秋風琴音中学時代その2
「え~と・・・こっちから話しかけといてなんだけど、君、誰だっけ?」
その発言は、はっきり言って変だった。
話しかけてきた男の子は、頭をクシャクシャ掻きながら困ったような顔をしている。
彼の名前はたしか、神楽坂クロ。小学校1年から一緒のクラスだったらしいが、話をするのは今回が初めてだった気がする。
というか、それがよりによって「君、誰?」とは
そう考えたとき、私は理解した。
ああそっか。彼も他のクラスメイトと一緒なのか
きっと、新手のいじめなのだろうと思ったが、久しぶりに話しかけられたことそのものがうれしかった私は、とりあえず彼の言葉に素直に答えた。
「・・・・・私は、秋風琴音、です」
「そうか。秋風さん、もうすぐ授業始まるけど、教科書持ってるか」
「・・・ううん」
破られて、捨てられたせいで、今はない
「持ってないのか。分かった」
そう言って神楽坂くんは自分の席えと戻っていった。それを見ていた周りのクラスメイトがクスクスと笑う。
(・・・これは、新しいいじめだなぁ)
そう考えていると、せきえ戻ったはずの神楽坂くんが、自分の机といすを持って戻ってきた。そして、私の隣に机をドンと置くと、そのまま自分の席に着いた。
「か、神楽坂くん、なにしてるの?」
驚いたのは私だけじゃなかった。さっきまで私を見て笑っていた他の生徒たちも今まで誰もしなかった行動を見て驚いていた。
「いや、秋風さん教科書無いんだろ?貸しちゃうと俺も困るから隣の席でやってやるよ。いっしょに見ながらやろうぜ」
「お、おい神楽坂!!テメェ何してんだよ!?」
「ああ?困ってる奴助けてるだけだよ。ていうか、誰だお前?」
「同じクラスの倉田だっていつも言ってんだろうが!!」
どうやら、最初の台詞は、いじめだった訳では無いらしかった。
「とにかく、教科書見せてやるから、隣座るぞ」
そう言って彼は私の隣にいすと机をどかっと置いてその場に座ってしまった。
その後は、ほかのクラスメイトに文句を言われようが先生から注意されようが一切動じずに私に教科書を見せてくれた。
そして放課後
授業が終わると神楽坂くんはあっという間に帰りの準備を済ませ教室を出て行ってしまった。
私も後を追うように教室を出ようとしたが
「ちょっと~秋風~アンタ、今日はこのまま何もなく帰れるなんて、思ってないわよね~」
教室を出る前にいじめっ子女子軍団に囲まれ、殴るわ蹴るわ水をかけるはでかなりひどい目にあった。
ふらふらな足取りで何とか家にたどり着いた私は、簡単な食事とシャワーを浴びると、ベッドに倒れこみ、そのまま寝てしまった。
あ「えっと・・・確認だけど、これって誰ベースの話だっけ?」
こ「え?私、ですけど」
あ「一緒に出てきた男子って、誰だっけ?」
こ「やだな~あずささん。神楽坂くんに決まってるじゃないですか」
あ「キャラ違いすぎない!?今のあいつとキャラ違いすぎない!?」
こ「そうなんですよね~あの頃の神楽坂くんってクールというか冷静というか・・・・はぅ~」
あ「琴音ちゃんも十分キャラ違ったけど・・・聞いてないみたいね。恋は盲目って、これのことなのかしら?」