返事をあげながら、女神のエルが会長の肩に腰をかけた。


 「あのドレス、それにこの学校はどうなってんですか?まるで夜の繁華街、みたいです」


 実際に見たことがないからはっきりとしたことは言えないが


 「んふふふ。あれこそが聖協学園裏名物。通称、『暇をもてあました神々の遊び』よ」


 なんか聞いたことあるぞ。


 「この学園、正確に言うとこの町は元々とても大きな霊山を崩して開かれた町なの。それせいかこの町にいる守り神は常に力が底上げされた状態になっている。ま、だから学園側もここに学校を建てたんだけどね」


 「へ~」


「そのせいか、時々ウチの生徒の守り神の力が暴走して現実に影響を与えてしまうの。それが今の状況」


 「時々って、どれくらいの周期で?」


 「そうねぇ・・・・・・週1くらいかしら」


 「けっこう頻繁!!」


 時々じゃねぇよそれ。


 「まあ。そうなったときは生徒はみんないつものことだと思って楽しむの。授業はなくなるし、ほら面白いし」


 「たしかに楽しんでましたけど、事情を知らない1年までなんでノリノリなんですか?」


 竜馬の奴もスザクも・・・・・秋風さんも楽しんでるっぽかったし。


 「それはあれよ。耐性のない1年生はみんな意識がとんでるのよ。酒飲んで酔ったとき見たいな感じで」


 「じゃあ、俺が平気なのは」

 

 「守り神がいないから」


 やっぱか。


 「君はきっと今後何があっても一切変化ナシよ。教室で無視される子みたいな感じで」


 「それは嫌です。早くこの状況を終わらせてください」


 なんかそんな表現されると俺全校生徒からいじめ受けてるみたいな錯角を覚えますよ?


 「ま、そろそろ渡しもこの状況を終わらせようと思ってたトコだけどね。ホストクラブは先月もあったし」


 そんな理由?

 

 「それに、クロの神無しの件も片付けなきゃいけないし、ねっ」


 会長はそう言って笑いながら俺に向かってウインクをした。なんていうか、こうして見ると改めてこの人は美人なんだなということを認識させられる。


 『あ~そういえばあずちゃん。そのことだけどさ』


 そのとき静かに肩に乗っていたエルが会長を呼んだ。


 「どうしたのエル?」

 

 『クロちゃんのことだけど、解決方法なら、私知ってるよ』


 「「ええ!?」」


 俺と会長は二人そろって度肝を抜かれた。そりゃそうだ。昨日あれだけ必死に古い文献をあさっても出てこなかった答えが、まさかこんな近くにあるとは。


 「その解決法って?」


 『私とか他の守り神をクロちゃんに貸してあげればいいの』


 エルはあっさりと告げた。


 「貸すって、そんなこと可能なんですか会長?」


 「知らないわよ。わ、私だってそんなことができるなんて初耳だったんだから」


 『普通は無理だけど、神無しのクロちゃんならできるよ』


 俺たちの疑問に答えるように喋るエル、その顔は自身で満ちた満面の笑顔だ。


 「で、どうやればいいんだ?」


 『まず二人で何か約束事をして』


 約束?


 「そうね。じゃあ・・・・・・今後は私をあずさと呼ぶこと。それでいいわね?」


 「あ、はい」


 『次に二人でハイタッチ!低くてもいいよ』


 それただのタッチじゃ。

 そんな些細な疑問を持ちながら、俺は会ちょ、いやあずさとハイタッチをした。狭い教室にパンッという音が鳴り響く。


 『じゃあクロちゃん。私を呼んでみて』


 「わ、わかった。・・・・・・来い、エル」


 俺が手を前に突き出しながらそう告げた瞬間、あずさの方にいたはずのエルが消え、俺の手の上に瞬間移動した。


 『これで、私はあずちゃんからクロちゃんにレンタルされたことになるの。効果はせいぜい1日。約束を破ったら私たちの守護はマイナスに働くから気をつけてね♪』


 「了解。ありがとう、エル」


 「エル、貸してる間って、私もクロと同じ神無し状態なの?嫌よこいつと同じダメ人間になるなんて」


 あずさ、言葉の暴力って知ってる?


 『大丈夫。あずちゃんにはレンタル中も私の力が働き続けるから、支障はないよ』


 「そう。ならよかった。それじゃクロ、貸したついでに仕事、手伝ってもらうわよ」


 「何で俺が」


 「いやなら明日からアンタの上履きが消えるわよ」


 「・・・・・・喜んで協力します」


 脅迫だった。


 そうして部屋を出た瞬間、俺は驚いた。

 さっきまで制服姿だった俺が、竜馬たちのようにスーツ姿に変わっていたのだ。


 「すっげぇ・・・・・・」


 「ぼおっとしてないで、行くわよ」


 自分にも神が憑いたんだと感動していたとき、あずさから叱咤を受けた。


 「行くってどこへ?」


 「元凶のトコ。言ったでしょ?この学園の生徒の守り神だって」


 そういってスタスタ廊下を歩いていってしまうあずさの後を俺は急いで追いかけた。

 あずさが向かっているのは上級生の教室らしく教室の前の看板が1年と書かれたものから2年と書かれたものに変わってきた。

 前を通る全ての店からあずさを呼ぶ声が絶えなかったが、それに対してあずさは「また今度」とか適当な返答をして他の男子をあしらっていた。


 「そういや、元凶のトコに行くって言ってたけど、結局それってどこにあるんですか?」

 

 「・・・・・」


 あずさは返答はくれなかったがその代わり無言で壁に貼られていたポスターに指をさしてくれた。

 ポスターには2年9組にいるというナンバー1ホストの写真がでかでかと写っていた。


 「ナンバー1ホスト柿崎かきざき・・・・・・失礼かもしれませんがこの顔でナンバー1ってのは」


 「ブサイクでしょ」


 うわはっきり言っちゃったよこの人。


 「そんな勘違い野郎がナンバー1の理由は、守り神の力で立ち位置が上になっているからよ」


 「そうなんですか。それじゃあそいつのトコに行ってチャッチャと・・・・・・すいませんちょっと待ってもらっていいですか」


 「え?どうかした・・・・・・ああそういうこと」


 俺の見ていた先、2年6組にいたのはまあ分かりやすいことだが俺の意中の相手、安西美恵子先輩だった。空のように美しい青のドレスを着て笑う姿はどっかの妖精を髣髴とさせた。


 「なるほど。アンタ美恵子のことがねぇ・・・・・・アンタにはけっこう身近なトコに縁があったんだけど」


 「え?なんか言いました?」


 「なんにも。あとちょっと待てって言ってたけど、却下。さっさと行くわよ」


 「ええ!?でもちょっと」


 「却下」

 

 「ひでぇ!!」


 結局、俺は安西先輩の姿をほんの少ししか見ることはできなかった。

 

 2年9組にて


 「はいここのナンバー1は誰だ~!」

 

 『柿崎~!!』


 「はいもう一回!」


 『柿崎~!』 


 「はいもっと!!」


 『柿崎~!!』 


 「まだまっ痛!!」


 変な盛り上がりをしていた教室にあずさがズカズカと入り込み柿崎という生徒にどこからか持ってきたハリセンで一撃を加え


 「身の程を知れこのブサイク!!」


 と一瞥を入れた。

 その数秒後、学園は元の校舎に戻り俺は自分の教室の席に座っていた。

 っていうか、あんな性格のあずさになんで人気があるんだろう?

 最終的にこの疑問しか俺の中には残らなかった。

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