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「占いは信じすぎないように」byクロ

新作がついに完成しました!よろしくお願いします!

 「あなたには守り神どころか悪魔すら取り憑いていません」


 3月18日、この日俺、神楽坂(かぐらざかクロは衝撃の一言を言われた。高校受験の結果を確認し、今後の事を見てもらおうと友人と共によく当たると評判の占い師の所へ言ってみれば、開口一番、「あなたには守護霊が憑いてません」だ。


 「ちょ、ちょっと待ってください!俺に守護霊が憑いていないってどう言う事ですか!?」


 「正確には守護霊じゃなくて守り神ね」


 黒いフードを被った割と若い(おそらく17、8歳だろう)女占い師は言った。


 「いや~あんた珍しいね。普通、人には必ず守り神が憑いてるはずなのに」


 「それがどうしたって言うんですか、たかが守り神が憑いてないくらいで」


 「それがけっこう重要なのよね〜。知ってる?幸運って、その人に憑いた守り神がくれるのよ」


 そんな事は知らない。


 「だから守り神がついていないって事は、あなたへ訪れる幸運が限りなく0ってことを意味するの」

 

 ああ。そうかそういうことか。なるほど俺には幸運がほとんどこないってこと・・・・・へ?


 「ええええええええええええええええええええ!!!!!」


 「うるさい!少しは黙って話を聞く!」


 「だって俺にとったら一大事ですもん!幸運が来ないって、つまり不幸になるって事ですか!?」

 

 「あはは。君必死だね」


  それはそうだ。なんたって俺の今後が掛かっているのだから。


 「そこら辺は心配しなくて大丈夫よ。1-1=0と同じこと。幸運でもないし不幸でもないしって状態の人が、あなたなの」


 占い師はケラケラ笑いながら言った。


 「それでも幸運になれないって言われたら凹みますよ・・・」


 俺は今まで幸運というものに全く縁がない事は自覚していた。しかし、それはその分遠い未来にとてつもなく大きな幸運が待っていて、その分の不幸を若いうちに体感しているのだと思っていた。

 しかし、この占い師の言う事が本当なら俺はどんな事があっても幸運になれないと言う事になる。

 過酷過ぎるだろ現実リアル


 「そんなに落ち込まないの。きっとそのうちいい事あるって」


 未だ笑っている占い師がそう言いながら俺の肩を叩いた。・・・今幸運になれないって言ったくせに。


 「アンタが幸運になれないって言ったんでしょ。もういいですよ。俺なんかにいい事があるわけ・・・あった」


 そうだそういえばあったぞ。


 「なんだあったんだ。つまんねー」


 何て性格の悪い占い師だ。


 「それで、良いことって何?もしかしてR18?」


 ニヤニヤ笑いながらそんな事を言う占い師の姿は17、8歳の女性というより、30代後半のエロいオッサンに見えた。


 「高校受験で第一志望の学校に受かったんです」


 さっきも言ったが、俺は受験結果を見てから占い師の所に来た。受験結果は見事に合格。またいつもみたいに間違いじゃないだろうなと警戒しつつ13回結果を確認し、通行人24人にも見てもらい写メまでとって確認したのだ。間違いは無い!


 「・・・けっ!そんな事がいいことかよ。しけてんなぁ」


 俺の幸せになんて事を言うんだ。


 「あ!けど受験に合格したって事は俺は運が良いって事ですよね。つまり俺にも守り神が憑いてるってことですよね!」


 「そこらへんは微妙に違うのよ。受験に落ちる落ちないは実力の問題だからね。運は関係ないのよ」


 「懸賞によく当たる人でも勉強しなきゃテストで100点はとれないでしょ」と占い師は続けた。

 たしかにそう言われると納得してしまう。・・・よかった。勉強しといて。


 「そういえば高校に受かったって、どこの高校に受かったの?」


 この占い師そこら辺は気にするんだな。

 

 「聖協学園です」


 聖協学園。俺の住む町、神守町にある有名な進学校で今までに何人もの有名人を出してきた名門校だ。


 「へ?・・・聖協学園?」


 ん?なんだ?あのかわいそうな人を見るような目は。


 「・・・・・どうかしました?」


 「ごめん。やっぱり君、不幸だわ」


 「なにが!?」


 しかも何でそんな何かを吹っ切ったような笑顔なんだよ!?


 「まあ言ってみれば分かるって♪」


 「だから何が!?」



                    ☆


 

 今の気分を一言で言うと最悪だ。

 受験に受かって気分よく占い師の所へ行ったら、絶対幸運になれない宣言を食らったのだ。最悪じゃないわけがない。


 「何と言いますかな・・・この気持ち」


 あと30分は落ち込んでいたい気分だ。それくらい経てばきっと立ち直れるだろう。


 「いたいた。お~いクロ~。不吉なこと言われたか~?」


 1時間の追加をお願いします。


 「竜馬、そんな言い方しちゃダメでしょ。クロが不幸になるのは必然なんだから」


 そんな失礼なことを言いながら2人の男女が近付いてきた。

 男の方は背が俺よりも少し高く170センチくらい。細身だがガッチリとしたその身体つきは服を着ているにもかかわらずスポーツマンとしての機能性を感じる。意志が強そうというも人を見下してるといった方が納得が言うような目をした顔。短く切られた髪はなびくかなびかないかくらいの微妙な長さをしている。

 女の方は首くらいまでのショートヘア。服装はまだ長袖のジャンパーを羽織りまだ寒いのに膝上くらいまでしかないホットパンツを穿いている。

 この2人の男女は俺と一緒に聖協学園を受験した友人の坂本竜馬さかもとりゅうま南野みなみのこよみだ。

 

 「お前らなぁ、友人を気遣うセリフは思いつかなかったのか?」


 「何だクロ。本当に言われたのか」


 「クロ、一回霊能師の人に視てもらったほうがいいよ。絶対なんかとり憑いてるから」

 

 とり憑いてたらどんだけ良かったことか。


 「そういうお前らこそ、あの占い師になんて言われたんだ?俺にそんなこと言うって事は、お前らも変なこと言われたってことだな!どうだ俺の推理!」


 「いや。そうたいしたことは言われなかったぞ」


 「私も」


 俺の推理は見事に外れた。ていうか、どういう情報からこいつらは俺が不吉なことを言われたと判断したのだ。


 「そんな事はどうでもいい。それより2人とも、もう昼過ぎだが、これからどうする?」


 竜馬に言われて手元の時計を見てみると現在時刻は1時30分。確かに昼過ぎだ。


 「もう解散でいいんじゃねぇか。腹も減ったし」


 「けどこっからだと家までかなり距離があるだろ。そこで俺からの提案。今から合格祝いに3人でなんか食べに行かないか?」


 「いいねそれ。私は賛成。クロも一緒に行こ」

 こよみの質問に対し、俺は首を縦に振った。別にこのあと用事があるわけでもないし、飯が食えるなら断る理由はない。 「決まりだな。よし、いくぞ」


 なぜか竜馬が先頭に立って歩き出す。その後を追うような形で俺も歩き始めた時。


 「あれ?もしかして神楽坂くん?」


 ふと後方から誰かに呼ばれた。振り向いてみると腰くらいまである長い髪をした女の子が立っていた。

 

 「やっぱり神楽坂くんだ。久しぶり。元気にしてた?」


 女の子は俺の前まで来てそう言った。

 七分丈の服に赤いマフラー、茶色のスカートを穿いている。長い髪はサラサラで俺を見る瞳はパッチリしている。正直言ってかなり可愛い。

  

 「・・・・えっと、誰だっけ?」


 しかし俺は彼女の事を知らなかった。久しぶりと言ってきたという事は前に会ったことがあるのだろうか?


 「何だクロ。その美人さんはお前の知り合いじゃなかったのか?」


 竜馬も聞いてきたが俺は首を傾げるしかなかった。


 「覚えてないって・・・そんな・・・ひどい・・・」


 女の子が眼をうるうるさせはじめた。


 「ええ!?って、ええと・・・・」


 うろたえる俺を竜馬とこよみが冷たい目で見ていた。ちょっと待て。これは俺のせいなのか?いや確かに原因は俺にありそうだが。


 「まあアレだ。とりあえずクロ、誤れ」


 「ええっと・・・ごめんなさい」 竜馬に言われて俺は彼女に謝罪した。


 「今更誤ったって許しません」


 許してもらえなかった。


 「クロ。今度は土下座だ」


 「いっそ切腹でもいいんじゃない」


 お前ら、もしかしてこの状況を楽しんでないか?


 「・・・な~んて。冗談ですよ」


 「え?」


 泣いていたはずの彼女が笑いながらそう言った。まさかさっきのはうそ泣きだったのか!?


 「神楽坂くんが人の顔と名前を覚えるのが苦手なのは知ってますから。それくらいで怒ったりしませんよ」


 な、なんていい子なんだ。しかしこんないい子を忘れるなんて、俺の脳はどうなってるんだ。


 「それじゃあ。私の事を忘れてるおバカな神楽坂くんと始めて会う皆さんに自己紹介します」


 もしかして、彼女は忘れてることを本当は怒っているのではないだろうか。


 「私は秋風琴音あきかぜことねと申します。中学1年の終わりに親の都合で引っ越しましたが、それまでは皆さんと同じ中学でした」


 ああなるほど。そういうことなら俺のことを知っていたのも納得がいく。同じ委員会だったのだろうか?


 「ちなみに神楽坂くんとは小学校1年から引っ越すまでずっと一緒のクラスでした」


 2人とも、そんな人を蔑むような目で見るのはやめなさい。


 「すいませんクロがバカで」


 なんてことを


 「でもしょうがないよ。クロは家族以外は基本的に知らない人だもんね」


 「俺なんか3ヶ月間遊んでやっと覚えやれたからな」


 「私知り合って一週間経ったときに『あなた誰?』って言われたときショックだった〜」


 「いやもう大丈夫だから!さすがに改善されたから!」


 「「ど〜だかね〜?」」


 こ、こいつら・・・。

 「あとそれから」


 「そうだ!俺たち今から合格祝いになんか食べに行こうって話してたんだけど、よかったら秋風さんもどう?」


 これ以上欠点を暴露されたくない俺は急いで話の話題を変えた。

 元々この二人は大勢で騒ぐのが好きだし、断りはしないだろう。 


 「おっ、クロ、なかなかいいこと言うじゃん」


 「クロの意見に賛成~!」


 予想通り、二人は俺の意見に賛成してくれた。


 「え?いいんですか?」


 「いいよいいよ。クロもおごってくれるって言ってんだし、むしろ断る方が失礼だろ」  

 

 超大型爆弾ここに投下。


 「おいこら!いつ、だれが、奢るなんて、言った!?」


 「え?はじめからその予定じゃなかったのか?」


 「んなわけあるかぁ!!」


 ていうか、お前俺に奢らせるつもりだったのか。


 「やった~。クロのおごりだ~!存分に食べるぞ~!」


 「でも、3人に奢っちゃって、神楽坂くん、お財布大丈夫なの?」


 この喋り方だと秋風さんも俺に奢ってもらうつもりの様だ。


 「いや俺にそんな財力ないからね?3人も奢っちゃったら俺破綻するからね?」


 「よっしゃぁ!!クロのおごり確定だ!高いもん食うぞ!!」

 

 「高級料亭貸切ろう!」


 「てめえら2人は黙ってろ!!」


 そんな俺の文句も全く気にせず、3人はどこに食べに行くかと会話を続けていた。

 俺の立場って、なんなんだよ?

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